黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》

Siranui

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第六章 ハロウィン戦争編

第百六十三話「終災の刻は近し」

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 緊急任務:ネフティスNo.6北条銀二の討伐、地球防衛組織ネフティスを北条の支配から奪還する、謎の少女ピコとマコの討伐

 遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ・ヴィーナス、涼宮凪沙、サーシェス、ミスリア、アルスタリア高等学院全生徒 
 犠牲者:???


「『終無之暴剣イベルソード』っ……!!」
「ピ……コっ……!」
「マ………コ………!!!」


 青いスカートの少女は星に焼かれ、赤いスカートの少女はたった今、かつて殺した邪竜に殺されようとしていた。
終無之剣ラストソード』の青白い光と『暴飲暴喰イベルゲーテ』の黒い旋風が混ざり合い、刀身から軌道に沿って炎の如く燃え上がる。振り抜く度に重力の法則を物理的に無視し、驚異的な速度と威力で悪魔を狩る。

「うああぁぁっ!!!!」

 振る。ただひたすら右手に握る魔剣を無造作に振りまくる。右目から血が流れようが切っ先の軌道がブレようが知った事ではない。俺は……八岐大蛇という名の存在は、今目の前にいる二人の悪魔を殺すためだけのようなものだ。

「速いっ……」

 数値化なんて出来ないほどの速さに羽衣音が思わず言葉を漏らす。だがそれもそのはず。俺が一振りすると同時に突風がほとばしるかのように思い切り地面ごとぶった斬っていくのだから。

「あああっ!! おおおあああっ!!!!」

 今まで散々弄んできた神への怒り。何度死を経験して、やり直してもなお恋人や友を救えなかった自分に対する憎悪。そして、その全ての元凶とされる二人の少女への殺意。

 その全てを一振りごとに込め、黒白の炎となって呪いの元凶を焼き斬る。

『大切な存在を己の宿命から守り抜く』。この俺が生涯果たし抜くべき任務を遂行するために――

「えあああああああ!!!!!」

 吠える。腹の底から竜の魂を宿す人間は吠えながら魔剣を四方八方に振りまくる。残像はとっくに二つの炎で消えていった。もうピコには俺の剣の動きなんて読めるわけが無い。ただその身を斬られ、焼かれ、塵も残さず消えていく時を待つだけ。
 
「うっ……ぁぁあああ!!」
「ピコは死なせないっ……!」
「……面倒くせぇな」

 自分の思う以上に低い声で吐き捨てると同時に一旦後方に下がり、軽く両足で跳ぶ。そしてマコ目掛けて空中で回転しながらマコに襲い掛かる。二つの炎が空中で円を描き、ハロウィンで賑わっていた渋谷の空を呪いごと焼き尽くす。

「紗切ちゃんっ!」
「うわっ、ちょっといきなり何するのって、うっ……!!」

 紗切は突然羽衣音に引っ張られたと思った直後、俺の空中回転斬りが地面にぶつかって爆発を起こした。爆風で二人は思い切り吹き飛ばされた。
 それを知る由もなく、俺は地を蹴って低空飛行し、ピコとマコの両足を一閃する。
 
「あの時のみてぇに……」

 あまりにも速すぎる斬撃。もはや二人には両足を斬られたという感覚すら覚える事もなく、次々と身体のパーツを両断されていく。

「てめぇら二人一緒に地獄に落としてやるよ」
「っ……!!」

 かつて見た悪魔のような笑みは完全に消え、今となってはまるで悪魔を見るかのような恐怖に怯えた目をしていた。そうだ、今の俺はこいつらの悪魔だ。即ち、立場逆転。

 ……もうすぐだアレス。過去おれたちの敵を、今この手で討つ刻は近い……!

「うおおおおおおお!!!!!」

 最後の一撃。もう何連撃したかも覚えてない。エリミネイトの魔力が身体に宿っているとしても、既に疲労は限界を超えている。全てを振り絞ったこの一撃で、何もかもを終わらせてやる。

「くっ……あああああ!!!!!」

 二人の至る所の傷から無数の寄生虫が発生し、口から鋭い牙を出しながら俺に襲い掛かる寸前に全て斬り刻みながら目の前のマコの首に刃を当てる。直後、爆発と同時に魔力の火花が宙に散っていく。

「斬らせっ……ないっ……!!」

 突如、刃が通らなくなった。マコの最後の足掻きなのだろう。それにしてもどれだけ力を加えても前に進まない。

「くっ……!!」

 おい、何故通らないんだ。人間の首とはとても思えない程固い……! まさか、俺にこいつらは殺しきれないと言う事なのか。このタイミングでさえも運命は俺を弄ぶのか。いい加減にしろ。復讐の一つや二つくらい、果たさせろ。

「うおおおあああああ!!!!」

 魔剣を両手で握り、俺の全てを両手に集中させる。刀身の炎が一気に火力を増し、流星の如くその光を散らしていく。

「くぅっ……! うぅっ……!!!」

 マコが必死に耐える背後で今度はピコが再び寄生虫を身体から発生させ、迫ってくる。

 畜生っ……こうなったら相打ちになるまでだ!!

 そう覚悟した、その時……二つの音が背後から通り抜け、一つは寄生虫の方へ、もう一つは俺の剣と重ねるようにマコの首へと駆け抜けた。

「虫退治は私に任せて! きっちりトドメさしてね! 紗切ちゃん! 大蛇君!!」
「もちろん! ……まだ行けるよね」
「お前ら……」

 本来、俺はこの二人とこの場で戦い、どちらかが死ぬ運命を迎えるはずだった。しかし何の因果か、ピコとマコ……俺の運命をどす黒く染めた悪魔と急遽戦う事になるにつれていつの間にか共闘するようになっていた。
 たとえ北条に染められた今のネフティスでも、今を生きる人類を守り抜くというその本質は……ずっと変わっていなかったのだ。

「……あぁ、当然だ」

 そして俺も、その一員だと言う事も――!!

「おおおおおおおおお!!!!」
「はああああああああ!!!!」

 二重の刃が徐々にマコの首を斬っていく。少しずつマコの首から赤い雫が連なって飛び散っていく。そして……


 ――二刀が勢いのままマコの首を迸り、ほぼ同時にピコの首を甲高い鋼の音と激しい轟音が重なり、斬撃の二重奏が鳴り響いた。

 それと同時に、俺の心の中の重りが僅かに外れた気がした。
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