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第四章 剣血喝祭篇

第百十五話「希望からの絶望」

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 任務 ロスト・ゼロ作戦の成功
 遂行者 黒神大蛇、白神亜玲澄、エレイナ・ヴィーナス、武刀正義、カルマ、エイジ、ミスリア・セリウス、クロム・セリウス

 戦闘開始から既に1日が経っている。休む間もなく、ただひたすら死と隣り合わせで剣を振り続けて1日……
 たとえ『黒き英雄』と称えられていた俺や、学園最強と呼ばれたベディヴィエルでさえも流石に疲労感を隠す事などもう出来なかった。

「まだ生きていたか……死神」
「……さぁ、第二ラウンドを始めようか、ベディヴィエル」

 それでも、終わらせなければならない。この機会を逃したら次はない。アルスタリアの生徒だけでなく、ここ長崎の人達も犠牲を増やしかねない。それを避けるために今ここで最強を打ち砕く――

「大蛇、さんっ……!」
「バトンタッチだ。後は俺に任せろ」

 クロムが加勢しようと剣を握り直すが、俺はそれを遮るように口を挟んだ。俺が休んでいた間はずっと一人で会長と副会長の相手をしてくれていたのだ。その借りはここで返さねばならない。

 ――それが、今の俺に課せられた新たな任務だ。

「今度こそ君を殺す……!」
「殺れるものなら……殺ってみろ!!!」

 双方、強く地を蹴った。瞬時に衝撃波が地を駆け抜けた。ベディヴィエルが突進しながら剣を上段に構える。それに対し、殺歪剣エリミネイトを身体に取り込んだおかげで武器を失った俺は右拳に力を加え、黒壊クラッシュアウトの構えをとる。

「……凍てつけ!」

 まだ振ってもいないのに鋭い冷気が肌を斬り裂くように通り抜ける。それに反応すらせずにベディヴィエルの腹部に一撃を入れる事に集中する。

「はっ――!」

 完全にお互いの距離の差が無くなってすぐに俺は姿勢を低くしてベディヴィエルの剣を避ける。

「……そう来ると思ってたよ」
「なっ……!?」

 しかし、俺の行動は完全に読まれていた。冷気を帯びたベディヴィエルの剣を左に避け、剣先が地面に突いたその時、先程亜玲澄の太陽で焼け溶けかけた氷が瞬時に再び張り付いた。
 更に氷は俺の足をも凍てつかせ、徐々に俺の身体を蝕むように氷漬けにしていく。

「くそっ……」
「たとえ魔剣の力を取り込んだところで、私に勝てない事には変わりない!」

 まずい、下から剣が迫ってくる。斬られる。氷剣が俺の肌を斬り裂こうとして――

「させないと……言ったはず!」
「くっ!」

 俺の右肌を掠ろうとしていた氷剣をクロムの黒剣が受け流す。右に流れた右腕と共に、ベディヴィエルはそのまま右に体制を崩す。

「いい加減邪魔をするな……!」
「それが貴方の宿敵ライバルとしての役目ですよ、ベディヴィエル」
「ちぃっ……ならここで潰すまでだ!」

 刀身が燃えあがり、クロムめがけて全身の捻りの力で弾かれた剣を振る。クロムはその攻撃を避けるも、炎を纏った衝撃波を避けきれず、後方に吹き飛ばされる。

「くっ……」
「死ね、君の青春をここで終わらせてやる」
 
 普段の生徒会長からは想像さえつかないほどの冷酷な目で睨みながら炎を纏った聖剣を振り下ろす。
 その隙に俺は今のベディヴィエルの攻撃で溶けた氷の地に足を踏み入れては蹴り、背後を狙う。右拳に力を籠め、再び構える。

「……終わりなのはお前だ」

 刹那、一撃――と思いきや、ベディヴィエルの背中に直撃する寸前に氷の柱が俺の右拳を殴り飛ばした。

「っ――!?」

 右腕が痺れる。あまりの痛みで右腕から出血する。骨はギリギリ折れてはいないものの、しばらく腕は使えないかもしれない。

「……遅いぞ、
「……すまない、こちらのエリアもかなり苦戦したので」
「なっ――!?」

 新たな敵に俺達は一斉に口を開く。ここに来て新たな生徒会役員の登場だ。カペラが炎及び爆裂魔法の使い手なら、こいつは……

「……君がアルスタリアの死神か。私は氷影こおりかげ銀河ぎんが。ベディヴィエルやカペラと同じく生徒会役員です」

 まずい、最悪の展開だ。ただでさえ二人で苦戦してるのに更に新手が来るのか。それも無傷。勝率は更に低くなった。

「大蛇さん、これは……」
「くっ……早いうちに二人共リタイアさせないとまずいぞ。下手すれば生徒会全員がここハウステンボスに来てしまう。そうなれば、俺達の作戦は既に失敗と言っていい」

 氷使いとあらゆる属性を使いこなす生徒会長、そして炎や爆裂魔法を使う魔女。この3人が立ちはだかるのを前に、勝つ術はほぼ無くなってしまった。

「どうやって倒せばいいんだ……」

 この状況に絶望している俺に、耳元で嘲笑う悪魔の声が聞こえた気がした――
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