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第六章 ハロウィン戦争編
第百九十話「かつての敵は守るために」
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最優先緊急任務:ネフティスNo.2錦野蒼乃と北条銀二の討伐及び『完全蘇生体』錦野智優美の討伐、死器『葬無冥殺之機神鈴白』の討伐
遂行者:錦野蒼乃、北条銀二を除くネフティス全メンバー
犠牲者:???
東京都渋谷区 武刀正義サイド――
「恋鐘の剣士よ……これで終わりだ!」
北条の短剣が俺の心臓に向かって突き刺そうとしてくる。当然力も入らない俺の身体は完全に宿命を受け入れる以外の選択をしない。
「ぁぁ……これで、終わりだなぁ……」
――安心したのか、ニヤリと笑みが溢れた。
「――俺の役目は、だけどな」
「っ――!!?」
刹那、北条の背後から一輪の黒百合が花開いた。そこに現れた黒髪の少女の右足が地面を着いた時、黒百合が渋谷区一面に咲き誇った。俺に向けられた短剣の切っ先が突如背後に向けられた。
「ごふっ……がはっ、げほっ……」
一瞬空中に浮いた俺はそのまま地面に崩れ落ちる。その衝撃で足元に血の池が作られる。
ふと正面を見ると、北条の奥には、黒い服に黒の長髪の少女が立っていた。
「さぁ……私の闇の演劇の続きを始めましょう、北条さん」
「……まさか貴様が来るとはな、『黒花』」
「『黒花』だとっ……!?」
その名を聞いた途端、俺は息を呑んだ。その二つ名を持つ少女……レイアはシンデレラ宮殿での任務で俺達を待ち受けていたラスボスであり、黒坊曰く『海の魔女』アースラとも深い関係を持つ者だ。本来俺達の敵ではずの『黒花』が、何故北条に矛先を向けるのか。
「私に剣先を向けるとは……一体何の真似かね」
「それは私の台詞よ。まさか私を利用してこんな事を仕組んでただなんて思わなかったわ。前に貴方は私に『始祖の加護』を持つスタニッシュリングを護るよう頼んでいたわよね? あの時の私は黙って命令通りに動いた。でもその裏で貴方は私に黙って妹とその恋人である黒神大蛇君をこの国ごと殺そうとした結果がこの戦争……でしょう?」
「利用? 何言ってんだ、ごふっ、げほっ……」
(黒花が、利用された……? それも北条に? あの時宮殿に奴の姿は無かったはずだが……)
言っている事が理解出来ず、思わず口に出てしまった。が、黒花はそんな俺の顔をチラリと見てニコリと笑った。
「貴方の計画通りだと、私が護った指輪を貴方が回収して、結界で封印させた彼をその力で焼き殺す……って感じよね? それも愛すべき妻を殺した復讐としてね」
「――そうだ、だがこれも全て私達家族の問題だ。この復讐を果たすために、貴様は私が宮殿に向かうまでリングを守るためだけに呼んだのだ。この時までに私の左手に始祖の加護が宿るまでな……」
「そうなのね。どうやら私、余計な事に首突っ込んじゃったみたい。でも、貴方の復讐というのもそろそろ終わりにしてあげる。今の私は貴方の敵だからねっ!」
姿勢を低く取り、跳ね上がるような勢いでエリミネイトを右斜めに振り上げながら突進する。北条は右手の鎌で難なく攻撃を受け止める。
「その剣……そうか、今ようやく貴様の元に戻ったか」
「私の力を抑えるために剣をあの学園に置いてきたんだろうけど、運が悪かったわね。事前に私の魔力をこの剣に溜めていたの。それが無かったらきっと今の私はこの剣を握ってないわ」
「……なら、今度は二度と握れなくしてみせる!」
北条の鎌と短剣、そしてレイアの剣がより速くぶつかり合い、激しい攻防戦が繰り広げられた。左右に身体を動かしたり弾いたりして互いの攻撃を躱しつつ、僅かな隙を探る。
「私の邪魔をするなっ……!」
「そっちこそ人間如きが魔女たる私に指図しないでくれないかしら」
鍔迫り合いになる度に睨み合い、再び刃が打ち合う音を響きかせる。もはやそこに俺が入る隙など無かった。
(くそっ、隙がねぇ……! 隙だらけのようでねぇのがめっちゃイライラするぜっ!)
激しい戦闘を繰り広げてるとはいえ、北条は黒花に全意識を向けてるわけではない。もしその狭すぎる穴があっても、そこに糸を通せるのはたった一度だけ。
――即ち、ここで最強の一撃を入れるしか北条を殺せない。ここを逃せば俺は即座に殺されるだろう。
「ちっ、諸刃の剣ってか……」
刀を杖代わりに何とか膝を立たせ、刀を右肩に背負うように構える。
「黒坊、てめぇにこの命捧げてやるぜ……だからぽっこり死ぬんじゃねぇぞ」
腰を落とし、しっかりと両足に体重をかける。刺された首の痛みをぐっと我慢しながら一呼吸置く。そして脳裏で恋鐘の音色を鳴らす――
「八剴抜刀・恋鐘式――」
まだ、一度も見せたことの無い型。従来の抜刀術と恋鐘式流派を混ぜ合わせた、俺にしか出せない究極奥義――!!
「っ――!」
「あらっ……!?」
突然の俺の行動にレイアは驚き、北条はふと俺の方を向く。しかしこの時には既に俺は地を蹴り、一瞬で北条の首に刃を向けていた。
「『因果裏報』――!!」
――静かな斬撃。もはや音を必要としない程の神速の抜刀術。本来宙に軌道を描く桃色の光も地を蹴った途端、微塵も見えなくなった。
ただ一つ、ガラスが砕け散るような音を地面に立てる音のみが響いた――
遂行者:錦野蒼乃、北条銀二を除くネフティス全メンバー
犠牲者:???
東京都渋谷区 武刀正義サイド――
「恋鐘の剣士よ……これで終わりだ!」
北条の短剣が俺の心臓に向かって突き刺そうとしてくる。当然力も入らない俺の身体は完全に宿命を受け入れる以外の選択をしない。
「ぁぁ……これで、終わりだなぁ……」
――安心したのか、ニヤリと笑みが溢れた。
「――俺の役目は、だけどな」
「っ――!!?」
刹那、北条の背後から一輪の黒百合が花開いた。そこに現れた黒髪の少女の右足が地面を着いた時、黒百合が渋谷区一面に咲き誇った。俺に向けられた短剣の切っ先が突如背後に向けられた。
「ごふっ……がはっ、げほっ……」
一瞬空中に浮いた俺はそのまま地面に崩れ落ちる。その衝撃で足元に血の池が作られる。
ふと正面を見ると、北条の奥には、黒い服に黒の長髪の少女が立っていた。
「さぁ……私の闇の演劇の続きを始めましょう、北条さん」
「……まさか貴様が来るとはな、『黒花』」
「『黒花』だとっ……!?」
その名を聞いた途端、俺は息を呑んだ。その二つ名を持つ少女……レイアはシンデレラ宮殿での任務で俺達を待ち受けていたラスボスであり、黒坊曰く『海の魔女』アースラとも深い関係を持つ者だ。本来俺達の敵ではずの『黒花』が、何故北条に矛先を向けるのか。
「私に剣先を向けるとは……一体何の真似かね」
「それは私の台詞よ。まさか私を利用してこんな事を仕組んでただなんて思わなかったわ。前に貴方は私に『始祖の加護』を持つスタニッシュリングを護るよう頼んでいたわよね? あの時の私は黙って命令通りに動いた。でもその裏で貴方は私に黙って妹とその恋人である黒神大蛇君をこの国ごと殺そうとした結果がこの戦争……でしょう?」
「利用? 何言ってんだ、ごふっ、げほっ……」
(黒花が、利用された……? それも北条に? あの時宮殿に奴の姿は無かったはずだが……)
言っている事が理解出来ず、思わず口に出てしまった。が、黒花はそんな俺の顔をチラリと見てニコリと笑った。
「貴方の計画通りだと、私が護った指輪を貴方が回収して、結界で封印させた彼をその力で焼き殺す……って感じよね? それも愛すべき妻を殺した復讐としてね」
「――そうだ、だがこれも全て私達家族の問題だ。この復讐を果たすために、貴様は私が宮殿に向かうまでリングを守るためだけに呼んだのだ。この時までに私の左手に始祖の加護が宿るまでな……」
「そうなのね。どうやら私、余計な事に首突っ込んじゃったみたい。でも、貴方の復讐というのもそろそろ終わりにしてあげる。今の私は貴方の敵だからねっ!」
姿勢を低く取り、跳ね上がるような勢いでエリミネイトを右斜めに振り上げながら突進する。北条は右手の鎌で難なく攻撃を受け止める。
「その剣……そうか、今ようやく貴様の元に戻ったか」
「私の力を抑えるために剣をあの学園に置いてきたんだろうけど、運が悪かったわね。事前に私の魔力をこの剣に溜めていたの。それが無かったらきっと今の私はこの剣を握ってないわ」
「……なら、今度は二度と握れなくしてみせる!」
北条の鎌と短剣、そしてレイアの剣がより速くぶつかり合い、激しい攻防戦が繰り広げられた。左右に身体を動かしたり弾いたりして互いの攻撃を躱しつつ、僅かな隙を探る。
「私の邪魔をするなっ……!」
「そっちこそ人間如きが魔女たる私に指図しないでくれないかしら」
鍔迫り合いになる度に睨み合い、再び刃が打ち合う音を響きかせる。もはやそこに俺が入る隙など無かった。
(くそっ、隙がねぇ……! 隙だらけのようでねぇのがめっちゃイライラするぜっ!)
激しい戦闘を繰り広げてるとはいえ、北条は黒花に全意識を向けてるわけではない。もしその狭すぎる穴があっても、そこに糸を通せるのはたった一度だけ。
――即ち、ここで最強の一撃を入れるしか北条を殺せない。ここを逃せば俺は即座に殺されるだろう。
「ちっ、諸刃の剣ってか……」
刀を杖代わりに何とか膝を立たせ、刀を右肩に背負うように構える。
「黒坊、てめぇにこの命捧げてやるぜ……だからぽっこり死ぬんじゃねぇぞ」
腰を落とし、しっかりと両足に体重をかける。刺された首の痛みをぐっと我慢しながら一呼吸置く。そして脳裏で恋鐘の音色を鳴らす――
「八剴抜刀・恋鐘式――」
まだ、一度も見せたことの無い型。従来の抜刀術と恋鐘式流派を混ぜ合わせた、俺にしか出せない究極奥義――!!
「っ――!」
「あらっ……!?」
突然の俺の行動にレイアは驚き、北条はふと俺の方を向く。しかしこの時には既に俺は地を蹴り、一瞬で北条の首に刃を向けていた。
「『因果裏報』――!!」
――静かな斬撃。もはや音を必要としない程の神速の抜刀術。本来宙に軌道を描く桃色の光も地を蹴った途端、微塵も見えなくなった。
ただ一つ、ガラスが砕け散るような音を地面に立てる音のみが響いた――
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