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第三章 学園惑星編
第八十六話「守るべきもの」
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「ほ~ら、遠慮しないで言って?」
ミスリアの顔が近づく度に汗が止まらなくなる。冷静さを失ってしまう。声が出せなくなる。これが緊張というものなのだろうか。
「……」
実際俺は果たさなければならないものを隠している。それも結局皆が信じてくれないと思い込んでいるからだ。だって、誰が信じてくれる……『俺は過去の記憶を引き継いだまま未来に生まれ変わった』だなんて。
「もう、素直じゃないんだから……」
口を開かない俺にミスリアは少し寂しそうな声で呟いた。そもそもこれは亜玲澄やエレイナにすら言っていない。もしここでその事を話せば何故ミスリアには言えるんだという疑問が発生する。
「……少なくとも、今は言えないです」
何故急に敬語で話したかは分からないが、我ながらはっきりとした声でミスリアに言った。もう隠し事がバレているのだとすればこう言うしか無い。
そうは言ってるが、ただ俺が勝手に俺しか知らない運命だろうと思っては、皆との間に見えない障壁を張っていた。ただそれだけである。隠すつもりは毛頭ない。
しかし、周りからすればほぼ確実に笑わられてしまうような話を最初にミスリアに言うのは違うと思った。何より最初は亜玲澄やエレイナ、正義や博士といった身近な存在から明かしていくべきだと思う。
「ふ~ん、そっか。まぁ秘密の1つや2つくらい誰にでもあるよね……ごめんね、今のは忘れて」
まだ攻めてくるか……と思ったものの、案外引き下がってくれたのですぐにミスリアの元から離れた。もしこれがあの霧雨芽依や凪沙さんだったらもっと攻めていた事だろう。
「……よし、とりあえずオロチ君にはそれなりの目的があってここにいるって事にしとくね!」
そう心の中で納得させたミスリアは教室から出てしまった。
「ま、まだ説明の途中なんだが……」
剣血喝祭の内容説明の途中でミスリアが無理に気を遣って出ていったので、俺としてもこの空気はとても気まずくて仕方がなかった。
「……楽にしていいぞ」
とりあえず魔剣を抜き、近くのソファーに置く。するとすぐに紫の光が魔剣から眩きだし、魔剣が人型へと形を変える。光から滲み出すように漆黒のスカートが少女の身を包みだす。そして完全に人となった俺の魔剣はドサリとソファーに尻もちをつく。
「ひゃっ……!? も~、急に起こさないでくださいよ~っ……ふ、ふわぁぁっ……」
寝起きだからか、盛大な欠伸をした俺の魔剣(?)はそのままソファーに寝転んだ。
……こいつ、ソファーで寝たのか……。一応言っておくがお前、剣だからな? 実際振ってみて分かったけど反命剣と同じくらいにはハイスペックだからな。
それでもすやすやと寝息をたてながら眠る俺の魔剣を見ていると、何故か居ても立っても居られなくなり、ベッドから毛布を取ってきては魔剣の全身に被せる。
「……仕方ねぇ、お前には散々苦労させたからな。ゆっくり眠れ」
まだ日は沈んでないというのに、もう一日が経ったような感じがした。
一先ずミスリアに見つかる前に剣の姿に戻そうと思いながら、亜玲澄やエレイナ達を含め、今まで命がけで紡いできたこの日々を守る事を心に誓った。
――常夏の血祭りで、誰も死なせないために。
ミスリアの顔が近づく度に汗が止まらなくなる。冷静さを失ってしまう。声が出せなくなる。これが緊張というものなのだろうか。
「……」
実際俺は果たさなければならないものを隠している。それも結局皆が信じてくれないと思い込んでいるからだ。だって、誰が信じてくれる……『俺は過去の記憶を引き継いだまま未来に生まれ変わった』だなんて。
「もう、素直じゃないんだから……」
口を開かない俺にミスリアは少し寂しそうな声で呟いた。そもそもこれは亜玲澄やエレイナにすら言っていない。もしここでその事を話せば何故ミスリアには言えるんだという疑問が発生する。
「……少なくとも、今は言えないです」
何故急に敬語で話したかは分からないが、我ながらはっきりとした声でミスリアに言った。もう隠し事がバレているのだとすればこう言うしか無い。
そうは言ってるが、ただ俺が勝手に俺しか知らない運命だろうと思っては、皆との間に見えない障壁を張っていた。ただそれだけである。隠すつもりは毛頭ない。
しかし、周りからすればほぼ確実に笑わられてしまうような話を最初にミスリアに言うのは違うと思った。何より最初は亜玲澄やエレイナ、正義や博士といった身近な存在から明かしていくべきだと思う。
「ふ~ん、そっか。まぁ秘密の1つや2つくらい誰にでもあるよね……ごめんね、今のは忘れて」
まだ攻めてくるか……と思ったものの、案外引き下がってくれたのですぐにミスリアの元から離れた。もしこれがあの霧雨芽依や凪沙さんだったらもっと攻めていた事だろう。
「……よし、とりあえずオロチ君にはそれなりの目的があってここにいるって事にしとくね!」
そう心の中で納得させたミスリアは教室から出てしまった。
「ま、まだ説明の途中なんだが……」
剣血喝祭の内容説明の途中でミスリアが無理に気を遣って出ていったので、俺としてもこの空気はとても気まずくて仕方がなかった。
「……楽にしていいぞ」
とりあえず魔剣を抜き、近くのソファーに置く。するとすぐに紫の光が魔剣から眩きだし、魔剣が人型へと形を変える。光から滲み出すように漆黒のスカートが少女の身を包みだす。そして完全に人となった俺の魔剣はドサリとソファーに尻もちをつく。
「ひゃっ……!? も~、急に起こさないでくださいよ~っ……ふ、ふわぁぁっ……」
寝起きだからか、盛大な欠伸をした俺の魔剣(?)はそのままソファーに寝転んだ。
……こいつ、ソファーで寝たのか……。一応言っておくがお前、剣だからな? 実際振ってみて分かったけど反命剣と同じくらいにはハイスペックだからな。
それでもすやすやと寝息をたてながら眠る俺の魔剣を見ていると、何故か居ても立っても居られなくなり、ベッドから毛布を取ってきては魔剣の全身に被せる。
「……仕方ねぇ、お前には散々苦労させたからな。ゆっくり眠れ」
まだ日は沈んでないというのに、もう一日が経ったような感じがした。
一先ずミスリアに見つかる前に剣の姿に戻そうと思いながら、亜玲澄やエレイナ達を含め、今まで命がけで紡いできたこの日々を守る事を心に誓った。
――常夏の血祭りで、誰も死なせないために。
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