黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》

Siranui

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第五章 廻獄厄死篇

第百二十四話「正夢」

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 感覚が散りばめられる。腕や足、内臓までもが塵となって魂から離れていく。魂だけが、真っ白な光に包まれていって――

「はっ――」

 そして、夢から覚める。まずはあれが夢であった事に安堵し、軽く胸に手を当ててほっと一息つく。しかしとてつもない違和感が俺の脳を惑わせた。

「……何で俺はまたベッドの上にいるんだ」

 それだけじゃない。前まで周りにいた患者達が誰一人いない。ベッドも綺麗に整理されており、機械の音すら感じられない。まるでもう使われなくなった病院にいるかのようだ。

「……一先ひとまずここを出るか」

 そういえば、さっきまで北条がここにいたはず。ここにいないと言う事は、今も病院内にいるに違いない。

 そう判断し、俺はそのままベッドから出てゆっくりと病室から廊下に足を踏み込んだ。さっき夢で殺されたからか、身体があるという事自体にさえ違和感を覚えながらゆっくりと足を動かす。

 普通の廊下がとても奥行きのあるように感じる。どんなに歩いても近づいてる気配が無い。まるでウォーキングマシンの上で歩いてるかのようだ。

「くっ……」

 これもまた夢なのだろうか。まだ夢から覚めていないのかと思うくらい、身体がいつものように動かせない。それでも何とか身体を動かす。



 しかし、その先には地獄が待っていた。

「ぐぁっ……!?」

 背中から鈍い音と同時に激痛が生じる。それと同時に一気に凍りつくかのように冷たくなる。ふと振り向くと、そこには俺に向かって銃を向ける蒼乃さんの姿があった。俺に向ける目は今喰らった氷の弾丸よりも鋭く、冷たく、痛かった。

「……この時を待っていましたよ、
「は……?」

 おいおい、一体何の真似だ。本当に夢から覚めてないのか。養成学校にいた間に何があったんだ。

「とぼけないでください。私の母……錦野智優美を殺したのは大蛇さん、貴方ですよね」
「――っ!?」

 おい待て、どういう事だ。その話はヤマタノオロチがまだ生きている時の頃だろ。あれからどれだけ時が経ったと思っているんだ。
 にしても、このタイミングでわざわざ智優美さんの敵をとろうとする意味は何だ?

「地獄に行って母に謝ってください。そして永遠にその過ちに苦しみ、考え、後悔してください。どの道許しなんてしませんけど」

 パァンパァンッと左胸に2発。そこから更に氷が身体を蝕む。

「な……んで…………いきっ……、なり」
「ついでに、貴方を殺す理由として『死器』が貴方の身体に取り込まれているというのもあります。死器を取り込んだ今の大蛇さんは、人殺しどころか完全なる死神です。貴方が生きているだけで多くの人達が命を落とす……」

 さっきも聞いたことのある、死器しぎという単語。一体どこからその単語を知ったのか……
 いや待て、まさか北条がネフティス内にこの事を広めたのか!? だとしたら蒼乃さんだけでなく、俺はこれからネフティスメンバー全員にこのように狙われる事になる。

 そう、亜玲澄や正義、博士にすらも頼れる仲間から憎むべき敵として俺を見る事になる。
 ……これは現実なのだろうか。否、ここは地獄だ。俺が運命に負けた先にある定められた未来なのだ。

「『氷星之血晶ダストスターダム』」

 足元に向かって引き金を引いた刹那、俺の周囲が氷漬けになった。当然足元から首元まで蝕まれ、身動き一つ出来なくなった。そんな俺の目の前まで蒼乃さんはゆっくりと歩いてくる。

「――最後の言い分くらいなら聞いてあげますよ、大蛇さん」
「……」

 あぁ、殺すんだな。俺が命をかけて守ってきた仲間に殺されるんだ。過去に犯した過ちが今になって因果応報として返ってくる。

『言い分くらいなら聞いてあげる』……ならせめて、俺が実際に見た真実を語ってやる。智優美さんが死んでしまった理由の真実を――

「……『黒光無象ブラックバリスタ』」
「っ――!?」

 刹那、俺を包む氷が砕け散り、次に病院の背景が消し飛ぶように真っ白になる。その後、特大筆で激しく叩くように所々が黒く塗りつぶされる。

「見せてやるよ。これが真実だ――」

 右腕を左から右に思い切り振り払った途端、白い背景に更に黒く染め上げられ、やがて白い部分が消えていった――
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