201 / 232
第六章 ハロウィン戦争編
第百八十七話「熾烈な時間稼ぎ(上)」
しおりを挟む
最優先緊急任務:ネフティスNo.2錦野蒼乃と北条銀二の討伐及び『完全蘇生体』錦野智優美の討伐、死器『葬無冥殺之機神鈴白』の討伐
遂行者:錦野蒼乃、北条銀二を除くネフティス全メンバー
犠牲者:???
東京都渋谷区 白神亜玲澄サイド――
重症の相棒と変わり果てた相棒に命を捧げようとした先輩がいないことを確認し、俺――白神亜玲澄とその一行は意識を北条及び鈴白という人型の巨大な列車に切り替える。
「さぁて、一肌脱ごうじゃねぇか」
「北条とあの化け物を討伐、そして蒼乃さんの救出……かなり骨が折れるけど、私頑張るよっ!」
「大蛇達を逃がす時間稼ぎは大前提として、あの化け物は何とかしておきたい。あんなのがいたら日本壊滅なんて時間の問題だからな!」
「おうっ!」
「うんっ!」
二人共に返事をし、それぞれ武器を構える。相手は北条と蒼乃さんに片腕を失った女性、そしてその背後にいる列車の怪物。これから三人であれらを止めなければならないのだ。
「……雑談は終わったかね?」
「あぁ……ここまで待っててくれてたとはな」
「いくら私にもその程度の配慮くらい敵にもする」
「なら待たせちまったな、いいとこ始めようぜ」
「そうだな……そしてすぐに終わらせてあげよう!」
全員、地を蹴った。その中で雛乃さんと蒼乃さんは後ろに進み、距離をとる。俺と正義はそれぞれ北条と片腕の女性に剣を振りかぶる。
「正義、片腕の女性は無視していい! 今は北条に集中するぞ!」
「武器も片腕もねぇしな、承知だぜ白坊!!」
正義は抵抗出来ないよう、女性の左腕を刀で真っ二つに斬り、速度を落とす事無く方向転換して北条の左首目掛けて再度突進する。
「黒坊の敵、討ち取りのお時間だぜ北条ォォォ!!!!」
「あくまで時間稼ぎってのを忘れるなよ正義っ!!」
「二人一斉にか……だが問題は無いっ!!」
左右から迫りくる俺達に、北条は鎌と短剣の二刀流で対応する。
「くそっ、何ちゅう握力してんだ! こんなでけぇ鎌ぶん回しては片手でこの俺の攻撃を受け止めてやがるっ!」
「当たり前だろ正義。これでも北条はネフティスメンバーの一人……魔術は勿論体術も今の俺達では及ばないくらいだ!」
「なら少しでもその差を縮めるだけなんだよなぁ!!」
刀を振り抜くと同時に反動で北条との距離を取る。すぐに刀を振りかぶり、再度攻撃を仕掛ける。
「『恋鐘之刀・二千花之葬乱』っ!!」
正義は空中で全身を捻り、その力を利用して回転し、竜巻を作り出した。桃色の光に包まれた竜巻は次第に正義の身体を包みこんだ。
「恋鐘の術式……か。中々珍しいものを見せてくれるな」
「この俺の流派を楽しんでくれてるようで良かったぜ。しかとこの斬れ味も堪能してくれよなぁ!!」
言い終わりと同時に正義は刀を思い切り振り下ろした刹那、竜巻は勢いを増しながら北条の方へ向かっていく。
「無駄だっ……!」
北条は竜巻に向かって突進し、逆手で掴んだ左手の短剣を竜巻に突き刺す。直後、竜巻は呆気なく消え果て、剣先はそのまま正義の心臓目掛けて迫ってくる。
「は……? 今何があったんやっ!?」
「神器『天羽々斬』。あらゆる神器の能力、魔力を無視かつ強制解除する『神器殺し』。君の攻撃は全て私には届かない」
「ざけんじゃねぇ! そんなチートアイテムなんかにこの俺の刃が効かねぇわけが――」
「よせ正義っ! 今すぐ避けろ!!」
「このままぶった斬ってやっ……!!?」
迫ってくる短剣を刀で受け止めようとする。しかし、短剣に近づく程振る速度が落ち、そのまま短剣が首元に滑り込む。そして一刺し。
「正義っ! ……くそっ、あの鎌が邪魔くさすぎるっ!」
早く正義の元に向かいたいが、どれほど近づいても北条の右手に握られた巨大な鎌が妨げてくる。どうも厄介な存在だ。
「恋鐘の剣士よ……これで終わりだ!」
吊り下げられるように首を刺された正義はほぼ意識を失っていた。傷口から鮮血が垂れ落ちていく。
(くそっ、もう魔力も無いから使いたくないが、あの力を使うしか……!)
しかし、少しでも時間を稼ぐためだと覚悟を決め、左手を天高く上げる。朝日に照らされた指輪が煌めいたその時、左手から太陽を生成する。
「魔力がもったいねぇからなぁ……侍に北条を任せとくか」
足元を溶岩と化しながら歩き進めたその先に待っていたのは、最古の神器……鈴白であった。
「――!!!」
俺の存在に気づいたのか、頭の煙突から激しく黒煙を上げて威嚇する。赤く光る両目は確実に俺を敵として見ている。これは戦い甲斐がありそうだ。
「待たせたなぁ……てめぇの暇つぶし相手になってやるぜ。この戦神アレスがよぉぉ!!!」
正義が窮地に立たされた中、時と太陽の力を持つ戦神と最古の神器の熾烈な死闘が幕を開けようとしていた――
遂行者:錦野蒼乃、北条銀二を除くネフティス全メンバー
犠牲者:???
東京都渋谷区 白神亜玲澄サイド――
重症の相棒と変わり果てた相棒に命を捧げようとした先輩がいないことを確認し、俺――白神亜玲澄とその一行は意識を北条及び鈴白という人型の巨大な列車に切り替える。
「さぁて、一肌脱ごうじゃねぇか」
「北条とあの化け物を討伐、そして蒼乃さんの救出……かなり骨が折れるけど、私頑張るよっ!」
「大蛇達を逃がす時間稼ぎは大前提として、あの化け物は何とかしておきたい。あんなのがいたら日本壊滅なんて時間の問題だからな!」
「おうっ!」
「うんっ!」
二人共に返事をし、それぞれ武器を構える。相手は北条と蒼乃さんに片腕を失った女性、そしてその背後にいる列車の怪物。これから三人であれらを止めなければならないのだ。
「……雑談は終わったかね?」
「あぁ……ここまで待っててくれてたとはな」
「いくら私にもその程度の配慮くらい敵にもする」
「なら待たせちまったな、いいとこ始めようぜ」
「そうだな……そしてすぐに終わらせてあげよう!」
全員、地を蹴った。その中で雛乃さんと蒼乃さんは後ろに進み、距離をとる。俺と正義はそれぞれ北条と片腕の女性に剣を振りかぶる。
「正義、片腕の女性は無視していい! 今は北条に集中するぞ!」
「武器も片腕もねぇしな、承知だぜ白坊!!」
正義は抵抗出来ないよう、女性の左腕を刀で真っ二つに斬り、速度を落とす事無く方向転換して北条の左首目掛けて再度突進する。
「黒坊の敵、討ち取りのお時間だぜ北条ォォォ!!!!」
「あくまで時間稼ぎってのを忘れるなよ正義っ!!」
「二人一斉にか……だが問題は無いっ!!」
左右から迫りくる俺達に、北条は鎌と短剣の二刀流で対応する。
「くそっ、何ちゅう握力してんだ! こんなでけぇ鎌ぶん回しては片手でこの俺の攻撃を受け止めてやがるっ!」
「当たり前だろ正義。これでも北条はネフティスメンバーの一人……魔術は勿論体術も今の俺達では及ばないくらいだ!」
「なら少しでもその差を縮めるだけなんだよなぁ!!」
刀を振り抜くと同時に反動で北条との距離を取る。すぐに刀を振りかぶり、再度攻撃を仕掛ける。
「『恋鐘之刀・二千花之葬乱』っ!!」
正義は空中で全身を捻り、その力を利用して回転し、竜巻を作り出した。桃色の光に包まれた竜巻は次第に正義の身体を包みこんだ。
「恋鐘の術式……か。中々珍しいものを見せてくれるな」
「この俺の流派を楽しんでくれてるようで良かったぜ。しかとこの斬れ味も堪能してくれよなぁ!!」
言い終わりと同時に正義は刀を思い切り振り下ろした刹那、竜巻は勢いを増しながら北条の方へ向かっていく。
「無駄だっ……!」
北条は竜巻に向かって突進し、逆手で掴んだ左手の短剣を竜巻に突き刺す。直後、竜巻は呆気なく消え果て、剣先はそのまま正義の心臓目掛けて迫ってくる。
「は……? 今何があったんやっ!?」
「神器『天羽々斬』。あらゆる神器の能力、魔力を無視かつ強制解除する『神器殺し』。君の攻撃は全て私には届かない」
「ざけんじゃねぇ! そんなチートアイテムなんかにこの俺の刃が効かねぇわけが――」
「よせ正義っ! 今すぐ避けろ!!」
「このままぶった斬ってやっ……!!?」
迫ってくる短剣を刀で受け止めようとする。しかし、短剣に近づく程振る速度が落ち、そのまま短剣が首元に滑り込む。そして一刺し。
「正義っ! ……くそっ、あの鎌が邪魔くさすぎるっ!」
早く正義の元に向かいたいが、どれほど近づいても北条の右手に握られた巨大な鎌が妨げてくる。どうも厄介な存在だ。
「恋鐘の剣士よ……これで終わりだ!」
吊り下げられるように首を刺された正義はほぼ意識を失っていた。傷口から鮮血が垂れ落ちていく。
(くそっ、もう魔力も無いから使いたくないが、あの力を使うしか……!)
しかし、少しでも時間を稼ぐためだと覚悟を決め、左手を天高く上げる。朝日に照らされた指輪が煌めいたその時、左手から太陽を生成する。
「魔力がもったいねぇからなぁ……侍に北条を任せとくか」
足元を溶岩と化しながら歩き進めたその先に待っていたのは、最古の神器……鈴白であった。
「――!!!」
俺の存在に気づいたのか、頭の煙突から激しく黒煙を上げて威嚇する。赤く光る両目は確実に俺を敵として見ている。これは戦い甲斐がありそうだ。
「待たせたなぁ……てめぇの暇つぶし相手になってやるぜ。この戦神アレスがよぉぉ!!!」
正義が窮地に立たされた中、時と太陽の力を持つ戦神と最古の神器の熾烈な死闘が幕を開けようとしていた――
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
神の使いでのんびり異世界旅行〜チート能力は、あくまで自由に生きる為に〜
和玄
ファンタジー
連日遅くまで働いていた男は、転倒事故によりあっけなくその一生を終えた。しかし死後、ある女神からの誘いで使徒として異世界で旅をすることになる。
与えられたのは並外れた身体能力を備えた体と、卓越した魔法の才能。
だが骨の髄まで小市民である彼は思った。とにかく自由を第一に異世界を楽しもうと。
地道に進む予定です。
【完結】あなたの思い違いではありませんの?
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?!
「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」
お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。
婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。
転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!
ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/19……完結
2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位
2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位
2024/08/12……連載開始
25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい
こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。
社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。
頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。
オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました
空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが当たり前になった世界。風間は平凡な会社員として日々を暮らしていたが、ある日見に覚えのないミスを犯し会社をクビになってしまう。その上親友だった男も彼女を奪われ婚約破棄までされてしまった。世の中が嫌になった風間は自暴自棄になり山に向かうがそこで誰からも見捨てられた放置ダンジョンを見つけてしまう。どことなく親近感を覚えた風間はダンジョンで暮らしてみることにするが、そこにはとても可愛らしいモンスターが隠れ住んでいた。ひょんなことでモンスターに懐かれた風間は様々なモンスターと暮らしダンジョン内でのスローライフを満喫していくことになるのだった。
追放しなくて結構ですよ。自ら出ていきますので。
華原 ヒカル
ファンタジー
子爵家の令嬢であるクロエは、仕える身である伯爵家の令嬢、マリーに頭が上がらない日々が続いていた。加えて、母が亡くなって以来、父からの暴言や暴力もエスカレートするばかり。
「ゴミ、屑」と罵られることが当たり前となっていた。
そんな、クロエに社交界の場で、禁忌を犯したマリー。
そして、クロエは完全に吹っ切れた。
「私は、屑でゴミですから、居なくなったところで問題ありませんよね?」
これで自由になれる。やりたいことが実は沢山ありましたの。だから、私、とっても幸せです。
「仕事ですか?ご自慢の精神論で頑張って下さいませ」
魔符屋の倅・・・・・魔力は無いけど、オーラで頑張る
切粉立方体
ファンタジー
魔符工房の息子のユーリは魔力が無く、14歳で成人すると、鬼籍に入れられ聖都フェリシアから追放される宿命だった。
だが、偶然魔法都市に繋がる路地を発見し、人生が変わっていく。
落ちこぼれ一兵卒が転生してから大活躍
きこうダきこう
ファンタジー
王国騎士団の一兵卒だった主人公が魔王軍との戦闘中味方の誰かに殺され命を落とした後、神の使いより死ぬべき運命ではなかったと言い渡され、魂は死んだ時のままで再び同じ人生を歩んでいく事となった。
そのため幼少時代トロルによって家族を殺され、村を滅ぼされた出来事を阻止しようと思い、兄貴分的存在の人と父親に話し賢者と呼ばれる人やエルフ族らの助けを借りて襲撃を阻止した。
その後前世と同じく王国騎士団へ入団するための養成学校に入学するも、入学前に賢者の下で修行していた際に知った兄貴分的存在の人と幼馴染みに起こる死の運命を回避させようとしたり、前世で自分を殺したと思われる人物と遭遇したり、自身の運命の人と出会ったりして学校生活を堪能したのだった。
そして無事学校を卒業して騎士団に入団したが、その後も自身の運命を左右させる出来事に遭遇するもそれらを無事に乗り越え、再び魔王軍との決戦の場に赴いたのだった······。
記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー
コーヒー微糖派
ファンタジー
勇者と魔王の戦いの舞台となっていた、"ルクガイア王国"
その戦いは多くの犠牲を払った激戦の末に勇者達、人類の勝利となった。
そんなところに現れた一人の中年男性。
記憶もなく、魔力もゼロ。
自分の名前も分からないおっさんとその仲間たちが織り成すファンタジー……っぽい物語。
記憶喪失だが、腕っぷしだけは強い中年主人公。同じく魔力ゼロとなってしまった元魔法使い。時々訪れる恋模様。やたらと癖の強い盗賊団を始めとする人々と紡がれる絆。
その先に待っているのは"失われた過去"か、"新たなる未来"か。
◆◆◆
元々は私が昔に自作ゲームのシナリオとして考えていたものを文章に起こしたものです。
小説完全初心者ですが、よろしくお願いします。
※なお、この物語に出てくる格闘用語についてはあくまでフィクションです。
表紙画像は草食動物様に作成していただきました。この場を借りて感謝いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる