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第六章 ハロウィン戦争編
第百七十一話「女神の輪廻」
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緊急任務:ネフティスNo.6北条銀二の討伐(遂行済)、地球防衛組織ネフティスを北条の支配から奪還する
遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ・ヴィーナス、涼宮凪沙、サーシェス、ミスリア、桐雨芽依、アルスタリア高等学院全生徒
犠牲者:エレイナ・ヴィーナス、涼宮凪沙
――あの時を、思い出す。かつて愛した一匹の竜に、骨すら残さず焼かれた時の事を。
死に方は違えど、死ぬと分かった時の虚無感は全く同じ。まるで舞台で何も出来ずに退場していく、憐れな踊り子の如く。
皆……ごめんね。私はもうここまで。後のことは皆に任せるよ。きっと、トリトン王も姉様達も、皆許してくれる。『よく頑張って生きたね』って、褒めてくれる。
でも、やっぱり悔いはあるよ。人魚だった頃から……いや、もっと前から私の事を愛してくれた彼をこの残酷な世界に置いていく事になる。どうせなら、一緒に死にたかったな。でも、彼にはお兄ちゃんや正義君もいる。きっと私がいない分の寂しさ、悲しさ全てを少しでもかき消してくれるはず。
「……これから大変だけど、強く生きてね。大蛇君」
……じゃあ、そろそろ行くね。皆の事、ちゃんと見守ってるから――
「――何一人でぶつぶつ言ってるんだ」
「ほぇ?」
突然後ろから声が聞こえ、思わず情けない声が出る。ふと振り向くと、そこには見覚えのある彼の姿があった。
「……言っておくが、お前を成仏させる気は無い。お前はまだ任務を一ミリも遂行していないだろうに」
「えっ……どういう事?」
意味が分からない。目の前にいるのは大蛇君だ。でも、全身をボロボロの黒服で統一されている。口元も色褪せた白のマフラーで覆われており、いつも見る彼とはまた違うように感じる。でも今目の前にいる大蛇君の方が私にとっては馴染みがある気がする。
「……ここは死生の狭間。あらゆる魂が彷徨い、次の道を探す場所。そして俺はこの狭間の守護者だ」
「守護者……」
……という事は、こっちの大蛇君と現世の大蛇君は別人って事なのかな。何かこっちの方が愛想が無い。
「それで、お前の任務というのは『お前を殺した邪竜への復讐』だ。わざわざ人魚から過去の姿に輪廻転生しておいて人間に化けたあの竜を殺せずにいたままここに来るとは……女神一族も愚かなものだな」
「っ……」
違う。この人は絶対に大蛇君じゃない。私の知ってる大蛇君は、私やその家族を卑下するような竜じゃない。なのに……あの人はそれを簡単に口にしている。誰かに取り憑かれてるのだろうか。
「……私はその任務、果たす気は無いよ。だって私はそんな彼を愛しているから。たとえ一度私を殺したとしても、私に少しでも楽しい思い出を作ってくれた彼が好きなの。だから復讐なんて出来ない。したくない! 今、心の底から私は貴方を拒絶しているの!!」
「……」
言ってしまった。これでこの後何が起こるかなんて分かりきってるようなものだ。でも、大蛇君に復讐するくらいなら死んだ方がマシ。彼は絶対に、殺さないし殺させないって決めたから。
「……もう好きにしろ。どんな悲惨な末路に辿ろうと知らんからな。んな事より早くそこに仰向けになれ」
「……ありがとね」
ため息を吐きながらも私の意志を受け止めてくれた大蛇君に感謝し、私は言われた通り魔法陣が浮かぶ床に仰向けになる。
「……次はただの人間になるんだよね、私」
「それはその目と身体で確かめろ――」
ほんの少し楽しみにしながら、私はただその時を待つ。次第に身体が浮き上がるように軽くなり、いつしか視界が真っ白になった。
そして、エレイナ・ヴィーナスは三度目の輪廻転生を遂げる事となる――
遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ・ヴィーナス、涼宮凪沙、サーシェス、ミスリア、桐雨芽依、アルスタリア高等学院全生徒
犠牲者:エレイナ・ヴィーナス、涼宮凪沙
――あの時を、思い出す。かつて愛した一匹の竜に、骨すら残さず焼かれた時の事を。
死に方は違えど、死ぬと分かった時の虚無感は全く同じ。まるで舞台で何も出来ずに退場していく、憐れな踊り子の如く。
皆……ごめんね。私はもうここまで。後のことは皆に任せるよ。きっと、トリトン王も姉様達も、皆許してくれる。『よく頑張って生きたね』って、褒めてくれる。
でも、やっぱり悔いはあるよ。人魚だった頃から……いや、もっと前から私の事を愛してくれた彼をこの残酷な世界に置いていく事になる。どうせなら、一緒に死にたかったな。でも、彼にはお兄ちゃんや正義君もいる。きっと私がいない分の寂しさ、悲しさ全てを少しでもかき消してくれるはず。
「……これから大変だけど、強く生きてね。大蛇君」
……じゃあ、そろそろ行くね。皆の事、ちゃんと見守ってるから――
「――何一人でぶつぶつ言ってるんだ」
「ほぇ?」
突然後ろから声が聞こえ、思わず情けない声が出る。ふと振り向くと、そこには見覚えのある彼の姿があった。
「……言っておくが、お前を成仏させる気は無い。お前はまだ任務を一ミリも遂行していないだろうに」
「えっ……どういう事?」
意味が分からない。目の前にいるのは大蛇君だ。でも、全身をボロボロの黒服で統一されている。口元も色褪せた白のマフラーで覆われており、いつも見る彼とはまた違うように感じる。でも今目の前にいる大蛇君の方が私にとっては馴染みがある気がする。
「……ここは死生の狭間。あらゆる魂が彷徨い、次の道を探す場所。そして俺はこの狭間の守護者だ」
「守護者……」
……という事は、こっちの大蛇君と現世の大蛇君は別人って事なのかな。何かこっちの方が愛想が無い。
「それで、お前の任務というのは『お前を殺した邪竜への復讐』だ。わざわざ人魚から過去の姿に輪廻転生しておいて人間に化けたあの竜を殺せずにいたままここに来るとは……女神一族も愚かなものだな」
「っ……」
違う。この人は絶対に大蛇君じゃない。私の知ってる大蛇君は、私やその家族を卑下するような竜じゃない。なのに……あの人はそれを簡単に口にしている。誰かに取り憑かれてるのだろうか。
「……私はその任務、果たす気は無いよ。だって私はそんな彼を愛しているから。たとえ一度私を殺したとしても、私に少しでも楽しい思い出を作ってくれた彼が好きなの。だから復讐なんて出来ない。したくない! 今、心の底から私は貴方を拒絶しているの!!」
「……」
言ってしまった。これでこの後何が起こるかなんて分かりきってるようなものだ。でも、大蛇君に復讐するくらいなら死んだ方がマシ。彼は絶対に、殺さないし殺させないって決めたから。
「……もう好きにしろ。どんな悲惨な末路に辿ろうと知らんからな。んな事より早くそこに仰向けになれ」
「……ありがとね」
ため息を吐きながらも私の意志を受け止めてくれた大蛇君に感謝し、私は言われた通り魔法陣が浮かぶ床に仰向けになる。
「……次はただの人間になるんだよね、私」
「それはその目と身体で確かめろ――」
ほんの少し楽しみにしながら、私はただその時を待つ。次第に身体が浮き上がるように軽くなり、いつしか視界が真っ白になった。
そして、エレイナ・ヴィーナスは三度目の輪廻転生を遂げる事となる――
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