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禁断の箱庭と融合する前の世界(8)仮面の三姉妹
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ナンベルが逆手二刀流で構える短いリーチの短剣は、次々とゾンビ達の首を切り落としていった。
首を亡くしたゾンビ達は、動きを止めて棒立ちとなり無害になる。
東門の外に続く街道には、まだまだ数の減らないゾンビがいる。
そのうちの一匹が腐った手で、ナンベルを掴もうとした。
「ちょっと! やめなさいよぉ! 痴漢?」
お道化ながら短剣の柄でゾンビの顔面を叩いて砕き、後方に宙返りをする。
着地した先は、ウメボシが作った、鋭く尖った鉄の棘で出来たバリケードの後ろだ。
バリケードは根の深い岩の如く固定されている為、ナンベルを追いかけてくるゾンビ達は、次々と鉄の棘に突き刺さり動けなくなる。
突き刺さったゾンビで飽和状態となったバリケードの周りを、生者を求めてアンデッド達は彷徨った。
「ゾンビ達は、段差や障害物を越えられないとはいえ、ここももう限界に近いですねぇ。折り重なった仲間を登って東門に到達するのも時間の問題ですヨ。キュキュ」
何重にも囲むようにしてあったバリケードは、ゾンビでいっぱいになっている。
ナンベルはそのバリケードの後ろから、リズム良く指を鳴らして【闇の炎】でゾンビ達を焼き払っていく。
「はぁ・・・。それにしてもヒジリ君が来てから、黒竜が来たりゾンビの大群が来たり・・・。実はヒジリ君は疫病神なのでは? キュッキュー!」
大きな個体のオーガならば頭をぶつけそうな、左程高くも無い門の上方から、イグナが感情の無い顔を出して抗議する。
「ヒジリは関係ない」
門の裏手に建てた櫓から、黒髪の少女はそう言ってワンドを振る。
シオ男爵やシルビィ程の威力は無いが、イグナが怒って八つ当たりのように放った炎系魔法【業火】は、広範囲に燃えて、アンデッドたちを焼いていった。
「勿論ですとも。ちょっとした冗談ですよ。キュッキュー。あ、そろそろ小生は限界なので、孤児院に戻って休憩しますネ。マナの水を飲んだら直ぐに戻ってきますヨ。何本か持ってきますから、待っててね、イグナちゃん」
ナンベルは両開きの東門を手で押し開けると、疲れた素振りは見せず鼻歌を唄いながら時折タップを踏む。そして、イグナが樹族国から転移石で連れ帰ったドォスンやゴブリン達に、「後を頼みますヨ」と言って孤児院の方へ向かって歩いて行った。
が、道化師は、門近くの櫓に置いてきたイグナが心配なのか、建物の角を曲がった辺りから脚が速くなった。早くマナの水を飲んで戻って来るつもりなのだ。
同じ櫓の上から、ゴブリンのイシーはスリングで、ゾンビの頭を狙い打ちながら聞く。
「イグナさん、魔法は後何発ぐらい残っていますキャ?」
「【光の柱】が二回、【業火】が三回、【火球】が五回、【闇の炎】が一回」
ゴブリンの少女の顔に焦りが見える。
最後のバリケードを今にも超えそうなゾンビ達の勢いに対して、イグナの残り少ない魔法は心許無い。
向かいの櫓では、両親が同じ様にスリングでゾンビの頭に石を命中させているが、大して効果があるとは思えない。
門の外でドォスンが「ワハハ! 面白い」と笑いながら、ゾンビ達をバリケードの外に殴り飛ばしている。
しかしゾンビの数は圧倒的で、倒れたゾンビを乗り越え、踏み台にしてバリケードを突破して来た。
アンデッド達は、捨てられた子猫にびっしりと集るノミの様に、ドォスンに群がり噛みつきだした。
ドォスンは、いくら投げ捨てても次々と噛みついて来るゾンビに恐怖を感じて叫ぶ。
「イダイ! 噛むな! イダイ!」
イグナはすかさず【消滅】の上位版である【光の柱】を唱えると、ドォスンを中心に小さな光の柱が何本も立ち、アンデッド達を消滅させていく。バリケード内側のアンデッドは、全て光に包まれて消えていった。
「ドォスン、中に入って!」
オーガはイグナの指示に従って、直ぐに門の中に入った。
鋼のような硬い筋肉に噛み痕が沢山ついている。樹族や地走りが同じ目に遭っていれば致命傷だったが、鍛えられたドォスンの体には、歯型が付いただけで済んだ。
ドンドンドン! 段々と東門の扉を叩く音が大きくなってくる。
その門にもたれて傷を気にして、体を見ていたドォスンは慌てて閂をかけようとしたが、間に合わず、少し開いた隙間からゾンビ達の腐った顔と濁った瞳の目が見えていた。
「ドォスン! 押さえながらしゃがんで! レディ! 硬質化ネットよ!」
そう声がしたかと思うと、ドォスンの後方から蜘蛛の粘液が飛んできて、しゃがんだドォスンの頭の上で広がって門に張りつくと、鉄の金網のように硬くなりゾンビ達からの圧力を押さえこんだ。
ドォスンが退くと、粘液を何度か門に付着させ強化する。
「ヒジリがもうすぐ来るからね! 僧侶様、結界はまだですか?」
門の近くでゾンビの呻き声に怯え、恐怖と戦いながら震える手で魔法陣を完成させようとしている僧侶達に、タスネは聞いた。
「あと少しです、子爵殿。他の結界を張る僧侶たちも、安全であればいいのですが。万が一失敗するともう手立てはありません」
心配性のタスネの心をチクリと不安が刺す。
「アタシ、他の僧侶様達の様子見てくるね」
「わかった。レディの糸のお蔭で、ここは暫く大丈夫だと思う。行って」
イグナがそう言うと、タスネは富裕層や貴族が住む地区への門から入り、北門を目指した。
入れ違いでヒジリとウメボシが、東門にホバリングしながらやって来た。
「何か問題は無いかね? イグナ」
「大丈夫だと思う。お姉ちゃんは北門に向かった。ヒジリは西門を見てきて。他の僧侶様がいるから守ってあげて」
「わかった、行くぞウメボシ」
ヒジリのブーツが地面から浮き、砂埃を上げてそのまま西門に向かう。
西門では修道騎士の三姉妹が、腐敗した大きなドラゴンの成れの果てに苦戦していた。
「くー! ソレイ姉者ー! 【祈り】が効きませーん。もう駄目だー」
泣き顔の騎士から泣き言が聞こえてくる。
「【光の剣】をメイスに宿して斬れ! それで削っていくしかあるまい! 接近戦をしろダレイ!」
怒り面の仮面は【祈り】に失敗した妹を見て言う。
妹に気を取られていると、ドラゴンゾンビは腐臭と共に炎のブレスを吐きかけてきた。
咄嗟に盾に体を隠そうとするソレイの前に、光の盾が現れブレスから彼女を守る。
「ドラゴンゾンビを前にして余所見は禁物ですよ、妹達。汚らわしい死にぞこないの息を浴びるのは、恥辱と言えましょう」
「助かった、キミ姉者!」
ピリピリと張りつめた空気が姉妹を覆う。
姉妹の内、誰かが倒れれば間違いなく瓦解する今の拮抗したバランスは、踏み外せば容赦なく落ちて死んでしまう綱渡りのようであった。
「救いはゾンビが少なく、神官戦士達が食い止めてくれている事でしょうか・・・」
不気味な微笑みの仮面とは逆に、声には恐怖と不安が綯交ぜになる。ドラゴンゾンビの広範囲に薙ぎ払う尻尾を避ける脚に力が入らず、危うく当たりそうになったが、ギリギリでなんとか避ける。
ドラゴンゾンビの攻撃が妹達に向かうと、心のどこかで安堵する自分の卑怯さを情けなく思い、下唇を噛みしめた。
長女キミは過去に何度もソレイに「姉者は戦闘向きではない」と言われている。性格が大人しく攻撃性に欠けるのだ。泣き言ばかり言っているダレイでさえ、怖い怖いと喚きながら【光の剣】でドラゴンゾンビに斬りかかっている。自分は少し離れた位置から【光玉】を撃ち、接近戦をする妹達の補助や回復ばかりしているのだ。
(私だって、姉としてやる事をやらないと!)
キミは気合を入れメイスに【光の剣】を宿した。
白く光るビームソードの様な剣がブゥゥンと唸らせ、後ろを向いているドラゴンゾンビの腹にザックリと突き刺さす。
アンデッドにとって【光の剣】の効果は大きく、キミは手応えを感じた。ドラゴンゾンビは苦しそうに頭を下げている。
その様子をみたソレイは思わず言う。
「やったか?」
後ろから囁くような、それでいて芯の通った声が聞こえて来た。
「誰かが、”やったか?” と言ったのならば ”大抵はやれていない” と言ってあげるのが世の情け。世界の破壊を防ぐ為・・・、以下略!」
「ソーデガンス!」
意味不明な事を言うオーガとイービルアイはいきなり跳躍してきて、ドラゴンゾンビに攻撃を開始した。
雷を帯びた拳の連打は腐った竜の肉を焼き、辺りに腐臭と香ばしい匂いを漂わす。
妙に張り切ったイービルアイは【魔法の矢】で的確にドラゴンゾンビの目を撃ち抜いて、ダメージを観察するかのようにオーガの後ろに下がる。
死んでいるとはいえアンデッドも五感は全て感覚器官に頼っている。視覚を奪われたドラゴンゾンビは滅多矢鱈と暴れ出した。
ヒジリは華麗に後方にジャンプして回避する中、逃げ遅れた三姉妹が、暴れるドラゴンに吹き飛ばされ壁に叩きつけられた。
無様な姿を見せてしまい悔しくなったキミは直ぐに立ち上がると、姉妹に回復魔法をかけながらヒジリに怒る。
「余計な事をしないでください! 巻き添えを食らったではありませんか!」
しかし、そんな事にはお構い無しでイービルアイは、三姉妹を浮かしヒジリの後方に移動させた。
ダレイが泣きそうな声で抗議する。
「まだやれたのにー。助けてくれなんて言ってませーん。ふえ~」
しかしその抗議をウメボシは無視し、興奮した声で主に伝える。
「マスター! 現在、宇宙船カプリコンと通信が可能です。雪原の時と違って、ハッキリと繋がっております!」
「素晴らしい! てっきりこの宙域から離れてもういないと思っていたが。此方ヒジリ。カプリコン、応答どうぞ」
「一か月ぶりです、ヒジリ様。ご無事で何よりです」
「私の為にずっとそこに留まっていてくれたのか! すまないな。すまないついでに頼みがある。遮蔽フィールドに開いた穴いっぱいに、分子分解フラッシュを放って欲しいのだ。分解の設定条件は、生命活動を停止した、動き回る生き物だ」
「ハハッ。御戯れを」
カプリコンは、渋くて気品ある紳士のような声で笑う。
「私の位置が解るな? 近くに何が見えるかね? カプリコン」
腐った竜は嗅覚だけでヒジリを探し当て、鋭い爪の一撃を放つ。
それを最低限の動きで回避し、竜の爪に手を添えて、いなして方向を変える。
爪は勢い余ってドラゴンゾンビ自身の胸を突きさした。肋骨に爪が引っかかったのか胸から手が抜けず、攻撃手段を一つ失ったドラゴンゾンビは、顎をガクガクさせてヒジリに向かって炎を吐く準備をしている。
その様子を宇宙から観察していたカプリコンは驚く。
「むむ! これは・・・。生命活動を停止したはずの爬虫類の化け物が、ヒジリ様を襲っておりますね。解りました。それではただちにヒジリ様を中心にして、分子分解フラッシュを放ちます」
ドラゴンゾンビが炎を吐こうとしているにも関わらず、いきなり動きを止め両手を広げ、天を仰ぎだすオーガを三姉妹は見て助けるかどうか迷った。
しかし間に合わないと判断し動きを止める。この後に起こるであろう悲劇を想像し、悔やみながら見守っていると彼の体が徐々に浮いていった。
曇っていた夕方の雲を突き破り、天から光の柱がオーガを包みこむ。
と同時に夕日と光柱に照らされた、神々しいオーガの周りには無数の羽が舞い散る。
―――シュバッ!!
一瞬の光が辺りを包み込んで、通り過ぎて行った。
ヒジリを中心とした円柱は、どんどんと円を広げていき、半径千キロ以内のアンデッドを次々と無に帰していく。
水蒸気と灰が風に乗って空へ飛び散り、余りにもそれらの量が多いそれで、一時空気が真っ白になる程だった。
その頃、タスネは負傷した神官騎士と僧侶を守って、北門に侵入したゾンビを次々とレディの糸で捕まえていたが、アラクネにも疲労の色が見えていた。
破れかぶれで、ゾンビに効きそうもない【眠れ】のサインを手で作っていたところだった。
すると突然後方から激しい光が広がって行き、見る間にゾンビ達が消えていく。直ぐに気が付く。ヒジリが何かやったな、と。
「また何かやってくれたんだね、ヒジリは。助かった~。ふぃ~」
タスネはアラクネから降りると、ヘナヘナと尻もちをついた。アラクネも額の汗を拭いてその場に伏せる。
西門から押し寄せる光に、消えていくアンデッド達を見て、イグナもヒジリが何かをやったと感じた。急いで櫓から降り、マナの水の入ったポーションを持ってきたナンベルと合流すると、西門に向かう。
既にシルビィとシオ男爵も来ており、目の前の光景に驚いている。僧侶と修道騎士がヒジリを囲んで地に頭を擦りつけてひれ伏しているのだ。キミは涙ぐみながらヒジリを仰いだ。
「おお! 神の使いであるオーガよ! どうか我らに導きを! あの光は見紛う事なく【神の御柱(おんばしら)】! 神話の御伽話だと疑っていた不信心者の私をお許しください!」
聖職者たちに崇められるヒジリが、やり過ぎたという顔をしているのがイグナには解った。
何をやり過ぎたのかは解らないが、明らかにどうしたらいいのか解らない微妙な顔なのだ。眉が下がり、口を真一文字に閉じ、目が泳いでいる。
「か、神は人の上にも下にも人を置きません。神の元では誰しもが平等なのです。さぁ顔を上げて立ちなさい、同胞たちよ。普段通りにするのです」
ヒジリは微妙な顔の後に、如何にも私は聖人ですよといった態度で、両手を広げてそう言った。
遅れてやって来たタスネも、ヒジリの演技を見抜いて腕を組む。
(何をやったかは知らないけど・・・。修道女様や僧侶様をひれ伏せさせるなんて・・。悪戯が過ぎるよ)
「おお、有難き言葉! この奇跡を直ぐにでも修道会に伝えねば。僧侶の皆さまは結界を完成させてください。またアンデッドが押し寄せてくるかもしれませんので。私たちは陛下に報告をして一度帰ります。では」
三姉妹は神の前で無礼だと思ったのか、仮面を外すと素顔を晒した。
長女のキミは栗色の三つ編みを螺旋を描く羊の角のように結んでいる。整えていない眉毛と若干、下膨れの頬が田舎臭い顔にしている。
次女のソレイも同じ栗色の髪で似た様な顔をしていたが、ベリーショートの髪型が活発な印象を与えた。
三女のダレイも同じく栗色の髪だが緩やかなウェーブの髪が肩まで垂れていた。仮面を取っても取らなくても変わりがなく、八の字の眉が今にも泣きそうな顔を作り出していた。
姉妹はひれ伏すと、順にヒジリのヘルメスブーツにキスをして南門に向かって走り出した。
「何したの、ヒジリ。修道女様がオーガの足にキスするなんて!」
ヒジリとウメボシは顔を合わせて、申し訳無さそうな苦笑いをしている。
「まぁいいじゃないか。これで当面はゾンビ達に悩まされる事は無いだろう。ただあのアンデッドの数を考えると、恐らく闇側の街や村はほぼ壊滅したと言っていいな。これからは、生き残った者で早急に生活基盤を立て直し、物流の流れを正常化し、街としての機能を復活させなくてはならないぞ、主殿」
ヒジリの視線を受け、タスネは慌ててシオ男爵に流す。
「オホン! と、言うわけでシオ男爵にはここに残ってもらって、復興の手伝いをしてもらいます」
「えーっ! まぁ命令なら仕方ないか・・・。そんな事よりウメボシー! 見て、これ!」
シオ男爵は焼け焦げたローブのお尻の穴から、プリンとした生尻を見せている。
シルビィの頭にウーと警戒サイレンが響き渡る。
杖が「良い尻だねぇ」と茶化した。
「シルビィ様の火球のとばっちりで、ローブが焼けちゃったんだよぉ。直してくれよぉ!」
ヒジリが顎を摩りながら小さな声で「何かこう・・・、くるものがあるな、あのポーズ・・・」と言ったのを聞いたウメボシは慌てた。
シルビィもシオの尻の前で、あ~足が疲れたと言って、白々しくストレッチ運動をしてシオの尻を隠した。
「ご要望がありましたら、そのようにあつらえます。さぁ早く! 早くデザインなどを仰ってください!」
そう言っている間にも、主の体の一部に血が集まり出すのを、ウメボシは定時スキャンで確認した。
「は、早く!」
「何をそんなに急いでいるんだよ、バカ! じゃあ、まず下着から! お尻の所にピ、ピンクの兎の刺繍が入った小さな三角のやつと、前と同じローブで・・・。(くぅ~恥ずかしいな!)」
河原で老女に水着をデュプリケイトして着せた時よりも早く、要望通りの下着とローブがそこに完成していた。
それと同時に、主の体の血の流れが元に戻っていくのを確認して、ウメボシは一息つく。
「取りあえず、我々も陛下に報告に行くとするか。ゴデの今後の事は、陛下の指示を仰ごう」
そう言ってシルビィは、ヒジリにぴったりと寄り添う。
イグナがシルビィに対抗するように、ヒジリに抱っこをせがんだ。
ヒジリが片手で抱っこをすると、シルビィも負けじと抱っこをせがむ。
ウメボシが何か嫌味を言ってくるのでは? と警戒しながら抱っこをしてもらうも、イービルアイは何故かニコニコとしていた。
(不気味だ・・・)
シルビィはストレートにそう思った。
そして、自分が何か月もヒジリと会えなかったから、抱っこくらいなら許してくれているのだろうと、都合よく捉える。
ヒジリの頬に自分の頬を摺り寄せて甘えてから、もう一度ウメボシを見る。が、何も起こらない。
代わりに反対側のイグナが、グレーターデーモンですら睨み殺せそうな目で見つめてくる。
ヒッ! とシルビィは小さな悲鳴を挙げた後、大人しく前を向いた。
ナンベルは孤児院に帰ると言ってドォスンと共に去り、ゴブリン達は自分たちのバラック小屋の様子を見に行った。
ヒジリ達もシュラス王のいる国境の砦を目指して歩きだすと、結界を完成させた僧侶たちが素早くヒジリの周りに集まり、木のようなシンボルマークのペンダントを口に付けて、お祈りを始めたが、神と崇められている本人は特に気にせず通り過ぎる。
分子分解フラッシュの時にやり過ぎた演出効果は、ヒジリを後々、現人神と人々に認識させるとは、この時想像もしていなかった。
首を亡くしたゾンビ達は、動きを止めて棒立ちとなり無害になる。
東門の外に続く街道には、まだまだ数の減らないゾンビがいる。
そのうちの一匹が腐った手で、ナンベルを掴もうとした。
「ちょっと! やめなさいよぉ! 痴漢?」
お道化ながら短剣の柄でゾンビの顔面を叩いて砕き、後方に宙返りをする。
着地した先は、ウメボシが作った、鋭く尖った鉄の棘で出来たバリケードの後ろだ。
バリケードは根の深い岩の如く固定されている為、ナンベルを追いかけてくるゾンビ達は、次々と鉄の棘に突き刺さり動けなくなる。
突き刺さったゾンビで飽和状態となったバリケードの周りを、生者を求めてアンデッド達は彷徨った。
「ゾンビ達は、段差や障害物を越えられないとはいえ、ここももう限界に近いですねぇ。折り重なった仲間を登って東門に到達するのも時間の問題ですヨ。キュキュ」
何重にも囲むようにしてあったバリケードは、ゾンビでいっぱいになっている。
ナンベルはそのバリケードの後ろから、リズム良く指を鳴らして【闇の炎】でゾンビ達を焼き払っていく。
「はぁ・・・。それにしてもヒジリ君が来てから、黒竜が来たりゾンビの大群が来たり・・・。実はヒジリ君は疫病神なのでは? キュッキュー!」
大きな個体のオーガならば頭をぶつけそうな、左程高くも無い門の上方から、イグナが感情の無い顔を出して抗議する。
「ヒジリは関係ない」
門の裏手に建てた櫓から、黒髪の少女はそう言ってワンドを振る。
シオ男爵やシルビィ程の威力は無いが、イグナが怒って八つ当たりのように放った炎系魔法【業火】は、広範囲に燃えて、アンデッドたちを焼いていった。
「勿論ですとも。ちょっとした冗談ですよ。キュッキュー。あ、そろそろ小生は限界なので、孤児院に戻って休憩しますネ。マナの水を飲んだら直ぐに戻ってきますヨ。何本か持ってきますから、待っててね、イグナちゃん」
ナンベルは両開きの東門を手で押し開けると、疲れた素振りは見せず鼻歌を唄いながら時折タップを踏む。そして、イグナが樹族国から転移石で連れ帰ったドォスンやゴブリン達に、「後を頼みますヨ」と言って孤児院の方へ向かって歩いて行った。
が、道化師は、門近くの櫓に置いてきたイグナが心配なのか、建物の角を曲がった辺りから脚が速くなった。早くマナの水を飲んで戻って来るつもりなのだ。
同じ櫓の上から、ゴブリンのイシーはスリングで、ゾンビの頭を狙い打ちながら聞く。
「イグナさん、魔法は後何発ぐらい残っていますキャ?」
「【光の柱】が二回、【業火】が三回、【火球】が五回、【闇の炎】が一回」
ゴブリンの少女の顔に焦りが見える。
最後のバリケードを今にも超えそうなゾンビ達の勢いに対して、イグナの残り少ない魔法は心許無い。
向かいの櫓では、両親が同じ様にスリングでゾンビの頭に石を命中させているが、大して効果があるとは思えない。
門の外でドォスンが「ワハハ! 面白い」と笑いながら、ゾンビ達をバリケードの外に殴り飛ばしている。
しかしゾンビの数は圧倒的で、倒れたゾンビを乗り越え、踏み台にしてバリケードを突破して来た。
アンデッド達は、捨てられた子猫にびっしりと集るノミの様に、ドォスンに群がり噛みつきだした。
ドォスンは、いくら投げ捨てても次々と噛みついて来るゾンビに恐怖を感じて叫ぶ。
「イダイ! 噛むな! イダイ!」
イグナはすかさず【消滅】の上位版である【光の柱】を唱えると、ドォスンを中心に小さな光の柱が何本も立ち、アンデッド達を消滅させていく。バリケード内側のアンデッドは、全て光に包まれて消えていった。
「ドォスン、中に入って!」
オーガはイグナの指示に従って、直ぐに門の中に入った。
鋼のような硬い筋肉に噛み痕が沢山ついている。樹族や地走りが同じ目に遭っていれば致命傷だったが、鍛えられたドォスンの体には、歯型が付いただけで済んだ。
ドンドンドン! 段々と東門の扉を叩く音が大きくなってくる。
その門にもたれて傷を気にして、体を見ていたドォスンは慌てて閂をかけようとしたが、間に合わず、少し開いた隙間からゾンビ達の腐った顔と濁った瞳の目が見えていた。
「ドォスン! 押さえながらしゃがんで! レディ! 硬質化ネットよ!」
そう声がしたかと思うと、ドォスンの後方から蜘蛛の粘液が飛んできて、しゃがんだドォスンの頭の上で広がって門に張りつくと、鉄の金網のように硬くなりゾンビ達からの圧力を押さえこんだ。
ドォスンが退くと、粘液を何度か門に付着させ強化する。
「ヒジリがもうすぐ来るからね! 僧侶様、結界はまだですか?」
門の近くでゾンビの呻き声に怯え、恐怖と戦いながら震える手で魔法陣を完成させようとしている僧侶達に、タスネは聞いた。
「あと少しです、子爵殿。他の結界を張る僧侶たちも、安全であればいいのですが。万が一失敗するともう手立てはありません」
心配性のタスネの心をチクリと不安が刺す。
「アタシ、他の僧侶様達の様子見てくるね」
「わかった。レディの糸のお蔭で、ここは暫く大丈夫だと思う。行って」
イグナがそう言うと、タスネは富裕層や貴族が住む地区への門から入り、北門を目指した。
入れ違いでヒジリとウメボシが、東門にホバリングしながらやって来た。
「何か問題は無いかね? イグナ」
「大丈夫だと思う。お姉ちゃんは北門に向かった。ヒジリは西門を見てきて。他の僧侶様がいるから守ってあげて」
「わかった、行くぞウメボシ」
ヒジリのブーツが地面から浮き、砂埃を上げてそのまま西門に向かう。
西門では修道騎士の三姉妹が、腐敗した大きなドラゴンの成れの果てに苦戦していた。
「くー! ソレイ姉者ー! 【祈り】が効きませーん。もう駄目だー」
泣き顔の騎士から泣き言が聞こえてくる。
「【光の剣】をメイスに宿して斬れ! それで削っていくしかあるまい! 接近戦をしろダレイ!」
怒り面の仮面は【祈り】に失敗した妹を見て言う。
妹に気を取られていると、ドラゴンゾンビは腐臭と共に炎のブレスを吐きかけてきた。
咄嗟に盾に体を隠そうとするソレイの前に、光の盾が現れブレスから彼女を守る。
「ドラゴンゾンビを前にして余所見は禁物ですよ、妹達。汚らわしい死にぞこないの息を浴びるのは、恥辱と言えましょう」
「助かった、キミ姉者!」
ピリピリと張りつめた空気が姉妹を覆う。
姉妹の内、誰かが倒れれば間違いなく瓦解する今の拮抗したバランスは、踏み外せば容赦なく落ちて死んでしまう綱渡りのようであった。
「救いはゾンビが少なく、神官戦士達が食い止めてくれている事でしょうか・・・」
不気味な微笑みの仮面とは逆に、声には恐怖と不安が綯交ぜになる。ドラゴンゾンビの広範囲に薙ぎ払う尻尾を避ける脚に力が入らず、危うく当たりそうになったが、ギリギリでなんとか避ける。
ドラゴンゾンビの攻撃が妹達に向かうと、心のどこかで安堵する自分の卑怯さを情けなく思い、下唇を噛みしめた。
長女キミは過去に何度もソレイに「姉者は戦闘向きではない」と言われている。性格が大人しく攻撃性に欠けるのだ。泣き言ばかり言っているダレイでさえ、怖い怖いと喚きながら【光の剣】でドラゴンゾンビに斬りかかっている。自分は少し離れた位置から【光玉】を撃ち、接近戦をする妹達の補助や回復ばかりしているのだ。
(私だって、姉としてやる事をやらないと!)
キミは気合を入れメイスに【光の剣】を宿した。
白く光るビームソードの様な剣がブゥゥンと唸らせ、後ろを向いているドラゴンゾンビの腹にザックリと突き刺さす。
アンデッドにとって【光の剣】の効果は大きく、キミは手応えを感じた。ドラゴンゾンビは苦しそうに頭を下げている。
その様子をみたソレイは思わず言う。
「やったか?」
後ろから囁くような、それでいて芯の通った声が聞こえて来た。
「誰かが、”やったか?” と言ったのならば ”大抵はやれていない” と言ってあげるのが世の情け。世界の破壊を防ぐ為・・・、以下略!」
「ソーデガンス!」
意味不明な事を言うオーガとイービルアイはいきなり跳躍してきて、ドラゴンゾンビに攻撃を開始した。
雷を帯びた拳の連打は腐った竜の肉を焼き、辺りに腐臭と香ばしい匂いを漂わす。
妙に張り切ったイービルアイは【魔法の矢】で的確にドラゴンゾンビの目を撃ち抜いて、ダメージを観察するかのようにオーガの後ろに下がる。
死んでいるとはいえアンデッドも五感は全て感覚器官に頼っている。視覚を奪われたドラゴンゾンビは滅多矢鱈と暴れ出した。
ヒジリは華麗に後方にジャンプして回避する中、逃げ遅れた三姉妹が、暴れるドラゴンに吹き飛ばされ壁に叩きつけられた。
無様な姿を見せてしまい悔しくなったキミは直ぐに立ち上がると、姉妹に回復魔法をかけながらヒジリに怒る。
「余計な事をしないでください! 巻き添えを食らったではありませんか!」
しかし、そんな事にはお構い無しでイービルアイは、三姉妹を浮かしヒジリの後方に移動させた。
ダレイが泣きそうな声で抗議する。
「まだやれたのにー。助けてくれなんて言ってませーん。ふえ~」
しかしその抗議をウメボシは無視し、興奮した声で主に伝える。
「マスター! 現在、宇宙船カプリコンと通信が可能です。雪原の時と違って、ハッキリと繋がっております!」
「素晴らしい! てっきりこの宙域から離れてもういないと思っていたが。此方ヒジリ。カプリコン、応答どうぞ」
「一か月ぶりです、ヒジリ様。ご無事で何よりです」
「私の為にずっとそこに留まっていてくれたのか! すまないな。すまないついでに頼みがある。遮蔽フィールドに開いた穴いっぱいに、分子分解フラッシュを放って欲しいのだ。分解の設定条件は、生命活動を停止した、動き回る生き物だ」
「ハハッ。御戯れを」
カプリコンは、渋くて気品ある紳士のような声で笑う。
「私の位置が解るな? 近くに何が見えるかね? カプリコン」
腐った竜は嗅覚だけでヒジリを探し当て、鋭い爪の一撃を放つ。
それを最低限の動きで回避し、竜の爪に手を添えて、いなして方向を変える。
爪は勢い余ってドラゴンゾンビ自身の胸を突きさした。肋骨に爪が引っかかったのか胸から手が抜けず、攻撃手段を一つ失ったドラゴンゾンビは、顎をガクガクさせてヒジリに向かって炎を吐く準備をしている。
その様子を宇宙から観察していたカプリコンは驚く。
「むむ! これは・・・。生命活動を停止したはずの爬虫類の化け物が、ヒジリ様を襲っておりますね。解りました。それではただちにヒジリ様を中心にして、分子分解フラッシュを放ちます」
ドラゴンゾンビが炎を吐こうとしているにも関わらず、いきなり動きを止め両手を広げ、天を仰ぎだすオーガを三姉妹は見て助けるかどうか迷った。
しかし間に合わないと判断し動きを止める。この後に起こるであろう悲劇を想像し、悔やみながら見守っていると彼の体が徐々に浮いていった。
曇っていた夕方の雲を突き破り、天から光の柱がオーガを包みこむ。
と同時に夕日と光柱に照らされた、神々しいオーガの周りには無数の羽が舞い散る。
―――シュバッ!!
一瞬の光が辺りを包み込んで、通り過ぎて行った。
ヒジリを中心とした円柱は、どんどんと円を広げていき、半径千キロ以内のアンデッドを次々と無に帰していく。
水蒸気と灰が風に乗って空へ飛び散り、余りにもそれらの量が多いそれで、一時空気が真っ白になる程だった。
その頃、タスネは負傷した神官騎士と僧侶を守って、北門に侵入したゾンビを次々とレディの糸で捕まえていたが、アラクネにも疲労の色が見えていた。
破れかぶれで、ゾンビに効きそうもない【眠れ】のサインを手で作っていたところだった。
すると突然後方から激しい光が広がって行き、見る間にゾンビ達が消えていく。直ぐに気が付く。ヒジリが何かやったな、と。
「また何かやってくれたんだね、ヒジリは。助かった~。ふぃ~」
タスネはアラクネから降りると、ヘナヘナと尻もちをついた。アラクネも額の汗を拭いてその場に伏せる。
西門から押し寄せる光に、消えていくアンデッド達を見て、イグナもヒジリが何かをやったと感じた。急いで櫓から降り、マナの水の入ったポーションを持ってきたナンベルと合流すると、西門に向かう。
既にシルビィとシオ男爵も来ており、目の前の光景に驚いている。僧侶と修道騎士がヒジリを囲んで地に頭を擦りつけてひれ伏しているのだ。キミは涙ぐみながらヒジリを仰いだ。
「おお! 神の使いであるオーガよ! どうか我らに導きを! あの光は見紛う事なく【神の御柱(おんばしら)】! 神話の御伽話だと疑っていた不信心者の私をお許しください!」
聖職者たちに崇められるヒジリが、やり過ぎたという顔をしているのがイグナには解った。
何をやり過ぎたのかは解らないが、明らかにどうしたらいいのか解らない微妙な顔なのだ。眉が下がり、口を真一文字に閉じ、目が泳いでいる。
「か、神は人の上にも下にも人を置きません。神の元では誰しもが平等なのです。さぁ顔を上げて立ちなさい、同胞たちよ。普段通りにするのです」
ヒジリは微妙な顔の後に、如何にも私は聖人ですよといった態度で、両手を広げてそう言った。
遅れてやって来たタスネも、ヒジリの演技を見抜いて腕を組む。
(何をやったかは知らないけど・・・。修道女様や僧侶様をひれ伏せさせるなんて・・。悪戯が過ぎるよ)
「おお、有難き言葉! この奇跡を直ぐにでも修道会に伝えねば。僧侶の皆さまは結界を完成させてください。またアンデッドが押し寄せてくるかもしれませんので。私たちは陛下に報告をして一度帰ります。では」
三姉妹は神の前で無礼だと思ったのか、仮面を外すと素顔を晒した。
長女のキミは栗色の三つ編みを螺旋を描く羊の角のように結んでいる。整えていない眉毛と若干、下膨れの頬が田舎臭い顔にしている。
次女のソレイも同じ栗色の髪で似た様な顔をしていたが、ベリーショートの髪型が活発な印象を与えた。
三女のダレイも同じく栗色の髪だが緩やかなウェーブの髪が肩まで垂れていた。仮面を取っても取らなくても変わりがなく、八の字の眉が今にも泣きそうな顔を作り出していた。
姉妹はひれ伏すと、順にヒジリのヘルメスブーツにキスをして南門に向かって走り出した。
「何したの、ヒジリ。修道女様がオーガの足にキスするなんて!」
ヒジリとウメボシは顔を合わせて、申し訳無さそうな苦笑いをしている。
「まぁいいじゃないか。これで当面はゾンビ達に悩まされる事は無いだろう。ただあのアンデッドの数を考えると、恐らく闇側の街や村はほぼ壊滅したと言っていいな。これからは、生き残った者で早急に生活基盤を立て直し、物流の流れを正常化し、街としての機能を復活させなくてはならないぞ、主殿」
ヒジリの視線を受け、タスネは慌ててシオ男爵に流す。
「オホン! と、言うわけでシオ男爵にはここに残ってもらって、復興の手伝いをしてもらいます」
「えーっ! まぁ命令なら仕方ないか・・・。そんな事よりウメボシー! 見て、これ!」
シオ男爵は焼け焦げたローブのお尻の穴から、プリンとした生尻を見せている。
シルビィの頭にウーと警戒サイレンが響き渡る。
杖が「良い尻だねぇ」と茶化した。
「シルビィ様の火球のとばっちりで、ローブが焼けちゃったんだよぉ。直してくれよぉ!」
ヒジリが顎を摩りながら小さな声で「何かこう・・・、くるものがあるな、あのポーズ・・・」と言ったのを聞いたウメボシは慌てた。
シルビィもシオの尻の前で、あ~足が疲れたと言って、白々しくストレッチ運動をしてシオの尻を隠した。
「ご要望がありましたら、そのようにあつらえます。さぁ早く! 早くデザインなどを仰ってください!」
そう言っている間にも、主の体の一部に血が集まり出すのを、ウメボシは定時スキャンで確認した。
「は、早く!」
「何をそんなに急いでいるんだよ、バカ! じゃあ、まず下着から! お尻の所にピ、ピンクの兎の刺繍が入った小さな三角のやつと、前と同じローブで・・・。(くぅ~恥ずかしいな!)」
河原で老女に水着をデュプリケイトして着せた時よりも早く、要望通りの下着とローブがそこに完成していた。
それと同時に、主の体の血の流れが元に戻っていくのを確認して、ウメボシは一息つく。
「取りあえず、我々も陛下に報告に行くとするか。ゴデの今後の事は、陛下の指示を仰ごう」
そう言ってシルビィは、ヒジリにぴったりと寄り添う。
イグナがシルビィに対抗するように、ヒジリに抱っこをせがんだ。
ヒジリが片手で抱っこをすると、シルビィも負けじと抱っこをせがむ。
ウメボシが何か嫌味を言ってくるのでは? と警戒しながら抱っこをしてもらうも、イービルアイは何故かニコニコとしていた。
(不気味だ・・・)
シルビィはストレートにそう思った。
そして、自分が何か月もヒジリと会えなかったから、抱っこくらいなら許してくれているのだろうと、都合よく捉える。
ヒジリの頬に自分の頬を摺り寄せて甘えてから、もう一度ウメボシを見る。が、何も起こらない。
代わりに反対側のイグナが、グレーターデーモンですら睨み殺せそうな目で見つめてくる。
ヒッ! とシルビィは小さな悲鳴を挙げた後、大人しく前を向いた。
ナンベルは孤児院に帰ると言ってドォスンと共に去り、ゴブリン達は自分たちのバラック小屋の様子を見に行った。
ヒジリ達もシュラス王のいる国境の砦を目指して歩きだすと、結界を完成させた僧侶たちが素早くヒジリの周りに集まり、木のようなシンボルマークのペンダントを口に付けて、お祈りを始めたが、神と崇められている本人は特に気にせず通り過ぎる。
分子分解フラッシュの時にやり過ぎた演出効果は、ヒジリを後々、現人神と人々に認識させるとは、この時想像もしていなかった。
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