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第五章 廻獄厄死篇
第百三十四話「困惑と謎」
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巨体の男の援護のおかげで、北条の結界を破る事が出来た。しかし、結界は真っ二つに浮いたまま何も起きない。
そんな中、私は男の言葉に困惑していた。『ネフティスに宣戦布告する』という言葉を。
「待って、たとえ大蛇君を殺そうとした人達でも私の大事な……」
言い終える途中、男は軽く舌打ちをしながら人差し指を左右に振る。その後、また片言で話した。
「ココノネフティスジャネェ。アノブロックノナカノネフティスダ」
「へ……?」
ふと情けない声が出てしまう。つまり、あの真っ二つに斬れた結界の中にネフティスがあるって事……? 全然意味が分からない。
「オレタチハコレカラ、『オロチノユメノナカ』ニイクンダヨ。アノケッカイハソノイリグチダ」
「――!?」
ゆ、夢……? あの結界が、その入り口?
どういう事なんだろうか。これはとりあえず入ってみないと分からない感じか。
「よく分かんないけど……あの中、入ってみよう?」
「ソノホウガハヤイカモナ」
男の言う『宣戦布告』が全く理解出来ないまま、私は結界の中に入るべく助走をつけながら思い切り跳んだ。頑張って右手を結界に向かって伸ばした刹那、結界に吸い込まれていく。
「うわっ……!?」
次第に視界が真っ暗になる。その後に男の声が遠くで聞こえた。更にその後、前から青年の声が聞こえた。
『助けて』。あるいは『殺してくれ』と――
◇
また身体の感覚が元に戻る。瞼を開くと晴天が広がっていた。何度も同じ事を繰り返してる内に嫌になる。死んでからの目覚めに飽きてくる。どうせこの後死ぬんだろうなと思いながら重い身体を起こす。
「ここは……」
さざ波の音色。少し熱く感じる砂浜。容赦なく肌を焼こうとする太陽。波と共に吹く爽やかな風。ここは間違いなく海だった。
「懐かしいな……」
確か最初の任務の時、海に沈んだ後に気を失っていて、目の前でエイジが見守ってたよな。その後いきなり模擬戦みたいになったのを鮮明に覚えている。
――今頃、あいつらは無事だろうか。
「……なわけないか。蒼乃さんだけでなく、総長さえも北条の手に染められてるからな」
ふと思った事を振り払うように、俺は現実を独り言として吐いた。もうここまで来れば俺はネフティス全メンバーを敵に回したと言っても過言では無い。更にはエレイナも俺が殺された事によって暴走している。
まさか、あのエリミネイトがここまで大事を引き起こすとは思わなかった。ベディヴィエルとの戦いでは唯一の倒す手段がエリミネイトを己の身体に取り込む事しか無かった。
とはいえ、もし最初から『死器』という存在を知っていたら、最初の入学前試験の際に俺はエリミネイトに手を出さなかった。一体何故ネフティスは『死器』の存在を俺に隠したのだろうか。
「北条銀二……お前はどこまで俺の地獄を知っているんだ」
言動といい俺を眠らせた魔法といい、あの男は明らかに人間ではない。まるで俺に取り憑いた悪魔のようだ。はたまたこの運命の創世神とでも言うのだろうか。
北条の目的が一切読めず、一旦疲労しきった頭を空にするべく砂浜に身体を預けていると……
「久しぶりだな、ヤマタノオロチ」
「っ――!?」
いきなり過去の名前で呼ばれ、驚きつつ身体を勢いよく起こして目を開けると、そこには白い炎で覆われた人型の何かが立っていた。
「我が名はファウスト。天と地を纏いし神の超越者なり」
「ファウスト……」
知っている。俺はその名を名乗った超越者を知っている。しかし、こんな姿ではない。これは一体どういう事か。
「ずっと、お前を探していた。待っていたぞ、この時のためにどれ程の人間を追い払ってきた事か」
「何だとっ……?」
その言い方的に数多くの人間を殺してきたと言える。だがどうして地球に降り立った? 何故俺がここにいると分かったんだ?
頭を悩ませる。何もかもが意味不明だという俺の思考を読み取ったかのように、ファウストという人型の魂は言った。
「人間共の下らん諍いから今に至るまで、この我が全て話してやろう」
そんな中、私は男の言葉に困惑していた。『ネフティスに宣戦布告する』という言葉を。
「待って、たとえ大蛇君を殺そうとした人達でも私の大事な……」
言い終える途中、男は軽く舌打ちをしながら人差し指を左右に振る。その後、また片言で話した。
「ココノネフティスジャネェ。アノブロックノナカノネフティスダ」
「へ……?」
ふと情けない声が出てしまう。つまり、あの真っ二つに斬れた結界の中にネフティスがあるって事……? 全然意味が分からない。
「オレタチハコレカラ、『オロチノユメノナカ』ニイクンダヨ。アノケッカイハソノイリグチダ」
「――!?」
ゆ、夢……? あの結界が、その入り口?
どういう事なんだろうか。これはとりあえず入ってみないと分からない感じか。
「よく分かんないけど……あの中、入ってみよう?」
「ソノホウガハヤイカモナ」
男の言う『宣戦布告』が全く理解出来ないまま、私は結界の中に入るべく助走をつけながら思い切り跳んだ。頑張って右手を結界に向かって伸ばした刹那、結界に吸い込まれていく。
「うわっ……!?」
次第に視界が真っ暗になる。その後に男の声が遠くで聞こえた。更にその後、前から青年の声が聞こえた。
『助けて』。あるいは『殺してくれ』と――
◇
また身体の感覚が元に戻る。瞼を開くと晴天が広がっていた。何度も同じ事を繰り返してる内に嫌になる。死んでからの目覚めに飽きてくる。どうせこの後死ぬんだろうなと思いながら重い身体を起こす。
「ここは……」
さざ波の音色。少し熱く感じる砂浜。容赦なく肌を焼こうとする太陽。波と共に吹く爽やかな風。ここは間違いなく海だった。
「懐かしいな……」
確か最初の任務の時、海に沈んだ後に気を失っていて、目の前でエイジが見守ってたよな。その後いきなり模擬戦みたいになったのを鮮明に覚えている。
――今頃、あいつらは無事だろうか。
「……なわけないか。蒼乃さんだけでなく、総長さえも北条の手に染められてるからな」
ふと思った事を振り払うように、俺は現実を独り言として吐いた。もうここまで来れば俺はネフティス全メンバーを敵に回したと言っても過言では無い。更にはエレイナも俺が殺された事によって暴走している。
まさか、あのエリミネイトがここまで大事を引き起こすとは思わなかった。ベディヴィエルとの戦いでは唯一の倒す手段がエリミネイトを己の身体に取り込む事しか無かった。
とはいえ、もし最初から『死器』という存在を知っていたら、最初の入学前試験の際に俺はエリミネイトに手を出さなかった。一体何故ネフティスは『死器』の存在を俺に隠したのだろうか。
「北条銀二……お前はどこまで俺の地獄を知っているんだ」
言動といい俺を眠らせた魔法といい、あの男は明らかに人間ではない。まるで俺に取り憑いた悪魔のようだ。はたまたこの運命の創世神とでも言うのだろうか。
北条の目的が一切読めず、一旦疲労しきった頭を空にするべく砂浜に身体を預けていると……
「久しぶりだな、ヤマタノオロチ」
「っ――!?」
いきなり過去の名前で呼ばれ、驚きつつ身体を勢いよく起こして目を開けると、そこには白い炎で覆われた人型の何かが立っていた。
「我が名はファウスト。天と地を纏いし神の超越者なり」
「ファウスト……」
知っている。俺はその名を名乗った超越者を知っている。しかし、こんな姿ではない。これは一体どういう事か。
「ずっと、お前を探していた。待っていたぞ、この時のためにどれ程の人間を追い払ってきた事か」
「何だとっ……?」
その言い方的に数多くの人間を殺してきたと言える。だがどうして地球に降り立った? 何故俺がここにいると分かったんだ?
頭を悩ませる。何もかもが意味不明だという俺の思考を読み取ったかのように、ファウストという人型の魂は言った。
「人間共の下らん諍いから今に至るまで、この我が全て話してやろう」
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