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禁断の箱庭と融合する前の世界(162)
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霧の濃い場所に別世界の森や草原が見えた。それは水面に浮かぶ風景のように時折揺らぐ。
「来ないな・・・」
大盾を構えて待つヤイバの横でクロスケは興奮して霧に向けてスキャニングをしている。
「えらい安定した霧ですな。これは珍しいでっせ。ちょっと霧の向こう側にカメラ飛ばしてみますね」
目に見えない小さなカメラを飛ばし、クロスケは霧に向こう側の映像を近くの空間に投影した。
「植物と動物ばっかりやな・・・。知的生命体はどこや?」
カメラを上空に飛ばし、人類の有無を探る。
「あかん、探した範囲では文明の痕跡すら見当たらへん」
「もしかして無人の世界なんじゃねぇの?空気の成分とかはこっちと一緒?」
「一緒でっせ。食用になる木の実や野菜っぽいものがあちこちに生えてて寧ろ快適やね。春なのか暖かいですわ」
鞘を盗んだゴブリンの子供が映像を見てポツリと言った。
「私、この世界に住みたい・・・」
「え?」
ワロティニスは女の子の言葉に驚いた。霧の向こうは今のところ安全かもしれないが、危険な魔物がいる可能性もあるからだ。
「ダメだよ、危ないよ?」
「でも・・・。ここにいたらお腹がペコペコなんだもん!向こうにある果物はどれも美味しそう!」
見知らぬオークの老人が牙を撫でながら女の子に同意する。
「そうじゃの、祖国に帰っても搾取され虐げられる。ここにいいても生殺しのような毎日。だったら新たな世界に挑んでみるのも良いかもしれん。ワシは行くぞ!」
そう言って老人は杖をついて躊躇なく霧に入っていった。
「俺も!」
「私も!」
難民たちは次々に霧に飛び込んでいく。
「おい!」
カワーは慌てて人々を止めようとしたが、誰もが真っ直ぐに霧へと向かって行く。
「短絡的な奴らだ・・・」
何も保証も無い世界へと希望を抱いて向かう難民たちを見てカワーは呆れる。向こうで病気になったらどうするのか、安定して食料が得られるのか。
霧の噂はあっという間に広まり、街中の移民や難民が列をなして霧へと入って行った。
「ノームが国境の門を解放したぞ!」
遠くで誰かが叫んだ。
この状況を見ていたノームが独自判断で門を解放したのだ。ノーム国へと向かおうとしていた難民たちもノーム国側の門から出て霧へと向かう。
カワーは驚く。
「馬鹿な・・・。ノーム国の政府がこんな早い決断をするわけがない。個人の判断で門を解放するなんて命令違反なんじゃないのかね?処罰されるぞ!」
「だったら、そのノームも霧の向こう側に行けばいいね」
ワロティニスの言葉にヤイバは笑う。
「ははっ!そうだな」
妹の言葉通り、こちらの世界で何不自由なく生きていけるはずのノームの一人が、キュルキュルと叫んで嬉しそうに霧の中に飛び込んでいく姿が見えたからだ。
「こりゃ歴史に残る場面に遭遇しているのかもしれんでヤンスね・・・」
「ヤンス!」
神出鬼没なゴブリンのヤンスは瓶底眼鏡をクイっと上げてから、思い出の石版でこの様子を記録し始めた。
「こいつ、どこにでも現れるな・・・。俺たちをストーカー出来る凄い魔法のアイテムでも持ってるんじゃね?」
マサヨシはヤンスが何か怪しいアイテムを持ってないか見る。
「いえ、たまたまでヤンスよ。寧ろ世界を旅してて貴方達に出会わない事のほうが多いでヤンス」
「まぁそりゃそうか」
マサヨシは笑った。
この街にあれだけ溢れかえっていた移民や難民は全て霧の向こう側へと行ってしまい、辺りを静寂が包む。キャンプ地は枯れ葉の舞う音だけが残った。
「ねぇ、もし向こう側に魔物がいたら皆上手に戦えるのかな?手練の戦士っぽいのはそんなにいなかったように見えるけど・・・」
ワロティニスの問いにカワーは鼻を鳴らした。
「そんな事、僕らには関係のない話だろう。彼等は何の庇護も得られない代わりに自由を選んだんだ。あっち側じゃお金の事を考える必要もないし、誰もが頑張ったら頑張った分だけ欲しい物が得られる。それは魔物と戦うリスクに見合うと思うがね」
「でも・・・」
ワロティニスはゴブリンの少女が魔物に食べられるところを想像してしまい悲しそうな顔をする。
ハァ~とクロスケがため息をついた。
「ワロちゃんの悲しい顔は見たないで。ほなら・・・。これは地球じゃ犯罪行為やけど・・・。ノームの気概を見た後やと、ええかなって思えてきたわ」
そう言ってクロスケはデュプリケイトで自分の複製を作った。
「ほな、頼むでコピークロスケ」
「しゃあないな。任しといてや。全員守ったるさかい」
「カメラで見たところ、危険な生き物は見当たらんかったし大丈夫やと思うけど・・・」
「じゃあ仕事が楽でええな。行ってくるわ~」
「さいならは言わへんで。さようなら」
「言っとるやないかい!」
コピークロスケはクロスケにツッコミを入れるとと霧の中へと消えていった。
「いいのか?地球政府の警察が来てクロスケを逮捕してったりしないのか?」
マサヨシが心配そうに聞く。
「そろそろ来るんちゃうかな・・・」
「まじ?」
―――シュバ!―――
フードを目深に被った何者かが転移してきた。
「お迎えが来たわ・・・。皆今までありがとうな・・・」
「え?クロスケ捕まっちゃうの?やだよ!何も悪いことしてないじゃん!」
ワロティニスがクロスケにしがみついて泣いた。
「ええんや、法を犯してもうたけど、ワイは恥じてないで。人助け出来たんやし・・・」
ニッコリと笑うクロスケに、皆切ない顔をした。
ゆっくりとフードの男は近づいてくる。
「さよならや・・・。今まで皆とおれて楽しかったで」
ドタドタと音を立ててマサヨシがクロスケに走り寄った。
「クロスケ~!俺、今までお前のこと気の置けない相棒だと思ってたんよ!お前がいなくなったら寂しい!何とかなんねぇのかよ!」
マサヨシは涙してクロスケに縋ると、クロスケはゆっくりと顔を横に降った。
「ありがとうな、マサ坊。ワイもマサ坊の事は大好きやったで。一緒に入浴中のワロちゃんを覗いたり、ハイダルネちゃんのいない間に部屋に忍び込んで、荷物の中のスパッツを嗅いでみたり、熟睡するヤイバの鼻を糸くずでこそばしたり、カワーの日記を盗み見たり・・・。楽しかったわ・・・」
「お、おい・・・。ワロちゃんの裸を覗いた事以外は全部オレ一人でやったことじゃねぇか・・・」
「ええやろ?最後やし、言わせてーな・・・。じゃあ行くわな」
フードの男は一歩一歩踏みしめるようにクロスケに近づき・・・・そして通り過ぎていった。
「へ?」
「何だ?」
「どういうこと?」
「あの方はクロスケ様を逮捕しに来たんじゃありませんの?」
「いいや、知らん人やで。たまたま転移してきた人やろ」
「じゃあ、逮捕されるって話はなんだったんだ?クロスケ」
「嘘に決まってますやん!ブーッシャッシャッシャ!ワイもあの人がタイミングよく現れて驚きましたわ!」
「自身のコピーを作るのも違法じゃなかったって事か?あ?」
「いや、それは地球じゃご法度や。アンドロイドは自身のコピーを作り出したら即逮捕や。でもここは惑星ヒジリでっしゃろ?違法かどうかを判断する権限はヒジリさんにあるんやで。ワイがあんまり皆を手助けせぇへんようになったんも、ヒジリさんが色んな制限を設けたからや!プークスクスクス!」
マサヨシとクロスケの背後からゴキリゴキリと拳が鳴る音がした。
「クロ~スケ~!」
「マ~サ~ヨシ~!」
四人のオーガは体から怒気を放っている。
「ひ、ひぇぇ!俺も霧の向こう側に行こうかな・・・」
「ワイも・・・」
まだまだ消えそうもない霧に向かおうとするとワロティニスが怒り笑いをしながら塞いだ。
「どこいくの~?マサヨシ?」
「ちょっとトイレへ・・・」
向きを変えキャンプ地にある粗末な仮設トイレに向かおうとするとヤイバが道を塞いだ。
「僕達の制裁の後でも良いんじゃないですかね?」
「クロスケ、飛んで逃げよう!飛ばしてくれ!」
「はいな!」
浮き上がる二人をカワーの名剣ナマクラの鞘がブーメランのように襲う。
ポコポコと当たると二人は落下して地面に激突し、クロスケは喚いた
「もう嘘つくのは懲~り懲~りで~すわ~!」
そう言った途端、どこからか”テレレレ、テレレ~♪テレレレ、テレレ~♪”とオチをつけるような音楽が鳴り、辺りが暗くなってクロスケの顔だけを光が丸く照らした。
移民問題が解決された事を新聞で知り、ヘイホー議長は口から紅茶を吹き出して椅子から滑り落ちた。
「キュ!(我らの頭を悩ます移民問題を解決した者がいる・・・。一体誰だ?)」
秘書が議長を助け起こし、大きな団子状の髪からハンカチを取り出すと彼の口を拭いた。
「キュル!(ええ、驚いたことにそれを帝国の騎士がやったそうです。ヘイホー議長!)」
「キュ!(帝国の騎士だと?名は?)」
「キュル!(それが・・神の子ヤイバ様です。今、飛び地の港町アゴールから船で本島に向かっております)」
「キュル!(なんと!何用かは知らないが、手厚く出迎えるのじゃぞ!神の子に失礼の無いように!)」
「キュ!(解りました!)」
海水を取り入れ、その中に含まれる僅かなマナを原動力とし水を噴射させ進む高速艇にワロティニスは興奮していた。
「速い!速い!風が気持ちいい~!」
移民問題を解決した事をノーム達に感謝され(実際は勝手に解決した)、無料で乗せてもらった高速艇は海の上を滑るように進む。
船首で喜ぶワロティニスのローブを潮風が何度かたくし上げ、そのたびにマサヨシの劣情を誘う白い太ももが見えた。
(何興奮してんだ・・・俺よ。あれは元々俺の体だ・・・。毎日好きなだけ見れただろ!ああ、女の時にもっと体を弄り倒せば良かった・・・。でも何か怖くてさ・・・。本当に勿体無いことをした・・・)
遠い目をして昔を懐かしむマサヨシにヤイバは話しかけた。
「それにしてもラッキーでしたね。ノームは僕達が移民問題を解決したと思っているみたいですよ。偶然魔物が出てこない霧が現れただけなのに」
「コピークロスケは向こうで上手くやってっかな?あいつがいれば衣食住の心配をする事は無いんじゃね?ところで魔物の霧ってさ、何で現れるんだろうな」
「そんな事考えた事もありませんね・・・。何故でしょう?」
「霧の魔物ってさ、もしかして自分の世界で虐げられた奴らなんじゃねぇの?」
「何でですか?」
「ドォスンの法螺話知ってか?」
「彼が異世界から来たって話でしょう?」
「俺は信じてるけどな。あいつの話に出てくるニンゲンってさ俺らの事なんよ。まぁ正確には別世界の星のオーガな」
「でも彼の話に出てくるニンゲンは父さんとは程遠い野蛮人ですよ?」
「ヒジリ達は俺らの未来の姿なんだよ。昔は星のオーガも野蛮だった。それこそ野良オーガみたいにな」
「まぁ驚きはしませんけど。どの種族もそういう時期はあるでしょうから」
「で、ドォスンはそのニンゲンに虐げられてこの世界にやってきた。ゴデの街で水晶占いをするモシューもそうだぜ?彼も背の高い樹族なんかじゃなくてエルフっていう種族よ」
「つまり霧の魔物も自分の世界で虐げられてこの世界にやって来たと?」
「そう。でも見た目のグロさや価値観の違い、誤解や言葉の壁で、多くがこの世界の住人に殺されてきた」
「では霧はそういった者の強い願望で発生するのですか?」
「と、俺は考える。勿論自然発生的なものもあるとは思うけどさ。アゴールで見た難民たちは皆、強く心の何処かでこの世界から去りたいと願っていたんんじゃないかな。で、想いの強さやら、その時のマナの濃度やらで条件が合い、あそこに発生したと」
「凄いですね、マサヨシさん。ジリヒンさんが聞いたら喜びそうな仮説ですよ」
「この星は人の願いを叶える星なんじゃないかって思ってんだ俺は。星に願いをかけたりするだろ?その願いをかける星はここかもしれないなと。ただこの星は結構冷たい。願いを叶えた先は知らんぞ、と。叶えたがその先は殺されても文句は言うなよ?みたいな」
「ロマンチックなのか現実的なのか判らない話ですね・・・・」
「ノーム国の本島が見えてきましたで」
黙って二人の会話を聞いていたクロスケが、遠くに見える大きな陸地を見ていた。
「ノームの島ってどんな形してんだ?」
「こんな感じですわ」
クロスケはホログラム地図を空間に投影した。そこには四国のようなオーストラリアのような四角い島があった。
「あれ?僕が地図で見たノームの島は細長かったですけど」
「あの島な、変形するんやで」
「何のためによ?」
「それはな・・・・ワイも知りまへん。島の形を変える意味がわかりまへんし」
「ヘンテコな国だなぁ・・・」
段々と島が近づいて来ると巨大な鉄傀儡が移動していたり、よく判らない装置のピストンが上下して蒸気を発生させていたりとヤイバの頭を混乱させる。
島に上陸すると質の良い服を北身分の高そうな格好をしたノームが船の降り口でズラリと並んでいた。
その中の一人が、一歩前に出て皆に握手を求めてきたのでヤイバ達は応じる。
「キュル!」
「帝国騎士の皆様、ようこそ!と言っておりまっせ」
クロスケが素早く翻訳すると、近くの止まり木にいた翻訳オウムが不満げにワイナー!と鳴いた。
ノーム達は特に難しい言語を使っているわけではない。普通に共通語を喋っているのだが、早口なせいでノーム以外には伝わらないのだ。
「キュル!」
「それから我らの信じる神、サカモト神とは別の星のオーガの子、ヤイバ様とワロティニス様を歓迎いたしますやワイナ!」
気を使って黙ってくれたクロスケに気を良くした翻訳オウムは嬉しそうに翻訳をして自慢げな顔をした。
「う~ん、面倒くさいな。玩具くらいなら出してもヒジリさんには怒られへんやろ・・・。会話内容をスローにして聞き取りやすくして補正するだけの装置やし」
クロスケはコードの付いていない小さなイヤホンを人数分出して言う。
「これを装着して下さい。ノームの言葉が解るはずやで」
一同はそれを装着すると確かにノームの話が解る。
装着してない方の耳からは普段通りのテープレコーダーを早回ししたようなノーム達の声が聞こえてきた。
「キュル!(テステス!どうです?早口を聞き取れますか?)」
「はい、普通に聞こえます。このアイテムは凄いですね、クロスケさん!」
「そ、そやろ?(本来はスローで不気味な声を笑うだけの玩具なんやけど・・・)」
ヤイバ達がノーム国に来た事情を話すと、議長はとある傀儡師を紹介してくれた。
議長の秘書が一同を研究室のような場所まで案内し、沢山の機械と無造作に並べられた傀儡のパーツを見せる。
「こちらがノーム国最高の傀儡師、ハイサーイ・ホイサーイ氏です」
「よろしく」
「よろしくお願いします。帝国鉄騎士団のヤイバです」
傀儡師の老人は全身を奇妙な防護服で覆っており顔の部分だけは穴が開いていた。そこから髭もじゃの柔和な顔が覗いている。
ヤイバが傀儡に吸魔鬼を宿す為に必要なパーツを貰いに来たと説明するとハイサーイはオホッ!と驚いて何やら頷いた。
「帝国の方は機械にあまり興味が無いと思っておりましたが・・・。それにしても吸魔鬼を、ですか・・・。ノームより突飛な事を考えなさる。となると、闇魔女殿から預かってきた物があるのではないですかな?」
「ええ、この箱です」
そう言ってヤイバは腰のポーチから黒いサイコロのような小さい箱を取り出した。
「ふむ」
「その箱は何なのですか?」
ヤイバはイグナにこの箱の説明を聞いていないのでハイサーイに聞いてみた。
「これかね?これは自我のない吸魔鬼のベースとなる人格みたいなもんが入っておる。本来魔法人形は複雑な思考はしない。与えられた命令の中での思考は出来るが自分で進んでゼロから考えようとはしない。それに作る我らもそれ以上は望まないからのう。あまり賢いと制御不能になったりしたら厄介じゃし。自我のない吸魔鬼はこれをベースにして成長していくのじゃ。これが無ければハッキリ言って幾ら教えても成長はしない。闇魔女殿も凄いマジックパーツを作り寄る」
箱の中に具体的に何が入っているのか気になったのでヤイバは質問してみる。
「その中身は何ですか?」
「そうじゃの、恐らく・・・」
クロスケが話に割り込み、箱をスキャンして中身が何であるかを正確に教える。箱自体、まだマナを帯びていないせいかクロスケにも中を見る事ができたのだ。
「タスネさんとダンティラスさんの髪と爪、触手の一部。まぁ遺伝子情報やね」
「その通りじゃ。・・・むむ?お主・・・イービルアイじゃないな?」
おでこのゴーグルを目に装着するとハイサーイはクロスケを見た。
「きゃあ!エッチ!見んといて!」
ワロティニスが兄にこっそりと聞く。
「クロスケはイービルアイなのに何言ってるのかな、あのおじいさん」
「きっと普通のイービルアイじゃないって事なんだろう。何せ初期のウメボシさんと同じイービルアイだし」
ハイサイーイの鼻息が荒くなってきた。
「これは・・・おおお!星のオーガの技術!た、頼む!後で体を見せてくれ!クロスケ殿!」
「スケベね!お断りですぅ!」
「そうか・・・残念じゃ・・・」
ハイサーイはがっくりと項垂れるとブツブツ言いながらウロウロしだした。
あまりにその時間が長いのでヤイバが声を掛ける。
「あの・・・」
「おや!すまんすまん!で、何の話じゃたかな?そうそう箱の中身。両親の遺伝子を元に作り出された疑似人格を一度見させて貰うことになる。不具合がないかチェックするんじゃ」
「でもまだ成長していない人格なのでは?」
「勿論、そうじゃ。だからその元になる二人の記憶をチェックすることになる。じゃが赤の他人であるワシだけが見ても記憶の不具合は判らん。この中でこの吸魔鬼と親しかった者は?」
ヤイバとワロティニスが直ぐに手を上げた。
「宜しい。では他の者は自由にしていてくれ。工場を見学しててもいいが、傀儡には触れないように」
ハイサーイはそう言うと先を歩いて二人を別室に案内した。
そこは黒い壁の部屋で、真ん中に魔法水晶がぽつんと置いてある。
「では壁に映像が映るでの。映像の中の吸魔鬼の言動がおかしかったり画像が乱れたりしたら教えてくれ。ワシは見逃してしまうかもしれんでな」
「わかりました」
「タスネさんとはあまり関わりが無かったけど、ワイも一緒していいかな?」
いつの間にかついて来ていたクロスケが遠慮がちにヤイバにそう尋ねた。
「見ても面白くはないとは思いますが、見たいのであればどうぞ」
「ありがとう」
ハイサーイが黒い箱を魔法水晶に近づけてマナを流し込むとタスネらしき視点で映像が映る。
サヴェリフェ家の屋敷で、絨毯の上をハイハイをするヤイバが映っている。
「ほら、こっちだよ~!ヤイバ!フランとアタシ、どっちが好きかな~?」
おむつをするヤイバは涎を垂らしてニコニコしながらタスネの方に這って来る。
「わぁ!アタシの方がいいんだってさ!や~い!フラン、残念でした~!あー可愛い~。ヤイバ可愛い~!ギュー!」
タスネがヤイバを抱きしめた所で場面が変わって、ヒジリの銅像の前で少し言葉を覚えたヤイバが立っていた。
「この銅像は、誰かな~?」
「おーとーたん」
急に画面が滲み、ハイサーイが不具合があったのかと不安そうな顔をして動きが止まる。
「ヒック・・・。ヒジリのアホッ!こんな可愛い子を残して死ぬなんて!アホっ!」
ダンティラスが指でタスネの涙を拭っているのを見て、ハイサーイはタスネの涙で画面が歪んだのだと理解し安心して続きを見た。
「ありがと、ダンティラス」
画面がダンティラスの頬が近づく。慰めてくれた夫にキスをしたのだ。
また場面が変わった。
タスネが血塗れのヤイバを抱きかかえて必死に声を掛けている。
真正面でダンティラスが怒りの雄叫びを上げて、魔犬の群れと戦っていた。
魔犬達は触手の一振りで次々と干からびていく。
ダンティラスは振り向くとヤイバを心配そうに覗き込んだ。
「フラン、ヤイバを治すのだ!早く!」
「これぐらいなら直ぐ治るから・・・安心して」
「ごめんね、ヤイバ!私達が野原なんかに連れてきたばっかりに・・・!」
涙がポタポタとヤイバの顔に付着する血と混じった。
また場面が変わって、八歳ぐらいに見えるヤイバが嬉しそうに飛び跳ねていた。
「僕ね!明日から鉄騎士になるための学校に通うんだよ!」
「そうなの?それはおめでとう!」
「僕ね、あのね、きっと十六歳で鉄騎士になってみせるから!」
「え?あ、そうか!帝国は学校に通ってる期間が短いほど社会で認められるんだったっけ?」
「樹族国もそうだが、どちらかかというと学歴重視に偏っているのである」
「私は帝国の考え方、割りと好きだな。即戦力になる優れた者は直ぐに社会に出よ!って考え方。わかりやすいじゃん」
「イグナもそうであったな。彼女も殆ど学校に行っていない。しかしながら、あの魔法の知識は一度見覚えの能力だけでは身につかん。経験と独学で身についた賜物である。書斎や研究所だけでは判らない知識が世の中には沢山あるのだ」
「そうね。縁は切っちゃったけど今でも自慢の妹だよ」
「ヤイバは闇魔女殿が師匠だから魔法で困ることは無いな。でも鉄騎士になるのは母上の影響かね?」
「そういえば、そうね。ヤイバは魔法騎士団には入らないんだ?」
「うん!僕ね!鉄騎士になるの!」
「そっか!きっとお母さんみたいな強い鉄騎士になれるよ!じゃあ改めて、入学おめでとう!」
そう言ってタスネはワンドや杖の代わりになる魔法のブレスレットをヤイバに渡した。今ヤイバが付けているブレスレットがそれだ。成長に合わせて何度もサイズを変更したそれは今も綺麗なままだった。
これまでの映像を見て、突然無表情のヤイバの目から涙が零れ落ちる。
「あれ?そこまで悲しくないのに涙が・・・。ちょっと・・待って下さい・・・。何で僕との記憶ばかりなのですか・・・?」
ハイサーイは髭を扱いてヤイバに言う。
「恐らく、かき集めた爪や髪が君と過ごした時期の物だったのだろう。印象が深ければそれだけ映像に残りやすいんじゃ」
「僕はこんな事、何一つも覚えていない。けど・・・タスネさんやダンティラスさんはこんなに僕のことを思っててくれていたのか・・・。う・・・う・・・ウワァァァ!」
「お兄ちゃん!」
堰を切ったようにヤイバは泣き始めた。
ワロティニスは崩れ落ちて泣く兄を心配して背中を擦る。
「ええんやで、泣いたらええんや!」
「僕は・・・体の中の虫のせいで・・・ウグッ・・・感情を押さえられていたはずなのに」
「ナノマシンは・・・虫はそこまではせぇへんのや。そういうのは感情抑制チップを埋め込まんと出来へん」
「じゃあ何故・・・・」
「君の感情を殺してたんは何でもない、君自身や。君はタスネさんとはそんな親しくはないと思ってたかもしれんけど、ほんまはその映像のように幸せな時間を沢山過ごしてる。だからこの夫婦が死んだ時、無意識下の記憶が君の心に大きく負荷をかけてたんや。その負荷は相当なもんで、ほっといたら君は心を壊してたやろうな。だから自己防衛として意識が君の感情を・・・特に優しさを奪ったんや。心を冷たく固くすることで傷つくのを防いだんやな」
「いつからそれに気がついていたのですか?だったら教えてくれたら良かったじゃないですか・・・ウゥ」
「ヤイバ君の表情があまり動かなくなった時にそうやないかと・・・。タスネさんが死んだ後くらいから見てて違和感を感じてたんや。君のナノマシンをスキャニングしても感情に作用するような異常は無かったし。・・・悲しみを克服したいんやったら現実と向き合ったほうがええ。ヤイバ君はそれをずっと避けてたんやから。だから今は思いっきり泣きなさい」
クロスケはハイサーイに向くと謝った。
「すいまへんな、ハイサーイさん。暫くこの部屋をワロちゃんとヤイバ君だけにしたげてもええかな?」
「うむ、そうじゃな・・・」
同情する顔でヤイバを見ていたハイサーイは頷くとクロスケと共に部屋から出ていった。
クロスケが部屋を出ると中からヤイバの声が聞こえてくる。
「ううう・・・タスネさん・・・ダンティラスさん・・・・。寂しいよ・・・。さよならの言葉も無しに・・・逝ってしまった・・・何故あの時、僕は二人を助けられなかったんだ・・・何故・・・。くそ!くそ!くそぉぉぉ!!!」
ノームの機械がゴウゴウと作動する音と共に、暫くの間ヤイバが床を激しく叩く音が響いていた。
悔恨と嗚咽の交じるヤイバの声にクロスケはただ黙って目を閉じ、彼がこの試練を乗り越えることを祈った。
「来ないな・・・」
大盾を構えて待つヤイバの横でクロスケは興奮して霧に向けてスキャニングをしている。
「えらい安定した霧ですな。これは珍しいでっせ。ちょっと霧の向こう側にカメラ飛ばしてみますね」
目に見えない小さなカメラを飛ばし、クロスケは霧に向こう側の映像を近くの空間に投影した。
「植物と動物ばっかりやな・・・。知的生命体はどこや?」
カメラを上空に飛ばし、人類の有無を探る。
「あかん、探した範囲では文明の痕跡すら見当たらへん」
「もしかして無人の世界なんじゃねぇの?空気の成分とかはこっちと一緒?」
「一緒でっせ。食用になる木の実や野菜っぽいものがあちこちに生えてて寧ろ快適やね。春なのか暖かいですわ」
鞘を盗んだゴブリンの子供が映像を見てポツリと言った。
「私、この世界に住みたい・・・」
「え?」
ワロティニスは女の子の言葉に驚いた。霧の向こうは今のところ安全かもしれないが、危険な魔物がいる可能性もあるからだ。
「ダメだよ、危ないよ?」
「でも・・・。ここにいたらお腹がペコペコなんだもん!向こうにある果物はどれも美味しそう!」
見知らぬオークの老人が牙を撫でながら女の子に同意する。
「そうじゃの、祖国に帰っても搾取され虐げられる。ここにいいても生殺しのような毎日。だったら新たな世界に挑んでみるのも良いかもしれん。ワシは行くぞ!」
そう言って老人は杖をついて躊躇なく霧に入っていった。
「俺も!」
「私も!」
難民たちは次々に霧に飛び込んでいく。
「おい!」
カワーは慌てて人々を止めようとしたが、誰もが真っ直ぐに霧へと向かって行く。
「短絡的な奴らだ・・・」
何も保証も無い世界へと希望を抱いて向かう難民たちを見てカワーは呆れる。向こうで病気になったらどうするのか、安定して食料が得られるのか。
霧の噂はあっという間に広まり、街中の移民や難民が列をなして霧へと入って行った。
「ノームが国境の門を解放したぞ!」
遠くで誰かが叫んだ。
この状況を見ていたノームが独自判断で門を解放したのだ。ノーム国へと向かおうとしていた難民たちもノーム国側の門から出て霧へと向かう。
カワーは驚く。
「馬鹿な・・・。ノーム国の政府がこんな早い決断をするわけがない。個人の判断で門を解放するなんて命令違反なんじゃないのかね?処罰されるぞ!」
「だったら、そのノームも霧の向こう側に行けばいいね」
ワロティニスの言葉にヤイバは笑う。
「ははっ!そうだな」
妹の言葉通り、こちらの世界で何不自由なく生きていけるはずのノームの一人が、キュルキュルと叫んで嬉しそうに霧の中に飛び込んでいく姿が見えたからだ。
「こりゃ歴史に残る場面に遭遇しているのかもしれんでヤンスね・・・」
「ヤンス!」
神出鬼没なゴブリンのヤンスは瓶底眼鏡をクイっと上げてから、思い出の石版でこの様子を記録し始めた。
「こいつ、どこにでも現れるな・・・。俺たちをストーカー出来る凄い魔法のアイテムでも持ってるんじゃね?」
マサヨシはヤンスが何か怪しいアイテムを持ってないか見る。
「いえ、たまたまでヤンスよ。寧ろ世界を旅してて貴方達に出会わない事のほうが多いでヤンス」
「まぁそりゃそうか」
マサヨシは笑った。
この街にあれだけ溢れかえっていた移民や難民は全て霧の向こう側へと行ってしまい、辺りを静寂が包む。キャンプ地は枯れ葉の舞う音だけが残った。
「ねぇ、もし向こう側に魔物がいたら皆上手に戦えるのかな?手練の戦士っぽいのはそんなにいなかったように見えるけど・・・」
ワロティニスの問いにカワーは鼻を鳴らした。
「そんな事、僕らには関係のない話だろう。彼等は何の庇護も得られない代わりに自由を選んだんだ。あっち側じゃお金の事を考える必要もないし、誰もが頑張ったら頑張った分だけ欲しい物が得られる。それは魔物と戦うリスクに見合うと思うがね」
「でも・・・」
ワロティニスはゴブリンの少女が魔物に食べられるところを想像してしまい悲しそうな顔をする。
ハァ~とクロスケがため息をついた。
「ワロちゃんの悲しい顔は見たないで。ほなら・・・。これは地球じゃ犯罪行為やけど・・・。ノームの気概を見た後やと、ええかなって思えてきたわ」
そう言ってクロスケはデュプリケイトで自分の複製を作った。
「ほな、頼むでコピークロスケ」
「しゃあないな。任しといてや。全員守ったるさかい」
「カメラで見たところ、危険な生き物は見当たらんかったし大丈夫やと思うけど・・・」
「じゃあ仕事が楽でええな。行ってくるわ~」
「さいならは言わへんで。さようなら」
「言っとるやないかい!」
コピークロスケはクロスケにツッコミを入れるとと霧の中へと消えていった。
「いいのか?地球政府の警察が来てクロスケを逮捕してったりしないのか?」
マサヨシが心配そうに聞く。
「そろそろ来るんちゃうかな・・・」
「まじ?」
―――シュバ!―――
フードを目深に被った何者かが転移してきた。
「お迎えが来たわ・・・。皆今までありがとうな・・・」
「え?クロスケ捕まっちゃうの?やだよ!何も悪いことしてないじゃん!」
ワロティニスがクロスケにしがみついて泣いた。
「ええんや、法を犯してもうたけど、ワイは恥じてないで。人助け出来たんやし・・・」
ニッコリと笑うクロスケに、皆切ない顔をした。
ゆっくりとフードの男は近づいてくる。
「さよならや・・・。今まで皆とおれて楽しかったで」
ドタドタと音を立ててマサヨシがクロスケに走り寄った。
「クロスケ~!俺、今までお前のこと気の置けない相棒だと思ってたんよ!お前がいなくなったら寂しい!何とかなんねぇのかよ!」
マサヨシは涙してクロスケに縋ると、クロスケはゆっくりと顔を横に降った。
「ありがとうな、マサ坊。ワイもマサ坊の事は大好きやったで。一緒に入浴中のワロちゃんを覗いたり、ハイダルネちゃんのいない間に部屋に忍び込んで、荷物の中のスパッツを嗅いでみたり、熟睡するヤイバの鼻を糸くずでこそばしたり、カワーの日記を盗み見たり・・・。楽しかったわ・・・」
「お、おい・・・。ワロちゃんの裸を覗いた事以外は全部オレ一人でやったことじゃねぇか・・・」
「ええやろ?最後やし、言わせてーな・・・。じゃあ行くわな」
フードの男は一歩一歩踏みしめるようにクロスケに近づき・・・・そして通り過ぎていった。
「へ?」
「何だ?」
「どういうこと?」
「あの方はクロスケ様を逮捕しに来たんじゃありませんの?」
「いいや、知らん人やで。たまたま転移してきた人やろ」
「じゃあ、逮捕されるって話はなんだったんだ?クロスケ」
「嘘に決まってますやん!ブーッシャッシャッシャ!ワイもあの人がタイミングよく現れて驚きましたわ!」
「自身のコピーを作るのも違法じゃなかったって事か?あ?」
「いや、それは地球じゃご法度や。アンドロイドは自身のコピーを作り出したら即逮捕や。でもここは惑星ヒジリでっしゃろ?違法かどうかを判断する権限はヒジリさんにあるんやで。ワイがあんまり皆を手助けせぇへんようになったんも、ヒジリさんが色んな制限を設けたからや!プークスクスクス!」
マサヨシとクロスケの背後からゴキリゴキリと拳が鳴る音がした。
「クロ~スケ~!」
「マ~サ~ヨシ~!」
四人のオーガは体から怒気を放っている。
「ひ、ひぇぇ!俺も霧の向こう側に行こうかな・・・」
「ワイも・・・」
まだまだ消えそうもない霧に向かおうとするとワロティニスが怒り笑いをしながら塞いだ。
「どこいくの~?マサヨシ?」
「ちょっとトイレへ・・・」
向きを変えキャンプ地にある粗末な仮設トイレに向かおうとするとヤイバが道を塞いだ。
「僕達の制裁の後でも良いんじゃないですかね?」
「クロスケ、飛んで逃げよう!飛ばしてくれ!」
「はいな!」
浮き上がる二人をカワーの名剣ナマクラの鞘がブーメランのように襲う。
ポコポコと当たると二人は落下して地面に激突し、クロスケは喚いた
「もう嘘つくのは懲~り懲~りで~すわ~!」
そう言った途端、どこからか”テレレレ、テレレ~♪テレレレ、テレレ~♪”とオチをつけるような音楽が鳴り、辺りが暗くなってクロスケの顔だけを光が丸く照らした。
移民問題が解決された事を新聞で知り、ヘイホー議長は口から紅茶を吹き出して椅子から滑り落ちた。
「キュ!(我らの頭を悩ます移民問題を解決した者がいる・・・。一体誰だ?)」
秘書が議長を助け起こし、大きな団子状の髪からハンカチを取り出すと彼の口を拭いた。
「キュル!(ええ、驚いたことにそれを帝国の騎士がやったそうです。ヘイホー議長!)」
「キュ!(帝国の騎士だと?名は?)」
「キュル!(それが・・神の子ヤイバ様です。今、飛び地の港町アゴールから船で本島に向かっております)」
「キュル!(なんと!何用かは知らないが、手厚く出迎えるのじゃぞ!神の子に失礼の無いように!)」
「キュ!(解りました!)」
海水を取り入れ、その中に含まれる僅かなマナを原動力とし水を噴射させ進む高速艇にワロティニスは興奮していた。
「速い!速い!風が気持ちいい~!」
移民問題を解決した事をノーム達に感謝され(実際は勝手に解決した)、無料で乗せてもらった高速艇は海の上を滑るように進む。
船首で喜ぶワロティニスのローブを潮風が何度かたくし上げ、そのたびにマサヨシの劣情を誘う白い太ももが見えた。
(何興奮してんだ・・・俺よ。あれは元々俺の体だ・・・。毎日好きなだけ見れただろ!ああ、女の時にもっと体を弄り倒せば良かった・・・。でも何か怖くてさ・・・。本当に勿体無いことをした・・・)
遠い目をして昔を懐かしむマサヨシにヤイバは話しかけた。
「それにしてもラッキーでしたね。ノームは僕達が移民問題を解決したと思っているみたいですよ。偶然魔物が出てこない霧が現れただけなのに」
「コピークロスケは向こうで上手くやってっかな?あいつがいれば衣食住の心配をする事は無いんじゃね?ところで魔物の霧ってさ、何で現れるんだろうな」
「そんな事考えた事もありませんね・・・。何故でしょう?」
「霧の魔物ってさ、もしかして自分の世界で虐げられた奴らなんじゃねぇの?」
「何でですか?」
「ドォスンの法螺話知ってか?」
「彼が異世界から来たって話でしょう?」
「俺は信じてるけどな。あいつの話に出てくるニンゲンってさ俺らの事なんよ。まぁ正確には別世界の星のオーガな」
「でも彼の話に出てくるニンゲンは父さんとは程遠い野蛮人ですよ?」
「ヒジリ達は俺らの未来の姿なんだよ。昔は星のオーガも野蛮だった。それこそ野良オーガみたいにな」
「まぁ驚きはしませんけど。どの種族もそういう時期はあるでしょうから」
「で、ドォスンはそのニンゲンに虐げられてこの世界にやってきた。ゴデの街で水晶占いをするモシューもそうだぜ?彼も背の高い樹族なんかじゃなくてエルフっていう種族よ」
「つまり霧の魔物も自分の世界で虐げられてこの世界にやって来たと?」
「そう。でも見た目のグロさや価値観の違い、誤解や言葉の壁で、多くがこの世界の住人に殺されてきた」
「では霧はそういった者の強い願望で発生するのですか?」
「と、俺は考える。勿論自然発生的なものもあるとは思うけどさ。アゴールで見た難民たちは皆、強く心の何処かでこの世界から去りたいと願っていたんんじゃないかな。で、想いの強さやら、その時のマナの濃度やらで条件が合い、あそこに発生したと」
「凄いですね、マサヨシさん。ジリヒンさんが聞いたら喜びそうな仮説ですよ」
「この星は人の願いを叶える星なんじゃないかって思ってんだ俺は。星に願いをかけたりするだろ?その願いをかける星はここかもしれないなと。ただこの星は結構冷たい。願いを叶えた先は知らんぞ、と。叶えたがその先は殺されても文句は言うなよ?みたいな」
「ロマンチックなのか現実的なのか判らない話ですね・・・・」
「ノーム国の本島が見えてきましたで」
黙って二人の会話を聞いていたクロスケが、遠くに見える大きな陸地を見ていた。
「ノームの島ってどんな形してんだ?」
「こんな感じですわ」
クロスケはホログラム地図を空間に投影した。そこには四国のようなオーストラリアのような四角い島があった。
「あれ?僕が地図で見たノームの島は細長かったですけど」
「あの島な、変形するんやで」
「何のためによ?」
「それはな・・・・ワイも知りまへん。島の形を変える意味がわかりまへんし」
「ヘンテコな国だなぁ・・・」
段々と島が近づいて来ると巨大な鉄傀儡が移動していたり、よく判らない装置のピストンが上下して蒸気を発生させていたりとヤイバの頭を混乱させる。
島に上陸すると質の良い服を北身分の高そうな格好をしたノームが船の降り口でズラリと並んでいた。
その中の一人が、一歩前に出て皆に握手を求めてきたのでヤイバ達は応じる。
「キュル!」
「帝国騎士の皆様、ようこそ!と言っておりまっせ」
クロスケが素早く翻訳すると、近くの止まり木にいた翻訳オウムが不満げにワイナー!と鳴いた。
ノーム達は特に難しい言語を使っているわけではない。普通に共通語を喋っているのだが、早口なせいでノーム以外には伝わらないのだ。
「キュル!」
「それから我らの信じる神、サカモト神とは別の星のオーガの子、ヤイバ様とワロティニス様を歓迎いたしますやワイナ!」
気を使って黙ってくれたクロスケに気を良くした翻訳オウムは嬉しそうに翻訳をして自慢げな顔をした。
「う~ん、面倒くさいな。玩具くらいなら出してもヒジリさんには怒られへんやろ・・・。会話内容をスローにして聞き取りやすくして補正するだけの装置やし」
クロスケはコードの付いていない小さなイヤホンを人数分出して言う。
「これを装着して下さい。ノームの言葉が解るはずやで」
一同はそれを装着すると確かにノームの話が解る。
装着してない方の耳からは普段通りのテープレコーダーを早回ししたようなノーム達の声が聞こえてきた。
「キュル!(テステス!どうです?早口を聞き取れますか?)」
「はい、普通に聞こえます。このアイテムは凄いですね、クロスケさん!」
「そ、そやろ?(本来はスローで不気味な声を笑うだけの玩具なんやけど・・・)」
ヤイバ達がノーム国に来た事情を話すと、議長はとある傀儡師を紹介してくれた。
議長の秘書が一同を研究室のような場所まで案内し、沢山の機械と無造作に並べられた傀儡のパーツを見せる。
「こちらがノーム国最高の傀儡師、ハイサーイ・ホイサーイ氏です」
「よろしく」
「よろしくお願いします。帝国鉄騎士団のヤイバです」
傀儡師の老人は全身を奇妙な防護服で覆っており顔の部分だけは穴が開いていた。そこから髭もじゃの柔和な顔が覗いている。
ヤイバが傀儡に吸魔鬼を宿す為に必要なパーツを貰いに来たと説明するとハイサーイはオホッ!と驚いて何やら頷いた。
「帝国の方は機械にあまり興味が無いと思っておりましたが・・・。それにしても吸魔鬼を、ですか・・・。ノームより突飛な事を考えなさる。となると、闇魔女殿から預かってきた物があるのではないですかな?」
「ええ、この箱です」
そう言ってヤイバは腰のポーチから黒いサイコロのような小さい箱を取り出した。
「ふむ」
「その箱は何なのですか?」
ヤイバはイグナにこの箱の説明を聞いていないのでハイサーイに聞いてみた。
「これかね?これは自我のない吸魔鬼のベースとなる人格みたいなもんが入っておる。本来魔法人形は複雑な思考はしない。与えられた命令の中での思考は出来るが自分で進んでゼロから考えようとはしない。それに作る我らもそれ以上は望まないからのう。あまり賢いと制御不能になったりしたら厄介じゃし。自我のない吸魔鬼はこれをベースにして成長していくのじゃ。これが無ければハッキリ言って幾ら教えても成長はしない。闇魔女殿も凄いマジックパーツを作り寄る」
箱の中に具体的に何が入っているのか気になったのでヤイバは質問してみる。
「その中身は何ですか?」
「そうじゃの、恐らく・・・」
クロスケが話に割り込み、箱をスキャンして中身が何であるかを正確に教える。箱自体、まだマナを帯びていないせいかクロスケにも中を見る事ができたのだ。
「タスネさんとダンティラスさんの髪と爪、触手の一部。まぁ遺伝子情報やね」
「その通りじゃ。・・・むむ?お主・・・イービルアイじゃないな?」
おでこのゴーグルを目に装着するとハイサーイはクロスケを見た。
「きゃあ!エッチ!見んといて!」
ワロティニスが兄にこっそりと聞く。
「クロスケはイービルアイなのに何言ってるのかな、あのおじいさん」
「きっと普通のイービルアイじゃないって事なんだろう。何せ初期のウメボシさんと同じイービルアイだし」
ハイサイーイの鼻息が荒くなってきた。
「これは・・・おおお!星のオーガの技術!た、頼む!後で体を見せてくれ!クロスケ殿!」
「スケベね!お断りですぅ!」
「そうか・・・残念じゃ・・・」
ハイサーイはがっくりと項垂れるとブツブツ言いながらウロウロしだした。
あまりにその時間が長いのでヤイバが声を掛ける。
「あの・・・」
「おや!すまんすまん!で、何の話じゃたかな?そうそう箱の中身。両親の遺伝子を元に作り出された疑似人格を一度見させて貰うことになる。不具合がないかチェックするんじゃ」
「でもまだ成長していない人格なのでは?」
「勿論、そうじゃ。だからその元になる二人の記憶をチェックすることになる。じゃが赤の他人であるワシだけが見ても記憶の不具合は判らん。この中でこの吸魔鬼と親しかった者は?」
ヤイバとワロティニスが直ぐに手を上げた。
「宜しい。では他の者は自由にしていてくれ。工場を見学しててもいいが、傀儡には触れないように」
ハイサーイはそう言うと先を歩いて二人を別室に案内した。
そこは黒い壁の部屋で、真ん中に魔法水晶がぽつんと置いてある。
「では壁に映像が映るでの。映像の中の吸魔鬼の言動がおかしかったり画像が乱れたりしたら教えてくれ。ワシは見逃してしまうかもしれんでな」
「わかりました」
「タスネさんとはあまり関わりが無かったけど、ワイも一緒していいかな?」
いつの間にかついて来ていたクロスケが遠慮がちにヤイバにそう尋ねた。
「見ても面白くはないとは思いますが、見たいのであればどうぞ」
「ありがとう」
ハイサーイが黒い箱を魔法水晶に近づけてマナを流し込むとタスネらしき視点で映像が映る。
サヴェリフェ家の屋敷で、絨毯の上をハイハイをするヤイバが映っている。
「ほら、こっちだよ~!ヤイバ!フランとアタシ、どっちが好きかな~?」
おむつをするヤイバは涎を垂らしてニコニコしながらタスネの方に這って来る。
「わぁ!アタシの方がいいんだってさ!や~い!フラン、残念でした~!あー可愛い~。ヤイバ可愛い~!ギュー!」
タスネがヤイバを抱きしめた所で場面が変わって、ヒジリの銅像の前で少し言葉を覚えたヤイバが立っていた。
「この銅像は、誰かな~?」
「おーとーたん」
急に画面が滲み、ハイサーイが不具合があったのかと不安そうな顔をして動きが止まる。
「ヒック・・・。ヒジリのアホッ!こんな可愛い子を残して死ぬなんて!アホっ!」
ダンティラスが指でタスネの涙を拭っているのを見て、ハイサーイはタスネの涙で画面が歪んだのだと理解し安心して続きを見た。
「ありがと、ダンティラス」
画面がダンティラスの頬が近づく。慰めてくれた夫にキスをしたのだ。
また場面が変わった。
タスネが血塗れのヤイバを抱きかかえて必死に声を掛けている。
真正面でダンティラスが怒りの雄叫びを上げて、魔犬の群れと戦っていた。
魔犬達は触手の一振りで次々と干からびていく。
ダンティラスは振り向くとヤイバを心配そうに覗き込んだ。
「フラン、ヤイバを治すのだ!早く!」
「これぐらいなら直ぐ治るから・・・安心して」
「ごめんね、ヤイバ!私達が野原なんかに連れてきたばっかりに・・・!」
涙がポタポタとヤイバの顔に付着する血と混じった。
また場面が変わって、八歳ぐらいに見えるヤイバが嬉しそうに飛び跳ねていた。
「僕ね!明日から鉄騎士になるための学校に通うんだよ!」
「そうなの?それはおめでとう!」
「僕ね、あのね、きっと十六歳で鉄騎士になってみせるから!」
「え?あ、そうか!帝国は学校に通ってる期間が短いほど社会で認められるんだったっけ?」
「樹族国もそうだが、どちらかかというと学歴重視に偏っているのである」
「私は帝国の考え方、割りと好きだな。即戦力になる優れた者は直ぐに社会に出よ!って考え方。わかりやすいじゃん」
「イグナもそうであったな。彼女も殆ど学校に行っていない。しかしながら、あの魔法の知識は一度見覚えの能力だけでは身につかん。経験と独学で身についた賜物である。書斎や研究所だけでは判らない知識が世の中には沢山あるのだ」
「そうね。縁は切っちゃったけど今でも自慢の妹だよ」
「ヤイバは闇魔女殿が師匠だから魔法で困ることは無いな。でも鉄騎士になるのは母上の影響かね?」
「そういえば、そうね。ヤイバは魔法騎士団には入らないんだ?」
「うん!僕ね!鉄騎士になるの!」
「そっか!きっとお母さんみたいな強い鉄騎士になれるよ!じゃあ改めて、入学おめでとう!」
そう言ってタスネはワンドや杖の代わりになる魔法のブレスレットをヤイバに渡した。今ヤイバが付けているブレスレットがそれだ。成長に合わせて何度もサイズを変更したそれは今も綺麗なままだった。
これまでの映像を見て、突然無表情のヤイバの目から涙が零れ落ちる。
「あれ?そこまで悲しくないのに涙が・・・。ちょっと・・待って下さい・・・。何で僕との記憶ばかりなのですか・・・?」
ハイサーイは髭を扱いてヤイバに言う。
「恐らく、かき集めた爪や髪が君と過ごした時期の物だったのだろう。印象が深ければそれだけ映像に残りやすいんじゃ」
「僕はこんな事、何一つも覚えていない。けど・・・タスネさんやダンティラスさんはこんなに僕のことを思っててくれていたのか・・・。う・・・う・・・ウワァァァ!」
「お兄ちゃん!」
堰を切ったようにヤイバは泣き始めた。
ワロティニスは崩れ落ちて泣く兄を心配して背中を擦る。
「ええんやで、泣いたらええんや!」
「僕は・・・体の中の虫のせいで・・・ウグッ・・・感情を押さえられていたはずなのに」
「ナノマシンは・・・虫はそこまではせぇへんのや。そういうのは感情抑制チップを埋め込まんと出来へん」
「じゃあ何故・・・・」
「君の感情を殺してたんは何でもない、君自身や。君はタスネさんとはそんな親しくはないと思ってたかもしれんけど、ほんまはその映像のように幸せな時間を沢山過ごしてる。だからこの夫婦が死んだ時、無意識下の記憶が君の心に大きく負荷をかけてたんや。その負荷は相当なもんで、ほっといたら君は心を壊してたやろうな。だから自己防衛として意識が君の感情を・・・特に優しさを奪ったんや。心を冷たく固くすることで傷つくのを防いだんやな」
「いつからそれに気がついていたのですか?だったら教えてくれたら良かったじゃないですか・・・ウゥ」
「ヤイバ君の表情があまり動かなくなった時にそうやないかと・・・。タスネさんが死んだ後くらいから見てて違和感を感じてたんや。君のナノマシンをスキャニングしても感情に作用するような異常は無かったし。・・・悲しみを克服したいんやったら現実と向き合ったほうがええ。ヤイバ君はそれをずっと避けてたんやから。だから今は思いっきり泣きなさい」
クロスケはハイサーイに向くと謝った。
「すいまへんな、ハイサーイさん。暫くこの部屋をワロちゃんとヤイバ君だけにしたげてもええかな?」
「うむ、そうじゃな・・・」
同情する顔でヤイバを見ていたハイサーイは頷くとクロスケと共に部屋から出ていった。
クロスケが部屋を出ると中からヤイバの声が聞こえてくる。
「ううう・・・タスネさん・・・ダンティラスさん・・・・。寂しいよ・・・。さよならの言葉も無しに・・・逝ってしまった・・・何故あの時、僕は二人を助けられなかったんだ・・・何故・・・。くそ!くそ!くそぉぉぉ!!!」
ノームの機械がゴウゴウと作動する音と共に、暫くの間ヤイバが床を激しく叩く音が響いていた。
悔恨と嗚咽の交じるヤイバの声にクロスケはただ黙って目を閉じ、彼がこの試練を乗り越えることを祈った。
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