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第五章 廻獄厄死篇
第百三十三話「思いがけない事態」
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「この黒い結界を壊せば……大蛇君は助かるんだよね」
神器『雷迅槍』を両手で持ち、下げて構える。ふぅ……と一つ深呼吸をしてすぐに跳びながら全身を勢いで回転させる。回転による遠心力を使い、私は槍を黒い結界めがけて横に薙ぐ。
「やあああああっ!!」
雄叫びと同時に甲高い金属音が鳴り響き、激しく火花が散った。しかし結界には傷一つもつかない。
「何これっ、硬すぎでしょ……!」
あまりの硬さに驚かざるを得ない。逆に神器である槍の方が先に壊れてしまいそうだ。
「くっ……どうすればっ!」
刻一刻と時間が迫る。その時間とは、当然大蛇君のタイムリミット。このまま結界を破壊する所を北条に見られたら、私にも命の危険がやってくる。見つかる前に早く壊さねば。
しかし、北条も神器持ちの優秀なメンバーの一人だ。私がここで神器解放を発動したらすぐに気づくだろう。No.6と言えど油断は一切出来ない。
「でも、このままじゃ時間の問題だよっ……!!」
何度攻撃を加えても甲高い音が耳元で鳴り響くばかり。結界はただ在るだけで微動だにしない。
「くっ……」
何度も振り回したからか、腕に痛みが走る。これ以上振り回すのは無理だと言っているかのように、額から一滴の汗が流れ落ちる。
――このままじゃ、助けられない……!
そう思った刹那、結界めがけて私の左横から一気に亀裂が入る。
「えっ……?」
新たな敵襲と察知し、私は右に避ける。直後、凄まじい崩壊音と共に病院が真っ二つに斬られた。しかし、結界はそのまま宙に浮いている。
「Vous m'avez fait attendre, "Black Hero" !(待たせたな、『黒き英雄』――!!)」
「君はっ……!?」
黒い特攻服を身に纏っている巨体の男は、左手に持つ大剣を大きく振りかぶり、結界に向かって勢いよく振り下ろす。
「待って、攻撃してもそれには効かないよ!」
何となく通じたのか、男は私に余裕の笑みを向けた。その時だった。男の大剣が結界にぶつかった瞬間、徐々に刀身が結界の中へと沈んでいくのが見える。
「――!!」
「Je ne donnerai pas ma prise à quelqu'un d'autre, ouais !(俺の獲物は誰にも渡さねえええ!!!)」
刹那、漆黒の結界が空間と共に真っ二つに断ち斬られた。その瞬間がまるでスローされたかのように動いて見える。あれだけ攻撃しても傷一つつかない結界が、たった一撃で真っ二つだ。私にとってはあまりにも信じられない事だ。
「あの人……何者なの?」
声を聞くに、口調が日本語っぽくない事から日本人ではない。じゃあ一体……
その時、ふと脳裏に閃光が走った。思い出した。あの男はあの時――
『フランス人の謎の不良軍団』のリーダー格だ。前に大蛇君と満身創痍の状態になってまで戦った男だ。
「Bon sang, c'est une arme de cholo. L'épée de mon homme valait plus que ça.(ちっ、チョロい武器だな。まだ俺の部下の剣の方が斬り甲斐があったぜ)」
男はフランス語でそう吐き捨て、私の左隣に着地する。その後、片言の日本語で私に話しかけてきた。
「オマエ、ネフティスノメンバーダナ?」
「え、うん……そうだけど?」
「ナンデアノオトコヲタスケルンダ?」
「そ、それは……大蛇君は、私の大事な後輩で大切な仲間の一人だから、だよ……!」
若干焦りを滲ませながら放った言葉に、男はまたニヤリと笑った。
「ジャアオレノナカマダナ。コレカラアノオトコヲタスケシダイ、ネフティスニ『センセンフコク』スルゾ」
「え……」
その片言の日本語で言い放たれた言葉を、私は理解出来ずにいた。
神器『雷迅槍』を両手で持ち、下げて構える。ふぅ……と一つ深呼吸をしてすぐに跳びながら全身を勢いで回転させる。回転による遠心力を使い、私は槍を黒い結界めがけて横に薙ぐ。
「やあああああっ!!」
雄叫びと同時に甲高い金属音が鳴り響き、激しく火花が散った。しかし結界には傷一つもつかない。
「何これっ、硬すぎでしょ……!」
あまりの硬さに驚かざるを得ない。逆に神器である槍の方が先に壊れてしまいそうだ。
「くっ……どうすればっ!」
刻一刻と時間が迫る。その時間とは、当然大蛇君のタイムリミット。このまま結界を破壊する所を北条に見られたら、私にも命の危険がやってくる。見つかる前に早く壊さねば。
しかし、北条も神器持ちの優秀なメンバーの一人だ。私がここで神器解放を発動したらすぐに気づくだろう。No.6と言えど油断は一切出来ない。
「でも、このままじゃ時間の問題だよっ……!!」
何度攻撃を加えても甲高い音が耳元で鳴り響くばかり。結界はただ在るだけで微動だにしない。
「くっ……」
何度も振り回したからか、腕に痛みが走る。これ以上振り回すのは無理だと言っているかのように、額から一滴の汗が流れ落ちる。
――このままじゃ、助けられない……!
そう思った刹那、結界めがけて私の左横から一気に亀裂が入る。
「えっ……?」
新たな敵襲と察知し、私は右に避ける。直後、凄まじい崩壊音と共に病院が真っ二つに斬られた。しかし、結界はそのまま宙に浮いている。
「Vous m'avez fait attendre, "Black Hero" !(待たせたな、『黒き英雄』――!!)」
「君はっ……!?」
黒い特攻服を身に纏っている巨体の男は、左手に持つ大剣を大きく振りかぶり、結界に向かって勢いよく振り下ろす。
「待って、攻撃してもそれには効かないよ!」
何となく通じたのか、男は私に余裕の笑みを向けた。その時だった。男の大剣が結界にぶつかった瞬間、徐々に刀身が結界の中へと沈んでいくのが見える。
「――!!」
「Je ne donnerai pas ma prise à quelqu'un d'autre, ouais !(俺の獲物は誰にも渡さねえええ!!!)」
刹那、漆黒の結界が空間と共に真っ二つに断ち斬られた。その瞬間がまるでスローされたかのように動いて見える。あれだけ攻撃しても傷一つつかない結界が、たった一撃で真っ二つだ。私にとってはあまりにも信じられない事だ。
「あの人……何者なの?」
声を聞くに、口調が日本語っぽくない事から日本人ではない。じゃあ一体……
その時、ふと脳裏に閃光が走った。思い出した。あの男はあの時――
『フランス人の謎の不良軍団』のリーダー格だ。前に大蛇君と満身創痍の状態になってまで戦った男だ。
「Bon sang, c'est une arme de cholo. L'épée de mon homme valait plus que ça.(ちっ、チョロい武器だな。まだ俺の部下の剣の方が斬り甲斐があったぜ)」
男はフランス語でそう吐き捨て、私の左隣に着地する。その後、片言の日本語で私に話しかけてきた。
「オマエ、ネフティスノメンバーダナ?」
「え、うん……そうだけど?」
「ナンデアノオトコヲタスケルンダ?」
「そ、それは……大蛇君は、私の大事な後輩で大切な仲間の一人だから、だよ……!」
若干焦りを滲ませながら放った言葉に、男はまたニヤリと笑った。
「ジャアオレノナカマダナ。コレカラアノオトコヲタスケシダイ、ネフティスニ『センセンフコク』スルゾ」
「え……」
その片言の日本語で言い放たれた言葉を、私は理解出来ずにいた。
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