158 / 232
第六章 ハロウィン戦争編
第百四十六話「奇跡か、運命か」
しおりを挟む
緊急任務:ネフティスNo.6北条銀二の討伐、地球防衛組織ネフティスを北条の支配から奪還する
遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ・ヴィーナス、涼宮凪沙、サーシェス、アルスタリア高等学院全生徒
犠牲者:???
二つの斬撃の軌跡が迸り、二人共に一時停止したかのようにピタッと動きを止める。
斬った後は何も感じない。二重の金属音があらゆる感覚をも斬り裂いたのだ。ただ一つ、痛みを除いて――
「ふぐっ……」
「っ……!」
結果は相討ち。双方共に渾身の一撃が命中し、致命傷を負ったと言っていいだろう。周囲の地面が二人の血で赤く塗りつぶされる。
「ふっ……大した男だよ、大蛇君」
「……総長こそ、これまで任務で戦ってきた敵なんかでは比較にならないですよ」
互いにその場で立ち上がった瞬間、身体がふらつく。もう限界を超えて強制的に機能を停止させたのだろう。だがそんな状態にも関わらず、正嗣総長は右手の刀を肩に担ぐように構え、全速力でこちらに迫ってくる。
「……だが、先に限界で尽きたのは……君の方だっ!」
ネフティスNo.1の名にかけて、そして死器を世から消し去るために……全ては人類を守るために、俺を殺す。今はただその一心で正嗣総長は無理矢理身体を動かしている。
刀身がふらつきながらも俺の左肩から滑るように斬っていく――
パァンッ――!!!
「――!!?」
刹那、一発の銃声で戦況を一転させた。背中を撃たれた正嗣総長はその場に血を流しながらバタリと倒れた。その後ろを見ると、正面で銃を構える見覚えのある少女の姿が目に焼き付いた。
「お……まえはっ……!?」
何で今ここに彼女がいるのかは分からない。だが満身創痍の俺を助けたのは確かだ。
「久しぶり……だね、おっ君」
「芽依……」
黒と裏地の赤いマントにピンクのタキシードとスカートを身に着けた長い金髪の少女。それは間違いなくあの桐雨芽依だった。だが何故ここにいるのか。今は刑務所にいると聞いたが……
いや、それよりも今は――
「ぁ…………」
「おっ君……? ねぇおっ君!?」
やっぱり、限界で身体が尽きたか。芽依の助けが無かったら間違いなく俺は正嗣総長に殺されていた。後で、礼でもしないとか……
やがて少女の声が聞こえなくなっていく。モスキート音さえも視界に映る闇が広がると共に消えていく。あらゆる意識がブレーカーが落ちたかのように途切れていく――
「……全く、君って男は無茶するんだから」
「えっ……貴方は!?」
大蛇が突然倒れてあたふたしている中、背後から別の声が聞こえた。身長が高い所以外は全く芽依と同じ姿の女性だ。
「本物のパンサーだよ、芽依ちゃん」
「――!!」
嘘だと思った。お互い日本の刑務所にいたとはいえ、まさか彼女も臨時釈放されるとは。
「貴方も、もしかして……」
その事を言おうとしたのが分かったのか、パンサーはふふっと微笑みながら答えた。
「マヤネーンというネフティスの人から頼まれたんだよ。臨時釈放という条件で、黒神大蛇君を助けてくれってね。君もそうでしょ、芽依ちゃん。多分恐らくはあの番長さんも、そのような経緯で皆日本に来てるよ」
「えっ……」
「少しずつ察しているとは思うけど、私達はこれからネフティスと戦う。この青年と一緒に……ね」
「そんな……」
芽依は思わずショックを受ける。今この日本……おっ君達の故郷で今大規模な内乱がハロウィンという行事に合わせて行われているのだ。それも私達を巻き込んで。でもこれは日本だけでなく世界的に影響を及ぼすと思われる。
「じゃあ、これから私達は凪沙ちゃんとも殺し合いをするってこと?」
「いや、その人は青年の味方についている。でもその人の相棒はネフティス側だよ。そこでマヤネーンって人から頼まれたのは、北条銀二という人を殺すだけでいい。それでネフティスを元通りに出来ればハッピーエンドさ」
その話を聞いて芽依はほっと一息をつく。まだとても完全には安心出来る状況ではないが、凪沙ちゃんが味方なら心強い。それに倒すべき敵は一人だけ。それさえ倒せばこの戦いも終わる。更に上手く行けばこれをもって釈放されることもあり得なくない。ネフティスはいわば警察の上に属する部隊なのだから。
「……そうだね」
芽依は自然に笑みを浮かべ、笑顔を取り戻した。そして両手を大蛇に向けて翳し、回復魔法を唱える。
「……まずはそっちが優先、だね」
パンサーも納得したかのように頷き、同じように唱える。直後、大蛇を中心に巨大な魔法陣が展開され、優しい緑の風が大蛇の傷だらけの身体を優しく撫でる。
「まさか、こんな所でこれが役に立つとはね……」
パンサーはとっさにポケットから雫のような形をした結晶を取り出し、大蛇の右手に握らせる。あらゆる幸福をもたらすとされている、『魔女之結晶』を。
「君に、幸福が訪れますように――」
パンサーはただそれだけを呟き、目を閉じた――
遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ・ヴィーナス、涼宮凪沙、サーシェス、アルスタリア高等学院全生徒
犠牲者:???
二つの斬撃の軌跡が迸り、二人共に一時停止したかのようにピタッと動きを止める。
斬った後は何も感じない。二重の金属音があらゆる感覚をも斬り裂いたのだ。ただ一つ、痛みを除いて――
「ふぐっ……」
「っ……!」
結果は相討ち。双方共に渾身の一撃が命中し、致命傷を負ったと言っていいだろう。周囲の地面が二人の血で赤く塗りつぶされる。
「ふっ……大した男だよ、大蛇君」
「……総長こそ、これまで任務で戦ってきた敵なんかでは比較にならないですよ」
互いにその場で立ち上がった瞬間、身体がふらつく。もう限界を超えて強制的に機能を停止させたのだろう。だがそんな状態にも関わらず、正嗣総長は右手の刀を肩に担ぐように構え、全速力でこちらに迫ってくる。
「……だが、先に限界で尽きたのは……君の方だっ!」
ネフティスNo.1の名にかけて、そして死器を世から消し去るために……全ては人類を守るために、俺を殺す。今はただその一心で正嗣総長は無理矢理身体を動かしている。
刀身がふらつきながらも俺の左肩から滑るように斬っていく――
パァンッ――!!!
「――!!?」
刹那、一発の銃声で戦況を一転させた。背中を撃たれた正嗣総長はその場に血を流しながらバタリと倒れた。その後ろを見ると、正面で銃を構える見覚えのある少女の姿が目に焼き付いた。
「お……まえはっ……!?」
何で今ここに彼女がいるのかは分からない。だが満身創痍の俺を助けたのは確かだ。
「久しぶり……だね、おっ君」
「芽依……」
黒と裏地の赤いマントにピンクのタキシードとスカートを身に着けた長い金髪の少女。それは間違いなくあの桐雨芽依だった。だが何故ここにいるのか。今は刑務所にいると聞いたが……
いや、それよりも今は――
「ぁ…………」
「おっ君……? ねぇおっ君!?」
やっぱり、限界で身体が尽きたか。芽依の助けが無かったら間違いなく俺は正嗣総長に殺されていた。後で、礼でもしないとか……
やがて少女の声が聞こえなくなっていく。モスキート音さえも視界に映る闇が広がると共に消えていく。あらゆる意識がブレーカーが落ちたかのように途切れていく――
「……全く、君って男は無茶するんだから」
「えっ……貴方は!?」
大蛇が突然倒れてあたふたしている中、背後から別の声が聞こえた。身長が高い所以外は全く芽依と同じ姿の女性だ。
「本物のパンサーだよ、芽依ちゃん」
「――!!」
嘘だと思った。お互い日本の刑務所にいたとはいえ、まさか彼女も臨時釈放されるとは。
「貴方も、もしかして……」
その事を言おうとしたのが分かったのか、パンサーはふふっと微笑みながら答えた。
「マヤネーンというネフティスの人から頼まれたんだよ。臨時釈放という条件で、黒神大蛇君を助けてくれってね。君もそうでしょ、芽依ちゃん。多分恐らくはあの番長さんも、そのような経緯で皆日本に来てるよ」
「えっ……」
「少しずつ察しているとは思うけど、私達はこれからネフティスと戦う。この青年と一緒に……ね」
「そんな……」
芽依は思わずショックを受ける。今この日本……おっ君達の故郷で今大規模な内乱がハロウィンという行事に合わせて行われているのだ。それも私達を巻き込んで。でもこれは日本だけでなく世界的に影響を及ぼすと思われる。
「じゃあ、これから私達は凪沙ちゃんとも殺し合いをするってこと?」
「いや、その人は青年の味方についている。でもその人の相棒はネフティス側だよ。そこでマヤネーンって人から頼まれたのは、北条銀二という人を殺すだけでいい。それでネフティスを元通りに出来ればハッピーエンドさ」
その話を聞いて芽依はほっと一息をつく。まだとても完全には安心出来る状況ではないが、凪沙ちゃんが味方なら心強い。それに倒すべき敵は一人だけ。それさえ倒せばこの戦いも終わる。更に上手く行けばこれをもって釈放されることもあり得なくない。ネフティスはいわば警察の上に属する部隊なのだから。
「……そうだね」
芽依は自然に笑みを浮かべ、笑顔を取り戻した。そして両手を大蛇に向けて翳し、回復魔法を唱える。
「……まずはそっちが優先、だね」
パンサーも納得したかのように頷き、同じように唱える。直後、大蛇を中心に巨大な魔法陣が展開され、優しい緑の風が大蛇の傷だらけの身体を優しく撫でる。
「まさか、こんな所でこれが役に立つとはね……」
パンサーはとっさにポケットから雫のような形をした結晶を取り出し、大蛇の右手に握らせる。あらゆる幸福をもたらすとされている、『魔女之結晶』を。
「君に、幸福が訪れますように――」
パンサーはただそれだけを呟き、目を閉じた――
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ダンマス(異端者)
AN@RCHY
ファンタジー
幼女女神に召喚で呼び出されたシュウ。
元の世界に戻れないことを知って自由気ままに過ごすことを決めた。
人の作ったレールなんかのってやらねえぞ!
地球での痕跡をすべて消されて、幼女女神に召喚された風間修。そこで突然、ダンジョンマスターになって他のダンジョンマスターたちと競えと言われた。
戻りたくても戻る事の出来ない現実を受け入れ、異世界へ旅立つ。
始めこそ異世界だとワクワクしていたが、すぐに碇石からズレおかしなことを始めた。
小説になろうで『AN@CHY』名義で投稿している、同タイトルをアルファポリスにも投稿させていただきます。
向こうの小説を多少修正して投稿しています。
修正をかけながらなので更新ペースは不明です。
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)
こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位!
死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。
閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話
2作目になります。
まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。
「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

二度目の転生は傍若無人に~元勇者ですが二度目『も』クズ貴族に囲まれていてイラッとしたのでチート無双します~
K1-M
ファンタジー
元日本人の俺は転生勇者として異世界で魔王との戦闘の果てに仲間の裏切りにより命を落とす。
次に目を覚ますと再び赤ちゃんになり二度目の転生をしていた。
生まれた先は下級貴族の五男坊。周りは貴族至上主義、人間族至上主義のクズばかり。
…決めた。最悪、この国をぶっ壊す覚悟で元勇者の力を使おう…と。
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しています。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL

ブラック・スワン ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~
碧
ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる