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第三章 学園惑星編

第六十七話「入学前試験(中)其の壱」

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 一方亜玲澄とエレイナは魔法や血が飛び交うこの教会の中、大蛇が武器を持ってくるのを待っていた。

「お兄ちゃん、このままじゃ……」
「あぁ、確実に全員やられる」

 乱闘が始まってからまだ15分も経っていないのにも関わらず、戦っている新入生は既に半分を切っている。それもそうだ。こちら側は普通の剣や魔法杖ロッドなのに生徒会側は神器持ちだ。卑怯にも程があるだろうに。

「エレイナ、俺達も武器を取りに行くぞ」
「え、でも大蛇君はこのままいろって……」
「このまま待ってたら死んじまう。黙ってるくらいなら行動するまでだ!」

 少し強引にエレイナの右手首を引っ張りながら、亜玲澄は教会の外を目指した――


 大蛇達がそれぞれ武器を取りに外へ出る中、唯一万全に戦える正義は新入生達に指示をしながら生徒会メンバーを少しずつ崩していく。

四剴抜刀しがいばっとう花鳥風月かちょうふうげつ!」

 正義は刀を逆手に持ち、全身を捻ってエメラルド色の竜巻を発生させる。が、生徒会の氷属性魔法使いはそれを軽々と避け、両手から氷の槍を放つ。

「ぐっ……!」

 技の反動で避けきれず、正義は身体の至る所に槍が命中する。その刹那、身体から冷気を感じ、一気に全身が凍りついた。

「くそっ……よくもおお!!!」

 新入生達は続々と氷使いに突撃するが、呆気無く凍てつくされた。

「ふ~ん、今年はこんなものか」

 余裕の笑みを浮かべているその時、一筋こ閃光にまとった炎が氷使いの左腕を斬り裂いた。

「なっ――!」
「おいおい、生徒会たるものがこのカルマを前に油断とは随分舐められたもんだぜ!」
「ちっ……新手か!」

 氷使いはカルマに向かって右手で五つの氷の槍を生成して飛ばす。が、カルマは炎をまとった聖剣を振り払い、氷の槍を一瞬にして溶かした。

「やっぱり生徒会とて、片手がねぇと太刀打ち出来ねぇか?」
「舐めやがって……!」
「お前を舐めてもただ冷てぇだけだろうが!」

 カルマは右腕を後ろに引き、腰を落とし、突きの構えをとる。

「レイブン流獄炎剣術……とくと味わいやがれ!『炎獣之斬痕スレイドブレイズ』!!」

 カルマは剣を氷使いに向けて思い切り突く。途端、剣にまとった炎が一直線にほとばしり、氷使いを焼き尽くした。

「がっ……!」
「どうやらこの学校にも入学してくるらしいからな。みっともねぇ姿見せらんねぇよ!」

 次第に炎が消え、焼き焦げた教会の長椅子の残骸ざんがいから戦闘不能になった氷使いを確認し、カルマは次の生徒会役員を探す。

「……そういえば、こいつの名前聞くの忘れてたな」



 ――そして、先程まで氷漬けにされていた正義は解かれ、元通りになった。

「ぶはあっ! はぁ、はぁ……くそ、死ぬかと思ったぜ……って、白坊と嬢ちゃんは?」

 突然いなくなった亜玲澄とエレイナを探すべく、正義は教会を走り回る。




 一方、誰より早く教会の外に出た俺――大蛇は自分と亜玲澄用の武器を探していた。しかし、外に出てから約10分が経過した今でさえも武器庫のようなものは見つからないでいた。

「……ここ本当に学校なのか?」

 ネフティスの養成学校と言いつつ、至る建物に武器らしきものは見当たらない。下手したらこの時のためにあらかじめ撤去してるのかもしれない。新入生に学院の武器を使わせないために。

 ……どうしたものか。これでは新入生全滅も時間の問題だ。

 しばらく考えながら探している、その時だった。

「あ、あの!」

 突如後ろから声をかけられた。振り向くと、そこには漆黒のスカートに軽い鎧を身につけた少女が立っていた。

 見た感じ生徒会の人ではない……こんな時にどうしたのだろうかと思い、声をかけてみる。

「……何の用だ」
「え、えっと……こ、ここにいるって事は……良い武器が見当たらないってことです、よね……?」
「…………??」

 何だこいつは。初対面なのに的確に俺の心を読みやがった。少なくとも只者ただものでは無さそうだ。

「そ、そうだが……それで何だ?」
「えっと……私、主様あるじさまがいなくて……その、見つかるまでの間、私のあるじになってくれませんか!?」
「……は?」

 主? 見つかる? さっきからこいつは何を言ってるんだ。武器の話と全く辻褄つじつまが合わない。

「そ、その……落ち着いて、きき聞いてください!」
「……まずお前が落ち着け」
「ひいいっ!? す、すみません! 落ち着きますね! ふぅ~……はい、落ち着きました!」

 ……変な人だ。見た目からはとても想像出来ない。
 しかし、想像を絶したのはここからだった。

「私……実は魔剣なんです。い、今は訳あって人間の姿に……してますけど。それで、その……私という剣の持ち主になってくれませんか!」

 突然大きな声で話してきたので反射で驚いた。
 ……というか何だその『私は魔剣』って。こいつもしかしたら何かの病気持ちか?

「……疑ってますね?」
「むしろ信じる方がおかしいだろ」
「ひ、酷いですぅ……! な、なら証明して、あげます……!」

 そう言うと、少女の身体が光だし、次第に剣へと形を変えた。本当に魔剣になりやがった。

「嘘……だろ……」
「ほ、本当なんですからね! 見てください、これが私という名の魔剣……その名は『殺歪剣エリミネイト』です!」
「……!!」

 あの子の服装のような漆黒の剣。魔剣とは言いつつも派手すぎず、反命剣リベリオンに近い形状をしていた。

 ……こいつの主はどこまでとんでもない奴だったんだ。

「も……持つぞ」
「は、はい、いつでもどうぞ!」

 そう言ってきたので俺は少女が変身した剣の柄を右手で掴み、持ち上げる。

「これは……」
「やっぱり……貴方には合うんですね……」
「何の事だ」
「し、知ってますか……? 武器にもそれぞれ適正があるのですよ……? どんなに強い剣でも適正じゃ無かったら……その、使えないですし……」

 ……という事は、俺と反命剣リベリオンは適正では無いという事なのか。そうじゃないとここでのみ召喚出来ないなんて事は絶対にない。

「……とりあえず今は時間が無い。お前を使わせてもらうぞ」
「もちろんです! え、えっと……突然すみません……」

 今更謝るのか……と思いながらも、使いやすそうだし悪くはないかと思う俺だった。

 剣が喋ることへの違和感で背中がむずむずするのを耐えながら教会へと戻っていく。

 ――これさえあれば、亜玲澄の剣が無くとも何とかなるはずだ。待ってろ皆。俺と魔剣こいつかたをつけてやる。
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