183 / 232
第六章 ハロウィン戦争編
第百七十話「日落ちと夜明け」
しおりを挟む
緊急任務:ネフティスNo.6北条銀二の討伐、地球防衛組織ネフティスを北条の支配から奪還する
遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ・ヴィーナス、涼宮凪沙、サーシェス、ミスリア、桐雨芽依、アルスタリア高等学院全生徒
犠牲者:エレイナ・ヴィーナス
「あぁ……寒い、なぁ……」
ダイヤのように透き通る水色の髪が赤く染まり、レーザーで斬られた左肩から下全てから出血する。その向かい合わせに倒れる少女もまた血を流しながらふふっと軽く微笑む。
「……えぇ、少し身体が痺れてきましたよ」
今も相棒同士として共に戦ってきた二人は、少し大げさな冗談も交えながら笑い合う。そう、どうせこれから死ぬのだから。最期の時くらい、めいいっぱい笑ってこの人生を終わらせたい。
「……今頃、大蛇君は……北条と……」
「……戦ってる、でしょうね。ですけど、きっと彼一人では勝てませんよ……あの人は、未知ですからね……」
白髮の少女……蒼乃ちゃんは少し呆れるように苦笑いを浮かべる。まぁ、確かにあの人は未知というか何もかもが謎に包まれてる感じがして正直怖い。でも……きっと……
「いいや……大蛇君なら、絶対勝つよ。この私が……言ってる、から……間違いない……」
「凪沙さん、それ以上話したら……」
「それは君もでしょ……?」
「……ふふっ、どうやらその通り…………みたいですね」
互いに同じ夜空を見上げながら微笑み合い、ゆっくりと目を閉じる。
……ごめんね、皆。後は任せたよ――
◇
東京都渋谷区 スクランブル交差点――
バキバキッと渋谷の街を覆った氷が砕け散り、元の姿に戻っていく。床の氷も亀裂が広がっていき、靴底が乾ききった地面に付く。
「……はぁ、久しぶりにこれだけ疲れたな~」
「くっ……やはりトリトン王一族恐るべしと言ったところか……」
お互い全身に傷をつけながらも、勝負は既に決まっていた。ファウストが膝を付け、ミスリアがその姿を見つめる。
「……どう? これで満足した?」
息が上がりながらもまだ戦えると言わんばかりの余裕な笑みを浮かべながらファウストに問う。そんなミスリアに、ファウストは軽く笑いながら答える。
「ふっ、ハロウィン戦争はまだ序盤だと言うのにな……こんな所でとうに八分目を超えてしまうとは、超越者として不甲斐ないな」
「素直に満足~って言えばいいのに。相変わらずその強情な所はあの時から変わらないね、『空君』」
「……」
その言葉を耳にした時、彼はふと黙り込んだ。空という己の真名を言った事に対する怒りでも、ミスリアとの戦いでこのような決着がついた事への不条理を感じているようには見えない。
ただ、その名を懐かしむかのように……目を閉じて、夢を見るかのように当時の頃を思い出していく。
「随分と久しいな、そう呼ばれるのは」
「神々の超越者と言いつつ、結局は『神殺し』の人間だからね……それに、私達はあの頃からの仲なんだし、当時の呼び方でいいでしょ?」
――まだ深夜だと言うのに、あの笑顔が太陽のように明るい。我の中の闇を、夜明けと共に溶かしていく。次第に懐かしい日々がフラッシュバックしていっては、消えていく。
全身を包む光の炎が消え、スーツ姿の男性が中から現れる。白の短髪に透き通るような純白の目、そしてがっしりとした身体が顕になる。
「……これは、一体……」
「禁忌逆式『逆光無象』。私の生徒でもある大蛇君の禁忌魔法を投影し、ちょいと応用を加えたものだよ。能力としては、過去の記憶を未来に持っていくかな」
「貴様もよくそんな気色悪い技をいとも簡単に……」
あぁ、そうだった。このミスリアという女はいつも我の想像を超える存在だったな。まさか他人の禁忌魔法をコピーして反転させてオリジナル仕様にするなんて誰が想像した。この我とて、たかが一人の人間にそんな事など到底出来ないと思い切っていた。
そう思っていた時点で、我は一人の超越者に負けていたのだ。
「……ミスリア、お前に最後の予言だ。このハロウィン戦争の黒幕は――」
「えっ――」
ファウストから告げられた、最後の予言。その『最悪の予言』が現実となるにはもはや時間の問題に等しかった――――
遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ・ヴィーナス、涼宮凪沙、サーシェス、ミスリア、桐雨芽依、アルスタリア高等学院全生徒
犠牲者:エレイナ・ヴィーナス
「あぁ……寒い、なぁ……」
ダイヤのように透き通る水色の髪が赤く染まり、レーザーで斬られた左肩から下全てから出血する。その向かい合わせに倒れる少女もまた血を流しながらふふっと軽く微笑む。
「……えぇ、少し身体が痺れてきましたよ」
今も相棒同士として共に戦ってきた二人は、少し大げさな冗談も交えながら笑い合う。そう、どうせこれから死ぬのだから。最期の時くらい、めいいっぱい笑ってこの人生を終わらせたい。
「……今頃、大蛇君は……北条と……」
「……戦ってる、でしょうね。ですけど、きっと彼一人では勝てませんよ……あの人は、未知ですからね……」
白髮の少女……蒼乃ちゃんは少し呆れるように苦笑いを浮かべる。まぁ、確かにあの人は未知というか何もかもが謎に包まれてる感じがして正直怖い。でも……きっと……
「いいや……大蛇君なら、絶対勝つよ。この私が……言ってる、から……間違いない……」
「凪沙さん、それ以上話したら……」
「それは君もでしょ……?」
「……ふふっ、どうやらその通り…………みたいですね」
互いに同じ夜空を見上げながら微笑み合い、ゆっくりと目を閉じる。
……ごめんね、皆。後は任せたよ――
◇
東京都渋谷区 スクランブル交差点――
バキバキッと渋谷の街を覆った氷が砕け散り、元の姿に戻っていく。床の氷も亀裂が広がっていき、靴底が乾ききった地面に付く。
「……はぁ、久しぶりにこれだけ疲れたな~」
「くっ……やはりトリトン王一族恐るべしと言ったところか……」
お互い全身に傷をつけながらも、勝負は既に決まっていた。ファウストが膝を付け、ミスリアがその姿を見つめる。
「……どう? これで満足した?」
息が上がりながらもまだ戦えると言わんばかりの余裕な笑みを浮かべながらファウストに問う。そんなミスリアに、ファウストは軽く笑いながら答える。
「ふっ、ハロウィン戦争はまだ序盤だと言うのにな……こんな所でとうに八分目を超えてしまうとは、超越者として不甲斐ないな」
「素直に満足~って言えばいいのに。相変わらずその強情な所はあの時から変わらないね、『空君』」
「……」
その言葉を耳にした時、彼はふと黙り込んだ。空という己の真名を言った事に対する怒りでも、ミスリアとの戦いでこのような決着がついた事への不条理を感じているようには見えない。
ただ、その名を懐かしむかのように……目を閉じて、夢を見るかのように当時の頃を思い出していく。
「随分と久しいな、そう呼ばれるのは」
「神々の超越者と言いつつ、結局は『神殺し』の人間だからね……それに、私達はあの頃からの仲なんだし、当時の呼び方でいいでしょ?」
――まだ深夜だと言うのに、あの笑顔が太陽のように明るい。我の中の闇を、夜明けと共に溶かしていく。次第に懐かしい日々がフラッシュバックしていっては、消えていく。
全身を包む光の炎が消え、スーツ姿の男性が中から現れる。白の短髪に透き通るような純白の目、そしてがっしりとした身体が顕になる。
「……これは、一体……」
「禁忌逆式『逆光無象』。私の生徒でもある大蛇君の禁忌魔法を投影し、ちょいと応用を加えたものだよ。能力としては、過去の記憶を未来に持っていくかな」
「貴様もよくそんな気色悪い技をいとも簡単に……」
あぁ、そうだった。このミスリアという女はいつも我の想像を超える存在だったな。まさか他人の禁忌魔法をコピーして反転させてオリジナル仕様にするなんて誰が想像した。この我とて、たかが一人の人間にそんな事など到底出来ないと思い切っていた。
そう思っていた時点で、我は一人の超越者に負けていたのだ。
「……ミスリア、お前に最後の予言だ。このハロウィン戦争の黒幕は――」
「えっ――」
ファウストから告げられた、最後の予言。その『最悪の予言』が現実となるにはもはや時間の問題に等しかった――――
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

次は幸せな結婚が出来るかな?
キルア犬
ファンタジー
バレンド王国の第2王女に転生していた相川絵美は5歳の時に毒を盛られ、死にかけたことで前世を思い出した。
だが、、今度は良い男をついでに魔法の世界だから魔法もと考えたのだが、、、解放の日に鑑定した結果は使い勝手が良くない威力だった。

国から見限られた王子が手に入れたのは万能無敵のS級魔法〜使えるのは鉱石魔法のみだけど悠々自適に旅をします〜
登龍乃月
ファンタジー
「どうしてこうなった」
十歳のある日、この日僕は死ぬ事が決定した。
地水火風四つの属性を神とする四元教、そのトップであり、四元教を母体とする神法国家エレメンタリオの法皇を父とする僕と三人の子供。
法皇の子供は必ず四ツ子であり、それぞれが四つの元素に対応した魔法の適性があり、その適性ランクはSクラスというのが、代々続く絶対不変の決まり事だった。
しかし、その決まり事はこの日破られた。
破ったのは僕、第四子である僕に出るはずだった地の適性ランクSが出なかった。
代わりに出たのは鉱石魔法という、人権の無い地の派生魔法のランクS。
王家の四子は地でなければ認められず、下位互換である派生魔法なんて以ての外。
僕は王族としてのレールを思い切り踏み外し、絶対不変のルールを逸脱した者として、この世に存在してはならない存在となった。
その時の僕の心境が冒頭のセリフである。
こうした経緯があり、僕としての存在の抹消、僕は死亡したということになった。
そしてガイアスという新しい名前を授けられた上で、僕は王族から、王宮から放逐されたのだった。
しかしながら、派生魔法と言えど、ランクSともなればとんでもない魔法だというのが分かった。
生成、複製、精錬、創造なども可能で、鉱石が含まれていればそれを操る事も出来てしまうという規格外な力を持っていた。
この話はそんな力を持ちつつも、平々凡々、のどかに生きていきたいと思いながら旅をして、片手間に女の子を助けたり、街を救ったり世界を救ったりする。
そんなありふれたお話である。
---------------------
カクヨムと小説家になろうで投稿したものを引っ張ってきました!
モチベに繋がりますので、感想や誤字報告、エールもお待ちしています〜

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

酷いことをしたのはあなたの方です
風見ゆうみ
恋愛
※「謝られたって、私は高みの見物しかしませんよ?」の続編です。
あれから約1年後、私、エアリス・ノラベルはエドワード・カイジス公爵の婚約者となり、結婚も控え、幸せな生活を送っていた。
ある日、親友のビアラから、ロンバートが出所したこと、オルザベート達が軟禁していた家から引っ越す事になったという話を聞く。
聞いた時には深く考えていなかった私だったけれど、オルザベートが私を諦めていないことを思い知らされる事になる。
※細かい設定が気になられる方は前作をお読みいただいた方が良いかと思われます。
※恋愛ものですので甘い展開もありますが、サスペンス色も多いのでご注意下さい。ざまぁも必要以上に過激ではありません。
※史実とは関係ない、独特の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。魔法が存在する世界です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる