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第四章 剣血喝祭篇
第九十九話「突如見た地獄絵図」
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任務 ロスト・ゼロ作戦の成功
遂行者 黒神大蛇、白神亜玲澄、エレイナ・ヴィーナス、武刀正義、カルマ、エイジ、ミスリア・セリウス、クロム・セリウス
同日 長崎県長崎市――
夢を見ていた。遥か遠い、懐かしい夢を。この目で見たことは無いけど、記憶として鮮明に残っている。
今の自分が生まれる前の出来事を――
◆ ◆ ◆
「きゃああああああっ!!!!」
「うわああああああっ!!!」
とある日のある町は何者かによって侵略されていた。攻撃によって街は焼き尽くされ、一瞬にして火の町と化した。両親もこの襲撃によって火の家の下敷きとなって死んでしまった。
「……■■■。ごめんね……。まだ小さ……いのに……、こんなことに………なるなんて」
「……生きてね…私の……可愛い……弟くん………」
「母さん! 姉さん!!……待ってろ、今助ける!」
――何でこうなったのか。何で僕だけが生き残らなきゃいけないのか。僕に天罰が下ったのか。悪行一つも犯さなかった僕に。それともこれは抗えない運命なのか。
それでもひたすら燃え崩れた家の木を力いっぱいどかそうとした。手が焼けるように熱い。そんなの気にしている場合じゃない。父さんも母さんも姉さんも全身を押しつぶされながら熱い思いをしているんだ。これくらい軽いものだ。
「うっ………ぉぉぉおおおおおお!!!!!!」
どれだけ力を入れてもびくともしない。すると、僕の頭上から家の屋根部分が落ちてくる。
「逃げろ……■■■!!」
「――!!」
この時の父であろう声と同時に更に家が崩れる音がして、僕は頭上を見上げる。
ドサドサッと屋根が崩れ落ちた。下敷きにされる前に僕はとっさに避けた。振り向くとそこには家族の姿は無かった。
「父さん!! 母さん!!! 姉さん!!!」
泣きながら家族の名を叫んだ。しかし返事は返ってこない。もうこれだけ崩れてしまえば救う手段は無い。両手も先程の行動で黒く焦げている。
恐怖で体が動かない。助けを呼ぼうと思ったが、王国からここまで馬車で行っても2、30分はかかるので無理だと思った。もう僕は自分の惨めな運命を恨むことしか出来なかった。
「くそっ……ちくしょう……!! ちくしょぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
◆ ◆ ◆
「はっ――!!?」
目覚めた直後、近くで爆発音が聞こえてすぐに爆風で吹き飛ばされる。一瞬で瓦礫と化した一軒家の下敷きにされた。
「くっ……いきなりなんなんだ……!」
銀髪の聖騎士……エイジは目の前の瓦礫をどかしながら外の状況を確認する。左を向いた途端、黒く染められた天使のような姿がエイジの目に映し出された。
「なっ――!?」
なんだこいつは。天使なのか? 悪魔なのか? 天使の輪が頭にあるのに悪魔の尻尾がある。右手には聖剣が、左手には魔剣を持つその姿はもはや闇に染まった天使……いや、『闇光の両立者』と言うべきだろうか。
「……我が名はファウスト。天と地を纏いし神の超越者なり」
突然己の名を名乗った後、左の魔剣が振り下ろされる。黒い闇が刀身から放たれ、空間をも斬り裂いた。
「まずっ……!」
頭上にそれが来るのを悟り、エイジは左に走って避ける。
「くっ、大蛇の故郷に着いてすぐにこんな奴と戦わなければならないとは……」
緊張が全身を駆け巡っては震える。何とか深呼吸をして落ち着かせようとしても目の前の未知なる存在を前にしてはとても落ち着けない。
――大蛇と亜玲澄は、普段からこんなのと戦ってるのか。それならあのアースラを倒せるのも納得だ。
だが、それは俺も同じだ。もしさっき見たあの夢が生前の俺であるなら、きっとあの頃の戦い方は細胞が……遺伝子が覚えているはずだ。
――『魔王使いの勇者』としての記憶を。
「――どんな相手だろうと、俺は屈しない……あの時までの大蛇に頼り切ってた俺はもうここにいない!!」
強い覚悟を決め、勇者は背中の聖剣を抜き、天使の如く悪魔の方へと歩き出した。
遂行者 黒神大蛇、白神亜玲澄、エレイナ・ヴィーナス、武刀正義、カルマ、エイジ、ミスリア・セリウス、クロム・セリウス
同日 長崎県長崎市――
夢を見ていた。遥か遠い、懐かしい夢を。この目で見たことは無いけど、記憶として鮮明に残っている。
今の自分が生まれる前の出来事を――
◆ ◆ ◆
「きゃああああああっ!!!!」
「うわああああああっ!!!」
とある日のある町は何者かによって侵略されていた。攻撃によって街は焼き尽くされ、一瞬にして火の町と化した。両親もこの襲撃によって火の家の下敷きとなって死んでしまった。
「……■■■。ごめんね……。まだ小さ……いのに……、こんなことに………なるなんて」
「……生きてね…私の……可愛い……弟くん………」
「母さん! 姉さん!!……待ってろ、今助ける!」
――何でこうなったのか。何で僕だけが生き残らなきゃいけないのか。僕に天罰が下ったのか。悪行一つも犯さなかった僕に。それともこれは抗えない運命なのか。
それでもひたすら燃え崩れた家の木を力いっぱいどかそうとした。手が焼けるように熱い。そんなの気にしている場合じゃない。父さんも母さんも姉さんも全身を押しつぶされながら熱い思いをしているんだ。これくらい軽いものだ。
「うっ………ぉぉぉおおおおおお!!!!!!」
どれだけ力を入れてもびくともしない。すると、僕の頭上から家の屋根部分が落ちてくる。
「逃げろ……■■■!!」
「――!!」
この時の父であろう声と同時に更に家が崩れる音がして、僕は頭上を見上げる。
ドサドサッと屋根が崩れ落ちた。下敷きにされる前に僕はとっさに避けた。振り向くとそこには家族の姿は無かった。
「父さん!! 母さん!!! 姉さん!!!」
泣きながら家族の名を叫んだ。しかし返事は返ってこない。もうこれだけ崩れてしまえば救う手段は無い。両手も先程の行動で黒く焦げている。
恐怖で体が動かない。助けを呼ぼうと思ったが、王国からここまで馬車で行っても2、30分はかかるので無理だと思った。もう僕は自分の惨めな運命を恨むことしか出来なかった。
「くそっ……ちくしょう……!! ちくしょぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
◆ ◆ ◆
「はっ――!!?」
目覚めた直後、近くで爆発音が聞こえてすぐに爆風で吹き飛ばされる。一瞬で瓦礫と化した一軒家の下敷きにされた。
「くっ……いきなりなんなんだ……!」
銀髪の聖騎士……エイジは目の前の瓦礫をどかしながら外の状況を確認する。左を向いた途端、黒く染められた天使のような姿がエイジの目に映し出された。
「なっ――!?」
なんだこいつは。天使なのか? 悪魔なのか? 天使の輪が頭にあるのに悪魔の尻尾がある。右手には聖剣が、左手には魔剣を持つその姿はもはや闇に染まった天使……いや、『闇光の両立者』と言うべきだろうか。
「……我が名はファウスト。天と地を纏いし神の超越者なり」
突然己の名を名乗った後、左の魔剣が振り下ろされる。黒い闇が刀身から放たれ、空間をも斬り裂いた。
「まずっ……!」
頭上にそれが来るのを悟り、エイジは左に走って避ける。
「くっ、大蛇の故郷に着いてすぐにこんな奴と戦わなければならないとは……」
緊張が全身を駆け巡っては震える。何とか深呼吸をして落ち着かせようとしても目の前の未知なる存在を前にしてはとても落ち着けない。
――大蛇と亜玲澄は、普段からこんなのと戦ってるのか。それならあのアースラを倒せるのも納得だ。
だが、それは俺も同じだ。もしさっき見たあの夢が生前の俺であるなら、きっとあの頃の戦い方は細胞が……遺伝子が覚えているはずだ。
――『魔王使いの勇者』としての記憶を。
「――どんな相手だろうと、俺は屈しない……あの時までの大蛇に頼り切ってた俺はもうここにいない!!」
強い覚悟を決め、勇者は背中の聖剣を抜き、天使の如く悪魔の方へと歩き出した。
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