176 / 232
第六章 ハロウィン戦争編
第百六十三話「終災の刻は近し」
しおりを挟む
緊急任務:ネフティスNo.6北条銀二の討伐、地球防衛組織ネフティスを北条の支配から奪還する、謎の少女ピコとマコの討伐
遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ・ヴィーナス、涼宮凪沙、サーシェス、ミスリア、アルスタリア高等学院全生徒
犠牲者:???
「『終無之暴剣』っ……!!」
「ピ……コっ……!」
「マ………コ………!!!」
青いスカートの少女は星に焼かれ、赤いスカートの少女はたった今、かつて殺した邪竜に殺されようとしていた。
『終無之剣』の青白い光と『暴飲暴喰』の黒い旋風が混ざり合い、刀身から軌道に沿って炎の如く燃え上がる。振り抜く度に重力の法則を物理的に無視し、驚異的な速度と威力で悪魔を狩る。
「うああぁぁっ!!!!」
振る。ただひたすら右手に握る魔剣を無造作に振りまくる。右目から血が流れようが切っ先の軌道がブレようが知った事ではない。俺は……八岐大蛇という名の存在は、今目の前にいる二人の悪魔を殺すためだけのようなものだ。
「速いっ……」
数値化なんて出来ないほどの速さに羽衣音が思わず言葉を漏らす。だがそれもそのはず。俺が一振りすると同時に突風が迸るかのように思い切り地面ごとぶった斬っていくのだから。
「あああっ!! おおおあああっ!!!!」
今まで散々弄んできた神への怒り。何度死を経験して、やり直してもなお恋人や友を救えなかった自分に対する憎悪。そして、その全ての元凶とされる二人の少女への殺意。
その全てを一振りごとに込め、黒白の炎となって呪いの元凶を焼き斬る。
『大切な存在を己の宿命から守り抜く』。この俺が生涯果たし抜くべき任務を遂行するために――
「えあああああああ!!!!!」
吠える。腹の底から竜の魂を宿す人間は吠えながら魔剣を四方八方に振りまくる。残像はとっくに二つの炎で消えていった。もうピコには俺の剣の動きなんて読めるわけが無い。ただその身を斬られ、焼かれ、塵も残さず消えていく時を待つだけ。
「うっ……ぁぁあああ!!」
「ピコは死なせないっ……!」
「……面倒くせぇな」
自分の思う以上に低い声で吐き捨てると同時に一旦後方に下がり、軽く両足で跳ぶ。そしてマコ目掛けて空中で回転しながらマコに襲い掛かる。二つの炎が空中で円を描き、ハロウィンで賑わっていた渋谷の空を呪いごと焼き尽くす。
「紗切ちゃんっ!」
「うわっ、ちょっといきなり何するのって、うっ……!!」
紗切は突然羽衣音に引っ張られたと思った直後、俺の空中回転斬りが地面にぶつかって爆発を起こした。爆風で二人は思い切り吹き飛ばされた。
それを知る由もなく、俺は地を蹴って低空飛行し、ピコとマコの両足を一閃する。
「あの時の俺達みてぇに……」
あまりにも速すぎる斬撃。もはや二人には両足を斬られたという感覚すら覚える事もなく、次々と身体のパーツを両断されていく。
「てめぇら二人一緒に地獄に落としてやるよ」
「っ……!!」
かつて見た悪魔のような笑みは完全に消え、今となってはまるで悪魔を見るかのような恐怖に怯えた目をしていた。そうだ、今の俺はこいつらの悪魔だ。即ち、立場逆転。
……もうすぐだアレス。過去の敵を、今この手で討つ刻は近い……!
「うおおおおおおお!!!!!」
最後の一撃。もう何連撃したかも覚えてない。エリミネイトの魔力が身体に宿っているとしても、既に疲労は限界を超えている。全てを振り絞ったこの一撃で、何もかもを終わらせてやる。
「くっ……あああああ!!!!!」
二人の至る所の傷から無数の寄生虫が発生し、口から鋭い牙を出しながら俺に襲い掛かる寸前に全て斬り刻みながら目の前のマコの首に刃を当てる。直後、爆発と同時に魔力の火花が宙に散っていく。
「斬らせっ……ないっ……!!」
突如、刃が通らなくなった。マコの最後の足掻きなのだろう。それにしてもどれだけ力を加えても前に進まない。
「くっ……!!」
おい、何故通らないんだ。人間の首とはとても思えない程固い……! まさか、俺にこいつらは殺しきれないと言う事なのか。このタイミングでさえも運命は俺を弄ぶのか。いい加減にしろ。復讐の一つや二つくらい、果たさせろ。
「うおおおあああああ!!!!」
魔剣を両手で握り、俺の全てを両手に集中させる。刀身の炎が一気に火力を増し、流星の如くその光を散らしていく。
「くぅっ……! うぅっ……!!!」
マコが必死に耐える背後で今度はピコが再び寄生虫を身体から発生させ、迫ってくる。
畜生っ……こうなったら相打ちになるまでだ!!
そう覚悟した、その時……二つの音が背後から通り抜け、一つは寄生虫の方へ、もう一つは俺の剣と重ねるようにマコの首へと駆け抜けた。
「虫退治は私に任せて! きっちりトドメさしてね! 紗切ちゃん! 大蛇君!!」
「もちろん! ……まだ行けるよね」
「お前ら……」
本来、俺はこの二人とこの場で戦い、どちらかが死ぬ運命を迎えるはずだった。しかし何の因果か、ピコとマコ……俺の運命をどす黒く染めた悪魔と急遽戦う事になるにつれていつの間にか共闘するようになっていた。
たとえ北条に染められた今のネフティスでも、今を生きる人類を守り抜くというその本質は……ずっと変わっていなかったのだ。
「……あぁ、当然だ」
そして俺も、その一員だと言う事も――!!
「おおおおおおおおお!!!!」
「はああああああああ!!!!」
二重の刃が徐々にマコの首を斬っていく。少しずつマコの首から赤い雫が連なって飛び散っていく。そして……
――二刀が勢いのままマコの首を迸り、ほぼ同時にピコの首を甲高い鋼の音と激しい轟音が重なり、斬撃の二重奏が鳴り響いた。
それと同時に、俺の心の中の重りが僅かに外れた気がした。
遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ・ヴィーナス、涼宮凪沙、サーシェス、ミスリア、アルスタリア高等学院全生徒
犠牲者:???
「『終無之暴剣』っ……!!」
「ピ……コっ……!」
「マ………コ………!!!」
青いスカートの少女は星に焼かれ、赤いスカートの少女はたった今、かつて殺した邪竜に殺されようとしていた。
『終無之剣』の青白い光と『暴飲暴喰』の黒い旋風が混ざり合い、刀身から軌道に沿って炎の如く燃え上がる。振り抜く度に重力の法則を物理的に無視し、驚異的な速度と威力で悪魔を狩る。
「うああぁぁっ!!!!」
振る。ただひたすら右手に握る魔剣を無造作に振りまくる。右目から血が流れようが切っ先の軌道がブレようが知った事ではない。俺は……八岐大蛇という名の存在は、今目の前にいる二人の悪魔を殺すためだけのようなものだ。
「速いっ……」
数値化なんて出来ないほどの速さに羽衣音が思わず言葉を漏らす。だがそれもそのはず。俺が一振りすると同時に突風が迸るかのように思い切り地面ごとぶった斬っていくのだから。
「あああっ!! おおおあああっ!!!!」
今まで散々弄んできた神への怒り。何度死を経験して、やり直してもなお恋人や友を救えなかった自分に対する憎悪。そして、その全ての元凶とされる二人の少女への殺意。
その全てを一振りごとに込め、黒白の炎となって呪いの元凶を焼き斬る。
『大切な存在を己の宿命から守り抜く』。この俺が生涯果たし抜くべき任務を遂行するために――
「えあああああああ!!!!!」
吠える。腹の底から竜の魂を宿す人間は吠えながら魔剣を四方八方に振りまくる。残像はとっくに二つの炎で消えていった。もうピコには俺の剣の動きなんて読めるわけが無い。ただその身を斬られ、焼かれ、塵も残さず消えていく時を待つだけ。
「うっ……ぁぁあああ!!」
「ピコは死なせないっ……!」
「……面倒くせぇな」
自分の思う以上に低い声で吐き捨てると同時に一旦後方に下がり、軽く両足で跳ぶ。そしてマコ目掛けて空中で回転しながらマコに襲い掛かる。二つの炎が空中で円を描き、ハロウィンで賑わっていた渋谷の空を呪いごと焼き尽くす。
「紗切ちゃんっ!」
「うわっ、ちょっといきなり何するのって、うっ……!!」
紗切は突然羽衣音に引っ張られたと思った直後、俺の空中回転斬りが地面にぶつかって爆発を起こした。爆風で二人は思い切り吹き飛ばされた。
それを知る由もなく、俺は地を蹴って低空飛行し、ピコとマコの両足を一閃する。
「あの時の俺達みてぇに……」
あまりにも速すぎる斬撃。もはや二人には両足を斬られたという感覚すら覚える事もなく、次々と身体のパーツを両断されていく。
「てめぇら二人一緒に地獄に落としてやるよ」
「っ……!!」
かつて見た悪魔のような笑みは完全に消え、今となってはまるで悪魔を見るかのような恐怖に怯えた目をしていた。そうだ、今の俺はこいつらの悪魔だ。即ち、立場逆転。
……もうすぐだアレス。過去の敵を、今この手で討つ刻は近い……!
「うおおおおおおお!!!!!」
最後の一撃。もう何連撃したかも覚えてない。エリミネイトの魔力が身体に宿っているとしても、既に疲労は限界を超えている。全てを振り絞ったこの一撃で、何もかもを終わらせてやる。
「くっ……あああああ!!!!!」
二人の至る所の傷から無数の寄生虫が発生し、口から鋭い牙を出しながら俺に襲い掛かる寸前に全て斬り刻みながら目の前のマコの首に刃を当てる。直後、爆発と同時に魔力の火花が宙に散っていく。
「斬らせっ……ないっ……!!」
突如、刃が通らなくなった。マコの最後の足掻きなのだろう。それにしてもどれだけ力を加えても前に進まない。
「くっ……!!」
おい、何故通らないんだ。人間の首とはとても思えない程固い……! まさか、俺にこいつらは殺しきれないと言う事なのか。このタイミングでさえも運命は俺を弄ぶのか。いい加減にしろ。復讐の一つや二つくらい、果たさせろ。
「うおおおあああああ!!!!」
魔剣を両手で握り、俺の全てを両手に集中させる。刀身の炎が一気に火力を増し、流星の如くその光を散らしていく。
「くぅっ……! うぅっ……!!!」
マコが必死に耐える背後で今度はピコが再び寄生虫を身体から発生させ、迫ってくる。
畜生っ……こうなったら相打ちになるまでだ!!
そう覚悟した、その時……二つの音が背後から通り抜け、一つは寄生虫の方へ、もう一つは俺の剣と重ねるようにマコの首へと駆け抜けた。
「虫退治は私に任せて! きっちりトドメさしてね! 紗切ちゃん! 大蛇君!!」
「もちろん! ……まだ行けるよね」
「お前ら……」
本来、俺はこの二人とこの場で戦い、どちらかが死ぬ運命を迎えるはずだった。しかし何の因果か、ピコとマコ……俺の運命をどす黒く染めた悪魔と急遽戦う事になるにつれていつの間にか共闘するようになっていた。
たとえ北条に染められた今のネフティスでも、今を生きる人類を守り抜くというその本質は……ずっと変わっていなかったのだ。
「……あぁ、当然だ」
そして俺も、その一員だと言う事も――!!
「おおおおおおおおお!!!!」
「はああああああああ!!!!」
二重の刃が徐々にマコの首を斬っていく。少しずつマコの首から赤い雫が連なって飛び散っていく。そして……
――二刀が勢いのままマコの首を迸り、ほぼ同時にピコの首を甲高い鋼の音と激しい轟音が重なり、斬撃の二重奏が鳴り響いた。
それと同時に、俺の心の中の重りが僅かに外れた気がした。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…

補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く
burazu
ファンタジー
冒険者に憧れる魔法使いのニラダは補助魔法しか使えず、どこのパーティーからも加入を断られていた、しかたなくソロ活動をしている中、モンスターとの戦いで自らに補助魔法をかける事でとんでもない力を発揮する。
最低限の身の守りの為に鍛えていた肉体が補助魔法によりとんでもなくなることを知ったニラダは剣、槍、弓を身につけ戦いの幅を広げる事を試みる。
更に攻撃魔法しか使えない天然魔法少女や、治癒魔法しか使えないヒーラー、更には対盗賊専門の盗賊と力を合わせてパーティーを組んでいき、前衛を一手に引き受ける。
「みんなは俺が守る、俺のこの力でこのパーティーを誰もが認める最強パーティーにしてみせる」
様々なクエストを乗り越え、彼らに待ち受けているものとは?
※この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも公開しています。

2回目チート人生、まじですか
ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆
ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで!
わっは!!!テンプレ!!!!
じゃない!!!!なんで〝また!?〟
実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。
その時はしっかり魔王退治?
しましたよ!!
でもね
辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!!
ということで2回目のチート人生。
勇者じゃなく自由に生きます?

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく
闇に蠢く
野村勇輔(ノムラユーリ)
ホラー
関わると行方不明になると噂される喪服の女(少女)に関わってしまった相原奈央と相原響紀。
響紀は女の手にかかり、命を落とす。
さらに奈央も狙われて……
イラスト:ミコトカエ(@takoharamint)様
※無断転載等不可

異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)

巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

『聖女』の覚醒
いぬい たすく
ファンタジー
その国は聖女の結界に守られ、魔物の脅威とも戦火とも無縁だった。
安寧と繁栄の中で人々はそれを当然のことと思うようになる。
王太子ベルナルドは婚約者である聖女クロエを疎んじ、衆人環視の中で婚約破棄を宣言しようともくろんでいた。
※序盤は主人公がほぼ不在。複数の人物の視点で物語が進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる