164 / 299
うさちゃんパンツ
しおりを挟む
たった三日。
たった三日間、竜の尻尾亭にいただけで、ビャクヤとリンネは引く手数多の冒険者となっていた。
昼間から酒を飲むオーガは、他のパーティにビャクヤとリンネを取られて今日は不貞腐れて休業中だ。
顔の赤いオーガは仲間のゴブリンシャーマンに管を巻いていた。
「こんななんでもない冒険者ギルドに正規のメイジが二人もいるなんて奇跡だよな。しかも一人は魔人族だぞ! 頭の良い種族なのに冒険者になるなんてよ。俺の知る限りじゃ魔人族は、高官か魔法関連の生産職になる奴等ばかりだってのに!」
「正規じゃなくてわりぃな。どうした? お前の中でえらくスペルキャスターの評価が上がってるじゃねぇか。今まで散々俺らの事を馬鹿にしてたくせに」
勿論、この酒場兼冒険者ギルドにもスペルキャスターはいる。オーガの嫌味に他のスペルキャスターたちも顔をしかめた。
オーガの愚痴をエールと共に飲み込んで、ゴブリンシャーマンも悔しそうにした。
「ヴャーンズ皇帝陛下みたいに、貴族の生まれなら俺らも魔法学校に行けただろうさ。だが、そうじゃあない。貧乏人は才能があっても独学でやるしかねぇんだ」
ゴブリンシャーマンの泣き言に他のスペルキャスターは頷いているが、オーガにとって泣き言は恥ずべき事なので、鼻の横に皺を寄せて嫌悪の表情を作る。
「ゴブリンは大人しく盗賊か暗殺者でも目指せばよかったんだ。お前は確かバートラの生まれだろ? あそこのゴブリンは生まれつき暗殺者だと聞いたぞ」
「そんなもん、嘘に決まってるだろ。バートラの殆どの奴らはスカウト系の素質はあるが、俺みたいに不器用なのもいる」
「不器用だし、頭もそんな良くねぇだろ。お前にもっと才能が有れば、この国でもスペルキャスターの地位は高かっただろうなぁ」
オーガのからかいにゴブリンメイジはロングスタッフを手に持って立ち上がったが、別のオーガが止めろと言わんばかりにゴブレットの底をテーブルに叩きつけた。
「喧嘩ばっかりすんなって。お前ら知ってっか? 樹族国とグランデモニウム王国の戦争は立ち消えになったってよ。実質的にグランデモニウム王国の負けなんだけどな。大黒柱の狂王が行方不明になって、王族や貴族も国を捨てて逃げ出したからよ。で、だ。今誰がグランデモニウム王国を統治していると思う? お前らが馬鹿にするスペルキャスターだぞ。オーガメイジのヒジリだ」
「オーガメイジ? 出身はどこだ? 変な名前だな」
「樹族国の元奴隷らしいぞ。それ以外はなにも知られてはいない」
「オーガメイジか。ビャクヤの恋人と同じだな。それにしても魔人族とオーガか・・・。良い未来は見えねぇな」
話の途中でガチャリとドアが開いてパーティの一団が入ってくる。それを見た冒険者の誰かが口に手を添えて囃し立てる。
「お、龍の尻尾亭の花形様がお帰りだ」
ビャクヤがパーティーメンバーのオーガやオークたちに肩を叩かれて、褒められながら入ってきた。
「おい! 聞け! お前ら !今日、ビャクヤとリンネは何を倒したと思う?」
上機嫌のオークが黒いヒレのような物を持っているので、酒場のベテラン冒険者たちは目を丸くした。
「おいおいおい! まさかヒュドラ―を倒したのか?」
「そのまさか! 俺たちが注意を引き付けている間に、ビャクヤとリンネが複合魔法【黒雷】で一撃よ! 俺ァ初めて複合魔法を見たからよ! 腰抜かしてちょっと糞が漏れたぜ!」
オークはお道化て尻を扇いで、皆に風を送っている。
「グハハハ! さっさと行水してこいや、ボヤード! くせぇくせぇ!」
「その前に報酬だ!」
オークのボヤードがカウンターに行くと、ヒレを店の主であるオーガに渡した。
酒場の主は、黒いゴムのようなヒレの先にある毒針を確認すると頷く。
「まさか、水田を荒らしてたのがヒュドラ―とはな。誰だ、ジャイアントイールが荒らしているとか言ってた奴は。ヒュドラ―はリザードマンが嫌がらせで送り込んだのかもな。ビャクヤとリンネがいなけりゃ死人が出てたな、こりゃあ。ほれ、報酬とヒュドラ―のヒレの分を上乗せだ」
ドチャリと音をさせて、報酬分のコインが入った袋と追加の小袋を置いた。
「おほー! ビャクヤたちが来てから景気がいいわ~! 山分けだ、お前ら」
ボヤードは皆、均等になるように報酬を仲間に配った。六等分しても三か月は酒場でのんべんだらりとしていられる金額だ。
酒場の下っ端冒険者が、ボヤードたちの報酬を見て羨ましがる。
「いいな~。俺も早くビャクヤたちと組みてぇぜ」
「身の程を知れ。お前らなんかと組んだら、陣形がすぐに崩れて、二人の詠唱が間に合わねぇだろ」
先輩冒険者にたしなめられて、新米たちはチェッと拗ねる。
ビャクヤは新米冒険者から羨望の的になっているとは知らず、その中を歩いて掲示板の依頼表を見た。
「ふむふむ。わぁ! リンネ! 城からの依頼がありますよッ!」
「ほんと?」
リンネが駆け寄ってビャクヤの腕に抱き着きながら依頼表を見る。
「斥候かぁ・・・。グランデモニウム王国を偵察・・・。私たち向きじゃないかなぁ・・・。でも受けないとヴャーンズ皇帝に出会う取っ掛かりがないもんねぇ」
「まぁ転移魔法でサッと行けるのはいいのですが、その先が・・・」
混乱しているグランデモニウム王国に入るのは簡単だが、潜んで書類を盗んでくるというようなミッションがあれば、難易度はぐっと上がる。【透明化】で消えても気配で察知する者もいるからだ。
「まぁなんとかなるでしょうッ! 今回は二人だけで行きますかッ!」
「そうね。ゾロゾロ行く任務じゃないし」
二人の会話に聞き耳を立てる冒険者たちの「あおぉ~」と落胆する声があちこちで漏れ聞こえた。
「次回の依頼は二人だけだってよ。残念だったな、お前ら」
酒場の主が冒険者たちに笑って、手で散れ散れと合図する。
ビャクヤはこれまでに得た報酬から、樹族国の金貨に匹敵するチタン硬貨を何枚かカウンターに置いて、酒場の主に言った。
「これで皆に飲めるだけのエールを」
「いいのか? ビャクヤ。こんだけありゃ皆、吐くまで飲めるぜ」
「ええ。どんどん飲んでください。我々は先に休ませてもらいます」
酒場の主は声を張り上げた。
「今日はビャクヤの奢りだってよ! じゃんじゃん飲め!」
「ヒャッハー!」
酒樽の前に冒険者たちが、ビアマグを持って並ぶ。
「二人ともよい夜を!」
「エッチし過ぎんなよ。仕事に響くぞ」
部屋に戻る二人に皆が声を掛ける。大抵は下品な内容だが彼らに悪気はない。闇側の住人は口が悪いのが当たり前なのだ。
「気前がいいね、ビャクヤ」
階段を上りながらリンネは、大技を使って疲れているビャクヤに言った。
「ええ・・・。何もお人好しでやっているわけではないのです。ツィガル人は気が荒く、すぐにマウント取り合戦をしたがる人達ばかりですが、義理堅い者も多いのです。だから気前良く振る舞えば、後々自分にいい結果となって返ってくるのですよ」
「そうなんだ? 色々考えているんだね。それにしても今日はビャクヤ、ヘトヘトだね。いつも複合魔法でマナの負担が大きい方をやらせてごめんね?」
「何を仰る兎さん。魔人族はマナの回復が早いですから当然ですよ。ただ今日は張り切り過ぎました。マナを籠めすぎてオーバーキルです。危うくヒュドラ―のヒレまで焦がすところでした」
「お疲れ様。後でマッサージしたげるね?」
「マッサージだけ・・・、ですかッ?」
「ハハッ。ごめんね、さっき生理がきちゃったから・・・」
「そうだったのですかッ! 人間族も大変ですねッ! 体調はどうです?」
「私は軽い方だから全然平気。気を遣ってくれてありがとうね、ビャクヤ」
「恋人なんだから当然ですよ」
「その・・・。ムラムラしているなら口でしてあげようか?」
リンネが頬を赤くして目をそらしながら言うので、その気のなかったビャクヤの股間がふっくらしてくる。
「今日は疲れマラでビンビンですし、お、お願いしましょうか・・・。多分すぐに出してしまうと思いますがッ!」
本当は今のリンネの表情でマントの下がムクムクとしてきたのだが、ビャクヤは嘘をつく。
「うふふ。私ね、ビャクヤが気持ちいい顔していると・・・」
「おい! さっさと部屋に入れ! いつまでも部屋の前でイチャイチャしてんじゃねぇど!」
ビャクヤとリンネは、食事を運んできた給仕のオーガにそう言われてびくりとする。
「い、いつの間にッ!」
「飯食ったら食器はドアの前な。シーツをお前らの臭い汁で汚したら、追加で100銅貨もらうかだな!」
オーガの女はそう言って食事の乗ったトレーをビャクヤに渡して階段を降りていった。
気まずい雰囲気の中、二人は部屋に入る。
「あ! ビャクヤ、両手が塞がってるね!」
その気まずい雰囲気を吹き飛ばすような明るい声でそう言って、悪戯っぽく笑うリンネはビャクヤのマントを開いて膨らんだビキニの中からイチモツをとり出して舐め始めた。
「ひゃああ! トレイ落としちゃいますってッ! トレイでリンネの顔が見れないのは残念過ぎるッ! こんなのってないですよぅ! あぁ! 出てしまいますッ! 出てしまいますってばッ!」
疲れている時のアソコはなぜこうも感じやすいのかと考えながら、ビャクヤは容赦なくリンネの喉奥に精液をぶちまけた。
キリマルは暗くなった街道脇で野宿をしていたが、獣の気配を感じて皆に警告を出す。
「おい、戦える奴は森側に並べ。森から獣が来るぞ」
樹族の剣士が獣人よりも察知能力が高いわけないと、誰もがキリマルの言う事を真に受けなかった。
「チッ! 無能の糞どもめ」
キリマルの警戒に気付いたシルビィも森側に立つ。
暫くしてから聞こえてくる枯葉を激しく踏む走る音や枝の折れる音で、キリマルの言った事が本当だと獣人たちは気づく。
そして彼らが陣形を固める前にその魔獣はやって来た。
「グルルル・・・」
「二匹か。なんだこいつら」
俺はライオンに見える獣を見てトウバに訊く。
「”できそこない“だ。いつもは遺跡の近くにいるんだがよ、今日は遠出してきたみたいだな」
「出来損ないって、なんの出来損ないだ?」
「キマイラだよ。キマイラの群れの中に時々いるんだわ。こういう羽の無いキマイラが」
キマイラのできそこないは、森と獣人たちの間をウロウロしている。飛び掛かるタイミングを計っているのだ。獣人も弱くはねぇからな。
「なんでケツだけ白いんだ? オムツでも穿いているのか?」
俺の真剣な質問にシルビィが笑った。
「尻がウサちゃんなんだよ、キリマル。普通はヤギの胴体なんだが、こいつができそこないと言われる由縁はこれだ」
「へぇ。じゃあ奴のウサちゃんパンツを、お前にプレゼントしてやるぜ」
「ああ、それは嬉しいな。一生大事にするよ」
シルビィは皮肉を言うと自己強化魔法を唱え始めた。
たった三日間、竜の尻尾亭にいただけで、ビャクヤとリンネは引く手数多の冒険者となっていた。
昼間から酒を飲むオーガは、他のパーティにビャクヤとリンネを取られて今日は不貞腐れて休業中だ。
顔の赤いオーガは仲間のゴブリンシャーマンに管を巻いていた。
「こんななんでもない冒険者ギルドに正規のメイジが二人もいるなんて奇跡だよな。しかも一人は魔人族だぞ! 頭の良い種族なのに冒険者になるなんてよ。俺の知る限りじゃ魔人族は、高官か魔法関連の生産職になる奴等ばかりだってのに!」
「正規じゃなくてわりぃな。どうした? お前の中でえらくスペルキャスターの評価が上がってるじゃねぇか。今まで散々俺らの事を馬鹿にしてたくせに」
勿論、この酒場兼冒険者ギルドにもスペルキャスターはいる。オーガの嫌味に他のスペルキャスターたちも顔をしかめた。
オーガの愚痴をエールと共に飲み込んで、ゴブリンシャーマンも悔しそうにした。
「ヴャーンズ皇帝陛下みたいに、貴族の生まれなら俺らも魔法学校に行けただろうさ。だが、そうじゃあない。貧乏人は才能があっても独学でやるしかねぇんだ」
ゴブリンシャーマンの泣き言に他のスペルキャスターは頷いているが、オーガにとって泣き言は恥ずべき事なので、鼻の横に皺を寄せて嫌悪の表情を作る。
「ゴブリンは大人しく盗賊か暗殺者でも目指せばよかったんだ。お前は確かバートラの生まれだろ? あそこのゴブリンは生まれつき暗殺者だと聞いたぞ」
「そんなもん、嘘に決まってるだろ。バートラの殆どの奴らはスカウト系の素質はあるが、俺みたいに不器用なのもいる」
「不器用だし、頭もそんな良くねぇだろ。お前にもっと才能が有れば、この国でもスペルキャスターの地位は高かっただろうなぁ」
オーガのからかいにゴブリンメイジはロングスタッフを手に持って立ち上がったが、別のオーガが止めろと言わんばかりにゴブレットの底をテーブルに叩きつけた。
「喧嘩ばっかりすんなって。お前ら知ってっか? 樹族国とグランデモニウム王国の戦争は立ち消えになったってよ。実質的にグランデモニウム王国の負けなんだけどな。大黒柱の狂王が行方不明になって、王族や貴族も国を捨てて逃げ出したからよ。で、だ。今誰がグランデモニウム王国を統治していると思う? お前らが馬鹿にするスペルキャスターだぞ。オーガメイジのヒジリだ」
「オーガメイジ? 出身はどこだ? 変な名前だな」
「樹族国の元奴隷らしいぞ。それ以外はなにも知られてはいない」
「オーガメイジか。ビャクヤの恋人と同じだな。それにしても魔人族とオーガか・・・。良い未来は見えねぇな」
話の途中でガチャリとドアが開いてパーティの一団が入ってくる。それを見た冒険者の誰かが口に手を添えて囃し立てる。
「お、龍の尻尾亭の花形様がお帰りだ」
ビャクヤがパーティーメンバーのオーガやオークたちに肩を叩かれて、褒められながら入ってきた。
「おい! 聞け! お前ら !今日、ビャクヤとリンネは何を倒したと思う?」
上機嫌のオークが黒いヒレのような物を持っているので、酒場のベテラン冒険者たちは目を丸くした。
「おいおいおい! まさかヒュドラ―を倒したのか?」
「そのまさか! 俺たちが注意を引き付けている間に、ビャクヤとリンネが複合魔法【黒雷】で一撃よ! 俺ァ初めて複合魔法を見たからよ! 腰抜かしてちょっと糞が漏れたぜ!」
オークはお道化て尻を扇いで、皆に風を送っている。
「グハハハ! さっさと行水してこいや、ボヤード! くせぇくせぇ!」
「その前に報酬だ!」
オークのボヤードがカウンターに行くと、ヒレを店の主であるオーガに渡した。
酒場の主は、黒いゴムのようなヒレの先にある毒針を確認すると頷く。
「まさか、水田を荒らしてたのがヒュドラ―とはな。誰だ、ジャイアントイールが荒らしているとか言ってた奴は。ヒュドラ―はリザードマンが嫌がらせで送り込んだのかもな。ビャクヤとリンネがいなけりゃ死人が出てたな、こりゃあ。ほれ、報酬とヒュドラ―のヒレの分を上乗せだ」
ドチャリと音をさせて、報酬分のコインが入った袋と追加の小袋を置いた。
「おほー! ビャクヤたちが来てから景気がいいわ~! 山分けだ、お前ら」
ボヤードは皆、均等になるように報酬を仲間に配った。六等分しても三か月は酒場でのんべんだらりとしていられる金額だ。
酒場の下っ端冒険者が、ボヤードたちの報酬を見て羨ましがる。
「いいな~。俺も早くビャクヤたちと組みてぇぜ」
「身の程を知れ。お前らなんかと組んだら、陣形がすぐに崩れて、二人の詠唱が間に合わねぇだろ」
先輩冒険者にたしなめられて、新米たちはチェッと拗ねる。
ビャクヤは新米冒険者から羨望の的になっているとは知らず、その中を歩いて掲示板の依頼表を見た。
「ふむふむ。わぁ! リンネ! 城からの依頼がありますよッ!」
「ほんと?」
リンネが駆け寄ってビャクヤの腕に抱き着きながら依頼表を見る。
「斥候かぁ・・・。グランデモニウム王国を偵察・・・。私たち向きじゃないかなぁ・・・。でも受けないとヴャーンズ皇帝に出会う取っ掛かりがないもんねぇ」
「まぁ転移魔法でサッと行けるのはいいのですが、その先が・・・」
混乱しているグランデモニウム王国に入るのは簡単だが、潜んで書類を盗んでくるというようなミッションがあれば、難易度はぐっと上がる。【透明化】で消えても気配で察知する者もいるからだ。
「まぁなんとかなるでしょうッ! 今回は二人だけで行きますかッ!」
「そうね。ゾロゾロ行く任務じゃないし」
二人の会話に聞き耳を立てる冒険者たちの「あおぉ~」と落胆する声があちこちで漏れ聞こえた。
「次回の依頼は二人だけだってよ。残念だったな、お前ら」
酒場の主が冒険者たちに笑って、手で散れ散れと合図する。
ビャクヤはこれまでに得た報酬から、樹族国の金貨に匹敵するチタン硬貨を何枚かカウンターに置いて、酒場の主に言った。
「これで皆に飲めるだけのエールを」
「いいのか? ビャクヤ。こんだけありゃ皆、吐くまで飲めるぜ」
「ええ。どんどん飲んでください。我々は先に休ませてもらいます」
酒場の主は声を張り上げた。
「今日はビャクヤの奢りだってよ! じゃんじゃん飲め!」
「ヒャッハー!」
酒樽の前に冒険者たちが、ビアマグを持って並ぶ。
「二人ともよい夜を!」
「エッチし過ぎんなよ。仕事に響くぞ」
部屋に戻る二人に皆が声を掛ける。大抵は下品な内容だが彼らに悪気はない。闇側の住人は口が悪いのが当たり前なのだ。
「気前がいいね、ビャクヤ」
階段を上りながらリンネは、大技を使って疲れているビャクヤに言った。
「ええ・・・。何もお人好しでやっているわけではないのです。ツィガル人は気が荒く、すぐにマウント取り合戦をしたがる人達ばかりですが、義理堅い者も多いのです。だから気前良く振る舞えば、後々自分にいい結果となって返ってくるのですよ」
「そうなんだ? 色々考えているんだね。それにしても今日はビャクヤ、ヘトヘトだね。いつも複合魔法でマナの負担が大きい方をやらせてごめんね?」
「何を仰る兎さん。魔人族はマナの回復が早いですから当然ですよ。ただ今日は張り切り過ぎました。マナを籠めすぎてオーバーキルです。危うくヒュドラ―のヒレまで焦がすところでした」
「お疲れ様。後でマッサージしたげるね?」
「マッサージだけ・・・、ですかッ?」
「ハハッ。ごめんね、さっき生理がきちゃったから・・・」
「そうだったのですかッ! 人間族も大変ですねッ! 体調はどうです?」
「私は軽い方だから全然平気。気を遣ってくれてありがとうね、ビャクヤ」
「恋人なんだから当然ですよ」
「その・・・。ムラムラしているなら口でしてあげようか?」
リンネが頬を赤くして目をそらしながら言うので、その気のなかったビャクヤの股間がふっくらしてくる。
「今日は疲れマラでビンビンですし、お、お願いしましょうか・・・。多分すぐに出してしまうと思いますがッ!」
本当は今のリンネの表情でマントの下がムクムクとしてきたのだが、ビャクヤは嘘をつく。
「うふふ。私ね、ビャクヤが気持ちいい顔していると・・・」
「おい! さっさと部屋に入れ! いつまでも部屋の前でイチャイチャしてんじゃねぇど!」
ビャクヤとリンネは、食事を運んできた給仕のオーガにそう言われてびくりとする。
「い、いつの間にッ!」
「飯食ったら食器はドアの前な。シーツをお前らの臭い汁で汚したら、追加で100銅貨もらうかだな!」
オーガの女はそう言って食事の乗ったトレーをビャクヤに渡して階段を降りていった。
気まずい雰囲気の中、二人は部屋に入る。
「あ! ビャクヤ、両手が塞がってるね!」
その気まずい雰囲気を吹き飛ばすような明るい声でそう言って、悪戯っぽく笑うリンネはビャクヤのマントを開いて膨らんだビキニの中からイチモツをとり出して舐め始めた。
「ひゃああ! トレイ落としちゃいますってッ! トレイでリンネの顔が見れないのは残念過ぎるッ! こんなのってないですよぅ! あぁ! 出てしまいますッ! 出てしまいますってばッ!」
疲れている時のアソコはなぜこうも感じやすいのかと考えながら、ビャクヤは容赦なくリンネの喉奥に精液をぶちまけた。
キリマルは暗くなった街道脇で野宿をしていたが、獣の気配を感じて皆に警告を出す。
「おい、戦える奴は森側に並べ。森から獣が来るぞ」
樹族の剣士が獣人よりも察知能力が高いわけないと、誰もがキリマルの言う事を真に受けなかった。
「チッ! 無能の糞どもめ」
キリマルの警戒に気付いたシルビィも森側に立つ。
暫くしてから聞こえてくる枯葉を激しく踏む走る音や枝の折れる音で、キリマルの言った事が本当だと獣人たちは気づく。
そして彼らが陣形を固める前にその魔獣はやって来た。
「グルルル・・・」
「二匹か。なんだこいつら」
俺はライオンに見える獣を見てトウバに訊く。
「”できそこない“だ。いつもは遺跡の近くにいるんだがよ、今日は遠出してきたみたいだな」
「出来損ないって、なんの出来損ないだ?」
「キマイラだよ。キマイラの群れの中に時々いるんだわ。こういう羽の無いキマイラが」
キマイラのできそこないは、森と獣人たちの間をウロウロしている。飛び掛かるタイミングを計っているのだ。獣人も弱くはねぇからな。
「なんでケツだけ白いんだ? オムツでも穿いているのか?」
俺の真剣な質問にシルビィが笑った。
「尻がウサちゃんなんだよ、キリマル。普通はヤギの胴体なんだが、こいつができそこないと言われる由縁はこれだ」
「へぇ。じゃあ奴のウサちゃんパンツを、お前にプレゼントしてやるぜ」
「ああ、それは嬉しいな。一生大事にするよ」
シルビィは皮肉を言うと自己強化魔法を唱え始めた。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【R18】追放される宿命を背負った可哀想な俺、才色兼備のSランク女三人のハーレムパーティーから追放されてしまう ~今更謝ってきても
ヤラナイカー
ファンタジー
◯出し◯ませハメ撮りをかまして用済みだからもう遅い!~
(欲張りすぎて、タイトルがもう遅いまで入らなかったw)
よくある追放物語のパロディーみたいな短編です。
思いついたから書いてしまった。
Sランク女騎士のアイシャ、Sランク女魔術師のイレーナ、Sランク聖女のセレスティナのハーレムパーティーから、Aランク|荷物持ち《ポーター》のおっさん、サトシが追放されるだけのお話です。
R18付けてますが、エッチと感じるかどうかは読む人によるかもしれません。
実家が没落したので、こうなったら落ちるところまで落ちてやります。
黒蜜きな粉
ファンタジー
ある日を境にタニヤの生活は変わってしまった。
実家は爵位を剥奪され、領地を没収された。
父は刑死、それにショックを受けた母は自ら命を絶った。
まだ学生だったタニヤは学費が払えなくなり学校を退学。
そんなタニヤが生活費を稼ぐために始めたのは冒険者だった。
しかし、どこへ行っても元貴族とバレると嫌がらせを受けてしまう。
いい加減にこんな生活はうんざりだと思っていたときに出会ったのは、商人だと名乗る怪しい者たちだった。
騙されていたって構わない。
もう金に困ることなくお腹いっぱい食べられるなら、裏家業だろうがなんでもやってやる。
タニヤは商人の元へ転職することを決意する。
魔王の娘な陰キャロリ巨乳トラップマスターが罠で勇者を発情させ過ぎて、オナニーに夢中な姿を発見されて襲われ連続敗北イキして裏切り幸せ堕ちする話
フォトンうさぎ
ファンタジー
魔王の三女、ダルクネス・ユビドラ・フォーレンゲルス。通称、トラップマスターのダルクネス。彼女は魔王の子として生まれたとはいえ、魔力も体力も弱くて扱いも酷い一人ぼっちの根暗魔族であった。
貧弱でロリ巨乳な彼女がやることといえば、自分が作ったトラップだらけのダンジョンを監視しながら、哀れに散る冒険者達を観察しながらの引きこもりオナニー。
そんな彼女は今回、ダンジョンを攻略しにきた勇者クオンたちへ、特殊な催淫トラップを使用してその様子と快感を楽しんでいた。
しかし、勇者はいつの間にか催淫トラップを乗り越えて監視を潜り抜け、のけぞるほど激しい自慰をしているダルクネスの元までたどり着いていて……。
表紙は『NovelAI』に出力していただきました。
【R18】聖処女騎士アルゼリーテの受難
濡羽ぬるる
ファンタジー
清楚な銀髪少女騎士アルゼリーテは、オークの大軍勢に屈し、犯されてしまいます。どんなに引き裂かれても即時回復するチート能力のおかげで、何度でも復活する処女を破られ続け、淫らな汁にまみれながらメスに堕ちていくのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる