上 下
101 / 232
第四章 剣血喝祭篇

第百話「光と闇」

しおりを挟む
 任務 ロスト・ゼロ作戦の成功
 遂行者 黒神大蛇、白神亜玲澄、エレイナ・ヴィーナス、武刀正義、カルマ、エイジ、ミスリア・セリウス、クロム・セリウス


 銀髪の青年はゆっくりと歩き出す。『闇光の両立者ファウスト』の元へと一歩ずつ近づく。

「愚かな人間だ。我に刃を向けようと……」
「お前は何者だ。アルスタリアの生徒か」
「貴様らと一緒にするな。我はファウスト。貴様ら人間とは程遠き存在……」

 ファウストは右の聖剣をエイジに振りかざす。刀身から放たれた純白の衝撃波が襲いかかり、大きく後方に吹き飛ばされる。

「くっ、これは最初から本気でいかないと殺される……!」

 それに、たった一振りでこの威力。掠っただけで服が破れ傷口が出来るほどだ。そんなのが生徒会にいるなんておかしい。それ程にまで強すぎるのだ。

「ふぅ……」

 一つ深呼吸をし、聖剣を右手に持ち構える。空いた左手を伸ばしてかざし、遥か遠き記憶を蘇らせる。

「――どこの誰かは分からないけど……力を貸してくれ」

 ……もしカルマがこれを見たらどう思うんだろうな。驚くだろうか。それともいつも通りでいられるのだろうか。まぁ、どっちでもいい。ぼくはエイジだから――

 左手に確かな重みが伝わる。大蛇の持つ剣に似た黒い魔剣がエイジの左手に収まる。

 ――滅殺剣キリシュタリア。かつて魔王を仕えていた勇者が振るったとされる伝説の魔剣。意味は『命を滅ぼす剣』。

闇光の両立者ファウスト……人間の可能性をなめるなよ!!」

 強く地を蹴り、右の聖剣をファウストに向かって思い切り振りかぶる。勢いの乗った斬撃にファウストが咄嗟とっさに受け止めた左手の魔剣が弾かれる。

「人間風情が……!」
「うおおおお!!!」

 僅かな隙を逃さず左足を前に踏み込み、左手の魔剣を振り上げる。漆黒のオーラに包まれた刀身がファウストに迫る。

「甘いっ!!」
「っ――!!」

 突如背後から無数の光剣が突き刺さり、攻撃が止まる。エイジはあまりの痛みに思わず膝を突く。

「くっ……」
「全く愚かなものだ。目の前の事にしか意識出来ないのは人間の典型例だな。……我に殺される事を光栄に思うがいい、愚かな人間よ」

 ファウストは右手から聖剣を消し、頭上に上げる。刹那、巨大な光の球体が精製される。

「滅びよ、人間……『聖域之罰裁アーク・ディヴァイン』」
「くっ……『魔女之断罪ギルティウィッチ』!!」

 あの球体が来る前に斬る――!!

 痛みに苦しむ身体を無理矢理動かし、右手の聖剣を黒いオーラを放ちながらファウストの胸部めがけて突く。

「おおおあああああ!!!」

 全身のありったけの力を振り絞る。踏み込んだ足で地割れが発生する。エイジの渾身の一撃すらも微動だにせず、ファウストは右手を振り下ろす。
 
「終わりだ……お前も、人間も、この世界も……!!!」
「させるかあああああ!!!!!!」

 






 ――2人の闇光が地を、空間を、時をも裂き、混ざっては一つの閃光となって広がっていく。
 光も闇も、この長崎市からは消えて無くなっていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

幼女エルフの自由旅

たまち。
ファンタジー
突然見知らぬ土地にいた私、生駒 縁-イコマ ユカリ- どうやら地球とは違う星にある地は身体に合わず、数日待たずして死んでしまった 自称神が言うにはエルフに生まれ変えてくれるらしいが…… 私の本当の記憶って? ちょっと言ってる意味が分からないんですけど 次々と湧いて出てくる問題をちょっぴり……だいぶ思考回路のズレた幼女エルフが何となく捌いていく ※題名、内容紹介変更しました 《旧題:エルフの虹人はGの価値を求む》 ※文章修正しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー
ファンタジー
 第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)  転生前も、転生後も 俺は不幸だった。  生まれる前は弱視。  生まれ変わり後は盲目。  そんな人生をメルザは救ってくれた。  あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。  あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。  苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。  オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

処理中です...