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第三章 学園惑星編

第八十八話「血剣」

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「ちっ……!!」

 左足に蛇の尾が巻きつけられる。バキバキと嫌な音をたてながら。激痛と共に血の流れる速度が速くなる。段々と頭がくらくらしていく。

 ――まずい、左足が折られる。そうなれば戦況が不利になる。毒針でサボテンにされる。それだけは避ける――!

「うおおおおお!!」

 ……もういい。この際毒なんて気にしてる場合ではない。何なら既に左手が毒で異常に熱くなっている。ほんの少しだがこの毒には慣れた。

「おおおおおおお!!!!」

 俺は死にものぐるいで左手に全集中し、針の束を強く握りしめては化け物の右側の目元に思い切り突き刺す。

「ギャアアアアッ!!」

 見事に命中し、左足が離れた。

 ……よし、これで視界は己の毒で塞いだ。後はもう一度針を取っては反対に同様の事をするだけだ。

 再び針の攻撃が来るのを待つべく、湯船の方に後退して距離をとる。その直後に化け物は暴れ出し、至る方向に針を放った。
 バスルームの電球が割れ、視界が暗くなる。鏡もあっという間に針で粉々になっては鋭い破片となって床に落ちる。

 ――ちっ、訓練用のはずなのに学習したというのか。俺のところに針が来ない。いや、意図的に針を俺の方だけに出してこない。何故だ……まさか、俺が見えているのか?

「ギシャアアアッ!!!」
「うぐっ――!」

 四方八方に無数の針が突き刺さる。俺の身体にも何本か針が刺さって床に血が広がっていく。まただ。全く同じ状況だ。まだ魔眼の力を使いこなせていない。

 ――くそっ、もう武器が無い。また手に針刺して前回と同じ方法で殺すか。それとも別の方法でするか……

「ギャシャアアアア!!!」

 来る。今度は俺めがけて迫ってくる。殺す気だ。今すぐ針を掴む準備を――

『これ以上毒を身体に回らせる気なのか』

 ――お前は。あの時俺に魔眼を与えたのと同じか。

『竜の力を舐めるなよ、人間。今足元に広がっている血も使えるぞ』

 ――どういう事だ。物体操作は魔力が無ければ出来ないはずだ。

『馬鹿を言え。お前の右目は何のためにあると思っている』
「シャアアアアアアッ!!!!!」
『魔眼と名乗るくらいだ。多少なりとも魔力が籠められている。右手を真っ直ぐかざせ。次第に血が全てを裂く刃となろう』

 言われた通りに俺はすぐに右手を伸ばし、正面にかざした。目の前にまで針が迫ってくる。

「ぐっ……!」
『恐れるな。その程度で死ぬお前ではない。今は集中しろ。足元の血から刃を精製することにな――』

 頬や耳、おでこにも毒針が命中し、更に血が体内から流れていく。消えていく。また頭がくらくらする。それでも俺は血の剣をつくることに集中する。

 ――待ってろ化け物。前回より楽に殺してやる。

「『冥鬼之聖剣ディアボロス』」

 全身に針が横殴りの雨の如く突き刺さっては激痛に耐えながらも精製させる。足元の血が剥がれ落ちるように宙に浮き、俺の手元に集まっては剣の形を作り出す。やがて実体化し、柄から刃先まで真紅に輝く剣と化した。

『流石は未来の俺だ。あとは殺すだけだ』
「……いち早く楽に殺してやるよ」

 右手の真紅の血剣を強く握り、振り払った直後に両足で地を蹴る。

「ギャアアアアッ!!!」
「――っ!!」

 剣を右上から振りかぶり、化け物の首を真っ二つに斬る。その後も目に止まらぬ速さで蛇の尾を細切れにする。

「ギシャアアア!!」
「……後でミスリアにちゃんとした新しいシャワーを頼むとするか」

 化け物のシャワーヘッド部分を掴んでは頭上に投げ、真紅の斬撃で無数のポリゴンの如く床に落ちては塵となって消えた。

「はぁ………………」

 思わず長いため息をついたと同時に意識がもうろうとしてきた。身体が揺れる。また倒れる。きっとこれに慣れないと魔眼は使いこなせてるとは言えないんだろうな……

 なんていう変な事を考えながら俺はその場にうつ伏せで倒れた。脳に酸素が届かない。身体が酸素を求めてる。でも届かない。意識すら酸素を求めてるというのに。

「…………」

 俺はしばらく倒れ、意識不明の眠りについた。
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