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第五章 廻獄厄死篇

第百三十話「先生として」

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 爆発で街ごと消し飛ばされた。それほどファウストの魔力は数値化出来ないものなのだろう。でも、聖盾と共に球体が消えたのだから決して勝てない事はない。

 ――今、ここで一撃必殺を放てば神であろうと倒せるはず!

「……しぶとい人間だ」
「ここで……決める!」

 出すしかない、一撃必殺を……まだ誰にも見せていない、私の奥義を。

「禁忌魔法……『万魔叫歌パンデモニウム』!!」
「――!?」
 
 唱えた直後、ミスリアとファウストの間からブラックホールのようなものが出現した。それは徐々に大きくなり、二人の足元にまで広がる。そして落ちていく。

 目の前に見えたのは、赤黒い空の下に所々蛇のようなものが足元を横切る。

「……随分と気味が悪い魔法だな」
「そりゃそうでしょ。だって気持ち悪すぎて誰にも見せたくないんだもん」

 そう吐き捨てると、周囲の蛇に指示するように右手をファウストに向けて伸ばす。それに向かって背後の蛇の群れが一斉にファウストに迫る。

「あの結界を無視して禁忌魔法を貼るとは……」
「私のこれは唯一無二だからね……君が初めての来客だよ――っ!」

 通常、剣血喝祭では禁忌魔法や神器解放エレクトといった一瞬で国ごと破壊しかねない技や魔法による二次被害を防ぐための結界が貼られている。
 しかし、この『万魔叫歌パンデモニウム』は対象を現実世界から具現化世界に引きずり込む事で長崎を覆う結界を実質無力化しているのだ。勿論世界そのものを作るのだから魔力消費はその分大きい。

「さぁ、大人しくエイジ君の身体から出てってもらうよ!!」
「これしきの魔法で我に勝てるなど……愚かの極みだ」

 飛び付く勢いで迫る蛇の群れをファウストは難なく掻い潜り、先程の光の球体を投げて蛇達を一斉に消し飛ばす。そのまま右足を蹴り、左手で魔剣キリシュタリアを上段に構え、振り下ろす。

「終わりだ、人間っ!!」

 剣が地と衝突した途端に轟音と共に一直線に地が裂ける。しかし、そこにミスリアの姿はいなかった。

「……そこか!」

 何かが横切る音と風を読み取り、そこに向かってファウストは右手からビームを照射する。だがそこにもミスリアはいなかった。

「残念だったね……私はここだよ!!」
「神の目をあざむくとは……!」

 ファウストの頭上を飛ぶミスリアは、両手から真紅の球体を精製していた。

 これは誰にも見せていない、私の奥義――

奇忌戎神ミスレイド!!」

 両手で真紅の魔力玉を押し出す。両手から離れると魔力玉は一気に大きくなり、ファウストの全身を埋め尽くした。 

「人間如きに……神は殺せないいいいっ!!!!」
 
 ファウストは吠えながら魔剣キリシュタリアを両手で構え、巨大な闇の光刃を作り出しては球体を横薙ぎにするように振る。

 巨大な魔力同士のぶつかり合い。しかし、ファウストの身体に蛇達が噛みついて徐々に体力を蝕んでいく。

「くっ……邪魔だ虫けら共め!!」
「とくと味わいな……女の子の本気の恐ろしさをね!!」

 少し自慢気な笑みを浮かべながら、ミスリアは最初で最後の一撃に全力を注ぐ。ボロボロな身体で必死に魔力玉を押し続ける。神を追い払うまで。

「この……我が……人間如きにいいいい!!!!」

 剣が球体の核心を斬り、魔力玉がファウストを飲み込む。それが同時に起こった刹那、視界が白紙に澄んだ――



 ……ごめんね、皆。私はもうここまでだから。後は頼んだよ、カルマ君、エレイナちゃん。
 生徒達の運命は、君達にかかってるよ――
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