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禁断の箱庭と融合する前の世界(118)
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マサヨは暗闇の中で自分に何者かが覆いかぶさっている事に気がついて目が覚めた。
寝間着の上から股間に硬い何かがグリグリと押し付けられている。ゾワワと全身に悪寒が走り叫んだ。
「クロスケ!この部屋になんかいるぞ!このままだと俺、犯されちゃう!やばいやばい!童貞は捨てたけど処女は捨ててねぇから!怖い!助けて!」
覆いかぶさる何かを払いのけて、股間に当たる硬い何かから体を離すとベッドから転げ落ちた。
「何一人で暴れてはるんですか?マサヨちゃん」
「へ?」
自分に覆いかぶさっていたのは、あの少し生臭い人形だったのだ。股間に当たる固いものはモップの柄であった。
「部屋の掃除の途中で飽きてベッドに寝転び、あのコピー人形をマジマジと見つめてる内にマサヨちゃんはグースカ眠ってはりましたけど?」
「え?まじか?魔法少女まじかるマジカ?」
「まじかるマジでっせ」
二人がつまらない駄洒落を言っている間に、コピー人形がムクムクと大きくなってマサヨに変身した。
「わぁ!なんだこれ!」
「え?知らなかったんですか?ワイ、今コピー人形って言いましたやん。鼻の所に自分の遺伝子情報・・・手垢とかを擦り付けると自分と全く同じの人形が出来るんですわ。動きませんけど」
その時、ドアがドシンドシンとノックされた。
「ゲェー!このノックの仕方はスカーだ!」
「はいるぞ~、マサヨちゃーん。君の愛しいスカーがお帰りですよー」
マサヨに一目惚れしているスカーは返事も待たずに部屋に入ってきた。そしてベッドの上にもう一人マサヨがいることに驚いた。
「おいおい!どういうこった!俺がリザードマンと戦っている間にマサヨちゃんが二人になってるじゃないか!」
「それは人形だぞ。鼻に手垢を擦り付けると自分そっくりの人形になるんだってさ」
「これが人形・・・?人形にしては肌の質感とか造形がリアル過ぎるだろう。あ!俺良い事考えた!この人形借りて行くぜぇ!」
そう言ってスカーは人形を抱えると部屋から出ていった。
「あいつ、アホだからな~。どうせ自分のコピーで、影分身の術!とか言って皆を驚かせる気なんだろ・・・。まぁスカーの口説きは長いし、うっとおしいから去ってくれてありがたいけど。ホッホッホ」
一時間後、真面目な顔をしたスカーが人形を返しに来た。
「実に楽しめたよ。ありがとうマサヨくん」
耐水性のあるゴワゴワした布に包まれた人形をベッドに置いて、スカーは余所余所しい態度でお礼を言うと去っていった。
「ん・・・えらいあっさりと去って行ったな。スンスン・・・何だこの栗の花のような匂いは・・・。おい・・・俺はこの匂いを知ってるぞ・・・。そして全てを悟ったようなスカーのあの顔・・・!ままままま、まさか!」
布をめくるとそこには、生臭い何かの汁に塗れたマサヨ人形が裸で横たわっていた。
「おえぇぇぇ!くっさ!ダメダメ!こんなの見せられない。PTAから苦情が来ちゃうって!クロスケ、モザイクかけといて!」
「なんやねんな~もう~。さっさと鼻をもう一度擦ればいいでしょうに~」
と言いつつもホログラムでマサヨ人形にモザイクをかける。
「鼻にも白濁液が付いてるんだよ!触りたくねぇよ!」
「なんですの~。も~。白濁液って言い方~。あ、そのマサヨ人形は受精してまっせ。はよ人形に戻さへんとスカーとの子供が出来ますよってに」
「あんんのぉ糞オーガがぁ!俺の処女を奪った上に孕ませやがって!」
怒りでスカーの体液が付いているのも忘れて人形の鼻を擦ると、マサヨ人形は唯の汁塗れ人形へと戻っていった。
手についた汁をクロスケに擦り付けて拭い、マサヨは魔法の長杖を持って一階に降りていった。
「くぉら!スカー!てめぇぇぇ!」
勢い良く酒場兼喫茶店の扉を開けると、仕事のない日は一日中一階で飲んだくれているスカーが今日はいなかった。
そこには午後のコーヒーを楽しむ紳士淑女の亜人達が寛いでおり、のんびりとした時間が流れている。
癒やしの一時を邪魔した事に気まずくなったマサヨは声を潜めてクロスケを誘った。
「あいつ逃げやがったな!追いかけるぞ!クロスケ!」
「え~、ワイもでっか~?」
「手伝ってくれたら、鳥獣戦隊ギガレンジャイの幻の最終回の内容を教えてやってもいいんだがぁ?」
その報酬を聞いてクロスケの目が本気になり、どことなく男前のように見える。
「行きましょう!マサヨさん!スカーはミト湖に向かってるようでっせ!」
スカーは全てを悟ったような賢者モードで森の中を歩いていた。
「ふう。森はいつ来ても清々しいな。まるで今の俺の心のようだ。ハハハ!鳥さん、ごきげんよう!オーガも時にはミト湖などを眺めて癒やされたいのです。うふふふ」
しかし、心の中では思う。
(今頃マサヨは怒り狂っているだろうな。嫌われたかもしれない。けど仕方なかったんだ。戦場で暴れると数日間は興奮して女が抱きたくなる。いや・・・いつも女は抱きたいけどよ。んー、勘弁な、勘弁。テヘッ!)
「ぉぉぉぉぉぉおおおおおお!」
背後から雄叫びが聞こえる。よく判らないムカデの様な生き物に乗ったマサヨが凄い速さで追いかけてきた。直ぐ横をクロスケが並走している。
「ヒエッ!」
あまりの気迫に歴戦の戦士であるスカーもたじろいだ。正直、今まで下位の星のオーガだと舐めていた部分があったのだ。しかし、今のマサヨは殺気を放っており、猛スピードで接近して来る。
「インプ達!やっておしまい!」
マサヨはそう言うと地面で魔法陣が光り、そこから大量のインプ達がわらわらと現れた。小さな村なら簡単に廃墟に出来そうな数である。
「アラホラサッサー!」
インプ達はそう言って敬礼すると、パタパタと羽を動かしてスカーに群がった。
「どわっ!ぎゃぁぁ!くすぐるな!こそばい!ギャハハハ!」
群がったインプ達はスカーの体を手でくすぐっている。スカーが暴れると飛んで逃げ、また蝿のごとく群がる。
「どぅ~だ!どぅだどぅだ!下手に攻撃されるより苦しいだろう!」
マサヨは畳ムカデの上で腕を組んでドヤ顔をしていた。どういう仕組みなのか頭の白いリボンがピコピコと激しく動いている。
「ま、参りました!許してください!マサヨ様!ギャハー!」
「よし!いいぞ!インプ達!下がれ!」
「アイ!」
インプ達は敬礼をしながら薄っすらと消えていく。用事が済んだので自分たちの世界へと帰っていったのだ。
インプ達の去った後には、スカーが土下座して縮こまっていた。
「おイタしてすみませんでした、マサヨ様」
「おイタどころじゃないでしょうが!俺の人形にあんないやらしい事をして!あの人形はな、本人と全く同じように作用するんだぞ!つまり、あんなに汁塗れになるほどやったら人形とはいっても妊娠するのでつよ!妊娠!」
「ごめりんこ」
マサヨは軽い態度のスカーの頭を杖でポカリと殴った。
「中出ししといてその態度は何事かーーっ!」
「アダ!俺ばっかりが悪いわけじゃないだろ!マサヨが可愛い過ぎるのが悪いんだよ!」
「え、私が・・・可愛い?うふふ!やだ恥ずかしい!って誤魔化されるか馬鹿!俺はついこないだまでキモオタデブニートだったんだぞ!だからお前の男としての気持ちは解るが、それでもドン引きですわーーー!アホ!」
「でもあれ、人形だし。いいじゃねぇかよ。イヒヒヒ!」
「限りなく俺に近い人形だけどな!クズ過ぎるぞスカー。お前は優しいし、面倒見も良いし、ムードメーカーだしで良いところも多いけど、こと女の事となると、とんでもないクズになるよな?女達もそれを察知するからお前はモテないんでつよ!ちょっとは真面目なベンキの爪の垢でも煎じて飲んだらどうでつか!え?バカタレ!」
「ベンキはああ見えて女装癖のある変わり者だぞ」
「えっ!そうなの?」
「そうそう」
「おっと!ベンキの事はどうでもいい!大体スカーはな!」
二人がやいのやいの言い争っている後ろで、クロスケが何かを発見した。
「前方十メートル先の茂みに地走り族の反応有り」
スカーとマサヨは言い争いをピタリと止めて、直ぐに警戒しながら茂みに近づく。
「誰だ!出てこい!」
「両手を上げてな!」
すると首に薄っすらと傷のあるレンジャーらしき地走り族の男が両手を上げて出てきた。
よく見ると服は血塗れで土などで汚れている。手の装着式クロスボウは壊れてボロボロだ。
「何だ?何があった?その酷い格好はどうした?」
「・・・」
地走り族は答えない。
その時クロスケにカプリコンから連絡が入った。
「お久しぶりですカプリコンさん。え?ふんふん。なんやて!」
「どったの?クロスケ」
「その地走り族は先のリザードマンの乱を裏で操っていた極悪人やて!名前はホッフでっせ!」
スカーは戦場にこそいたが、平野で戦っていたので神殿にいたホッフを見ていないし、一傭兵なので帝国騎士団長達が集まる会議にも参加はしていない。悪い地走り族がいて暗黒騎士にトドメを刺されたという情報しか知らないのだ。
更にカプリコンから情報を貰うクロスケは頷いている。
「ふむふむ、なるほどな~。地球の悪人が幻体を操って原住民と接触してたんか。惑星ヒジリに許可なく侵入した地球人と関わりのあった者は悪人だろうが何だろうが元の状態に戻すっていう法律があるんやな。そやからホッフを生き返らせたんやて。で、彼は死体安置所から逃げ出してきたんや」
「へー。じゃあ君・・・え~と・・名前は確か・・・ホッフ君・・・だっけ?」
マサヨシだった頃にエポ村で反貴族の考えを掲げて扇動した若者の中にこの男がいた事を憶えていたが、マサヨはとぼけた。
「今しがた名前を聞いたでしょうが。光の速さで記憶が明日へダッシュしてるんかいな?マサヨちゃんは」
クロスケのツッコミをマサヨは無視する。
「フッフ君。君はもう一生逃げられないな。上空から常にカプリコンに監視されているんだから」
「ホッフな。今さっきホッフ君って言ったやん?」
クロスケとマサヨのじゃれ合いに参加せず、スカーが何時になく真面目な顔でホッフの両肩を掴んで捕まえた。
「つまりマサヨちゃんは神様には逆らえないって言ってんだ。大人しく砦の戦士ギルドまで来い。帝国の役人が来るまで牢屋に入っていてもらうぞ」
「え?スカーって逮捕権限あるの?」
「ああ、あるぞ?平時の俺たちゃゴデの街の警察官だ。砦の戦士の下っ端ほど辺境の村や町に配置されるけど、俺みたいな幹部になるとゴデの街にいられる」
「その割にお前、いっつも酒場で飲んだくれてるじゃん!」
「俺らみたいな役職にある者はあくせく働かなくていいんだぜ?見回りとかはギルドの新米や平の仕事」
「ええー。それ、あの樹族のズルムケ禿の執政官に見つかったら絶対アウトでそ。ゲルシは元拷問官だぞ。バレたら拷問されまつよ、きっと。オフフ!」
「バレないようにすっから平気だって」
グランデモニウム王国の執政を任されているゲルシが、十年以上前に砦の戦士達に警察権限を与えたのだ。
元々砦の戦士ギルドは、侵入経路にされやすい迷いの雪原で帝国の侵略を睨んで長年砦で目を光らせていた。
が、砦の戦士の一員でもあったヒジリが皇帝になることでその必要性が無くなり、不便な雪原砦を捨てゴデの街に住み着いたのだ。
ゲルシはゴデの街にいる砦の戦士たちを放置しておくと争いごとばかり起こしそうだと予想し、彼らを体制側に取り込んだのである。
それは功を奏し、トラブルや争い事の好きな砦の戦士達は街道の見回りをして厄介な魔物を遠ざけ、街では犯罪に目を光らせ歯向かう者は力でねじ伏せた。
今やゴデの街に犯罪者ギルドはない。暗殺者や盗賊による犯罪は激減した。ここ数年の爆発的な観光客の増加は砦の戦士ギルドのお陰と言える。
ホッフは観念したのか、抵抗する事無く項垂れた。死体安置所から逃げ出したものの、神に見放された事がショックだったのか抗う気力を失っているように見える
スカーに雑に抱えられると、ホッフは大人しくゴデの街まで同行した。
オーガ酒場の地下室にある取調室からツィガル帝国の取調官のオークと共に出てきたシルビィは疲弊した様子で一階に上がり、喫茶店兼酒場のドアを開けて近くのテーブルに座った。
帝国の取調官は直ぐに報告する為にオーガ酒場から出て馬車に乗って帰っていった。
気まぐれに店の手伝いをしていたマサヨがコーヒーを淹れて出すと、彼女を給仕だと思ったシルビィは「うむ、ありがとう」と言って温かいコーヒーを口に運ぶ。
「やはりここのコーヒーは美味いな。ゴブリンが丁寧に育てた豆を新鮮な内に味わえるのだから。なんでも揃うアルケディアでも、これほどまでに香りのよいコーヒーは味わえないだろう。贅沢な事だ」
「ところでホッフからは何を聞き出せたのでつか?騎士殿?」
(何だこの馴れ馴れしい給仕は、一般人に国家規模の情報を教えるわけなかろう。ホッフは国を跨いで罪を犯した大罪人なのだぞ)
そう心の中で呟き給仕係を無視して、赤い髪の生えた頭を掻きむしった。
(くそ!時間がない。こんな時どうすればいいんだ。教えてくれダーリン・・・。エルダーリッチの巻物は旧魔法院にしっかりと保管してあったぞ・・・。あんな危険な巻物が複数存在するというのか?)
「なんや~コウメちゃんおらんのかいな」
コウメやウメボシと同じ種だと言われている黒いイービルアイが店のドアから入ってきてフヨフヨと飛んできた。
シルビィに質問をスルーされたのでマサヨは少し苛立ってクロスケに当たる。
「スキャニングすれば直ぐに解るだろ、アホ助」
「ワイはな、マサヨちゃん。何でもかんでも科学技術に頼るんは好きやないんや。スキャニングしたら突然の出会いによる驚きがなくなるやろ」
何だこのオーガとイービルアイは。まるでダーリンとウメボシみたいな事を言っているじゃないか。
「もしかして君は、星のオーガなのか?」
「そうでぃす」
「なんだチミは!」
「そうでぃす、わたしが・・・だっふんだ!」
マサヨが返事をするとクロスケが割り込んできて訳の分からない掛け合いを始めたので、シルビィは何だコイツらはという目で見つめる。
(なんだか判らんが、軽いなこいつら。本当に星のオーガなのか?)
シルビィは試しに無詠唱の【眠れ】の魔法をマサヨに放ってみた。
ヒジリを見てきた彼女は思う。
星のオーガは魔法を霧散させると決っている。眠ったり、レジストする素振りを見せれば彼女は嘘をついていることになる。実に簡単な確認方法だ。
「うっ!」
マサヨは小さく呻いてよろめいた。
(ほら、見ろ。やはり彼女は偽者だった)
シルビィは鼻で笑おうとしたが彼女は別に魔法でそうなったわけではなかった。
「やっべー、一口ゲロが出そうになった。さっきケーキ食いまくったから」
「もぉ~!汚いなぁ!」
空中からハリセンが現れ、マサヨの頭を叩いて消えた。
「おい!今叩いたら一口どころじゃないゲロが溢れ出るぞ!」
「もーーー、ええかげんにしなはれ!」
結局シルビィの【眠れ】ではいまいち判別出来なかった。眠れは対策が容易で常にレジスト率を上げる装備を付けている者も少なくない。
(もう少し解りやすい魔法の方が良かったな。【火球】あたりか?)
詠唱を開始したその時、イービルアイがギュルンと回転してシルビィを見る。
「騎士様、止めなはれ。それ以上やったらマサヨちゃんへの敵対行為と見なしまっせ。マサヨちゃんは別にマスターやないけどな、何も悪さをしてない他人に断り無く魔法をぶつけるのは失礼な行為やろ?」
シルビィは戸惑う。何故こちらの行動が筒抜けなのか。詠唱の声も構えも最小限にしたはずだし、ウメボシと同じ種のイービルアイならば魔法は見えないはず。息子のヌリの使い魔であるコウメもそうなのだから。
「す、すまない。彼女が本当に星のオーガなのか気になって確かめてみたかったのだ。どうして君は私の魔法が解ったんだ?」
「ワイには魔法は見えんけど、動作で解るんや。魔法を唱える時のメイジの動作パターンは全部頭に入ってるよってに。触媒を持つ、手でサインを組む、詠唱の囁き声。ワイはそういうの結構しっかり見て学習しております」
ウメボシと違ってこの黒いイービルアイは洞察力が鋭い。ウメボシもヒジリの知恵袋的存在で鋭い指摘をしてくるが、どこかポワっとした雰囲気を持っており、知識を詰め込むのを好むが魔法の動作についてはあまり興味を持っていなかった。
シルビィはそれを魔法が見えない生まれつきのものから来るのだと思っていたが、目の前の黒いイービルアイは見えなくともしっかりと魔法を認識して対処してくる。
シルビィの行動にマサヨは何だそんな事かという感じで肩をすくめた。
「俺が本物かどうか確かめたかったのか。いいですぞ、魔法を撃ってきても」
「・・・いや、止めておこう。そこまで自信が有るなら信じよう。ところでマサヨとか言ったか?君は冒険者か?」
壁に掛かる冒険者用の掲示板を見てシルビィは言う。
掲示板の功績ランキングには思い出の石板が掛かっており、上位五位までの冒険者の顔が映っていた。
その五位にマサヨがアヘ顔ダブルピースをしているので、それを見たシルビィは彼女が冒険者だと思ったのだ。
「冒険者っていうか・・・暇な時に簡単な依頼なら受けてるけど。五位になったのはホッフを発見して逮捕を手伝ったからな。まぁ発見したのはクロスケで捕まえたのはスカーだけど。でも何故か俺も臨時報酬が貰えたんよ。タナボタ!メシウマ!」
「そ、そうか・・・。実は君をヒジリと同じ星のオーガと見込んで頼みがあるんだが」
「ヒジリ・・・。嫌な名前だな・・・。俺は彼とはいい思い出がない。依頼は断る!ギルティ!」
「(ダーリンの知り合いなのか?)ちょっと待ってくれ!話を聞いてからでもいいだろう
「聞くだけだからな」
マサヨはリボンを弄ったり、毛先の枝毛を気にしたりして興味無さそうに返事をした。
「実はな・・・君達が捕まえたホッフが言うには、樹族国の何処かにエルダーリッチの巻物を隠しているという話なんだ。その巻物を所持するウィザードはホッフが一定期間会わないでいると巻物を開いてエルダーリッチを召喚してしまう催眠術がかけられているらしい」
「だったらそのウィザードを探せばいいじゃん(ゲェー!その巻物って絶対俺が持ってたやつじゃん。黙っておこう)」
「樹族国にどれだけウィザードがいると思ってるんだ?ウン百人だぞ?操られている自覚のないウィザード達の部屋を探している間に巻物が開かれてしまうだろう。しかも明後日には開くとホッフは言っている」
「拷問かなんかで巻物の場所とウィザードの名前を無理やり聞き出せばいいだろ」
「残念ながら帝国ではヒジリ元皇帝が拷問の類を禁じている」
「アキラメロン。もう運命だと思って受け入れて樹族国を捨てなさい」
「馬鹿な!君は一応神なんだろう?何故人々を見捨てるような事を言うのだ!」
「だって星のオーガつったってなぁ・・・。俺はヒジリみたいにスーパーマンじゃないですし、おスシ」
渋るマサヨは早くこの場を去りたいと考えていると、チリンと音がして店に誰かが入ってくる。
アンテナかなにかの役目でもしているのかとツッコミたくなるような上に伸びる金色の三つ編みが視界に入った。
「おやおや?これはこれは!エルダーリッチの巻物を盗まれて、知らぬ存ぜぬを決め込んでいるマサヨさんじゃあーりませんか」
最悪なタイミングでどら声がそう言う。
(くっそ!コロネちゃんめ~!)
すぐにシルビィの頭の中で、今探しているエルダーリッチの巻物とコロネの言う巻物は線で結ばれる。
「なんだ・・と?どういう事だ?コロネ」
吸魔鬼によく間違えられる赤い瞳でコロネを見つめていると、後ろからはシルビィが何処かで見たことのあるようなオークが入ってくる。
「久し振りに会ったら、女になってたとはな。笑えるじゃねぇかマサヨシ」
「ホゲェ!デイ!何しに来た!」
「何しに来たって・・・お前の尻拭いだよ!たまたまコーヒーを飲もうとこの店に入ったら巻物を盗んだ犯人の匂いがしたんだ。オークの嗅覚舐めるなよ?」
「あーそれな。巻物を盗んだのはホッフとかいう地走り族だ。樹族国の何処かに隠してるみたいだぜ?明後日にはどこぞのウィザードが開いてエルダーリッチを召喚してしまうんだってさ」
「何他人事みたいに言ってんだ?エルダーリッチが樹族国だけ破壊して終わると思うか?大昔の話じゃあ被害は周辺国にも及んだっていうぞ。俺達の蒔いた種だ。なんとかしねぇといかんだろ!」
「カァー!最初は”帝国を手中に収める事が出来なかったら全てを破壊してやるぜ、ドヘヘヘ“って笑ってたお前がそれ言うのかよ!」
「お前も似たようなもんだったろ!俺は何としても歴史の表舞台に返り咲きてぇんだよ。エルダーリッチなんかに邪魔されてたまるか!」
シルビィがドン!と机を叩いて怒鳴る。
「ではあの巻物の発端はお前たちだということか!」
「ああ、そうだ!俺たちゃ、あん時はやさぐれてたんだ!弱肉強食の世界で敗者となり、ヒジリを嫉み、世を憎み、幸せそうに暮らす人々に苛立ち!それの何が悪い!人なら誰だってそういう時があるだろうが!でもそれがトンデモねぇ事だと気がついたからこそ、こうやって巻物を探してんだよ!なんか文句あるか!」
開き直って逆ギレするデイにマサヨは大して同調はしていなかった。
(俺の場合、そこまで事情が深くねぇんだよなぁ。ヒジリに仕返し出来りゃあ良いと思って面白半分、遊び半分だったし。あの巻物だって急に目の前に現れたしな。でも・・・)
「俺もさ、何だかんだで守りたい人がいるし、これまで触れ合った人々と絆みたいなのが出来ちゃったからさ、やっぱ巻物探し手伝うわ。へへへ(なんか死にフラグっぽいセリフ)」
鼻の下を擦って照れるマサヨを見てクロスケも頷いている。
「そやな、マサヨちゃん。自分のお尻は自分の手で拭くのが当たり前の事ですわ」
三人が何やらほんわかした空気に浸っている中、シルビィは渋い顔を崩さない。
「俺達は改心した良い人なんだ!、的なアピールをお前らはしているが、自分の尻拭いをした程度でチャラになると思うなよ?一応国家転覆罪未遂で牢屋にぶち込んでやってもいいのだからな?しかしまぁ・・・お前らの働き如何によっては無罪にしてやってもいい。私にはその権限がある。牢屋の中で腐りかけの不味い飯を食いたくなければ精々頑張るのだな」
「おぎょっ!」
マサヨはシルビィの言葉で頭を殴られたかの如く首を引っ込めて、ふーとため息をつく。
「へいへい。頑張りますよ。クロスケ、頼りにしてるぜ?」
「え?何でワイが?」
「頼れるのはクロちゃんしかいないんだよぉ~。頼むよぉ~」
クロスケを掴むとマサヨは胸の谷間に押し付けた。
「ワワワー!まぁ出来ることはしてあげますけど、何しまひょ?」
「恐らく巻物にはホッフの手垢が付いているはず。それを手がかりにして巻物を見つけて欲しいんだ」
「ここらからだと、カプリコンさんに頼まんと無理ですわ、距離が有りすぎて。少し待ってや・・・。うぉ!アカンねんて。これに関しては地球政府から許可が下りんかったってさ。ほな今から急いでアルケディアいきましょか」
「そうすっか」
「おい、コーヒーぐらい飲ませてくれ!」
良い香りのするコーヒを今丁度出されたデイは一口飲もうとしたが、シルビィに首根っこを掴まれて引きずられた。
「そんな悠長な時間があるか!バカ者!ほら、行くぞ!」
「くっそー!俺のベンティアドショットヘーゼルナッツバニラアーモンドキャラメルエキストラホイップキャラメル ソースモカソースランバチップチョコレートクリームフラペチーノがぁぁぁ!」
店の客達は、遠ざかるオークの叫び声を聞いてほくそ笑んだ。また静かな一時が戻ってきたと。
寝間着の上から股間に硬い何かがグリグリと押し付けられている。ゾワワと全身に悪寒が走り叫んだ。
「クロスケ!この部屋になんかいるぞ!このままだと俺、犯されちゃう!やばいやばい!童貞は捨てたけど処女は捨ててねぇから!怖い!助けて!」
覆いかぶさる何かを払いのけて、股間に当たる硬い何かから体を離すとベッドから転げ落ちた。
「何一人で暴れてはるんですか?マサヨちゃん」
「へ?」
自分に覆いかぶさっていたのは、あの少し生臭い人形だったのだ。股間に当たる固いものはモップの柄であった。
「部屋の掃除の途中で飽きてベッドに寝転び、あのコピー人形をマジマジと見つめてる内にマサヨちゃんはグースカ眠ってはりましたけど?」
「え?まじか?魔法少女まじかるマジカ?」
「まじかるマジでっせ」
二人がつまらない駄洒落を言っている間に、コピー人形がムクムクと大きくなってマサヨに変身した。
「わぁ!なんだこれ!」
「え?知らなかったんですか?ワイ、今コピー人形って言いましたやん。鼻の所に自分の遺伝子情報・・・手垢とかを擦り付けると自分と全く同じの人形が出来るんですわ。動きませんけど」
その時、ドアがドシンドシンとノックされた。
「ゲェー!このノックの仕方はスカーだ!」
「はいるぞ~、マサヨちゃーん。君の愛しいスカーがお帰りですよー」
マサヨに一目惚れしているスカーは返事も待たずに部屋に入ってきた。そしてベッドの上にもう一人マサヨがいることに驚いた。
「おいおい!どういうこった!俺がリザードマンと戦っている間にマサヨちゃんが二人になってるじゃないか!」
「それは人形だぞ。鼻に手垢を擦り付けると自分そっくりの人形になるんだってさ」
「これが人形・・・?人形にしては肌の質感とか造形がリアル過ぎるだろう。あ!俺良い事考えた!この人形借りて行くぜぇ!」
そう言ってスカーは人形を抱えると部屋から出ていった。
「あいつ、アホだからな~。どうせ自分のコピーで、影分身の術!とか言って皆を驚かせる気なんだろ・・・。まぁスカーの口説きは長いし、うっとおしいから去ってくれてありがたいけど。ホッホッホ」
一時間後、真面目な顔をしたスカーが人形を返しに来た。
「実に楽しめたよ。ありがとうマサヨくん」
耐水性のあるゴワゴワした布に包まれた人形をベッドに置いて、スカーは余所余所しい態度でお礼を言うと去っていった。
「ん・・・えらいあっさりと去って行ったな。スンスン・・・何だこの栗の花のような匂いは・・・。おい・・・俺はこの匂いを知ってるぞ・・・。そして全てを悟ったようなスカーのあの顔・・・!ままままま、まさか!」
布をめくるとそこには、生臭い何かの汁に塗れたマサヨ人形が裸で横たわっていた。
「おえぇぇぇ!くっさ!ダメダメ!こんなの見せられない。PTAから苦情が来ちゃうって!クロスケ、モザイクかけといて!」
「なんやねんな~もう~。さっさと鼻をもう一度擦ればいいでしょうに~」
と言いつつもホログラムでマサヨ人形にモザイクをかける。
「鼻にも白濁液が付いてるんだよ!触りたくねぇよ!」
「なんですの~。も~。白濁液って言い方~。あ、そのマサヨ人形は受精してまっせ。はよ人形に戻さへんとスカーとの子供が出来ますよってに」
「あんんのぉ糞オーガがぁ!俺の処女を奪った上に孕ませやがって!」
怒りでスカーの体液が付いているのも忘れて人形の鼻を擦ると、マサヨ人形は唯の汁塗れ人形へと戻っていった。
手についた汁をクロスケに擦り付けて拭い、マサヨは魔法の長杖を持って一階に降りていった。
「くぉら!スカー!てめぇぇぇ!」
勢い良く酒場兼喫茶店の扉を開けると、仕事のない日は一日中一階で飲んだくれているスカーが今日はいなかった。
そこには午後のコーヒーを楽しむ紳士淑女の亜人達が寛いでおり、のんびりとした時間が流れている。
癒やしの一時を邪魔した事に気まずくなったマサヨは声を潜めてクロスケを誘った。
「あいつ逃げやがったな!追いかけるぞ!クロスケ!」
「え~、ワイもでっか~?」
「手伝ってくれたら、鳥獣戦隊ギガレンジャイの幻の最終回の内容を教えてやってもいいんだがぁ?」
その報酬を聞いてクロスケの目が本気になり、どことなく男前のように見える。
「行きましょう!マサヨさん!スカーはミト湖に向かってるようでっせ!」
スカーは全てを悟ったような賢者モードで森の中を歩いていた。
「ふう。森はいつ来ても清々しいな。まるで今の俺の心のようだ。ハハハ!鳥さん、ごきげんよう!オーガも時にはミト湖などを眺めて癒やされたいのです。うふふふ」
しかし、心の中では思う。
(今頃マサヨは怒り狂っているだろうな。嫌われたかもしれない。けど仕方なかったんだ。戦場で暴れると数日間は興奮して女が抱きたくなる。いや・・・いつも女は抱きたいけどよ。んー、勘弁な、勘弁。テヘッ!)
「ぉぉぉぉぉぉおおおおおお!」
背後から雄叫びが聞こえる。よく判らないムカデの様な生き物に乗ったマサヨが凄い速さで追いかけてきた。直ぐ横をクロスケが並走している。
「ヒエッ!」
あまりの気迫に歴戦の戦士であるスカーもたじろいだ。正直、今まで下位の星のオーガだと舐めていた部分があったのだ。しかし、今のマサヨは殺気を放っており、猛スピードで接近して来る。
「インプ達!やっておしまい!」
マサヨはそう言うと地面で魔法陣が光り、そこから大量のインプ達がわらわらと現れた。小さな村なら簡単に廃墟に出来そうな数である。
「アラホラサッサー!」
インプ達はそう言って敬礼すると、パタパタと羽を動かしてスカーに群がった。
「どわっ!ぎゃぁぁ!くすぐるな!こそばい!ギャハハハ!」
群がったインプ達はスカーの体を手でくすぐっている。スカーが暴れると飛んで逃げ、また蝿のごとく群がる。
「どぅ~だ!どぅだどぅだ!下手に攻撃されるより苦しいだろう!」
マサヨは畳ムカデの上で腕を組んでドヤ顔をしていた。どういう仕組みなのか頭の白いリボンがピコピコと激しく動いている。
「ま、参りました!許してください!マサヨ様!ギャハー!」
「よし!いいぞ!インプ達!下がれ!」
「アイ!」
インプ達は敬礼をしながら薄っすらと消えていく。用事が済んだので自分たちの世界へと帰っていったのだ。
インプ達の去った後には、スカーが土下座して縮こまっていた。
「おイタしてすみませんでした、マサヨ様」
「おイタどころじゃないでしょうが!俺の人形にあんないやらしい事をして!あの人形はな、本人と全く同じように作用するんだぞ!つまり、あんなに汁塗れになるほどやったら人形とはいっても妊娠するのでつよ!妊娠!」
「ごめりんこ」
マサヨは軽い態度のスカーの頭を杖でポカリと殴った。
「中出ししといてその態度は何事かーーっ!」
「アダ!俺ばっかりが悪いわけじゃないだろ!マサヨが可愛い過ぎるのが悪いんだよ!」
「え、私が・・・可愛い?うふふ!やだ恥ずかしい!って誤魔化されるか馬鹿!俺はついこないだまでキモオタデブニートだったんだぞ!だからお前の男としての気持ちは解るが、それでもドン引きですわーーー!アホ!」
「でもあれ、人形だし。いいじゃねぇかよ。イヒヒヒ!」
「限りなく俺に近い人形だけどな!クズ過ぎるぞスカー。お前は優しいし、面倒見も良いし、ムードメーカーだしで良いところも多いけど、こと女の事となると、とんでもないクズになるよな?女達もそれを察知するからお前はモテないんでつよ!ちょっとは真面目なベンキの爪の垢でも煎じて飲んだらどうでつか!え?バカタレ!」
「ベンキはああ見えて女装癖のある変わり者だぞ」
「えっ!そうなの?」
「そうそう」
「おっと!ベンキの事はどうでもいい!大体スカーはな!」
二人がやいのやいの言い争っている後ろで、クロスケが何かを発見した。
「前方十メートル先の茂みに地走り族の反応有り」
スカーとマサヨは言い争いをピタリと止めて、直ぐに警戒しながら茂みに近づく。
「誰だ!出てこい!」
「両手を上げてな!」
すると首に薄っすらと傷のあるレンジャーらしき地走り族の男が両手を上げて出てきた。
よく見ると服は血塗れで土などで汚れている。手の装着式クロスボウは壊れてボロボロだ。
「何だ?何があった?その酷い格好はどうした?」
「・・・」
地走り族は答えない。
その時クロスケにカプリコンから連絡が入った。
「お久しぶりですカプリコンさん。え?ふんふん。なんやて!」
「どったの?クロスケ」
「その地走り族は先のリザードマンの乱を裏で操っていた極悪人やて!名前はホッフでっせ!」
スカーは戦場にこそいたが、平野で戦っていたので神殿にいたホッフを見ていないし、一傭兵なので帝国騎士団長達が集まる会議にも参加はしていない。悪い地走り族がいて暗黒騎士にトドメを刺されたという情報しか知らないのだ。
更にカプリコンから情報を貰うクロスケは頷いている。
「ふむふむ、なるほどな~。地球の悪人が幻体を操って原住民と接触してたんか。惑星ヒジリに許可なく侵入した地球人と関わりのあった者は悪人だろうが何だろうが元の状態に戻すっていう法律があるんやな。そやからホッフを生き返らせたんやて。で、彼は死体安置所から逃げ出してきたんや」
「へー。じゃあ君・・・え~と・・名前は確か・・・ホッフ君・・・だっけ?」
マサヨシだった頃にエポ村で反貴族の考えを掲げて扇動した若者の中にこの男がいた事を憶えていたが、マサヨはとぼけた。
「今しがた名前を聞いたでしょうが。光の速さで記憶が明日へダッシュしてるんかいな?マサヨちゃんは」
クロスケのツッコミをマサヨは無視する。
「フッフ君。君はもう一生逃げられないな。上空から常にカプリコンに監視されているんだから」
「ホッフな。今さっきホッフ君って言ったやん?」
クロスケとマサヨのじゃれ合いに参加せず、スカーが何時になく真面目な顔でホッフの両肩を掴んで捕まえた。
「つまりマサヨちゃんは神様には逆らえないって言ってんだ。大人しく砦の戦士ギルドまで来い。帝国の役人が来るまで牢屋に入っていてもらうぞ」
「え?スカーって逮捕権限あるの?」
「ああ、あるぞ?平時の俺たちゃゴデの街の警察官だ。砦の戦士の下っ端ほど辺境の村や町に配置されるけど、俺みたいな幹部になるとゴデの街にいられる」
「その割にお前、いっつも酒場で飲んだくれてるじゃん!」
「俺らみたいな役職にある者はあくせく働かなくていいんだぜ?見回りとかはギルドの新米や平の仕事」
「ええー。それ、あの樹族のズルムケ禿の執政官に見つかったら絶対アウトでそ。ゲルシは元拷問官だぞ。バレたら拷問されまつよ、きっと。オフフ!」
「バレないようにすっから平気だって」
グランデモニウム王国の執政を任されているゲルシが、十年以上前に砦の戦士達に警察権限を与えたのだ。
元々砦の戦士ギルドは、侵入経路にされやすい迷いの雪原で帝国の侵略を睨んで長年砦で目を光らせていた。
が、砦の戦士の一員でもあったヒジリが皇帝になることでその必要性が無くなり、不便な雪原砦を捨てゴデの街に住み着いたのだ。
ゲルシはゴデの街にいる砦の戦士たちを放置しておくと争いごとばかり起こしそうだと予想し、彼らを体制側に取り込んだのである。
それは功を奏し、トラブルや争い事の好きな砦の戦士達は街道の見回りをして厄介な魔物を遠ざけ、街では犯罪に目を光らせ歯向かう者は力でねじ伏せた。
今やゴデの街に犯罪者ギルドはない。暗殺者や盗賊による犯罪は激減した。ここ数年の爆発的な観光客の増加は砦の戦士ギルドのお陰と言える。
ホッフは観念したのか、抵抗する事無く項垂れた。死体安置所から逃げ出したものの、神に見放された事がショックだったのか抗う気力を失っているように見える
スカーに雑に抱えられると、ホッフは大人しくゴデの街まで同行した。
オーガ酒場の地下室にある取調室からツィガル帝国の取調官のオークと共に出てきたシルビィは疲弊した様子で一階に上がり、喫茶店兼酒場のドアを開けて近くのテーブルに座った。
帝国の取調官は直ぐに報告する為にオーガ酒場から出て馬車に乗って帰っていった。
気まぐれに店の手伝いをしていたマサヨがコーヒーを淹れて出すと、彼女を給仕だと思ったシルビィは「うむ、ありがとう」と言って温かいコーヒーを口に運ぶ。
「やはりここのコーヒーは美味いな。ゴブリンが丁寧に育てた豆を新鮮な内に味わえるのだから。なんでも揃うアルケディアでも、これほどまでに香りのよいコーヒーは味わえないだろう。贅沢な事だ」
「ところでホッフからは何を聞き出せたのでつか?騎士殿?」
(何だこの馴れ馴れしい給仕は、一般人に国家規模の情報を教えるわけなかろう。ホッフは国を跨いで罪を犯した大罪人なのだぞ)
そう心の中で呟き給仕係を無視して、赤い髪の生えた頭を掻きむしった。
(くそ!時間がない。こんな時どうすればいいんだ。教えてくれダーリン・・・。エルダーリッチの巻物は旧魔法院にしっかりと保管してあったぞ・・・。あんな危険な巻物が複数存在するというのか?)
「なんや~コウメちゃんおらんのかいな」
コウメやウメボシと同じ種だと言われている黒いイービルアイが店のドアから入ってきてフヨフヨと飛んできた。
シルビィに質問をスルーされたのでマサヨは少し苛立ってクロスケに当たる。
「スキャニングすれば直ぐに解るだろ、アホ助」
「ワイはな、マサヨちゃん。何でもかんでも科学技術に頼るんは好きやないんや。スキャニングしたら突然の出会いによる驚きがなくなるやろ」
何だこのオーガとイービルアイは。まるでダーリンとウメボシみたいな事を言っているじゃないか。
「もしかして君は、星のオーガなのか?」
「そうでぃす」
「なんだチミは!」
「そうでぃす、わたしが・・・だっふんだ!」
マサヨが返事をするとクロスケが割り込んできて訳の分からない掛け合いを始めたので、シルビィは何だコイツらはという目で見つめる。
(なんだか判らんが、軽いなこいつら。本当に星のオーガなのか?)
シルビィは試しに無詠唱の【眠れ】の魔法をマサヨに放ってみた。
ヒジリを見てきた彼女は思う。
星のオーガは魔法を霧散させると決っている。眠ったり、レジストする素振りを見せれば彼女は嘘をついていることになる。実に簡単な確認方法だ。
「うっ!」
マサヨは小さく呻いてよろめいた。
(ほら、見ろ。やはり彼女は偽者だった)
シルビィは鼻で笑おうとしたが彼女は別に魔法でそうなったわけではなかった。
「やっべー、一口ゲロが出そうになった。さっきケーキ食いまくったから」
「もぉ~!汚いなぁ!」
空中からハリセンが現れ、マサヨの頭を叩いて消えた。
「おい!今叩いたら一口どころじゃないゲロが溢れ出るぞ!」
「もーーー、ええかげんにしなはれ!」
結局シルビィの【眠れ】ではいまいち判別出来なかった。眠れは対策が容易で常にレジスト率を上げる装備を付けている者も少なくない。
(もう少し解りやすい魔法の方が良かったな。【火球】あたりか?)
詠唱を開始したその時、イービルアイがギュルンと回転してシルビィを見る。
「騎士様、止めなはれ。それ以上やったらマサヨちゃんへの敵対行為と見なしまっせ。マサヨちゃんは別にマスターやないけどな、何も悪さをしてない他人に断り無く魔法をぶつけるのは失礼な行為やろ?」
シルビィは戸惑う。何故こちらの行動が筒抜けなのか。詠唱の声も構えも最小限にしたはずだし、ウメボシと同じ種のイービルアイならば魔法は見えないはず。息子のヌリの使い魔であるコウメもそうなのだから。
「す、すまない。彼女が本当に星のオーガなのか気になって確かめてみたかったのだ。どうして君は私の魔法が解ったんだ?」
「ワイには魔法は見えんけど、動作で解るんや。魔法を唱える時のメイジの動作パターンは全部頭に入ってるよってに。触媒を持つ、手でサインを組む、詠唱の囁き声。ワイはそういうの結構しっかり見て学習しております」
ウメボシと違ってこの黒いイービルアイは洞察力が鋭い。ウメボシもヒジリの知恵袋的存在で鋭い指摘をしてくるが、どこかポワっとした雰囲気を持っており、知識を詰め込むのを好むが魔法の動作についてはあまり興味を持っていなかった。
シルビィはそれを魔法が見えない生まれつきのものから来るのだと思っていたが、目の前の黒いイービルアイは見えなくともしっかりと魔法を認識して対処してくる。
シルビィの行動にマサヨは何だそんな事かという感じで肩をすくめた。
「俺が本物かどうか確かめたかったのか。いいですぞ、魔法を撃ってきても」
「・・・いや、止めておこう。そこまで自信が有るなら信じよう。ところでマサヨとか言ったか?君は冒険者か?」
壁に掛かる冒険者用の掲示板を見てシルビィは言う。
掲示板の功績ランキングには思い出の石板が掛かっており、上位五位までの冒険者の顔が映っていた。
その五位にマサヨがアヘ顔ダブルピースをしているので、それを見たシルビィは彼女が冒険者だと思ったのだ。
「冒険者っていうか・・・暇な時に簡単な依頼なら受けてるけど。五位になったのはホッフを発見して逮捕を手伝ったからな。まぁ発見したのはクロスケで捕まえたのはスカーだけど。でも何故か俺も臨時報酬が貰えたんよ。タナボタ!メシウマ!」
「そ、そうか・・・。実は君をヒジリと同じ星のオーガと見込んで頼みがあるんだが」
「ヒジリ・・・。嫌な名前だな・・・。俺は彼とはいい思い出がない。依頼は断る!ギルティ!」
「(ダーリンの知り合いなのか?)ちょっと待ってくれ!話を聞いてからでもいいだろう
「聞くだけだからな」
マサヨはリボンを弄ったり、毛先の枝毛を気にしたりして興味無さそうに返事をした。
「実はな・・・君達が捕まえたホッフが言うには、樹族国の何処かにエルダーリッチの巻物を隠しているという話なんだ。その巻物を所持するウィザードはホッフが一定期間会わないでいると巻物を開いてエルダーリッチを召喚してしまう催眠術がかけられているらしい」
「だったらそのウィザードを探せばいいじゃん(ゲェー!その巻物って絶対俺が持ってたやつじゃん。黙っておこう)」
「樹族国にどれだけウィザードがいると思ってるんだ?ウン百人だぞ?操られている自覚のないウィザード達の部屋を探している間に巻物が開かれてしまうだろう。しかも明後日には開くとホッフは言っている」
「拷問かなんかで巻物の場所とウィザードの名前を無理やり聞き出せばいいだろ」
「残念ながら帝国ではヒジリ元皇帝が拷問の類を禁じている」
「アキラメロン。もう運命だと思って受け入れて樹族国を捨てなさい」
「馬鹿な!君は一応神なんだろう?何故人々を見捨てるような事を言うのだ!」
「だって星のオーガつったってなぁ・・・。俺はヒジリみたいにスーパーマンじゃないですし、おスシ」
渋るマサヨは早くこの場を去りたいと考えていると、チリンと音がして店に誰かが入ってくる。
アンテナかなにかの役目でもしているのかとツッコミたくなるような上に伸びる金色の三つ編みが視界に入った。
「おやおや?これはこれは!エルダーリッチの巻物を盗まれて、知らぬ存ぜぬを決め込んでいるマサヨさんじゃあーりませんか」
最悪なタイミングでどら声がそう言う。
(くっそ!コロネちゃんめ~!)
すぐにシルビィの頭の中で、今探しているエルダーリッチの巻物とコロネの言う巻物は線で結ばれる。
「なんだ・・と?どういう事だ?コロネ」
吸魔鬼によく間違えられる赤い瞳でコロネを見つめていると、後ろからはシルビィが何処かで見たことのあるようなオークが入ってくる。
「久し振りに会ったら、女になってたとはな。笑えるじゃねぇかマサヨシ」
「ホゲェ!デイ!何しに来た!」
「何しに来たって・・・お前の尻拭いだよ!たまたまコーヒーを飲もうとこの店に入ったら巻物を盗んだ犯人の匂いがしたんだ。オークの嗅覚舐めるなよ?」
「あーそれな。巻物を盗んだのはホッフとかいう地走り族だ。樹族国の何処かに隠してるみたいだぜ?明後日にはどこぞのウィザードが開いてエルダーリッチを召喚してしまうんだってさ」
「何他人事みたいに言ってんだ?エルダーリッチが樹族国だけ破壊して終わると思うか?大昔の話じゃあ被害は周辺国にも及んだっていうぞ。俺達の蒔いた種だ。なんとかしねぇといかんだろ!」
「カァー!最初は”帝国を手中に収める事が出来なかったら全てを破壊してやるぜ、ドヘヘヘ“って笑ってたお前がそれ言うのかよ!」
「お前も似たようなもんだったろ!俺は何としても歴史の表舞台に返り咲きてぇんだよ。エルダーリッチなんかに邪魔されてたまるか!」
シルビィがドン!と机を叩いて怒鳴る。
「ではあの巻物の発端はお前たちだということか!」
「ああ、そうだ!俺たちゃ、あん時はやさぐれてたんだ!弱肉強食の世界で敗者となり、ヒジリを嫉み、世を憎み、幸せそうに暮らす人々に苛立ち!それの何が悪い!人なら誰だってそういう時があるだろうが!でもそれがトンデモねぇ事だと気がついたからこそ、こうやって巻物を探してんだよ!なんか文句あるか!」
開き直って逆ギレするデイにマサヨは大して同調はしていなかった。
(俺の場合、そこまで事情が深くねぇんだよなぁ。ヒジリに仕返し出来りゃあ良いと思って面白半分、遊び半分だったし。あの巻物だって急に目の前に現れたしな。でも・・・)
「俺もさ、何だかんだで守りたい人がいるし、これまで触れ合った人々と絆みたいなのが出来ちゃったからさ、やっぱ巻物探し手伝うわ。へへへ(なんか死にフラグっぽいセリフ)」
鼻の下を擦って照れるマサヨを見てクロスケも頷いている。
「そやな、マサヨちゃん。自分のお尻は自分の手で拭くのが当たり前の事ですわ」
三人が何やらほんわかした空気に浸っている中、シルビィは渋い顔を崩さない。
「俺達は改心した良い人なんだ!、的なアピールをお前らはしているが、自分の尻拭いをした程度でチャラになると思うなよ?一応国家転覆罪未遂で牢屋にぶち込んでやってもいいのだからな?しかしまぁ・・・お前らの働き如何によっては無罪にしてやってもいい。私にはその権限がある。牢屋の中で腐りかけの不味い飯を食いたくなければ精々頑張るのだな」
「おぎょっ!」
マサヨはシルビィの言葉で頭を殴られたかの如く首を引っ込めて、ふーとため息をつく。
「へいへい。頑張りますよ。クロスケ、頼りにしてるぜ?」
「え?何でワイが?」
「頼れるのはクロちゃんしかいないんだよぉ~。頼むよぉ~」
クロスケを掴むとマサヨは胸の谷間に押し付けた。
「ワワワー!まぁ出来ることはしてあげますけど、何しまひょ?」
「恐らく巻物にはホッフの手垢が付いているはず。それを手がかりにして巻物を見つけて欲しいんだ」
「ここらからだと、カプリコンさんに頼まんと無理ですわ、距離が有りすぎて。少し待ってや・・・。うぉ!アカンねんて。これに関しては地球政府から許可が下りんかったってさ。ほな今から急いでアルケディアいきましょか」
「そうすっか」
「おい、コーヒーぐらい飲ませてくれ!」
良い香りのするコーヒを今丁度出されたデイは一口飲もうとしたが、シルビィに首根っこを掴まれて引きずられた。
「そんな悠長な時間があるか!バカ者!ほら、行くぞ!」
「くっそー!俺のベンティアドショットヘーゼルナッツバニラアーモンドキャラメルエキストラホイップキャラメル ソースモカソースランバチップチョコレートクリームフラペチーノがぁぁぁ!」
店の客達は、遠ざかるオークの叫び声を聞いてほくそ笑んだ。また静かな一時が戻ってきたと。
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