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第三章 学園惑星編
第九十二話「無茶な作戦、予期せぬ再会」
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「ロスト……」
「ゼロ……」
「大作戦……?」
俺――大蛇と正義、そしてエレイナが順番にその作戦名を口にした。その作戦名から分かる通り、これから行われる『常夏の血祭り』で、誰一人とも犠牲者を出さない作戦なのだろう。しかし、どうやってそれを実行する気なのだろうか。
ここにいる全員がそんな事を考えてるだろうと察したミスリアはくすりと笑い、黒板へと向かって書きながら説明する。
「私が立てたこの『ロスト・ゼロ大作戦』は、君達が考えてるであろう通りこの剣血喝祭で参加者の犠牲を0にする作戦よ。
主にするべき事はまず、参加者を殺すのではなく気絶させること。生徒会長曰く、気絶させて保健室に移せば即リタイアさせる事が出来るらしいからね」
「へぇ……」
なるほど。だからそれなりに生き残ってる上級生もいるのだな。一ヶ月逃げ切った者もいれば、気絶してリタイアした者も少なからずいるということか。
「リタイアさえ出来れば、血を流す事なく終わらせられるでしょ? 私も入学したての君達をこんなところで死なせたくないしね。それに……」
「それに……?」
「あぅ……、ごめんね亜玲澄君。何でもないの!」
ミスリアの慌てぶりに亜玲澄は首を傾げた。恐らくこの後に続く言葉は俺とミスリアにしか分からない事だ。死の運命から阻止し、その想像者たる者を滅ぼすという俺の生きる意味のためにこの作戦を立てたのだ……と。
「じ、じゃあ話を戻すね。まずこの祭ではそれぞれスタート地点が違うの。この『サセボ』ってところから始まる人もいれば『ツシマ』からスタートする人もいるの。
君達がそのスタート地点から一人以上に固まるかは分からない。むしろそんな事は無いと思った方がいいわ」
「……」
佐世保……対馬……つまり、スタート地点はその都道府県のそれぞれの市ごとにあるということか。それごとに600人近い生徒を分けるというのか。下手したらスタートからすぐ敵対して殺される可能性もある。
「だからまず、君達には生き残る事を第一優先にしてほしい。勝てなさそうだったら逃げてもいい。特に生徒会相手は、ね」
生徒会の強さはとっくにあの時の入学前試験でこの目で見た。圧倒的な連携攻撃に一撃の威力の高さ、そして詠唱困難な高度魔法を一瞬で唱えられる程の魔力と知力。どの視点から見ても流石学園を統率するだけの事はある。
「でもよぉ、ベディヴィエル……だっけか? そいつだけ警戒しときゃいいんじゃねぇのか?」
「正義、それは絶対にない。きっとあの入学前試験の時でも生徒会側は本来の30パーセントしか出していないぞ。それが100パーセントで来たら今の俺達じゃ太刀打ち出来ない」
正義の言い分を亜玲澄がきっぱりと否定する。正にその通りなのだ。俺としても流石にあれが生徒会の本気だとはとても思えない。あの時ベディヴィエルが使ってた聖剣もきっとレプリカだ。本物を使ったら教会が壊れるほどの騒ぎでは無くなる。
「じゃあやっぱり逃げるしかないってこと……?」
「作戦本来の目的を達成するにはそれが最善だよ。でも放っておくと知らぬうちに殺されるのも確か。ぶっちゃけ一番危険なのは君達がいないスタート地点に生徒会メンバーが入ってる事だよ」
「確かに……」
亜玲澄が俯きながら呟く。もし仮にそうなってしまった場合はその時点で作戦失敗だ。その生徒達も逃げる選択をすると思うが、本気の生徒会を前に逃げられるなんて到底出来ない。俺達もそうなのだから。
「あの生徒会を止められるのは特別区分生徒のオロチ君とミレ……いや、エレイナちゃん。そして一般区分ではあるもののネフティス推薦でここに来たアレス君とセイギ君……」
ミスリアは説明も兼ねて作戦メンバーの名前を確認していた。その時、聞き覚えのある名前が俺の耳を通り抜けていった。
「――それと今ここにはいないけど、カルマ君とエイジ君よ」
「――!!」
カルマ。エイジ。間違いない、あの海の惑星での任務で共に過ごしたあの王国の王子と学友だ。王になるのを捨ててまで、何故ここに来たのか……
「あの人達……この学園に来てたんだ」
「しかも……ネフティス推薦で」
「どうなってんだこりゃ……」
思わぬ場所と時間、そしてタイミングで再びその2人の名を耳にする事となった。また会える……そして今度は共に任務を遂行出来る事になるとは思わなかった。あの2人がいるだけでも心強い。こんな無茶な作戦でも少し成功の可能性が見出せたような気がした。
「あいつら……」
近い未来、水星の王子2人との再会に密かに胸を踊らせる俺であった――
「ゼロ……」
「大作戦……?」
俺――大蛇と正義、そしてエレイナが順番にその作戦名を口にした。その作戦名から分かる通り、これから行われる『常夏の血祭り』で、誰一人とも犠牲者を出さない作戦なのだろう。しかし、どうやってそれを実行する気なのだろうか。
ここにいる全員がそんな事を考えてるだろうと察したミスリアはくすりと笑い、黒板へと向かって書きながら説明する。
「私が立てたこの『ロスト・ゼロ大作戦』は、君達が考えてるであろう通りこの剣血喝祭で参加者の犠牲を0にする作戦よ。
主にするべき事はまず、参加者を殺すのではなく気絶させること。生徒会長曰く、気絶させて保健室に移せば即リタイアさせる事が出来るらしいからね」
「へぇ……」
なるほど。だからそれなりに生き残ってる上級生もいるのだな。一ヶ月逃げ切った者もいれば、気絶してリタイアした者も少なからずいるということか。
「リタイアさえ出来れば、血を流す事なく終わらせられるでしょ? 私も入学したての君達をこんなところで死なせたくないしね。それに……」
「それに……?」
「あぅ……、ごめんね亜玲澄君。何でもないの!」
ミスリアの慌てぶりに亜玲澄は首を傾げた。恐らくこの後に続く言葉は俺とミスリアにしか分からない事だ。死の運命から阻止し、その想像者たる者を滅ぼすという俺の生きる意味のためにこの作戦を立てたのだ……と。
「じ、じゃあ話を戻すね。まずこの祭ではそれぞれスタート地点が違うの。この『サセボ』ってところから始まる人もいれば『ツシマ』からスタートする人もいるの。
君達がそのスタート地点から一人以上に固まるかは分からない。むしろそんな事は無いと思った方がいいわ」
「……」
佐世保……対馬……つまり、スタート地点はその都道府県のそれぞれの市ごとにあるということか。それごとに600人近い生徒を分けるというのか。下手したらスタートからすぐ敵対して殺される可能性もある。
「だからまず、君達には生き残る事を第一優先にしてほしい。勝てなさそうだったら逃げてもいい。特に生徒会相手は、ね」
生徒会の強さはとっくにあの時の入学前試験でこの目で見た。圧倒的な連携攻撃に一撃の威力の高さ、そして詠唱困難な高度魔法を一瞬で唱えられる程の魔力と知力。どの視点から見ても流石学園を統率するだけの事はある。
「でもよぉ、ベディヴィエル……だっけか? そいつだけ警戒しときゃいいんじゃねぇのか?」
「正義、それは絶対にない。きっとあの入学前試験の時でも生徒会側は本来の30パーセントしか出していないぞ。それが100パーセントで来たら今の俺達じゃ太刀打ち出来ない」
正義の言い分を亜玲澄がきっぱりと否定する。正にその通りなのだ。俺としても流石にあれが生徒会の本気だとはとても思えない。あの時ベディヴィエルが使ってた聖剣もきっとレプリカだ。本物を使ったら教会が壊れるほどの騒ぎでは無くなる。
「じゃあやっぱり逃げるしかないってこと……?」
「作戦本来の目的を達成するにはそれが最善だよ。でも放っておくと知らぬうちに殺されるのも確か。ぶっちゃけ一番危険なのは君達がいないスタート地点に生徒会メンバーが入ってる事だよ」
「確かに……」
亜玲澄が俯きながら呟く。もし仮にそうなってしまった場合はその時点で作戦失敗だ。その生徒達も逃げる選択をすると思うが、本気の生徒会を前に逃げられるなんて到底出来ない。俺達もそうなのだから。
「あの生徒会を止められるのは特別区分生徒のオロチ君とミレ……いや、エレイナちゃん。そして一般区分ではあるもののネフティス推薦でここに来たアレス君とセイギ君……」
ミスリアは説明も兼ねて作戦メンバーの名前を確認していた。その時、聞き覚えのある名前が俺の耳を通り抜けていった。
「――それと今ここにはいないけど、カルマ君とエイジ君よ」
「――!!」
カルマ。エイジ。間違いない、あの海の惑星での任務で共に過ごしたあの王国の王子と学友だ。王になるのを捨ててまで、何故ここに来たのか……
「あの人達……この学園に来てたんだ」
「しかも……ネフティス推薦で」
「どうなってんだこりゃ……」
思わぬ場所と時間、そしてタイミングで再びその2人の名を耳にする事となった。また会える……そして今度は共に任務を遂行出来る事になるとは思わなかった。あの2人がいるだけでも心強い。こんな無茶な作戦でも少し成功の可能性が見出せたような気がした。
「あいつら……」
近い未来、水星の王子2人との再会に密かに胸を踊らせる俺であった――
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