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第三章 学園惑星編
第七十三話「君は特別」
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――さて、一人になったがどうしたものか。このままずっと待って先生とやらに怒られるのは面倒だ。
「……俺とエレイナだけなのが妙に違和感だ」
だが、今の俺はそんな謎を解明する頭はない。今はクラスにすら入れなかった事へのショックでどうにも身体が働かない。
――その時、何者かに声をかけられた。
「ねぇねぇ、君もクラス表に名前無いの?」
赤い長髪に白い肌。まるで人魚の如くスラリとした体型の女性が俺の左肩をトントンと叩いた。
「……お前も退学組か」
「あはは! 面白い事言うね~君」
お前そんな事言ってる状況か……? 俺もそうだがお前も余裕をかましている暇はないはずだ。
「私は君の担任だよ?」
「は……?」
俺の……担任? どういう事だ。見た目からしてとても先生のようには見えない。むしろ同級生に見えるほどだ。
「……今日から私、ミスリア・セリウスは特殊区分生徒オロチ・クロガミ君の専属担任になります! これからよろしくね!」
「は……? いや、え……??」
待て待て、いきなり新しい単語を一気に出されても処理しきれない。とりあえず俺は退学では無いという事だけは分かった。
完全に困り果ててる俺を見てミスリアはふふっと笑った。
「大丈夫、ちゃんと説明するから! まずは『特殊区分生徒』ってのは、このアルスタリア高等学院でも数年に一人いるかいないかって程の逸材なんだよ。つまりは特待生……って感じで覚えてくれたらいいよ!」
……いや、そう考えたら亜玲澄もそれに値するはずだ。何故俺だけがその区分に入るんだ。
「一般区分……A組とかと違って、本来これに選ばれるのはただ一人。でも今年は異常だよ……二人も選ばれてる。君と、『アカネ・ミレイナ』さんって人」
「――!」
アカネ……そう、あの時俺に3度目のチャンスをくれた巫女服の少女。あの子がここに来てるというのか……!
でも一体どうやって……
「ん? もしかして知り合い?」
「えっ……そ、そんなところだ」
「へぇ~、これはますます期待しちゃうな~♪」
ミスリアさん……勝手に俺とアカネを上げないでほしいところだ。逆にプレッシャーになりかねないだろ。
「えっと、それで特殊区分生徒には一人につき専属の担任が必ず一人就くの。それも過去に特殊区分生徒として選ばれた者のみにしか務められないの。もちろん私も前にこの区分だったんだよ」
「ほう……」
これで大体分かった。亜玲澄達と違う扱いをされるのは不本意だが、少なくとも俺はこの学院でもかなり上の位置にいるってことか。
「でもその分、実践練習はきついよ? なんたって神器同士でやるからね!」
「っ――!?」
冗談じゃない。練習中に致命傷を受けて命を落とすってのが普通に起こりうるって事なのか。
――いや、だから本来は一人しか選ばないのかもしれない。仮に特殊区分の生徒が練習中に命を落とした時のために、一般区分から一番強い者を選ぶために。つまりはただの捨て駒だ。
凪沙さん……こんな鬼畜すぎる学院で思い出作れだなんて無理にも程があるだろ。
「じゃあ、オリエンテーションって事で……軽く手合わせしようか」
「おい……ちょ、早すぎるだろっ……!?」
突然ミスリアの剣が俺の左頬から襲いかかる。それを鍛えられた反射力で背中を反らし、ギリギリで避ける。
「うわ、すごい反射力……」
……くそっ、剣筋が速すぎる! アースラなんて比にならない。今までの戦い方では確実に押しやられる。そんな未来しか見えない。どうする……どう決定打を与える?
俺は背中から魔剣を抜き、少し距離をとって体制を整える。一度深呼吸をしてから一気に両足に力を籠める。
禁忌魔法も使えない中、魔剣でも放てる俺の中の最大をぶつけるしか術は無い……!
「うおおおおお!!!」
――あまりにも早いが、ここで片を付けてやる!
ありったけの力を籠めた両足で地を蹴り、剣を肩に担ぐように構える。刀身が青白い光を帯びながら剣筋がミスリアへと迫る。
これが俺の奥義……『終無之剣』。最初の任務でアースラに致命傷を与えたのもこの技だ。
「おぉ……最初からそんな凄いのを!」
「片を付けてやるよ……今この一瞬でな!!」
一撃目をミスリアの剣が弾き、それが二、三撃目……と続く。だが、俺はそれが狙いだった。
この終無之剣は俺の身体の限界まで放ち続ける事が出来る『無制限連撃』の一つ。つまり、このままじわじわと相手の体力を消耗させて隙が出来たときに会心の一撃を決める。
そう、ミスリアに勝つ方法は耐久戦しか俺には残されていないのだ。俺が先に倒れるか、ミスリアが先に隙を見せるかの一切の油断すら許さない勝負だ。
「……これは、耐え凌がなきゃいけないやつかもね!」
「凌がなくても結構だがな……っ!」
剣を振る速度を落とす事なくミスリアに叩き込む。しかし流石と言うべきか、ミスリアはそれら全てを的確に弾き返す。まるでこの奥義を見慣れたかのように。
「これは……ネフティスから推薦来ても納得……だね!」
「ちっ――!」
突如勢いよく魔剣が弾かれ、宙に浮く。すぐに右手を伸ばすが届きそうに無い。
「ふふっ、形勢逆転だね!」
武器を無くした無防備な俺に、真紅の光を帯びたミスリアの剣が迫る。避けられないと判断し、左腕で受け止めようとしたその時だった。
『あ、主様は……殺させません!』
先程宙に浮いて石の床に突き刺さった魔剣が飛んできてはミスリアの剣と衝突した。魔剣はまだ青白い光を維持している。奥義はまだ解除されていない。
「お前……」
『主様、い……今のうち、ですよ!』
剣の状態になっても変わらない口調に少し安堵し、魔剣の柄を右手で掴む。
「残念……だったな!!」
「そっくりそのまま……お返ししてあげる!」
互いに距離を取り、再び地を蹴っては剣を振りかぶる。
――この一瞬に全てをぶつける!
「おおおおおおお!!!」
「はああああああ!!!」
――紅と蒼の二つの光がぶつかり、迸り、散った。
「……俺とエレイナだけなのが妙に違和感だ」
だが、今の俺はそんな謎を解明する頭はない。今はクラスにすら入れなかった事へのショックでどうにも身体が働かない。
――その時、何者かに声をかけられた。
「ねぇねぇ、君もクラス表に名前無いの?」
赤い長髪に白い肌。まるで人魚の如くスラリとした体型の女性が俺の左肩をトントンと叩いた。
「……お前も退学組か」
「あはは! 面白い事言うね~君」
お前そんな事言ってる状況か……? 俺もそうだがお前も余裕をかましている暇はないはずだ。
「私は君の担任だよ?」
「は……?」
俺の……担任? どういう事だ。見た目からしてとても先生のようには見えない。むしろ同級生に見えるほどだ。
「……今日から私、ミスリア・セリウスは特殊区分生徒オロチ・クロガミ君の専属担任になります! これからよろしくね!」
「は……? いや、え……??」
待て待て、いきなり新しい単語を一気に出されても処理しきれない。とりあえず俺は退学では無いという事だけは分かった。
完全に困り果ててる俺を見てミスリアはふふっと笑った。
「大丈夫、ちゃんと説明するから! まずは『特殊区分生徒』ってのは、このアルスタリア高等学院でも数年に一人いるかいないかって程の逸材なんだよ。つまりは特待生……って感じで覚えてくれたらいいよ!」
……いや、そう考えたら亜玲澄もそれに値するはずだ。何故俺だけがその区分に入るんだ。
「一般区分……A組とかと違って、本来これに選ばれるのはただ一人。でも今年は異常だよ……二人も選ばれてる。君と、『アカネ・ミレイナ』さんって人」
「――!」
アカネ……そう、あの時俺に3度目のチャンスをくれた巫女服の少女。あの子がここに来てるというのか……!
でも一体どうやって……
「ん? もしかして知り合い?」
「えっ……そ、そんなところだ」
「へぇ~、これはますます期待しちゃうな~♪」
ミスリアさん……勝手に俺とアカネを上げないでほしいところだ。逆にプレッシャーになりかねないだろ。
「えっと、それで特殊区分生徒には一人につき専属の担任が必ず一人就くの。それも過去に特殊区分生徒として選ばれた者のみにしか務められないの。もちろん私も前にこの区分だったんだよ」
「ほう……」
これで大体分かった。亜玲澄達と違う扱いをされるのは不本意だが、少なくとも俺はこの学院でもかなり上の位置にいるってことか。
「でもその分、実践練習はきついよ? なんたって神器同士でやるからね!」
「っ――!?」
冗談じゃない。練習中に致命傷を受けて命を落とすってのが普通に起こりうるって事なのか。
――いや、だから本来は一人しか選ばないのかもしれない。仮に特殊区分の生徒が練習中に命を落とした時のために、一般区分から一番強い者を選ぶために。つまりはただの捨て駒だ。
凪沙さん……こんな鬼畜すぎる学院で思い出作れだなんて無理にも程があるだろ。
「じゃあ、オリエンテーションって事で……軽く手合わせしようか」
「おい……ちょ、早すぎるだろっ……!?」
突然ミスリアの剣が俺の左頬から襲いかかる。それを鍛えられた反射力で背中を反らし、ギリギリで避ける。
「うわ、すごい反射力……」
……くそっ、剣筋が速すぎる! アースラなんて比にならない。今までの戦い方では確実に押しやられる。そんな未来しか見えない。どうする……どう決定打を与える?
俺は背中から魔剣を抜き、少し距離をとって体制を整える。一度深呼吸をしてから一気に両足に力を籠める。
禁忌魔法も使えない中、魔剣でも放てる俺の中の最大をぶつけるしか術は無い……!
「うおおおおお!!!」
――あまりにも早いが、ここで片を付けてやる!
ありったけの力を籠めた両足で地を蹴り、剣を肩に担ぐように構える。刀身が青白い光を帯びながら剣筋がミスリアへと迫る。
これが俺の奥義……『終無之剣』。最初の任務でアースラに致命傷を与えたのもこの技だ。
「おぉ……最初からそんな凄いのを!」
「片を付けてやるよ……今この一瞬でな!!」
一撃目をミスリアの剣が弾き、それが二、三撃目……と続く。だが、俺はそれが狙いだった。
この終無之剣は俺の身体の限界まで放ち続ける事が出来る『無制限連撃』の一つ。つまり、このままじわじわと相手の体力を消耗させて隙が出来たときに会心の一撃を決める。
そう、ミスリアに勝つ方法は耐久戦しか俺には残されていないのだ。俺が先に倒れるか、ミスリアが先に隙を見せるかの一切の油断すら許さない勝負だ。
「……これは、耐え凌がなきゃいけないやつかもね!」
「凌がなくても結構だがな……っ!」
剣を振る速度を落とす事なくミスリアに叩き込む。しかし流石と言うべきか、ミスリアはそれら全てを的確に弾き返す。まるでこの奥義を見慣れたかのように。
「これは……ネフティスから推薦来ても納得……だね!」
「ちっ――!」
突如勢いよく魔剣が弾かれ、宙に浮く。すぐに右手を伸ばすが届きそうに無い。
「ふふっ、形勢逆転だね!」
武器を無くした無防備な俺に、真紅の光を帯びたミスリアの剣が迫る。避けられないと判断し、左腕で受け止めようとしたその時だった。
『あ、主様は……殺させません!』
先程宙に浮いて石の床に突き刺さった魔剣が飛んできてはミスリアの剣と衝突した。魔剣はまだ青白い光を維持している。奥義はまだ解除されていない。
「お前……」
『主様、い……今のうち、ですよ!』
剣の状態になっても変わらない口調に少し安堵し、魔剣の柄を右手で掴む。
「残念……だったな!!」
「そっくりそのまま……お返ししてあげる!」
互いに距離を取り、再び地を蹴っては剣を振りかぶる。
――この一瞬に全てをぶつける!
「おおおおおおお!!!」
「はああああああ!!!」
――紅と蒼の二つの光がぶつかり、迸り、散った。
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