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第六章 ハロウィン戦争編
第百四十九話「再戦」
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緊急任務:ネフティスNo.6北条銀二の討伐、地球防衛組織ネフティスを北条の支配から奪還する
遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ・ヴィーナス、涼宮凪沙、サーシェス、アルスタリア高等学院全生徒
犠牲者:???
――二つの癒やしの風が同時に全身の肌を包む。正嗣総長につけられた傷は全て吹き飛んだかのように消え去り、自然と身体が動き出す。
「っ……」
おかしい。確かに複数人から回復魔法を受けたはずなのに誰もいない。ただ俺は町の一角の歩道で仰向けになって眠っていただけだった。
「地面に仕掛けでもあるのか……?」
ありもしない冗談をつき、やれやれと首を左右に振る。でもこれで完全回復した事には変わりないので心の中で何者かに感謝する。
「……行くか」
意識を切り替え、俺――黒神大蛇は再び北条の居場所を特定するべく街中を走り回る。厳密に言えば、『博士が北条の居場所を特定するまでに予めネフティス側の戦力を減らす』ためだ。
冷静に考えて、今のまま北条を特定したところで他のネフティスメンバーやファウストと言った強敵が邪魔をするだろう。だからその邪魔者を今のうちに倒してしまおうと言う事だ。
「ここにはもういないか……」
先程まで倒れていたと思われる正嗣総長もここにいない。警備が無いという事は北条はこの近くにはいないということなのだろうか。
「仕方ない、戻るか……」
諦めて元のスクランブル交差点へと引き返そうと右足を踏み込んだ刹那、風を斬る音が俺の耳を通り抜けた。
「っ――!?」
誰だ。新手か。または遠くからの射撃っ――
「やぁ、また会ったね!」
「ちっ……!」
その声ととっさに振り向いた時に手元に見えたクナイで誰かを理解し、前かがみの状態になって攻撃を避け、右手から反命剣を召喚して素早く斬りつける。しかしあまりの速度で避けられ、距離を置かれてしまう。
「……紗切」
畜生、さっき蹴り飛ばしたやつか。まさかこんな所で遭遇するとはな。
「へぇ~、覚えてくれてるんだ! それは嬉しい……ねぇ!!」
暗躍かつ音速のような速さで俺を翻弄しつつ、風を斬るように逆手に持ったクナイで俺の首を狙う。切っ先が若干ぶれたタイミングで俺は後方にバク転をして避ける。更に運良く右手のクナイを弾き飛ばした。
「弾かれたっ……!?」
「悪いが眠ってもらうぞ」
バク転をして見事に両足を踏み込んでしっかりと着地し、そのまま強く地面を蹴る。剣を逆手に持ち、全身の捻りと踏み込みによる勢いで剣に速度と力を加える。
「おっと……!」
首元目掛けて振った剣が紗切のクナイと衝突する。突如鼓膜が破けるような金属音をたてながら右手に衝撃が伝わる。
「惜しいね~、あともう少し速かったら斬れたのにね」
「……」
まるで小馬鹿にされたかのような恥辱を覚えるも、俺は無情のまま突進する。持ち手を元に戻し、一振りに全てを集中して連続斬りを繰り出す。
「ダメだよ……そんな感情的に剣を振っちゃ」
「……随分と余裕だな」
一旦攻撃を止め、俺は大きく紗切の頭上にまで跳ぶ。着地する勢いに乗せて全身を捻り、上段に構えた剣を思い切り振り下ろす。
「その動き、読めてるよ……!」
刀身が紗切の頭上を通り抜ける寸前、紗切は俺から見て右に姿勢を低くしながら避ける。俺の攻撃はそのまま地面に着く――
だが俺は手から剣を離し、左足に全意識と魔力を集中させる。黒いシューズが禍々しい魔力のオーラを纏い、姿勢を低くしている紗切の右頬に迫る。
「黒壊」
「うっそ……」
本来は拳に魔力を流してインパクトと同時に一気に放つ技なのだが、これはそれを回し蹴りに応用したものだ。それも至って難しくなく、魔力を蹴り足に籠めるだけだ。
「今度こそ……消えてもらうぞ」
黒い閃光の如く襲いかかる左足が、予想外な行動に息を呑む紗切の右頬に近づいていって――
そして、黒い稲妻が花火の如く散っていった。
遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ・ヴィーナス、涼宮凪沙、サーシェス、アルスタリア高等学院全生徒
犠牲者:???
――二つの癒やしの風が同時に全身の肌を包む。正嗣総長につけられた傷は全て吹き飛んだかのように消え去り、自然と身体が動き出す。
「っ……」
おかしい。確かに複数人から回復魔法を受けたはずなのに誰もいない。ただ俺は町の一角の歩道で仰向けになって眠っていただけだった。
「地面に仕掛けでもあるのか……?」
ありもしない冗談をつき、やれやれと首を左右に振る。でもこれで完全回復した事には変わりないので心の中で何者かに感謝する。
「……行くか」
意識を切り替え、俺――黒神大蛇は再び北条の居場所を特定するべく街中を走り回る。厳密に言えば、『博士が北条の居場所を特定するまでに予めネフティス側の戦力を減らす』ためだ。
冷静に考えて、今のまま北条を特定したところで他のネフティスメンバーやファウストと言った強敵が邪魔をするだろう。だからその邪魔者を今のうちに倒してしまおうと言う事だ。
「ここにはもういないか……」
先程まで倒れていたと思われる正嗣総長もここにいない。警備が無いという事は北条はこの近くにはいないということなのだろうか。
「仕方ない、戻るか……」
諦めて元のスクランブル交差点へと引き返そうと右足を踏み込んだ刹那、風を斬る音が俺の耳を通り抜けた。
「っ――!?」
誰だ。新手か。または遠くからの射撃っ――
「やぁ、また会ったね!」
「ちっ……!」
その声ととっさに振り向いた時に手元に見えたクナイで誰かを理解し、前かがみの状態になって攻撃を避け、右手から反命剣を召喚して素早く斬りつける。しかしあまりの速度で避けられ、距離を置かれてしまう。
「……紗切」
畜生、さっき蹴り飛ばしたやつか。まさかこんな所で遭遇するとはな。
「へぇ~、覚えてくれてるんだ! それは嬉しい……ねぇ!!」
暗躍かつ音速のような速さで俺を翻弄しつつ、風を斬るように逆手に持ったクナイで俺の首を狙う。切っ先が若干ぶれたタイミングで俺は後方にバク転をして避ける。更に運良く右手のクナイを弾き飛ばした。
「弾かれたっ……!?」
「悪いが眠ってもらうぞ」
バク転をして見事に両足を踏み込んでしっかりと着地し、そのまま強く地面を蹴る。剣を逆手に持ち、全身の捻りと踏み込みによる勢いで剣に速度と力を加える。
「おっと……!」
首元目掛けて振った剣が紗切のクナイと衝突する。突如鼓膜が破けるような金属音をたてながら右手に衝撃が伝わる。
「惜しいね~、あともう少し速かったら斬れたのにね」
「……」
まるで小馬鹿にされたかのような恥辱を覚えるも、俺は無情のまま突進する。持ち手を元に戻し、一振りに全てを集中して連続斬りを繰り出す。
「ダメだよ……そんな感情的に剣を振っちゃ」
「……随分と余裕だな」
一旦攻撃を止め、俺は大きく紗切の頭上にまで跳ぶ。着地する勢いに乗せて全身を捻り、上段に構えた剣を思い切り振り下ろす。
「その動き、読めてるよ……!」
刀身が紗切の頭上を通り抜ける寸前、紗切は俺から見て右に姿勢を低くしながら避ける。俺の攻撃はそのまま地面に着く――
だが俺は手から剣を離し、左足に全意識と魔力を集中させる。黒いシューズが禍々しい魔力のオーラを纏い、姿勢を低くしている紗切の右頬に迫る。
「黒壊」
「うっそ……」
本来は拳に魔力を流してインパクトと同時に一気に放つ技なのだが、これはそれを回し蹴りに応用したものだ。それも至って難しくなく、魔力を蹴り足に籠めるだけだ。
「今度こそ……消えてもらうぞ」
黒い閃光の如く襲いかかる左足が、予想外な行動に息を呑む紗切の右頬に近づいていって――
そして、黒い稲妻が花火の如く散っていった。
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