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第三章 学園惑星編
第九十一話「時は満ちた」
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西暦2005年 7月4日 第五次剣血喝祭開催一週間前――
今だ爪痕が大きく残る教会に、全生徒が揃う。その上のステージに、アルスタリア高等学院生徒会長のベディヴィエル・レントが立っていた。
「一年生は入学してから約3ヶ月、我々二年生は約1年と3ヶ月……全てはこの時のために努力を重ねてきた! 時は満ちた……残り一週間後、現ネフティス総長の出身地ナガサキに常夏の祭典が開かれる!」
刹那、多くの歓声が破壊された教会を包み込む。それはやがて学園全体をも包み込むこととなった。
「すげぇ歓声だな……」
「そりゃ、3年ぶりの学祭らしいからな! 楽しみだな~!!」
「ねぇねぇ、今年は誰が優勝するんだろうね?」
「やっぱりベディヴィエル君だよね~! かっこいいし強いしもうたまんな~い!!」
多くの生徒がこれから行われる祭に胸を踊らされている中、俺は深刻そうな顔をしながらただ俯いていた。
……やはり皆は知らないのか。これからやってくる行事には、死人が出るってことを。きっと学祭の目玉でもある剣血喝祭もただの1つの競技程度にしか思っていないんだろう。
それもそのはずだ。大抵が地球での義務教育を卒業している。学校祭とは何なのか、過去の記憶でイメージされて勝手に作っては想像しているからこそこの祭が血祭りになることなんて一ミリも思ってもいないのだ。
「この中のほとんどが祭の屍になるのか……」
「……大蛇?」
「……すまない、独り言だ」
隣りにいた亜玲澄が気にしていたが何とか誤魔化す。こういう場ではあまり言うべきではないのかもしれない。
ざわつく中、ベディヴィエルが軽く手を挙げた途端、一斉に黙りだす。
「しかし、1年生よ。このアルスタリア高等学院の学校祭はただ楽しむ行事だとは思わないことだ。何故なら、この祭の一大行事『剣血喝祭』は己の血と剣をぶつけ合う。よって、中には犠牲者も数多く出る行事なのだ!」
声を高らかに上げながらきっぱりと言う。その刹那、生徒達から恐怖故なのかざわざわしだした。しかし、それも無理はない。学校行事で人が死ぬ祭なんてここくらいしか存在しないだろうからな。
「来週から1ヶ月間、この祭りは開かれる! 仲間と共に生き延びるもよし、己を磨き、頂点を目指すもよし! とにかく生き延びるために腕を磨くのだ!!」
再び歓声が飛び交う。やはり、仲間と共に生き延びれる事が大きかったからか。
もちろん俺もその一人だ。というか、この運命を変えるにはそれしか道がない。
「……では皆よ、健闘を祈る!」
そう言い残した後、ベディヴィエルはステージから去っていった。その後たくさんの拍手が鳴り響き、徐々に生徒達が退出していく。
その隙を狙って俺はエレイナと亜玲澄、正義を探すべく教会を歩き回る。人混みの中を掻い潜るように避けている時、左から突如左手を掴まれては引っ張られる。
「な、何だおい……ちょっ!」
引っ張っている人は無言で俺を連れて教会から出る。そしてある建物の中に入ると、そこにはエレイナと亜玲澄、そしてミスリアの姿があった。ふと正面を向くと、赤髪の鉢巻に腰に刀を差している青年がいた。
「……せめて一声かけろ」
「んなこと出来るかよ! ざわついてるあん中で大声で呼んじまうと色々面倒だろうが!」
俺と正義のいつもの言い合いに場の空気が和んだような気がした。恐らく気のせいだ。
そんな空気の中で、ミスリアが話を切り出してくれた。
「さて、全員来たところだし本題に移ろうか……『剣血喝祭生徒全員生き残り大作戦』、別名『ロスト・ゼロ』作戦の説明を始めるね――」
今だ爪痕が大きく残る教会に、全生徒が揃う。その上のステージに、アルスタリア高等学院生徒会長のベディヴィエル・レントが立っていた。
「一年生は入学してから約3ヶ月、我々二年生は約1年と3ヶ月……全てはこの時のために努力を重ねてきた! 時は満ちた……残り一週間後、現ネフティス総長の出身地ナガサキに常夏の祭典が開かれる!」
刹那、多くの歓声が破壊された教会を包み込む。それはやがて学園全体をも包み込むこととなった。
「すげぇ歓声だな……」
「そりゃ、3年ぶりの学祭らしいからな! 楽しみだな~!!」
「ねぇねぇ、今年は誰が優勝するんだろうね?」
「やっぱりベディヴィエル君だよね~! かっこいいし強いしもうたまんな~い!!」
多くの生徒がこれから行われる祭に胸を踊らされている中、俺は深刻そうな顔をしながらただ俯いていた。
……やはり皆は知らないのか。これからやってくる行事には、死人が出るってことを。きっと学祭の目玉でもある剣血喝祭もただの1つの競技程度にしか思っていないんだろう。
それもそのはずだ。大抵が地球での義務教育を卒業している。学校祭とは何なのか、過去の記憶でイメージされて勝手に作っては想像しているからこそこの祭が血祭りになることなんて一ミリも思ってもいないのだ。
「この中のほとんどが祭の屍になるのか……」
「……大蛇?」
「……すまない、独り言だ」
隣りにいた亜玲澄が気にしていたが何とか誤魔化す。こういう場ではあまり言うべきではないのかもしれない。
ざわつく中、ベディヴィエルが軽く手を挙げた途端、一斉に黙りだす。
「しかし、1年生よ。このアルスタリア高等学院の学校祭はただ楽しむ行事だとは思わないことだ。何故なら、この祭の一大行事『剣血喝祭』は己の血と剣をぶつけ合う。よって、中には犠牲者も数多く出る行事なのだ!」
声を高らかに上げながらきっぱりと言う。その刹那、生徒達から恐怖故なのかざわざわしだした。しかし、それも無理はない。学校行事で人が死ぬ祭なんてここくらいしか存在しないだろうからな。
「来週から1ヶ月間、この祭りは開かれる! 仲間と共に生き延びるもよし、己を磨き、頂点を目指すもよし! とにかく生き延びるために腕を磨くのだ!!」
再び歓声が飛び交う。やはり、仲間と共に生き延びれる事が大きかったからか。
もちろん俺もその一人だ。というか、この運命を変えるにはそれしか道がない。
「……では皆よ、健闘を祈る!」
そう言い残した後、ベディヴィエルはステージから去っていった。その後たくさんの拍手が鳴り響き、徐々に生徒達が退出していく。
その隙を狙って俺はエレイナと亜玲澄、正義を探すべく教会を歩き回る。人混みの中を掻い潜るように避けている時、左から突如左手を掴まれては引っ張られる。
「な、何だおい……ちょっ!」
引っ張っている人は無言で俺を連れて教会から出る。そしてある建物の中に入ると、そこにはエレイナと亜玲澄、そしてミスリアの姿があった。ふと正面を向くと、赤髪の鉢巻に腰に刀を差している青年がいた。
「……せめて一声かけろ」
「んなこと出来るかよ! ざわついてるあん中で大声で呼んじまうと色々面倒だろうが!」
俺と正義のいつもの言い合いに場の空気が和んだような気がした。恐らく気のせいだ。
そんな空気の中で、ミスリアが話を切り出してくれた。
「さて、全員来たところだし本題に移ろうか……『剣血喝祭生徒全員生き残り大作戦』、別名『ロスト・ゼロ』作戦の説明を始めるね――」
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