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第六章 ハロウィン戦争編
第百七十三話「異常事態(上)」
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――異常事態発生 異常事態発生
『最優先緊急任務』
東京都渋谷区に異常事態発生。被害拡大の恐れあり。ネフティスメンバーは直ちに直行せよ。繰り返す――――
「っ――!?」
ポケットの中の携帯が警告音と共に震える。僕――マヤネーン・シューベルは画面を開き、詳細を確認する。しかしそこには――
「……東京都渋谷区に謎の集団が一斉召喚され、街を破壊している。被害を少しでも抑えるべく、ネフティスメンバーは直ちに応戦せよっ……!?」
まずい、今はネフティス同士で争ってる場合じゃない。日本壊滅の危機だっ……!
「とりあえず何とかしないとっ!」
急いで手袋を履きながら運転席に乗り込み、そのまま車を走らせた。
「一先ず家に戻って全員に連絡だ……!」
◇
東京都渋谷区 涼宮凪沙サイド
――大蛇君なら、大蛇君達なら絶対この戦いを終わらせられる……だから彼らに全てを託して私はこの世を去る。そのシチュエーションも悪くはなかった。なのに……
「トリック……トリックゥゥ……」
「オカシ……オカシ…………チョコォォ……クッキィィィ……オカシィィィィ!!!!」
「っ――!!」
そう簡単に運命は私を死なせてくれないらしい。にしても何この集団。白いボロボロの衣服に鋭い鎌を持った骸骨の亡霊。その後ろにはジャック・オ・ランタンを思わせるような全身かぼちゃ色に頭が正にそれのゾンビの軍団がじりじりと私を挟んでいく。
「うっ……私、死ぬ寸前……なのにぃ……!!」
おまけに蒼乃ちゃんも意識を失っている。そんな中このボロボロの状態でどうこの集団と戦えというのか。
「……これが北条の真の目的って事ね」
もしくは……死器エリミネイトを回収出来なかった際の、最後の手段。
今日という日には正にぴったりには賑やかになった。かぼちゃの被り物、あれじゃないけど被りたかったな。
「……でもごめんね。私の仮装はミイラだって毎年決めてるのっ!!」
実質死にものぐるいで槍を振り回し、双方から亡霊達が迫ってくるのを待った。
「北条銀二。ネフティスの皆を……ネフティスをこんな目にさせた事……絶対許さないんだから!」
◇
東京都渋谷区 白神亜玲澄、武刀正義サイド
目的以外の敵は殺さない……そんな正義の性格のおかげで、俺達はネフティスメンバーの雛乃先輩を北条の洗脳から解き、今や共に行動していた。
「そうなんだ……じゃあ、私達は知らぬ間に北条に操られて、利用されていたって事なんだ」
「そうだと思います。とは言っても、実際そうなんですけど」
「とりあえず誤解が解けてくれて良かったぜ。ま、まだまだいるんだろうけどよ」
「そりゃそうだろ。凪沙先輩と雛乃先輩、北条を除いたらまだ7人もいる。大事が起きる前に全員にかかった北条の呪縛を解かないといけねぇんだぞ」
今のところ、何で正義が俺の攻撃から雛乃先輩を守っただけで呪縛から解けたのかは不明だ。だがこのようにして北条に利用されたネフティスメンバーが救われたのだ。このまま同様に全員を救い、ネフティスを元通りにする。それが今回の緊急任務の一つでもあるのだから。
「黒坊……無事だと良いけどな」
「あぁ……てか大蛇が死んだら俺達から何もかもが失われる最悪の未来になってしまうからな。無事だと思ってないとこの先やっていけないぞ」
「大蛇……」
黒神大蛇。名前は聞いたことある。彼らと同じネフティスに所属していて、数少ない禁忌魔法の所有者。更に今は死器エリミネイトを操る死神。北条さんが最も警戒し、最も憎むべき本来の敵。でも、私はその個人的憎悪で利用されていただけだった。一緒に任務を遂行する仲間を殺したくなかったから。
「彼もまた、辛い中で生きているんだね……」
「……雛乃パイセン?」
「あ、ごめんね二人共。早く皆を助けないと、だね!」
つい癖で出てしまう独り言を聞かれて赤らめた顔を、お得意の作り笑顔で何とか誤魔化して前を向いて速歩きした。
「あ、ちょっと早ぇぜパイセン!!」
「正義、お前も一旦落ち着けっ――」
亜玲澄が二人に追いつこうと足を踏み込んだ、その刹那……街が大きく揺れ始めた。
「っ……!!?」
「きゃっ……!」
「地震かっ!?」
三人の動きがピタリと止まる。所々で窓ガラスが割れる音が鳴り響き、人の悲鳴と共鳴する。
「オカシ……オカシ…………」
「キャンディィ……ペロペロキャンディィィ!!!!!」
正義の頭上目掛けてかぼちゃ頭の白い亡霊が巨大な鎌を振りかぶる。
「うおっ……!!」
この一秒と経たない間に正義は思い切り背中を反り、鎌の切っ先を避ける。正義の髪を撫でた直後、衝撃波で地面が扇形に割れる。
「マジかよ……バケモンかよこいつら」
――待て、それより白坊達はっ……!
「心配すんな! 俺達なら無事だ」
「とりあえず今はこっちを優先しないとだね!」
「へっ……どうやら心配した俺が馬鹿みてぇだな!」
亜玲澄達はそれぞれ衝撃波が来る前に左右に飛んで避け、武器を構えていた。亡霊が近づく度に襲い掛かる地震に耐えながら、正義の元に集まる。
「正義、何がなんだか分かんねぇけどなるべく被害を抑えつつ全力で潰すぞ」
「ま、いつも通りやれって事ね。分かってますぜ」
「ふふっ、敵の敵は味方……こういうのも悪くないね!」
「何か使い方間違ってるような……いや、指摘してる場合じゃないな!」
正面にいる鎌を持った亡霊を筆頭に、後ろから一気に濁流のように襲い掛かってきた。
亜玲澄と正義もほぼ同時に地を蹴り、雛乃は後方に飛びながら弓を構える。
こうして、渋谷の各場所で血に染まる地獄のハロウィンパーティーが行われた――
『最優先緊急任務』
東京都渋谷区に異常事態発生。被害拡大の恐れあり。ネフティスメンバーは直ちに直行せよ。繰り返す――――
「っ――!?」
ポケットの中の携帯が警告音と共に震える。僕――マヤネーン・シューベルは画面を開き、詳細を確認する。しかしそこには――
「……東京都渋谷区に謎の集団が一斉召喚され、街を破壊している。被害を少しでも抑えるべく、ネフティスメンバーは直ちに応戦せよっ……!?」
まずい、今はネフティス同士で争ってる場合じゃない。日本壊滅の危機だっ……!
「とりあえず何とかしないとっ!」
急いで手袋を履きながら運転席に乗り込み、そのまま車を走らせた。
「一先ず家に戻って全員に連絡だ……!」
◇
東京都渋谷区 涼宮凪沙サイド
――大蛇君なら、大蛇君達なら絶対この戦いを終わらせられる……だから彼らに全てを託して私はこの世を去る。そのシチュエーションも悪くはなかった。なのに……
「トリック……トリックゥゥ……」
「オカシ……オカシ…………チョコォォ……クッキィィィ……オカシィィィィ!!!!」
「っ――!!」
そう簡単に運命は私を死なせてくれないらしい。にしても何この集団。白いボロボロの衣服に鋭い鎌を持った骸骨の亡霊。その後ろにはジャック・オ・ランタンを思わせるような全身かぼちゃ色に頭が正にそれのゾンビの軍団がじりじりと私を挟んでいく。
「うっ……私、死ぬ寸前……なのにぃ……!!」
おまけに蒼乃ちゃんも意識を失っている。そんな中このボロボロの状態でどうこの集団と戦えというのか。
「……これが北条の真の目的って事ね」
もしくは……死器エリミネイトを回収出来なかった際の、最後の手段。
今日という日には正にぴったりには賑やかになった。かぼちゃの被り物、あれじゃないけど被りたかったな。
「……でもごめんね。私の仮装はミイラだって毎年決めてるのっ!!」
実質死にものぐるいで槍を振り回し、双方から亡霊達が迫ってくるのを待った。
「北条銀二。ネフティスの皆を……ネフティスをこんな目にさせた事……絶対許さないんだから!」
◇
東京都渋谷区 白神亜玲澄、武刀正義サイド
目的以外の敵は殺さない……そんな正義の性格のおかげで、俺達はネフティスメンバーの雛乃先輩を北条の洗脳から解き、今や共に行動していた。
「そうなんだ……じゃあ、私達は知らぬ間に北条に操られて、利用されていたって事なんだ」
「そうだと思います。とは言っても、実際そうなんですけど」
「とりあえず誤解が解けてくれて良かったぜ。ま、まだまだいるんだろうけどよ」
「そりゃそうだろ。凪沙先輩と雛乃先輩、北条を除いたらまだ7人もいる。大事が起きる前に全員にかかった北条の呪縛を解かないといけねぇんだぞ」
今のところ、何で正義が俺の攻撃から雛乃先輩を守っただけで呪縛から解けたのかは不明だ。だがこのようにして北条に利用されたネフティスメンバーが救われたのだ。このまま同様に全員を救い、ネフティスを元通りにする。それが今回の緊急任務の一つでもあるのだから。
「黒坊……無事だと良いけどな」
「あぁ……てか大蛇が死んだら俺達から何もかもが失われる最悪の未来になってしまうからな。無事だと思ってないとこの先やっていけないぞ」
「大蛇……」
黒神大蛇。名前は聞いたことある。彼らと同じネフティスに所属していて、数少ない禁忌魔法の所有者。更に今は死器エリミネイトを操る死神。北条さんが最も警戒し、最も憎むべき本来の敵。でも、私はその個人的憎悪で利用されていただけだった。一緒に任務を遂行する仲間を殺したくなかったから。
「彼もまた、辛い中で生きているんだね……」
「……雛乃パイセン?」
「あ、ごめんね二人共。早く皆を助けないと、だね!」
つい癖で出てしまう独り言を聞かれて赤らめた顔を、お得意の作り笑顔で何とか誤魔化して前を向いて速歩きした。
「あ、ちょっと早ぇぜパイセン!!」
「正義、お前も一旦落ち着けっ――」
亜玲澄が二人に追いつこうと足を踏み込んだ、その刹那……街が大きく揺れ始めた。
「っ……!!?」
「きゃっ……!」
「地震かっ!?」
三人の動きがピタリと止まる。所々で窓ガラスが割れる音が鳴り響き、人の悲鳴と共鳴する。
「オカシ……オカシ…………」
「キャンディィ……ペロペロキャンディィィ!!!!!」
正義の頭上目掛けてかぼちゃ頭の白い亡霊が巨大な鎌を振りかぶる。
「うおっ……!!」
この一秒と経たない間に正義は思い切り背中を反り、鎌の切っ先を避ける。正義の髪を撫でた直後、衝撃波で地面が扇形に割れる。
「マジかよ……バケモンかよこいつら」
――待て、それより白坊達はっ……!
「心配すんな! 俺達なら無事だ」
「とりあえず今はこっちを優先しないとだね!」
「へっ……どうやら心配した俺が馬鹿みてぇだな!」
亜玲澄達はそれぞれ衝撃波が来る前に左右に飛んで避け、武器を構えていた。亡霊が近づく度に襲い掛かる地震に耐えながら、正義の元に集まる。
「正義、何がなんだか分かんねぇけどなるべく被害を抑えつつ全力で潰すぞ」
「ま、いつも通りやれって事ね。分かってますぜ」
「ふふっ、敵の敵は味方……こういうのも悪くないね!」
「何か使い方間違ってるような……いや、指摘してる場合じゃないな!」
正面にいる鎌を持った亡霊を筆頭に、後ろから一気に濁流のように襲い掛かってきた。
亜玲澄と正義もほぼ同時に地を蹴り、雛乃は後方に飛びながら弓を構える。
こうして、渋谷の各場所で血に染まる地獄のハロウィンパーティーが行われた――
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