黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》

Siranui

文字の大きさ
上 下
61 / 232
第二章 シンデレラ宮殿編

第六十話「相反せし姉妹」

しおりを挟む
 緊急任務:『黒花』レイアの討伐、シンデレラ宮殿の象徴「スタニッシュリング」を奪還

 遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ、錦野蒼乃、涼宮凪沙、桐谷正嗣、桐谷優羽汰、桐雨芽依、パンサー(一時加勢)

 それぞれ相反する色に光る剣を交わらせる。大蛇の恋人である妹のエレイナと、『黒花』と呼ばれる姉のレイア。2人が繰り広げる史上最恐の姉妹喧嘩を亜玲澄達はその行く末を見届けることしか出来ない。

「ふっ……!」
「うっ……!!」

 避けては避けられの繰り返し。未だお互い傷すらつけられていない。

「どうしたのかしら? もうギブアップなのかしら?」
「そっちこそ攻めて来ないじゃない。私にビビってるの?」

 言い合った瞬間、再び2人は睨み合って周囲に稲妻を生み出す。

「おいおいどうなってるんだ……」
「俺達も気を抜いていられない。また花びらが精製されるぞ!」

 優羽汰の指示に全員がレイアの頭上を見る。そこには今までとは比にならないほどの花びらが同じ方向に回りだし、一つの球体を作り出してるのが見えた。

「あれをエレイナさんに当てるつもりなのですね……」
「でもあの花びら……一枚ずつに魔力を感じるよ」

 しかし、そんな事で屈する時間は与えられない。全員が大蛇と亜玲澄、そしてエレイナを守りながらレイアの頭上にある花びらの球体を破壊する。

「おい、どれだけ走っても近づける気配すらねぇぞ!!」
「どれだけ狙ってもトランプが当たらないだと……!?」
「くっ……何なんだこの魔法は!」 

 それでも近づこうと走っても球体……いや、エレイナとレイアとの距離は変わらない。
 
「あれ……ボク、これ前にも見た事が……」

 はっきり覚えてる。昨日の深夜……いや、今日の朝かな。おっ君とボクが何故か戦っていて……その時のボク、誰かに身体を乗っ取られてる感じがしてて……そしたらおっ君が緑色に光りだして――

「芽依ちゃん、危ない!」
「凪沙ちゃ――」

 刹那、いつの間にか芽依に迫ってきた花びらの球体を凪沙がかばって受けていた。球体の中で凪沙の身体が鮮血を出しながら切り刻まれる姿が芽依の目に焼き付いた。

「凪沙ちゃん!!!」
「焼き払え!!!」

 少しでも凪沙のダメージを抑えるために優羽汰は刀身を竜閃之剣シェムハザに変化させ、黄金色のブレスで球体を焼き払う。
 だが、ブレスは球体の勢いに負けて呆気なく打ち消された。

「ちっ、効かないのか!」
「優羽汰さんの神器でさえも通用しないのですか……!?」
「恐らくあの花びらの球体は魔力を一切無効化する能力があるのだろう。そうだとしたら俺達に打つ手は無い」
「ならあのまま凪沙さんを見殺しにするんですか! そうやって簡単に諦めるんですか!!」
「近づけない上に禁忌を含む魔力を無効化する。そんないかれた能力を持つあれに勝てるわけがない」
「そうかもしれませんが、多少の時間稼ぎになるのではないでしょうか! 地道な作業ですが、それしか凪沙さんを救う方法はありません!!」

 蒼乃は宮殿内に大きく響くほどの大声を出して優羽汰の説得を試みる。

 何としてでも凪沙さんを……私の唯一の相棒を助けたい。死なせたくない。もう私の身近な存在の死を見たくない――



『――おっ君、助けを求めてる人がいるよ。助けてあげて……』

 また聞き覚えのある声が聞こえる。今度は何なんだ。助けを求めてるだと? 実質半身マンの俺に何が出来るんだ。

『私からも、お願い。その人は私の大事な人。私の全てを託した子なの』

 ……あぁ、そうか。やっぱりそうなのか。思い出せた。お前はあの錦野蒼乃の……

「お……か………さ……」

『ふふ、そうよ。あの子は私の大事な娘。あの子に私と同じ結末を辿ってほしくないの。大切な人を何度も奪われて、無力な自分に嫌気が差したまま死ぬ。これ以上ない屈辱は無いでしょう?』

 俺だけじゃ無かった。凪沙さんや蒼乃さん、そしてお母さんでさえも自分や身近な存在がそんな残酷な運命を辿りたくない、辿ってほしくないと思っている。知らない所で皆、暗黒神の陰謀いんぼうに抗っているんだ。

『もちろん貴方にもよ、おっ君。暗黒神の歪んだ宿命に負けないで。皆を……うちの蒼乃を助けてあげて――』

 途端、真っ暗な視界に微かなエメラルド色の光が点滅する。あの光が見える度に右半身の感覚が戻り、消えたら無くなるを繰り返していた。

「大蛇さん……?」

 蒼乃が素っ頓狂な声で俺の名を呼ぶ。すると光が更に強くなるのを感じた。

「おい……黒坊なんか光ってるぞ!」
「黒神……!」

 突然の事で心配したのか、正義と優羽汰が俺の元に駆けつける。

『さぁ、起きておっ君。蒼乃や皆のために……一緒に戦おう』

 ――あぁ、言われなくてもそのつもりだ……智優美さん。


「『天廻光波ゼルクウェーブ』」

 刹那、俺の身体からエメラルドの光が爆発を起こすように放ち、宮殿を包み込む。光は黒い花を一瞬にして消し、凪沙を覆った球体すら簡単に浄化した。 

「大蛇君……!」

 俺の復活に気づいたエレイナが笑顔を向けるも、俺はそのまま通り抜けてレイアの前に現れる。

「……エレイナ、自分の手を血でけがすな。人殺しは俺だけで十分だ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

小畑杏奈の心霊体験録

邪神 白猫
ホラー
私には、どうやら普通の人には視えないモノが視えるらしい。 それに初めて気が付いたのは、物心がついたばかりのほんの幼い頃だった。 ──これは、そんな私の怪奇な体験録。 ※ この話には、実際にあった体験談も含まれています YouTubeにて、怪談・怖い話の朗読公開中📕 https://youtube.com/@yuachanRio

お母さん冒険者、ログインボーナスでスキル【主婦】に目覚めました。週一貰えるチラシで冒険者生活頑張ります!

林優子
ファンタジー
二人の子持ち27歳のカチュア(主婦)は家計を助けるためダンジョンの荷物運びの仕事(パート)をしている。危険が少なく手軽なため、迷宮都市ロアでは若者や主婦には人気の仕事だ。 夢は100万ゴールドの貯金。それだけあれば三人揃って国境警備の任務についているパパに会いに行けるのだ。 そんなカチュアがダンジョン内の女神像から百回ログインボーナスで貰ったのは、オシャレながま口とポイントカード、そして一枚のチラシ? 「モンスターポイント三倍デーって何?」 「4の付く日は薬草デー?」 「お肉の日とお魚の日があるのねー」 神様からスキル【主婦/主夫】を授かった最弱の冒険者ママ、カチュアさんがワンオペ育児と冒険者生活頑張る話。 ※他サイトにも投稿してます

処理中です...