上 下
156 / 232
第六章 ハロウィン戦争編

第百四十四話「電光石火」

しおりを挟む
 緊急任務:ネフティスNo.6北条銀二の討伐、地球防衛組織ネフティスを北条の支配から奪還する

 遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ・ヴィーナス、涼宮凪沙、サーシェス、アルスタリア高等学院全生徒 
 犠牲者:???

「――っ!!」

 速い、あとコンマ1秒もしないうちに首が跳ね飛ばされるかもしれない。動け。身体がおかしくなろうと今は動け……死にたくなければな!!

「ふぅっ……!!」

 両足に意識を集中させ、瞬時に強く後ろに蹴って神速の一振りを何とか避ける。あごを掠るがこの程度で済むなら十分すぎる。しかし、先程まで毒を抜いていた右足……正確には脹脛ふくらはぎの痛みがより一層苦しめた。今の回避で更に負担をかけた。恐らく次は避けられないと思っていい。

「流石の反射速度だ……だがそれもどれだけ通用するかっ!!」

 常人の目と感覚ではとても追えられない程の速さで再び突進してくる。後ろに構えた刀を振るのとほぼ同時に右に走って避ける。そして背後に周って右手を│翳《かざ》し、反命剣リベリオンを召喚する。

「っ……!!」

 右手を後ろに引き、左足で地を強く蹴ったと同時に俺は『影之閃ステイル』を繰り出す。俺が今まで習得してきた技の中で一番速さに特化した突き技だ。これなら総長の隙を突ける――!!

「……『無霞天消エクソシーム』」
「なっ――」

 刹那、一閃。俺の技の四倍ほどの速度で正嗣総長は俺の全身を斬り刻んだ。無数の切り傷から大量の鮮血がほとばしる。痛みが限界を越え、思わず俺は剣を杖代わりに突きながら立膝になる。頬からも温かい真紅の液体が地面に零れ落ちていくのが見える。

「がっ……ぁ…………」
「よそ見とは心外だな……!」
「うぅぅっ……!!」

 腹の底から叫びながら神速の攻撃を剣で受け流しながら転がる。動くたびに俺の後を追うように血が地面に付着していく。これでは逃げても無駄だ。

 ――なら、やるしかない。

「『神器解放エレクト』ッ……!!」
「……ふむ」
(……まだ死器を使うつもりはないか)
 
 俺の周囲に六本の水晶剣が出現し、左手を正嗣総長に向けて伸ばしてすぐに空を裂いて飛んでいく。しかし正嗣総長はそれを容易に避けては斬り崩し、一瞬にして無力化する。

 ちっ、これがネフティスNo.1の実力か。神器無しでここまでとは……!
 なら仕方がない、思う存分技を仕掛けてみるまでだ。

「まだ終わると……思うなよ」

 一か八かで俺は左足で強く蹴って正嗣総長との間合いを詰める。そしてそのまま右手に魔力を集中させ、『狂神之天殺ゼノジエイド』を繰り出す。だが正嗣総長の刀は禍々しくも神々しい不規則なアメジストのオーラを纏っていた。
 何か技を出すつもりなのだろうが、この速さには流石に勝てまい。さっきの二の舞など御免だ。

「どけえええええっ!!」
「『斬獄死穴アビススレイド』」

 二つの技が、魔力で黒く染まった二刀が互いの身を斬り裂く。一方は滑空するかのように移動しながら斬り、もう一方は迫ってきた瞬間に抜刀するように刀を振る。

「「……」」

 突如勢いよく鮮血が宙を舞い、二人同時に膝をつく。

「くっ……」
「……やはり君の素早さはあなどれないな。討伐対象ながら認めざるを得ないようだ」

 正嗣総長は今の一撃を喰らったのにも関わらずすくっと立ち上がり、刀身が粉々に砕けた刀を道路の隅に投げ捨てる。そして背中に挿してあるもう一本の刀の柄に右手を置く。

「光栄に思うといい。私が本気を出して戦う相手は君が初めてだ、大蛇君」
「――!?」

 背中から刀を抜いた刹那、凄まじい魔力の覇気が俺を襲った。全身が強張る。恐れているのか。否、これはそんなレベルのものではない。
 この刀からはを覚えてしまう。見ただけで負けると分かってしまう。

「見せてあげよう。『電光石火』の二つ名をもつ私の力を……『神器解放エレクト』」

 刀身から放たれるとてつもない魔力に、俺は唾を飲み込む事も出来なかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。 本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。 …………私も消えることができるかな。 私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。 私は、邪魔な子だから。 私は、いらない子だから。 だからきっと、誰も悲しまない。 どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。 そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。 異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。 ☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。 彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。

悪役令嬢?何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号
ファンタジー
過労で倒れて公爵令嬢に転生したものの… 乙女ゲーの悪役令嬢が活躍する原作小説に転生していた。 乙女ゲーの知識?小説の中にある位しか無い! 原作小説?1巻しか読んでない! 暮らしてみたら全然違うし、前世の知識はあてにならない。 だったら我が道を行くしかないじゃない? 両親と5人のイケメン兄達に溺愛される幼女のほのぼの~殺伐ストーリーです。 本人無自覚人誑しですが、至って平凡に真面目に生きていく…予定。 ※アルファポリス様で書籍化進行中(第16回ファンタジー小説大賞で、癒し系ほっこり賞受賞しました) ※残虐シーンは控えめの描写です ※カクヨム、小説家になろうでも公開中です

異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い

八神 凪
ファンタジー
   旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い  【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】  高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。    満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。  彼女も居ないごく普通の男である。  そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。  繁華街へ繰り出す陸。  まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。  陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。  まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。  魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。  次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。  「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。  困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。    元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。  なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。  『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』  そう言い放つと城から追い出そうとする姫。    そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。  残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。  「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」  陸はしがないただのサラリーマン。  しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。  今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

司書ですが、何か?

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 16歳の小さな司書ヴィルマが、王侯貴族が通う王立魔導学院付属図書館で仲間と一緒に仕事を頑張るお話です。  ほのぼの日常系と思わせつつ、ちょこちょこドラマティックなことも起こります。ロマンスはふんわり。

最難関ダンジョンで裏切られ切り捨てられたが、スキル【神眼】によってすべてを視ることが出来るようになった冒険者はざまぁする

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【第15回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作】 僕のスキル【神眼】は隠しアイテムや隠し通路、隠しトラップを見破る力がある。 そんな元奴隷の僕をレオナルドたちは冒険者仲間に迎え入れてくれた。 でもダンジョン内でピンチになった時、彼らは僕を追放した。 死に追いやられた僕は世界樹の精に出会い、【神眼】のスキルを極限まで高めてもらう。 そして三年の修行を経て、僕は世界最強へと至るのだった。

家に住み着いている妖精に愚痴ったら、国が滅びました

猿喰 森繁
ファンタジー
【書籍化決定しました!】 11月中旬刊行予定です。 これも多くの方が、お気に入り登録してくださったおかげです ありがとうございます。 【あらすじ】 精霊の加護なくして魔法は使えない。 私は、生まれながらにして、加護を受けることが出来なかった。 加護なしは、周りに不幸をもたらすと言われ、家族だけでなく、使用人たちからも虐げられていた。 王子からも婚約を破棄されてしまい、これからどうしたらいいのか、友人の屋敷妖精に愚痴ったら、隣の国に知り合いがいるということで、私は夜逃げをすることにした。 まさか、屋敷妖精の一声で、精霊の信頼がなくなり、国が滅ぶことになるとは、思いもしなかった。

処理中です...