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第六章 ハロウィン戦争編

第百八十七話「熾烈な時間稼ぎ(上)」

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 最優先緊急任務:ネフティスNo.2錦野蒼乃と北条銀二の討伐及び『完全蘇生体』錦野智優美の討伐、死器『葬無冥殺之機神鈴白ほうむめいさつのきしんすずしろ』の討伐

 遂行者:錦野蒼乃、北条銀二を除くネフティス全メンバー
 犠牲者:???


 東京都渋谷区 白神亜玲澄サイド――

 重症の相棒と変わり果てた相棒に命を捧げようとした先輩がいないことを確認し、俺――白神亜玲澄とその一行は意識を北条及び鈴白という人型の巨大な列車へいきに切り替える。

「さぁて、一肌脱ごうじゃねぇか」
「北条とあの化け物を討伐、そして蒼乃さんの救出……かなり骨が折れるけど、私頑張るよっ!」
「大蛇達を逃がす時間稼ぎは大前提として、あの化け物は何とかしておきたい。あんなのがいたら日本壊滅なんて時間の問題だからな!」
「おうっ!」
「うんっ!」

 二人共に返事をし、それぞれ武器を構える。相手は北条と蒼乃さんに片腕を失った女性、そしてその背後にいる列車の怪物。これから三人であれらを止めなければならないのだ。

「……雑談は終わったかね?」
「あぁ……ここまで待っててくれてたとはな」
「いくら私にもその程度の配慮くらい敵にもする」
「なら待たせちまったな、いいとこ始めようぜ」
「そうだな……そしてすぐに終わらせてあげよう!」

 全員、地を蹴った。その中で雛乃さんと蒼乃さんは後ろに進み、距離をとる。俺と正義はそれぞれ北条と片腕の女性に剣を振りかぶる。

「正義、片腕の女性は無視していい! 今は北条に集中するぞ!」
「武器も片腕もねぇしな、承知だぜ白坊!!」

 正義は抵抗出来ないよう、女性の左腕を刀で真っ二つに斬り、速度を落とす事無く方向転換して北条の左首目掛けて再度突進する。

「黒坊の敵、討ち取りのお時間だぜ北条ォォォ!!!!」
「あくまで時間稼ぎってのを忘れるなよ正義っ!!」
「二人一斉にか……だが問題は無いっ!!」

 左右から迫りくる俺達に、北条は鎌と短剣の二刀流で対応する。

「くそっ、何ちゅう握力してんだ! こんなでけぇ鎌ぶん回しては片手でこの俺の攻撃を受け止めてやがるっ!」
「当たり前だろ正義。これでも北条はネフティスメンバーの一人……魔術は勿論体術も今の俺達では及ばないくらいだ!」
「なら少しでもその差を縮めるだけなんだよなぁ!!」

 刀を振り抜くと同時に反動で北条との距離を取る。すぐに刀を振りかぶり、再度攻撃を仕掛ける。

「『恋鐘之刀こがねのとう二千花之葬乱にちかのそうらん』っ!!」

 正義は空中で全身を捻り、その力を利用して回転し、竜巻を作り出した。桃色の光に包まれた竜巻は次第に正義の身体を包みこんだ。

「恋鐘の……か。中々珍しいものを見せてくれるな」
「この俺の流派を楽しんでくれてるようで良かったぜ。しかとこの斬れ味も堪能してくれよなぁ!!」

 言い終わりと同時に正義は刀を思い切り振り下ろした刹那、竜巻は勢いを増しながら北条の方へ向かっていく。

「無駄だっ……!」

 北条は竜巻に向かって突進し、逆手で掴んだ左手の短剣を竜巻に突き刺す。直後、竜巻は呆気なく消え果て、剣先はそのまま正義の心臓目掛けて迫ってくる。

「は……? 今何があったんやっ!?」
「神器『天羽々斬あまのはばきり』。あらゆる神器の能力、魔力を無視かつ強制解除する『神器殺し』。君の攻撃は全て私には届かない」
「ざけんじゃねぇ! そんなチートアイテムなんかにこの俺の刃が効かねぇわけが――」
「よせ正義っ! 今すぐ避けろ!!」
「このままぶった斬ってやっ……!!?」

 迫ってくる短剣を刀で受け止めようとする。しかし、短剣に近づく程振る速度が落ち、そのまま短剣が首元に滑り込む。そして一刺し。

「正義っ! ……くそっ、あの鎌が邪魔くさすぎるっ!」

 早く正義の元に向かいたいが、どれほど近づいても北条の右手に握られた巨大な鎌が妨げてくる。どうも厄介な存在だ。

「恋鐘の剣士よ……これで終わりだ!」

 吊り下げられるように首を刺された正義はほぼ意識を失っていた。傷口から鮮血が垂れ落ちていく。
 
(くそっ、もう魔力も無いから使いたくないが、あの力を使うしか……!)

 しかし、少しでも時間を稼ぐためだと覚悟を決め、左手を天高く上げる。朝日に照らされた指輪が煌めいたその時、左手から太陽を生成する。

「魔力がもったいねぇからなぁ……侍に北条を任せとくか」

 足元を溶岩と化しながら歩き進めたその先に待っていたのは、最古の神器……鈴白であった。

「――!!!」

 俺の存在に気づいたのか、頭の煙突から激しく黒煙を上げて威嚇する。赤く光る両目は確実に俺を敵として見ている。これは戦い甲斐がありそうだ。

「待たせたなぁ……てめぇの暇つぶし相手になってやるぜ。この戦神アレスがよぉぉ!!!」

 正義が窮地に立たされた中、時と太陽の力を持つ戦神と最古の神器の熾烈しれつな死闘が幕を開けようとしていた――
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