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第三章 学園惑星編
第七十一話「最悪の目覚め」
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身体が乾く。今の黒く焼けた俺の身体はその言葉が一番適している。まるで着火した炭に水をかけて乾かしたかのような……
「あ、あるじしゃまぁ……起きてくだしゃ~い……」
「っ……」
ゆっくりと瞼を開くと、隣に金の長髪に黒いスカートを身につけた少女がうとうとしながらこちらを見ていた。
「お、おはようございましゅ……」
「……寝起きか」
「剣は朝に弱いんでしゅよ~……! ふわあ~っ……」
「はぁ……早く剣に戻れ」
これから俺はこれほど厄介な剣を反命剣の代わりにして戦わなければならないのか。
そう思うと先が思いやられるな……と深いため息を吐くと同時にドアがノックする音が聞こえた。
「やぁ、この学院の寮も中々のものだろ?」
「あんた……生きてたのか」
現れたのはあの生徒会長のベディヴィエルであった。昨日までの純白の鎧とは違い、灰色のポロシャツのようなものを着ていた。
「今までこれほどまで大きくなった事が無いからね。今回ばかりは流石の僕も殺されるんじゃないかとドキドキしながら戦ったよ」
「……その割には戦い慣れているように見えたけどな」
「そりゃそうだよ。この学院では毎年ある大会が行われるんだ」
「大会……?」
「うん、そうだよ――」
――毎年7月……アルスタリア高等学院全生徒がクラス対抗であらゆる剣術、魔法を駆使して頂点を狙う常夏の大会……その名は『剣血喝祭』。
「剣血……喝祭」
「一般の学院では学院祭をその時期にしてるんだけど、ここはその大会が学院祭みたいなものだよ」
ほう……学院祭と来た。ということはその大会はその中のイベントの一つとして捉えていいのだろうか。
「今年は特に楽しみだなぁ……君達一年生がここまで強いからね。今後に期待しちゃうよ」
「……それはどうも」
素っ気なく答えるとベディヴィエルは寮を後にした。一人になったところでいつの間にか剣になっていたのが少女になった。
「ふぅ~……へ、変身も……着替えと同じように…………たた大変なんですよ! その……疲れますし!」
「魔剣様も大変なようで」
「な……何でそんなに……そ、素っ気ないんですか、主様!」
「生憎それが俺の性格だ」
何かこの剣、誰かに似てるようなそうでないような……とりあえず少し既視感が生まれてくる。今はもう存在しない怪盗に――
しばらく沈黙が続き、ふと少女の方を見ると黒く輝く魔剣が布団の上に置かれていた。
「……こんな俺だが、最低限の思いやりはあるから安心しろ」
右手で魔剣を持ち、俺は寮を後にした。これから関わる事のあるクラスを確認するために――
「あ、あるじしゃまぁ……起きてくだしゃ~い……」
「っ……」
ゆっくりと瞼を開くと、隣に金の長髪に黒いスカートを身につけた少女がうとうとしながらこちらを見ていた。
「お、おはようございましゅ……」
「……寝起きか」
「剣は朝に弱いんでしゅよ~……! ふわあ~っ……」
「はぁ……早く剣に戻れ」
これから俺はこれほど厄介な剣を反命剣の代わりにして戦わなければならないのか。
そう思うと先が思いやられるな……と深いため息を吐くと同時にドアがノックする音が聞こえた。
「やぁ、この学院の寮も中々のものだろ?」
「あんた……生きてたのか」
現れたのはあの生徒会長のベディヴィエルであった。昨日までの純白の鎧とは違い、灰色のポロシャツのようなものを着ていた。
「今までこれほどまで大きくなった事が無いからね。今回ばかりは流石の僕も殺されるんじゃないかとドキドキしながら戦ったよ」
「……その割には戦い慣れているように見えたけどな」
「そりゃそうだよ。この学院では毎年ある大会が行われるんだ」
「大会……?」
「うん、そうだよ――」
――毎年7月……アルスタリア高等学院全生徒がクラス対抗であらゆる剣術、魔法を駆使して頂点を狙う常夏の大会……その名は『剣血喝祭』。
「剣血……喝祭」
「一般の学院では学院祭をその時期にしてるんだけど、ここはその大会が学院祭みたいなものだよ」
ほう……学院祭と来た。ということはその大会はその中のイベントの一つとして捉えていいのだろうか。
「今年は特に楽しみだなぁ……君達一年生がここまで強いからね。今後に期待しちゃうよ」
「……それはどうも」
素っ気なく答えるとベディヴィエルは寮を後にした。一人になったところでいつの間にか剣になっていたのが少女になった。
「ふぅ~……へ、変身も……着替えと同じように…………たた大変なんですよ! その……疲れますし!」
「魔剣様も大変なようで」
「な……何でそんなに……そ、素っ気ないんですか、主様!」
「生憎それが俺の性格だ」
何かこの剣、誰かに似てるようなそうでないような……とりあえず少し既視感が生まれてくる。今はもう存在しない怪盗に――
しばらく沈黙が続き、ふと少女の方を見ると黒く輝く魔剣が布団の上に置かれていた。
「……こんな俺だが、最低限の思いやりはあるから安心しろ」
右手で魔剣を持ち、俺は寮を後にした。これから関わる事のあるクラスを確認するために――
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