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第四章 剣血喝祭篇

第百十八話「全を焼く陽」

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 任務 ロスト・ゼロ作戦の成功
 遂行者 黒神大蛇、白神亜玲澄、エレイナ・ヴィーナス、武刀正義、カルマ、エイジ、ミスリア・セリウス、クロム・セリウス


 黒神大蛇とベディヴィエルの決着がつく約30分前――

 突如、2つの波動が共鳴しながら大蛇の身体から放たれ、正義と亜玲澄は吹き飛ばされる。二人共に地面に張り付いた氷に身体をついてしまい、徐々に氷漬けにされていく。

「くっ……やべぇ、このままじゃ太陽が墜落しちまう!!」

 未だ燃え続けている左半身、そして地面の氷から蝕まれる右半身に苦しみながらも立ち上がり、正義は再び太陽を斬るべく地を蹴って飛んだ。

 先程の衝撃波で太陽はアートガーデンの方に軌道を変えながら落ちていく。今の場所からだとかなり距離がある。間に合わないかもしれない。

「くそっ……左足が限界きてるってのに遠すぎだろが!!」

 もう身体が麻痺してるのだろうか、熱さというのを左半身から全く感じなくなった。もはやあの太陽の炎と同化したんじゃないかと思うほどに。

「……生徒会をぶっ潰すためなら、何だってしてやるよおおっ!!」

 チリーンッ……チリリ~ンッ…………

 耳元で鳴り響く恋鐘の音色。それに合わせて目にも止まらぬ速さで太陽を斬り裂きながら駆け巡る。

 技なんて今はどうでもいい。斬れ。目の前のを。細切れにすればあとは白坊が何とかしてくれるはずだ。

「あれは……何をしてるの……?」

 身を太陽の炎によって燃やしながらも斬っていく正義の姿に、カペラは唖然としていた。そこからすぐに危険を感じたかのように両手を翳し、爆裂魔法を唱える。

「まぁいいわ。ここであの男も終わりにして――」
「諦めな……副会長さん」
「っ――!?」

 まるで時が止まったかのように身体が動かなくなる。ただ亜玲澄に言葉を遮られただけだというのに。これは一体何なんだろうか。指先すら動かせない。

「妨害は止めといたからこのままぶった斬れ!!」
「言われなくても……そうしてやらああ!!!」

 今よりも更に速く、強く刀を振る。刀身が太陽の核を確実に斬っていく。やがて無数のポリゴンと化し、宙に舞う。

「白坊……!」
「よくやったなぁ……あとは任せとけ、武刀正義いいいっ!!」

 刹那、左手の小指の指輪が輝きを増し、無数の太陽のポリゴンが亜玲澄の周囲に集まる。

「魔法勝負もこれで終わりだ……『陽光之弾丸サンライト・トリリオン』!!」

 頭上高く上げた左腕をカペラに向けて振り下ろす。瞬時に燃え上がる光がカペラに向かって降り注ぐ。

「うっ……こうなったら命に代えてでもっ!!」

 カペラは両手にありったけの魔力を籠め、空間を歪ませた。直後、吐血するも詠唱を止める事はない。

「神よ、許せ……今こそ世を変えっ……ああああ!!!!」

 唱えている途中に無数の光がカペラの身体を焼き尽くす。

「……安心しろ、殺しやしねぇよ。だがてめぇの口からリタイアの言葉が出るまでの話だがな」
「くぅっ……うああああっ!!!」

 ちっ、死んでも言わねぇつもりかこいつは。それとも俺の太陽が強すぎたか。まぁどっちにしろ焼き焦がす事になるだろうな。

「1年、風情がっ……生徒会にぃ……勝てる、なんてっ……!!」
「この状況からしてまだそんな口が叩けるのか女。完全にお前の負けだぜ。死んじまう前にさっさとリタイアするのはどうですかな、カペラ
「くぅっ……馬鹿にするのもっ……今のうちぃっ……!!」
「意地っ張りな先輩だなおい。しょうがねぇ……丸焼きだ」

 亜玲澄は左手で空を振り払い、周囲に浮いてる残りの光を全てぶつける。炎は更に勢いを増し、カペラの姿は完全に消えかけていた。

「ちっ、戦神の俺様とて理不尽に殺すのは趣味じゃねぇんだけどな。だが、散々その爆裂魔法とやらで長崎の人々を……ハウステンボスを焼き焦がしてきてんだ。せめてその分の罪は償わせねぇとな」

 人影すら消え失せながらも激しく燃える炎を、亜玲澄はただじっと見つめていた。

 その炎で氷は全て溶け、戦いで黒く汚れた地が顕になっていった――
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