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第四章 剣血喝祭篇

第百四話「確かな面影」

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 任務 ロスト・ゼロ作戦の成功
 遂行者 黒神大蛇、白神亜玲澄、エレイナ・ヴィーナス、武刀正義、カルマ、エイジ、ミスリア・セリウス、クロム・セリウス

 2005年 7月24日 剣血喝祭10日目
 長崎県 西海市――


 さざ波の音が鼓膜を優しく撫でながら通り抜ける。まるであの頃に戻ったかのようだ。
 忘れられない、あの頃の楽しかった思い出が鮮明に蘇る。その時に聞こえたさざ波もこんな風に優しい音だった。

「うっ……」

 白い騎士服を纏った赤髪の青年――カルマは目を覚ます。視界には澄み切った青空が映し出されていた。あの時の……『海の魔女』を倒した時に見た、あの水星リヴァイスの空とよく似ている。

「ここ、どこだ……?」

 視点を下ろせば青い海。服には砂がついていて、全身が焼けるように暑い。まさか水星リヴァイスに戻されたのだろうか。いや、そんなわけがない。ここはナガサキという場所……大蛇と亜玲澄の住む惑星の中の一つの地域のはず。

「ちっ、一先ひとまず街までいかねぇと……」

 いつ祭りが開かれたか分からない今、既に生徒の誰かが殺し合っているかもしれない。少しでも速くそれを阻止すべく、カルマは砂浜の中を歩き始めた。

 
 ――その時、海の方から少女が慣れない動きでこちらの方に泳いでいくのが見えた。

「お、おーい! こっちこっち~!!」
「――!!」

 君は……確か、海の魔女に殺されたはずじゃ……って、よく見たら髪の色も服装もとは全く違っていた。むしろこっちは神々しさすら感じられる。

 ――と、ともかく助けた方が良さそうだ。

「あ、あの、大丈夫ですか! 今助けますから!!」

 助ける……とは言ったものの、ここからではかなり距離がある。でも構わない。助けると言ったからには実行しなければ気が済まない。
 少しでも近づこうとカルマは服を着たまま海の中に入り、栗色の髪の少女の元へと泳いでいく。
 波はあまり無いものの、風と共に揺れる波で思わず水を飲み込んでしまう。あまりのしょっぱさに耐えながらひたすら泳ぐ。

「くっ……!」

 お互い必死に手を伸ばす。しかし、あと僅かのところで届かない。それでも必死に近づいては手を伸ばす。そして、互いの手が触れては掴んだ。

「よしっ、あとは戻るだけ……」

 掴んだ手を離さないように意識したまま、左手で水をかきながら歩く。なるべく早く足が地に着くように足場を探しながら歩く。

 その途中、少女がふと話しかけてきた。

「あの、貴方はもしかして……」
「俺を知ってるのか?」
「えぇ……その赤い髪のを前にこの目で見たことがありまして」
「えっ――」

 瞬間、カルマは悟った。少女から放たれる面影といい似た髪型といい、どことなくあの人魚を想像させる。

「もしかして、君があの時のマ――」

 言い終える前に口を人指し指で抑えられ、少女はニコッと笑った。

 ……あぁ、間違いない。やっぱりそうか。また、会えたんだな…………

「おっ、やっと足着いたぜ! 早く出て乾かさねぇと……」

 歩いているうちにようやく足が地に着き、少女の手を引っ張りながら海から抜け出す。その後すぐに手を離し、大の字になって砂浜の上に寝転んだ。

「あの、ごめんなさい……貴方の服を濡らしてしまって」
「こんくらい大した事ねぇよ。それより今から仲間と合流しないといけねぇ。こんなとこでサマーバケーションしてる余裕はねぇ」

 一旦起き上がり、砂だらけになった騎士服をほろいながら出口の方へ歩いていく。少女もカルマの後に続く。

「ってか、現在地も分かんねぇのにどうやって仲間探すんだ……」

 咄嗟とっさにそれを思い出して歩く足を止めたカルマに、少女は口を挟んだ。

「待って、あそこに誰かいる!」
「あれは……!?」

 よく見ると、約50メートル程先に紺色のアルスタリア高等学院の制服を着た生徒が歩いていくのが見えた。

 しかし、近づく程に異変を感じる。生徒から燃え上がる炎のようなオーラが放たれるのが目に見えた。

「おいおい待ってくれよ……」
「あれは……!?」

 右手に持つ聖剣、それにまとう太陽の紅炎の如く炎……そう、アルスタリア高等学院生徒会長ベディヴィエル・レントであった。

「……やぁ、ここで僕と会うなんて君達もついてないものだ」
「ベディヴィエル……」
「確か君達はカルマ君とちゃんか。ネフティス推薦者2人と会うなんて思わなかったよ」

 静かなる殺気を感じ、カルマは背中から剣を抜く。それと同時に刀身から紅い炎が放たれる。アカネも両手から無数の光を精製する。

「ネフティス推薦者とはいえ……私も容赦はしないぞ!」
「せっかくの機会だ。ここで生徒会長をリタイアさせるぞ、マリ……いや、アカネ!」
「え、えぇ……行きましょう!」

 カルマとベディヴィエルが互いに砂浜を蹴り、間合いを詰める。この灼熱の中、炎をまとった二つの剣が交じわった――
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