黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》

Siranui

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第六章 ハロウィン戦争編

第百九十二話「裁きの後継者」

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 最優先緊急任務:ネフティスNo.2錦野蒼乃と北条銀二の討伐及び『完全蘇生体』錦野智優美の討伐、死器『葬無冥殺之機神鈴白ほうむめいさつのきしんすずしろ』の討伐

 遂行者:錦野蒼乃、北条銀二を除くネフティス全メンバー
 犠牲者:???


 今から約数十分前――

「――分かったわ。あなたに全てを明かすわ。シンデレラ宮殿事件から今にかけてあなたが抱いた謎を。それと、私で良ければあなたの力になるわ。あなたの復讐を果たすために……ね?」

 黒百合が咲き誇るこの地で、俺――黒神大蛇と『黒花』レイアの二人が向き合い、ある交渉を成立した。
 それは俺の死器――エリミネイトを元の持ち主であるレイアに返す代わりに、ありとあらゆる真実を吐き出す事と北条を倒すまでの間、同盟という形で俺に力を貸すというものだった。

「さぁ……言ってごらん?」

 若干強張った身体から力を抜くために一つ深呼吸を置く。そしてこれまで溜まりに溜まった謎を吐き出す。

「まずはお前と『海の魔女』アースラについてだ。シンデレラ宮殿での任務中、前に俺が殺したはずのアースラがいた。あれはどういう事だ? それとお前とアースラの関係は何だ?」
「ふむふむ……なるほどね」

 少し難しそうな表情を浮かべた後、すぐに閃いたかのように頷くと、すぐに話してくれた。

「私とアースラは同一人物……とは言っても、本来はあの五姉妹と同じように人魚になるはずだったの。でも実際は君が見た通りあの禍々しい『海の魔女』の姿。とてもじゃないけど気に入らなかったわ。でも使える技は中々のものだったから、それだけのために『海の魔女』として生きたようなものよ」
「そうだったのか……」
「それに、あの時シンデレラ宮殿にいたのは私の『分身』よ。それも北条銀二が生み出したクローンのようなもの。芽依ちゃんもそうよ。でもあれは洗脳に近いかしら……」
「結局奴が裏にいたのか……」
(蒼乃さんといい、智優美さんや正嗣総長といい、そして『黒花』やアースラにも裏には全て北条の奴が関係している。それも全て洗脳されてたとはいえ、一度俺を殺そうとした人達……何か暗黒神あいつと関係ありそうだ)

 この話を深掘りしてやろうかと思ったが、この事は北条に直接聞いた方が良いと判断し、ここで止めておく。そして次の質問を口に出す。

「次に、お前の使う魔術についてだ。あの時戦って何となく思っていたが、お前の攻撃には。だが魔力が無いなんて事は無いはずだ。一体何を使っていた?」
「……ただの魔術でも、禁忌魔法でもない。私だけの魔術。そうね……『独自魔術』と名付けようかしら。言いやすくすれば『オリジナルスキル』みたいなものね」
「だがそれは禁忌魔法も同じだろう。各々持ってるものは違う」
「そうね。でも大きな違いは一つあるわ。それは『魔力量に関係無く永久的に発動出来る』の」
「はっ――!?」

 思わず声が出た。そんな魔法などあるはずがない。

「――って、思ってる顔ね。それがあるのよ。今もシンデレラ宮殿があった所にぽつんと黒百合の花が咲いてるはずだわ」
「あれが有る限り……」
「そ、私は実質魔力消費無しで魔法をいくらでも使えるの。でも使うと黒百合達が枯れちゃうからちゃんと限界もあるのよ」
「そうなのか……」

 単なるチートでは無いのか……と顔には出さないようにしていたが、少し残念に思って肩を落とした。

「ふふっ、君って分かりやすいのね。期待してたのと違ったかしら」
「いや……別に期待とかは無いが」
「……くすっ、可愛いわねっ♪」

 ため息混じりのこの言葉にもまた、レイアは手を口に当てて笑う。どうやら俺はかつての敵にからかわれているようだ。

(――って、まずい……そろそろここから出ないと凪沙さんが!)
「……他にも言いたい事はあるが、俺はそろそろ戦線に戻らなければならん。仲間をこのまま見殺しになんて出来ねぇからな」
「あら、残念だわ……もうちょっと君と話してたかったのに」

 今度はレイアが肩を落としながら右手の指を鳴らす。刹那、周囲に咲き誇っていた黒百合が塵となり、足元を流れていくように消えていく。

「……本当によく分からねぇ魔術使ってるな」
「また会ったら教えてあげる。その時までお預け、ね」

 レイアは口元に人差し指を当てながら言った。段々と彼女の姿も白い背景と同化していくのが見える。

 ――また、地獄に戻るのか。


「――あ、ちょっと待って、最後にこれを……」
「ん……??」

 突然頭をぽんぽんと叩かれた。まさかまたからかおうとしているのか。

「私とこうして話してくれたお礼。君に私の力を与えるわ……」

 よしよし、よしよし……



 ―――――――――!!!!!!!!




 鼓膜を破けんばかりの轟雷が、俺の脳天から真っ二つに穿った――



「……アースラ。過去の私。『裁き』の後継者は貴方を倒したあの子に任せるわ――」


 無論この声は、また一つ強くなった黒き英雄には届く事は無いまま、今に至るのであった――
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