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第一章 魔導学園入学編
17話 魔導学園入学試験
しおりを挟む入学試験会場。それは魔導学園敷地内にある、広いグラウンド。
まずはここで、実技試験を行うらしい。
その後、校内に入り筆記試験を行う。
私たちは、グラウンドに集まっている。
さすが、入学希望者はたくさんだ。
ただ、毎年の入学希望者に対して入学できるのは、半分にも満たないという。
「まったくのんきなんだから。
……その子は?」
「あ、えっと……」
呆れたように肩をすくめるクレアちゃんは、私の後ろに隠れるように立っていた人物に、目を向ける。
彼女は、フードを深く被り、その顔を隠している。
正確には、髪と……特に、耳を。
「この子は、ルリーちゃん。
迷子になってた私を、助けてくれたんだ」
ガチガチに固まっているルリーちゃんに代わり、答える。
いろいろ省略したけど、うん、嘘は言ってないもんね。
「へぇー、ルリーちゃん、ね。
私はクレア、よろしく!」
「あ、は、はいっ、よろしく、お願いします!」
「あはは、緊張しすぎ!」
クレアちゃん、初めて会ったときはわりとツンとした感じだったけど、今は気さくだ。
こっちが、本当の姿なんだろうな。
一方、ルリーちゃんはそんな接し方をされることに慣れていないのか、苦笑いを浮かべていた。
エルフ族は迫害されていたという話から、まともに人と接するのもあまりないんだろう。
それに、正体がバレたらさっきみたいな目に遭うから、顔を隠している。
……それがわかっていて、どうして、魔導学園に……この国に、来たんだろう。
「時間となりました、これより魔導学園入学試験を始めます!」
その時、周囲に轟く大きな声。
この学園の、教師のものだろう。
その瞬間、ざわついていた人たちが一斉に静かになった。
正面には、大きな台……その上に、四人の教師らしき人たちが立っている。
「ようこそ、魔導学園へ!
これより、入学実施試験を行います!」
「入学希望者は例年多いが、入学できるのは半数以下だ。ま、それも諸君の頑張り如何だが。
気合いを入れるように」
「まずは、この人数を四班に分け、それぞれの魔導を見させてもらいます」
四人の教師が、代わる代わるに喋っていく。
みんな、真剣に聞いている。
試験の内容は、こうだ。
この大人数を、四つのグループに分ける。一グループに一人の教師がつき、その中で順番に実力を見ていく……ということらしい。
いくら四つのグループに分けるとはいえ、この人数を四人でさばくのか……
大変そー。
「どんな試験内容なのかな」
「きっと、とんでもなく難しいものに違いないわ」
入学希望者は、赤、青、黄、緑のグループに分けられた。
分け方は、なんか……教師の一人が魔導を使ったら、私たちそれぞれに色の付いたワッペンが、胸元に付けられていた。
なんかよくわかんないけど、この色ごとに組分けするらしく、完全にランダムで選んだという。
すごいな、このためだけに編み出した魔導なんだろうか。
「私は……青か」
「あ、私も、です!」
「私は……黄色、ね」
結果、私とルリーちゃんは青、クレアちゃんは黄の組に、分けられた。
せっかく仲良くなったルリーちゃんと一緒になれたのはよかったけど、クレアちゃんと分かれてしまうとは。
「三人一緒とはいかなかったかー」
「みたいね。
けど、関係ないわ」
「だね」
分かれても、私はクレアちゃんを信じている。
この数日、一緒に特訓だってしたのだ。
二人とも……いや、三人で試験を突破する。
なにを言わずとも、私もクレアちゃんはハイタッチをして、別れた。
ちなみに、クレアちゃんにハイタッチを求められたルリーちゃんは、戸惑いながらも応じていた。
「く、クレアさん、明るい、人ですね」
「そうだねぇー」
四つの班に分かれ、それぞれ移動。
当然だけど、周囲を見回しても、知っている人はいない。
相変わらずルリーちゃんは、私にくっついている。
ここにはいろんな見た目の子がいるから、そうやってビクビクしていたほうがかえって目立つと思うな。
人型ではあるが、猫耳に尻尾を持った者、竜の鱗を持った者、上半身は人だけど下半身は獣の者……
人、獣人、亜人と、いろんな種族がいるが、やはりエルフはいない。
ちなみに、獣人と亜人の違いについてだけど。
獣人とは、体の一部及び全身を獣に変化させることができる種族。変化した獣の力を得ることができる。あの猫耳の人なんか多分そうだ。
亜人とは、純粋な人とは異なる姿をしていて、体は変化しない。生まれ持って、すごい力を持っている。あのリザードマンとか、ヴァンパイアとかそうだろう。
この場合、エルフも亜人だ。
ただ、パッと見区別が付きにくいときもある。
常に獣の姿をしている人もいるしね。
どっちも似たようなものだと言う声もあれば、全然違うだろバカヤロウと言う声もある。
なので、基本的にはそれらを一括りに『異人』と呼ぶ場合が多い。
全部師匠から聞いたことだ。
「今から、キミたちには魔導を使って、あの的を狙ってもらう」
おっと、いつの間にか移動し終えていたらしい。
といっても、たいした距離を移動はしていない。
男性教師が指さした先にあるのは、的……それも、複数の。
五つくらいかな? それが、均等な配置で横並びに並んでいる。
魔導を狙って、あの的を狙う……
つまりは、そういうことだ。
「そんなんでいいの?」
「いやいや、結構難しいと、思いますよ」
ふむ……確かに、思ったより距離はあるな。
ここから、あの的までの距離を、正確に測り撃ち抜くか……
他のみんなは、若干ざわつき始めた。
「私は、魔導学園教師ネイジスト・シュテンレスト!
諸君らが試験を突破することを、心より願っている!」
なげー名前だな……
しかも、そんなに願ってなさそうだ。
かくして、魔導学園入学試験、そのうちの実技試験。
それが、今スタートした。
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