黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》

Siranui

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第六章 ハロウィン戦争編

第百七十話「日落ちと夜明け」

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 緊急任務:ネフティスNo.6北条銀二の討伐、地球防衛組織ネフティスを北条の支配から奪還する

 遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ・ヴィーナス、涼宮凪沙、サーシェス、ミスリア、桐雨芽依、アルスタリア高等学院全生徒 
 犠牲者:エレイナ・ヴィーナス


「あぁ……寒い、なぁ……」

 ダイヤのように透き通る水色の髪が赤く染まり、レーザーで斬られた左肩から下全てから出血する。その向かい合わせに倒れる少女もまた血を流しながらふふっと軽く微笑む。

「……えぇ、少し身体が痺れてきましたよ」

 今も相棒同士として共に戦ってきた二人は、少し大げさな冗談も交えながら笑い合う。そう、どうせこれから死ぬのだから。最期の時くらい、めいいっぱい笑ってこの人生を終わらせたい。

「……今頃、大蛇君は……北条と……」
「……戦ってる、でしょうね。ですけど、きっと彼一人では勝てませんよ……あの人は、未知ですからね……」

 白髮の少女……蒼乃ちゃんは少し呆れるように苦笑いを浮かべる。まぁ、確かにあの人は未知というか何もかもが謎に包まれてる感じがして正直怖い。でも……きっと……

「いいや……大蛇君なら、絶対勝つよ。この私が……言ってる、から……間違いない……」
「凪沙さん、それ以上話したら……」
「それは君もでしょ……?」
「……ふふっ、どうやらその通り…………みたいですね」

 互いに同じ夜空を見上げながら微笑み合い、ゆっくりと目を閉じる。

 ……ごめんね、皆。後は任せたよ――




 ◇

 東京都渋谷区 スクランブル交差点――

 バキバキッと渋谷の街を覆った氷が砕け散り、元の姿に戻っていく。床の氷も亀裂が広がっていき、靴底が乾ききった地面に付く。

「……はぁ、久しぶりにこれだけ疲れたな~」
「くっ……やはりトリトン王一族恐るべしと言ったところか……」

 お互い全身に傷をつけながらも、勝負は既に決まっていた。ファウストが膝を付け、ミスリアがその姿を見つめる。

「……どう? これで満足した?」

 息が上がりながらもまだ戦えると言わんばかりの余裕な笑みを浮かべながらファウストに問う。そんなミスリアに、ファウストは軽く笑いながら答える。

「ふっ、ハロウィン戦争はだと言うのにな……こんな所でとうに八分目を超えてしまうとは、超越者として不甲斐ないな」
「素直に満足~って言えばいいのに。相変わらずその強情な所はあの時から変わらないね、『空君』」
「……」

 その言葉を耳にした時、彼はふと黙り込んだ。空という己の真名を言った事に対する怒りでも、ミスリアとの戦いでこのような決着がついた事への不条理を感じているようには見えない。
 ただ、その名を懐かしむかのように……目を閉じて、夢を見るかのように当時の頃を思い出していく。

「随分と久しいな、そう呼ばれるのは」
「神々の超越者と言いつつ、結局は『神殺し』の人間だからね……それに、私達はからの仲なんだし、当時の呼び方でいいでしょ?」
 

 ――まだ深夜だと言うのに、あの笑顔が太陽のように明るい。我の中の闇を、夜明けと共に溶かしていく。次第に懐かしい日々がフラッシュバックしていっては、消えていく。
 全身を包む光の炎が消え、スーツ姿の男性が中から現れる。白の短髪に透き通るような純白の目、そしてがっしりとした身体が顕になる。

「……これは、一体……」
「禁忌逆式『逆光無象フラッシュバリスタ』。私の生徒でもある大蛇君の禁忌魔法を投影し、ちょいと応用を加えたものだよ。能力としては、かな」
「貴様もよくそんな気色悪い技をいとも簡単に……」

 あぁ、そうだった。このミスリアという女はいつも我の想像を超える存在だったな。まさか他人の禁忌魔法をコピーして反転させてオリジナル仕様にするなんて誰が想像した。この我とて、たかが一人の人間にそんな事など到底出来ないと思い切っていた。

 そう思っていた時点で、我は一人の超越者にんげんに負けていたのだ。
 
「……ミスリア、お前に最後の予言だ。このハロウィン戦争の黒幕は――」
「えっ――」


 ファウストから告げられた、最後の予言。その『最悪の予言』が現実となるにはもはや時間の問題に等しかった――――
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