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キラキ・キラキ
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つい今しがたやってきた――――王国竜騎兵騎士団一番隊隊長の使い魔から報告を聞いて、竜騎兵騎士団長のキラキ・キラキは興味を持った。喋るハヤブサを撫でながら優男はニヤリとする。
「ほう、蘇生の出来る剣士の悪魔か・・・。これは貴重な人材だな・・・。願わくば他の組織にキリマルとやらの存在が知られてなければいいが・・・」
外敵のいないこの島国で、騎士団はそれを抱える主の見栄のためにあるようなものだ。キラキの頭の中で、見栄張り合戦で他の騎士団をだし抜きたいという欲が疼く。
竜騎兵騎士団のほかには主にメイジで構成される魔道騎士団、王を守る近衛兵騎士団がある。そのどれもが王のための騎士で、ほかの領主を威嚇するためにあると言っていい。その中で頭一つ突き出る何かが欲しいと以前からキラキは考えていた。
「キリマルを囲ってしまえば、神殿騎士や司祭の顔色を窺って蘇生を頼む必要もなくなる。戦死者がなかった事にできるのだ。戦死者のないまま任務を完遂すれば、我が竜騎兵騎士団の名も上がろう」
「クックック! 果たして、そう上手くいくかな?」
背後のベランダのドアが開いて、何者かが音もなく入ってきた。
「なに奴!」
キラキが見やった場所には、なんでもないただの掃除中のメイドがいただけだった。
「ただのメイドが紛らわしいわ! 出ていけ!」
「ふえぇぇ! すいませーん!」
メイドはバケツと雑巾を持って部屋から出て行った。
「誰だ、あいつ・・・」
キリマルがシャワールームから出ると、見知らぬ男が腕を組み壁に背を預けて立っている。
「ククク・・・。貴様がキリマルか・・・」
「なんだ? てめぇ」
この学園の生徒らしき男の怪しい雰囲気を胡散臭く思い、キリマルは魔刀天邪鬼を構える。
「ほう? この俺を斬るというのか? 果たしてでき・・・」
ドンッ!
謎の男はよろめいてから体勢を立て直し、自分を押した相手をキッと睨んだ。
「誰だ!」
「なんだ君はッ! どきたまえよ! 邪魔だ! あっちへ行きなさいッ!」
相手が裸マントの奇人だと知ると、謎男は尻もちをつく。
「ヒエッ! ビャクヤだ! 変態がうつる!」
男はビャクヤを見ると慌てて逃げて行った。
「誰だぁ? あいつは?」
「さぁね・・・」
逃げ行く男のを背中を見送って、キリマルは青い肌に仮面の変態ビャクヤと、金髪碧眼美少女リンネを何用かと見る。
二人は申し訳なさそうに立っていた。
「あの・・・キリマル・・・。さっきはごめんなさい・・・」
「・・・」
「おい、主殿がこんなに謝っているのだよッ! 返事ぐらいしたらどうかねッ!」
「うるせぇ! リンネに思うところはねぇわ! 俺はお前に怒ってんだよ、ビャクヤ! おらぁな、シャケの卵じゃねぇんだ! 顔にくっせぇザーメ・・・、もごもご!」
ビャクヤは慌ててキリマルの口を塞いだ。
「これ、レディの前でッ! ザーメンなんて言うもんじゃないですよッ!」
「ぷは! お前が言ってんだろうがよ! 大体、レイナールの危機になんでいちゃついてたんだ? そもそもお前らは、校庭のベンチに座ってたのに、いつの間に医務室に来た?」
「ベンチに座っていた吾輩と主殿は、幻影ですよッ! 吾輩はきっとライアンとヘンナーがレイナール君を消しに来ると思ったので幻をベンチに座らせて、先に医務室に転移して待ち構えていたのでんすッ!」
「で、レイナールをほっぽいといて、エクスタシーに達するほどいちゃついてたわけだ? お前ら何歳だ? まだ17歳くらいだろ? そんなガキのうちからエロイ事ばかりやってっと、碌な大人にならねぇぞ!」
「碌な大人じゃないキリマルが言うかね・・・」
「なんだぁ?」
「なんでもないです・・・」
縮こまるビャクヤの横でリンネが深呼吸した。
「とにかく・・・その、助けてくれてありがとう、キリマル。貴方がいなかったら私たち焼け死んでいたかも。あ、それから、あんな・・・変な事してたけど、私とビャクヤってそういう仲じゃないから・・・。あれは事故というかなんというか・・・」
リンネが恥ずかしそうにして、両手の人差し指同士をツンツンしている。
「(おめぇらの仲なんて知らねぇわ。勝手にしろ)まぁいいぜ。俺的には(いっぱい人が斬れて)楽しかったしな。あ~それにしても今日は疲れたな。部屋と着替え用意しろや。あと食い物と酒も持ってこい」
「ただでさえ肩身の狭い使い魔である吾輩と、契約する悪魔の分際で何を厚かましいッ! 君など外で寝て当然なのだがねッ!」
「あ? じゃあ学園中に、お前らが医務室でエッチな事してたって言いふらすけど?」
「わぁ! 解った! 今から学園長に言って部屋を用意してもらうからッ! 待っていたまえ!」
ビャクヤは転移の魔法で消えてしまった。残ったリンネと無言の間が続いて気まずい。こいつ、殺せたらいいのになぁ。
「あの、私も行くね・・・。それからこれからもよろしく・・・。これ、お礼ね!」
そう言ってリンネは俺の長い髪に細いリボンを巻いた。一巻きしただけで、顔の脇の髪が束ねられていく。魔法のリボンか?
「髪邪魔なんじゃないかなって思って・・・。私も髪を伸ばそうかな・・・。そしたらキリマルと同じリボンを付けれるし! じゃあね!」
リンネは顔を赤くして去っていった。
んー、甘酸っぱい。これが青春ってやつか? 反吐が出るねぇ・・・。
「ほう、蘇生の出来る剣士の悪魔か・・・。これは貴重な人材だな・・・。願わくば他の組織にキリマルとやらの存在が知られてなければいいが・・・」
外敵のいないこの島国で、騎士団はそれを抱える主の見栄のためにあるようなものだ。キラキの頭の中で、見栄張り合戦で他の騎士団をだし抜きたいという欲が疼く。
竜騎兵騎士団のほかには主にメイジで構成される魔道騎士団、王を守る近衛兵騎士団がある。そのどれもが王のための騎士で、ほかの領主を威嚇するためにあると言っていい。その中で頭一つ突き出る何かが欲しいと以前からキラキは考えていた。
「キリマルを囲ってしまえば、神殿騎士や司祭の顔色を窺って蘇生を頼む必要もなくなる。戦死者がなかった事にできるのだ。戦死者のないまま任務を完遂すれば、我が竜騎兵騎士団の名も上がろう」
「クックック! 果たして、そう上手くいくかな?」
背後のベランダのドアが開いて、何者かが音もなく入ってきた。
「なに奴!」
キラキが見やった場所には、なんでもないただの掃除中のメイドがいただけだった。
「ただのメイドが紛らわしいわ! 出ていけ!」
「ふえぇぇ! すいませーん!」
メイドはバケツと雑巾を持って部屋から出て行った。
「誰だ、あいつ・・・」
キリマルがシャワールームから出ると、見知らぬ男が腕を組み壁に背を預けて立っている。
「ククク・・・。貴様がキリマルか・・・」
「なんだ? てめぇ」
この学園の生徒らしき男の怪しい雰囲気を胡散臭く思い、キリマルは魔刀天邪鬼を構える。
「ほう? この俺を斬るというのか? 果たしてでき・・・」
ドンッ!
謎の男はよろめいてから体勢を立て直し、自分を押した相手をキッと睨んだ。
「誰だ!」
「なんだ君はッ! どきたまえよ! 邪魔だ! あっちへ行きなさいッ!」
相手が裸マントの奇人だと知ると、謎男は尻もちをつく。
「ヒエッ! ビャクヤだ! 変態がうつる!」
男はビャクヤを見ると慌てて逃げて行った。
「誰だぁ? あいつは?」
「さぁね・・・」
逃げ行く男のを背中を見送って、キリマルは青い肌に仮面の変態ビャクヤと、金髪碧眼美少女リンネを何用かと見る。
二人は申し訳なさそうに立っていた。
「あの・・・キリマル・・・。さっきはごめんなさい・・・」
「・・・」
「おい、主殿がこんなに謝っているのだよッ! 返事ぐらいしたらどうかねッ!」
「うるせぇ! リンネに思うところはねぇわ! 俺はお前に怒ってんだよ、ビャクヤ! おらぁな、シャケの卵じゃねぇんだ! 顔にくっせぇザーメ・・・、もごもご!」
ビャクヤは慌ててキリマルの口を塞いだ。
「これ、レディの前でッ! ザーメンなんて言うもんじゃないですよッ!」
「ぷは! お前が言ってんだろうがよ! 大体、レイナールの危機になんでいちゃついてたんだ? そもそもお前らは、校庭のベンチに座ってたのに、いつの間に医務室に来た?」
「ベンチに座っていた吾輩と主殿は、幻影ですよッ! 吾輩はきっとライアンとヘンナーがレイナール君を消しに来ると思ったので幻をベンチに座らせて、先に医務室に転移して待ち構えていたのでんすッ!」
「で、レイナールをほっぽいといて、エクスタシーに達するほどいちゃついてたわけだ? お前ら何歳だ? まだ17歳くらいだろ? そんなガキのうちからエロイ事ばかりやってっと、碌な大人にならねぇぞ!」
「碌な大人じゃないキリマルが言うかね・・・」
「なんだぁ?」
「なんでもないです・・・」
縮こまるビャクヤの横でリンネが深呼吸した。
「とにかく・・・その、助けてくれてありがとう、キリマル。貴方がいなかったら私たち焼け死んでいたかも。あ、それから、あんな・・・変な事してたけど、私とビャクヤってそういう仲じゃないから・・・。あれは事故というかなんというか・・・」
リンネが恥ずかしそうにして、両手の人差し指同士をツンツンしている。
「(おめぇらの仲なんて知らねぇわ。勝手にしろ)まぁいいぜ。俺的には(いっぱい人が斬れて)楽しかったしな。あ~それにしても今日は疲れたな。部屋と着替え用意しろや。あと食い物と酒も持ってこい」
「ただでさえ肩身の狭い使い魔である吾輩と、契約する悪魔の分際で何を厚かましいッ! 君など外で寝て当然なのだがねッ!」
「あ? じゃあ学園中に、お前らが医務室でエッチな事してたって言いふらすけど?」
「わぁ! 解った! 今から学園長に言って部屋を用意してもらうからッ! 待っていたまえ!」
ビャクヤは転移の魔法で消えてしまった。残ったリンネと無言の間が続いて気まずい。こいつ、殺せたらいいのになぁ。
「あの、私も行くね・・・。それからこれからもよろしく・・・。これ、お礼ね!」
そう言ってリンネは俺の長い髪に細いリボンを巻いた。一巻きしただけで、顔の脇の髪が束ねられていく。魔法のリボンか?
「髪邪魔なんじゃないかなって思って・・・。私も髪を伸ばそうかな・・・。そしたらキリマルと同じリボンを付けれるし! じゃあね!」
リンネは顔を赤くして去っていった。
んー、甘酸っぱい。これが青春ってやつか? 反吐が出るねぇ・・・。
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