黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》

第三章 学園惑星編

第七十八話「目覚め」

　あの子――アカネと名乗る、今の俺が未来ここに転生するきっかけをくれた『生命の管理者』。その子とかつて俺がこの手で殺めた恋人……エレイナ・ヴィーナスの声が重なって俺を呼んだような気がした。
　恐らく気のせいだろう。ここ何度も走馬灯を見てきてるから脳がおかしくなったのだろう。

『大蛇君――！！』

　――やっぱり重なって聞こえる。とても気のせいとは思えなくなった。答えを確認するべく、俺はゆっくりと瞼を開いた。



「あ、大蛇君起きた！」
「起きたかい！？　あぁ、良かった……」

　ゆっくりと広がった視界には、何故かエレイナとミスリアが看病をしていた。

「エレイナ……何で……」
「ミスリア先生から連絡があったの。それでいてもたってもいられなくって……！」

　連絡……ということは、ミスリアは俺の携帯を通してエレイナに連絡したということか。
　いや、そもそもエレイナは携帯の使い方が分からない。ならどうやって……

「それは良いけど、今はゆっくり休んでね。今日は訓練お休みにしてるから」

　ミスリアが申し訳無さそうに俺の方をじっと見ながら言った。
　
「……何故あんな事をしたんだ」

　まだ始まったばかりだというのに、何の意図でこんな訓練をさせたのかがとても気になって仕方無かった。

　その問いにミスリアは答えてくれた。その口からは衝撃的な言葉が放たれた。

「……君・本・来・の・力・を・取・り・戻・す・た・め・だ・よ・、オロチ君」
「は……！？」
「ヤ・マ・タ・ノ・オ・ロ・チ・の・生・ま・れ・変・わ・り・として転生してきた今のオロチ君になら習得出来ると思ってたんだ。
　八つの首の如く通常の8倍に及ぶ未来可視、そして危険察知、そして身体能力を向上させる魔眼……『八之竜眼わかつのりゅうがん』を」

　何だそれは。今まで聞いたことがない。まさかあの走馬灯の時に聞こえてきた声があのヤマタノオロチだというのか。

　やはり俺あいつの言っていた事は――

「じゃあ、その訓練っていうもので大蛇君は強くなった……ってこと？」
「うん、そうだよ。元々彼は強いけどね。でも昨日とは比べ物にならないレベルにはなってるよ。急激すぎる成長で私もびっくりだよ～」

　それは俺が一番言いたい。そんな急激な成長が人間にあるわけがない。さっきの蛇との戦いで俺は魔眼か何かを習得したとは言っているが、使いこなせるには相当時間がかかるだろう。
　するとミスリアはその俺の言葉を読んだかのようにふふっと笑いながら話した。

「あれはまだたまたま使えただけって感じたね。満身創痍の時に一度使えるか使えないかって感じだからね……まだまだ特訓は必要になるけど、覚悟はできてる？」
「今更何を。あまり俺の覚悟を甘く見ないことだな」
「あっはは、ごめんね。馬鹿にするつもりはないからさ！　ささっ、今日は休みだから皆でたこ焼き食べようか！」
「……？」

　俺とエレイナが困惑する。たこ焼き……とは一体何なのだろうか。

「あ……えっと、もしかしてたこ焼き知らない？」
「知っての通り、俺は元々竜だぞ」
「私、日本に住み始めたのつい最近で……」
「そっか～……二人共知らないのか……」

　世間知らずにも程がある俺達に、ミスリアは心優しくたこ焼きの全てを教えてくれた。

　少しずつ、宿命に縛られた俺の心も暖かくなっていくような気がしてきた――