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第六章 ハロウィン戦争編

第百四十八話「加勢準備」

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 緊急任務:ネフティスNo.6北条銀二の討伐、地球防衛組織ネフティスを北条の支配から奪還する

 遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ・ヴィーナス、涼宮凪沙、サーシェス、アルスタリア高等学院全生徒 
 犠牲者:???


 学園惑星ソロモン ネフティス附属アルスタリア高等学院 生徒会室――

 集会が終わり、一段落が着いた所で、ベディヴィエルはこっそりクロムを生徒会室に招き入れた。理由はただ一つ。今渋谷で行われているハロウィン戦争で狙われている黒神大蛇の死器……エリミネイトの事をクロムは知っていると判断したからだ。


「……これはかなり深刻な問題になりつつあるな」
「そうですね、まさか学園祭がこんな無意味な抗争のきっかけになるなんて……」

 新聞の一面記事をにらみながら、ベディヴィエルとクロムが渋谷で繰り広げられているハロウィン戦争という現実に驚きを隠せずにいた。
 実は生徒達には明かしていないが、今回の剣血喝祭で二人の犠牲者を出してしまった。一人は生徒会副会長のカペラ、そしてもう一人は大蛇の担任であり、クロムの姉であるミスリアだ。
 お互い親密な関係にあった事もあり、亡くなった事の現実を二人はまだ受け止めきれていない。そんな中での、この抗争だった。

「確かに死器はたった一つ存在するだけで人理壊滅をもたらす程の危険極まりないものです。なので本来ならネフティス側の判断は正しい。ですが、今回は逆です」
「……どういう事だ?」
「死器にも例外があって、それは『適応』と呼ばれるものです。死器の魂を身体に取り込む際に人間側と死器側の両方がそれを要求する際に起こる特殊な事例です」

 クロムは平常心をよそおいながらベディヴィエルに詳しく死器について説明している。それをベディヴィエルは真剣な眼差しをクロムに向けながら聞く。

「適応……か」
「大方はその強大な力を得るために人間側が一方的に要求することによる暴走が一般的です。ですが大蛇さんの場合は前者に当たります。更に言えば。つまり、という事です!」
「じゃあ、今の彼は……」
「はい。いつもの大蛇さんと変わりありません。なので早急にネフティスを私達が全力を尽くして止めなければなりません! さもなければ偽りの理由を口実に大蛇さんが殺される事になります!!」
「……!」

 ベディヴィエルが身体を強張らせる。そしてすぐに咳払いをし、表情を引き締める。

「……そうとなれば早く行こう、クロム君。北条はカペラとミスリア先生の敵でもある。また奴の手で大蛇君を殺させるわけにはいかないっ!!」
「そうですね、では生徒全員で向かいましょう……渋谷区に!」

 二人は共に拳をぶつけ合い、速歩きで生徒会室から出た――
 

 ◇

 東京都新宿区 マヤネーン博士の家――

 ここは博士の家……とはいっても今この家に博士はいない。今ここにいるのはネフティスNo.3の涼宮凪沙だった。

「皆……心配だなぁ」

 長崎から帰ってきたというのにすぐにファウストの予言が当たってしまった。窓の向こうから戦いの音が微かに聞こえる。宿命の叫びが聞こえる。

「……何で、こうなっちゃったのかな。何でこうならないといけないのかな。大蛇君は何も悪くないのに。死器ってやつなんて北条も持ってるじゃない! なのに何で大蛇君だけがこんな事して殺さないといけないの!? 総長や蒼乃ちゃんだってまんまと罠にハマっちゃってさぁ……私、戦いたくないよ……皆と殺し合いなんて、したくないよぉっ……!!」

 子供のわがままのような言葉がポロポロと涙と共に溢れてしまう。誰もいないからか、つい本音が出てしまう。

「もし大蛇君達に学校行かせた目的がこれだとしたら、もう何のために任務があるのか分からないよ……! 全部この時のための罠だったら……私達は何のために命をかけて戦ってきたの……!?」

 今まで一緒に戦って、切磋琢磨し合った仲間達がたった一つの死器だけで敵となった。まるで裏切られたかのような気分だ。 
 
「でも、皆人類の未来を死器から守るために戦ってるんだよね……分かるよ。どれだけそれの存在が危険かってのも、この世から消さなきゃいけない事なんて理解してるつもり。でも、大蛇君はそんな危険な力を使ってるけど変わらず多くの人を助けている。逆に北条みたいな正義の中に隠れた悪もいる……」

 凪沙はその場ですくっと立ち上がり、両手をきつく握る。

「だから私も皆の明るい未来のために戦う。北条の手から大蛇君を、仲間を、皆を守る。そのために……私も抗うよ、こんな悲惨な運命に……」

 右手で頬を流れる涙を拭い、玄関へと歩き出す。しかし靴を履く一歩手前で足を止め、凪沙は振り向きながらふと言った。

「――君にも、協力してもらうからね」

 途端、パチっとリビングの電気が消え、玄関に人影がふっと現れた。黒髪に白い騎士服を纏い、背中に竜の形をした柄の剣を差している青年の姿がそこにはあった。

「言われなくてもそうするつもりだ。だがあくまでも北条銀二討伐という目的が同じだけだからな」
「ふふんっ、そう言って結局いつも大蛇君達の味方してくれるじゃん♪」
「……任務だからな」

 平常運転の会話を交わし、覚悟を決めて二人は博士の家のドアを開けた――
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