黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》

Siranui

文字の大きさ
上 下
142 / 232
第五章 廻獄厄死篇

第百三十話「先生として」

しおりを挟む
 爆発で街ごと消し飛ばされた。それほどファウストの魔力は数値化出来ないものなのだろう。でも、聖盾と共に球体が消えたのだから決して勝てない事はない。

 ――今、ここで一撃必殺を放てば神であろうと倒せるはず!

「……しぶとい人間だ」
「ここで……決める!」

 出すしかない、一撃必殺を……まだ誰にも見せていない、私の奥義を。

「禁忌魔法……『万魔叫歌パンデモニウム』!!」
「――!?」
 
 唱えた直後、ミスリアとファウストの間からブラックホールのようなものが出現した。それは徐々に大きくなり、二人の足元にまで広がる。そして落ちていく。

 目の前に見えたのは、赤黒い空の下に所々蛇のようなものが足元を横切る。

「……随分と気味が悪い魔法だな」
「そりゃそうでしょ。だって気持ち悪すぎて誰にも見せたくないんだもん」

 そう吐き捨てると、周囲の蛇に指示するように右手をファウストに向けて伸ばす。それに向かって背後の蛇の群れが一斉にファウストに迫る。

「あの結界を無視して禁忌魔法を貼るとは……」
「私のこれは唯一無二だからね……君が初めての来客だよ――っ!」

 通常、剣血喝祭では禁忌魔法や神器解放エレクトといった一瞬で国ごと破壊しかねない技や魔法による二次被害を防ぐための結界が貼られている。
 しかし、この『万魔叫歌パンデモニウム』は対象を現実世界から具現化世界に引きずり込む事で長崎を覆う結界を実質無力化しているのだ。勿論世界そのものを作るのだから魔力消費はその分大きい。

「さぁ、大人しくエイジ君の身体から出てってもらうよ!!」
「これしきの魔法で我に勝てるなど……愚かの極みだ」

 飛び付く勢いで迫る蛇の群れをファウストは難なく掻い潜り、先程の光の球体を投げて蛇達を一斉に消し飛ばす。そのまま右足を蹴り、左手で魔剣キリシュタリアを上段に構え、振り下ろす。

「終わりだ、人間っ!!」

 剣が地と衝突した途端に轟音と共に一直線に地が裂ける。しかし、そこにミスリアの姿はいなかった。

「……そこか!」

 何かが横切る音と風を読み取り、そこに向かってファウストは右手からビームを照射する。だがそこにもミスリアはいなかった。

「残念だったね……私はここだよ!!」
「神の目をあざむくとは……!」

 ファウストの頭上を飛ぶミスリアは、両手から真紅の球体を精製していた。

 これは誰にも見せていない、私の奥義――

奇忌戎神ミスレイド!!」

 両手で真紅の魔力玉を押し出す。両手から離れると魔力玉は一気に大きくなり、ファウストの全身を埋め尽くした。 

「人間如きに……神は殺せないいいいっ!!!!」
 
 ファウストは吠えながら魔剣キリシュタリアを両手で構え、巨大な闇の光刃を作り出しては球体を横薙ぎにするように振る。

 巨大な魔力同士のぶつかり合い。しかし、ファウストの身体に蛇達が噛みついて徐々に体力を蝕んでいく。

「くっ……邪魔だ虫けら共め!!」
「とくと味わいな……女の子の本気の恐ろしさをね!!」

 少し自慢気な笑みを浮かべながら、ミスリアは最初で最後の一撃に全力を注ぐ。ボロボロな身体で必死に魔力玉を押し続ける。神を追い払うまで。

「この……我が……人間如きにいいいい!!!!」

 剣が球体の核心を斬り、魔力玉がファウストを飲み込む。それが同時に起こった刹那、視界が白紙に澄んだ――



 ……ごめんね、皆。私はもうここまでだから。後は頼んだよ、カルマ君、エレイナちゃん。
 生徒達の運命は、君達にかかってるよ――
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

和菓子屋たぬきつね

ゆきかさね
キャラ文芸
1期 少女と悪魔が和菓子屋で働く話です。 2018年4月に完結しました。 2期 死んだ女と禿鷲の悪魔の話です。 2018年10月に完結しました。 3期 妻を亡くした男と二匹の猫の話です。 2022年6月に完結しました。 4期 魔女と口の悪い悪魔の話です。 連載中です。

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

処理中です...