68 / 232
第三章 学園惑星編
第六十七話「入学前試験(中)其の壱」
しおりを挟む
一方亜玲澄とエレイナは魔法や血が飛び交うこの教会の中、大蛇が武器を持ってくるのを待っていた。
「お兄ちゃん、このままじゃ……」
「あぁ、確実に全員やられる」
乱闘が始まってからまだ15分も経っていないのにも関わらず、戦っている新入生は既に半分を切っている。それもそうだ。こちら側は普通の剣や魔法杖なのに生徒会側は神器持ちだ。卑怯にも程があるだろうに。
「エレイナ、俺達も武器を取りに行くぞ」
「え、でも大蛇君はこのままいろって……」
「このまま待ってたら死んじまう。黙ってるくらいなら行動するまでだ!」
少し強引にエレイナの右手首を引っ張りながら、亜玲澄は教会の外を目指した――
大蛇達がそれぞれ武器を取りに外へ出る中、唯一万全に戦える正義は新入生達に指示をしながら生徒会メンバーを少しずつ崩していく。
「四剴抜刀・花鳥風月!」
正義は刀を逆手に持ち、全身を捻ってエメラルド色の竜巻を発生させる。が、生徒会の氷属性魔法使いはそれを軽々と避け、両手から氷の槍を放つ。
「ぐっ……!」
技の反動で避けきれず、正義は身体の至る所に槍が命中する。その刹那、身体から冷気を感じ、一気に全身が凍りついた。
「くそっ……よくもおお!!!」
新入生達は続々と氷使いに突撃するが、呆気無く凍てつくされた。
「ふ~ん、今年はこんなものか」
余裕の笑みを浮かべているその時、一筋こ閃光に纏った炎が氷使いの左腕を斬り裂いた。
「なっ――!」
「おいおい、生徒会たるものがこのカルマを前に油断とは随分舐められたもんだぜ!」
「ちっ……新手か!」
氷使いはカルマに向かって右手で五つの氷の槍を生成して飛ばす。が、カルマは炎を纏った聖剣を振り払い、氷の槍を一瞬にして溶かした。
「やっぱり生徒会とて、片手がねぇと太刀打ち出来ねぇか?」
「舐めやがって……!」
「お前を舐めてもただ冷てぇだけだろうが!」
カルマは右腕を後ろに引き、腰を落とし、突きの構えをとる。
「レイブン流獄炎剣術……とくと味わいやがれ!『炎獣之斬痕』!!」
カルマは剣を氷使いに向けて思い切り突く。途端、剣に纏った炎が一直線に迸り、氷使いを焼き尽くした。
「がっ……!」
「どうやらこの学校にあいつらも入学してくるらしいからな。みっともねぇ姿見せらんねぇよ!」
次第に炎が消え、焼き焦げた教会の長椅子の残骸から戦闘不能になった氷使いを確認し、カルマは次の生徒会役員を探す。
「……そういえば、こいつの名前聞くの忘れてたな」
――そして、先程まで氷漬けにされていた正義は解かれ、元通りになった。
「ぶはあっ! はぁ、はぁ……くそ、死ぬかと思ったぜ……って、白坊と嬢ちゃんは?」
突然いなくなった亜玲澄とエレイナを探すべく、正義は教会を走り回る。
一方、誰より早く教会の外に出た俺――大蛇は自分と亜玲澄用の武器を探していた。しかし、外に出てから約10分が経過した今でさえも武器庫のようなものは見つからないでいた。
「……ここ本当に学校なのか?」
ネフティスの養成学校と言いつつ、至る建物に武器らしきものは見当たらない。下手したらこの時のために予め撤去してるのかもしれない。新入生に学院の武器を使わせないために。
……どうしたものか。これでは新入生全滅も時間の問題だ。
しばらく考えながら探している、その時だった。
「あ、あの!」
突如後ろから声をかけられた。振り向くと、そこには漆黒のスカートに軽い鎧を身につけた少女が立っていた。
見た感じ生徒会の人ではない……こんな時にどうしたのだろうかと思い、声をかけてみる。
「……何の用だ」
「え、えっと……こ、ここにいるって事は……良い武器が見当たらないってことです、よね……?」
「…………??」
何だこいつは。初対面なのに的確に俺の心を読みやがった。少なくとも只者では無さそうだ。
「そ、そうだが……それで何だ?」
「えっと……私、主様がいなくて……その、見つかるまでの間、私の主になってくれませんか!?」
「……は?」
主? 見つかる? さっきからこいつは何を言ってるんだ。武器の話と全く辻褄が合わない。
「そ、その……落ち着いて、きき聞いてください!」
「……まずお前が落ち着け」
「ひいいっ!? す、すみません! 落ち着きますね! ふぅ~……はい、落ち着きました!」
……変な人だ。見た目からはとても想像出来ない。
しかし、想像を絶したのはここからだった。
「私……実は魔剣なんです。い、今は訳あって人間の姿に……してますけど。それで、その……私という剣の持ち主になってくれませんか!」
突然大きな声で話してきたので反射で驚いた。
……というか何だその『私は魔剣』って。こいつもしかしたら何かの病気持ちか?
「……疑ってますね?」
「むしろ信じる方がおかしいだろ」
「ひ、酷いですぅ……! な、なら証明して、あげます……!」
そう言うと、少女の身体が光だし、次第に剣へと形を変えた。本当に魔剣になりやがった。
「嘘……だろ……」
「ほ、本当なんですからね! 見てください、これが私という名の魔剣……その名は『殺歪剣』です!」
「……!!」
あの子の服装のような漆黒の剣。魔剣とは言いつつも派手すぎず、反命剣に近い形状をしていた。
……こいつの主はどこまでとんでもない奴だったんだ。
「も……持つぞ」
「は、はい、いつでもどうぞ!」
そう言ってきたので俺は少女が変身した剣の柄を右手で掴み、持ち上げる。
「これは……」
「やっぱり……貴方には合うんですね……」
「何の事だ」
「し、知ってますか……? 武器にもそれぞれ適正があるのですよ……? どんなに強い剣でも適正じゃ無かったら……その、使えないですし……」
……という事は、俺と反命剣は適正では無いという事なのか。そうじゃないとここでのみ召喚出来ないなんて事は絶対にない。
「……とりあえず今は時間が無い。お前を使わせてもらうぞ」
「もちろんです! え、えっと……突然すみません……」
今更謝るのか……と思いながらも、使いやすそうだし悪くはないかと思う俺だった。
剣が喋ることへの違和感で背中がむずむずするのを耐えながら教会へと戻っていく。
――これさえあれば、亜玲澄の剣が無くとも何とかなるはずだ。待ってろ皆。俺と魔剣で片をつけてやる。
「お兄ちゃん、このままじゃ……」
「あぁ、確実に全員やられる」
乱闘が始まってからまだ15分も経っていないのにも関わらず、戦っている新入生は既に半分を切っている。それもそうだ。こちら側は普通の剣や魔法杖なのに生徒会側は神器持ちだ。卑怯にも程があるだろうに。
「エレイナ、俺達も武器を取りに行くぞ」
「え、でも大蛇君はこのままいろって……」
「このまま待ってたら死んじまう。黙ってるくらいなら行動するまでだ!」
少し強引にエレイナの右手首を引っ張りながら、亜玲澄は教会の外を目指した――
大蛇達がそれぞれ武器を取りに外へ出る中、唯一万全に戦える正義は新入生達に指示をしながら生徒会メンバーを少しずつ崩していく。
「四剴抜刀・花鳥風月!」
正義は刀を逆手に持ち、全身を捻ってエメラルド色の竜巻を発生させる。が、生徒会の氷属性魔法使いはそれを軽々と避け、両手から氷の槍を放つ。
「ぐっ……!」
技の反動で避けきれず、正義は身体の至る所に槍が命中する。その刹那、身体から冷気を感じ、一気に全身が凍りついた。
「くそっ……よくもおお!!!」
新入生達は続々と氷使いに突撃するが、呆気無く凍てつくされた。
「ふ~ん、今年はこんなものか」
余裕の笑みを浮かべているその時、一筋こ閃光に纏った炎が氷使いの左腕を斬り裂いた。
「なっ――!」
「おいおい、生徒会たるものがこのカルマを前に油断とは随分舐められたもんだぜ!」
「ちっ……新手か!」
氷使いはカルマに向かって右手で五つの氷の槍を生成して飛ばす。が、カルマは炎を纏った聖剣を振り払い、氷の槍を一瞬にして溶かした。
「やっぱり生徒会とて、片手がねぇと太刀打ち出来ねぇか?」
「舐めやがって……!」
「お前を舐めてもただ冷てぇだけだろうが!」
カルマは右腕を後ろに引き、腰を落とし、突きの構えをとる。
「レイブン流獄炎剣術……とくと味わいやがれ!『炎獣之斬痕』!!」
カルマは剣を氷使いに向けて思い切り突く。途端、剣に纏った炎が一直線に迸り、氷使いを焼き尽くした。
「がっ……!」
「どうやらこの学校にあいつらも入学してくるらしいからな。みっともねぇ姿見せらんねぇよ!」
次第に炎が消え、焼き焦げた教会の長椅子の残骸から戦闘不能になった氷使いを確認し、カルマは次の生徒会役員を探す。
「……そういえば、こいつの名前聞くの忘れてたな」
――そして、先程まで氷漬けにされていた正義は解かれ、元通りになった。
「ぶはあっ! はぁ、はぁ……くそ、死ぬかと思ったぜ……って、白坊と嬢ちゃんは?」
突然いなくなった亜玲澄とエレイナを探すべく、正義は教会を走り回る。
一方、誰より早く教会の外に出た俺――大蛇は自分と亜玲澄用の武器を探していた。しかし、外に出てから約10分が経過した今でさえも武器庫のようなものは見つからないでいた。
「……ここ本当に学校なのか?」
ネフティスの養成学校と言いつつ、至る建物に武器らしきものは見当たらない。下手したらこの時のために予め撤去してるのかもしれない。新入生に学院の武器を使わせないために。
……どうしたものか。これでは新入生全滅も時間の問題だ。
しばらく考えながら探している、その時だった。
「あ、あの!」
突如後ろから声をかけられた。振り向くと、そこには漆黒のスカートに軽い鎧を身につけた少女が立っていた。
見た感じ生徒会の人ではない……こんな時にどうしたのだろうかと思い、声をかけてみる。
「……何の用だ」
「え、えっと……こ、ここにいるって事は……良い武器が見当たらないってことです、よね……?」
「…………??」
何だこいつは。初対面なのに的確に俺の心を読みやがった。少なくとも只者では無さそうだ。
「そ、そうだが……それで何だ?」
「えっと……私、主様がいなくて……その、見つかるまでの間、私の主になってくれませんか!?」
「……は?」
主? 見つかる? さっきからこいつは何を言ってるんだ。武器の話と全く辻褄が合わない。
「そ、その……落ち着いて、きき聞いてください!」
「……まずお前が落ち着け」
「ひいいっ!? す、すみません! 落ち着きますね! ふぅ~……はい、落ち着きました!」
……変な人だ。見た目からはとても想像出来ない。
しかし、想像を絶したのはここからだった。
「私……実は魔剣なんです。い、今は訳あって人間の姿に……してますけど。それで、その……私という剣の持ち主になってくれませんか!」
突然大きな声で話してきたので反射で驚いた。
……というか何だその『私は魔剣』って。こいつもしかしたら何かの病気持ちか?
「……疑ってますね?」
「むしろ信じる方がおかしいだろ」
「ひ、酷いですぅ……! な、なら証明して、あげます……!」
そう言うと、少女の身体が光だし、次第に剣へと形を変えた。本当に魔剣になりやがった。
「嘘……だろ……」
「ほ、本当なんですからね! 見てください、これが私という名の魔剣……その名は『殺歪剣』です!」
「……!!」
あの子の服装のような漆黒の剣。魔剣とは言いつつも派手すぎず、反命剣に近い形状をしていた。
……こいつの主はどこまでとんでもない奴だったんだ。
「も……持つぞ」
「は、はい、いつでもどうぞ!」
そう言ってきたので俺は少女が変身した剣の柄を右手で掴み、持ち上げる。
「これは……」
「やっぱり……貴方には合うんですね……」
「何の事だ」
「し、知ってますか……? 武器にもそれぞれ適正があるのですよ……? どんなに強い剣でも適正じゃ無かったら……その、使えないですし……」
……という事は、俺と反命剣は適正では無いという事なのか。そうじゃないとここでのみ召喚出来ないなんて事は絶対にない。
「……とりあえず今は時間が無い。お前を使わせてもらうぞ」
「もちろんです! え、えっと……突然すみません……」
今更謝るのか……と思いながらも、使いやすそうだし悪くはないかと思う俺だった。
剣が喋ることへの違和感で背中がむずむずするのを耐えながら教会へと戻っていく。
――これさえあれば、亜玲澄の剣が無くとも何とかなるはずだ。待ってろ皆。俺と魔剣で片をつけてやる。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める
シロ
ファンタジー
神の都合により異世界へ転生する事になったエノク。『スキルコレクター』というスキルでスキルは楽々獲得できレベルもマックスに。『解析眼』により相手のスキルもコピーできる。
メニューも徐々に開放されていき、できる事も増えていく。
しかし転生させた神への謎が深まっていき……?どういった結末を迎えるのかは、誰もわからない。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー
紫電のチュウニー
ファンタジー
第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)
転生前も、転生後も 俺は不幸だった。
生まれる前は弱視。
生まれ変わり後は盲目。
そんな人生をメルザは救ってくれた。
あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。
あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。
苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。
オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる