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第二章 シンデレラ宮殿編

第四十七話「抗争の始まり」

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 緊急任務:パンサーと名乗る怪盗を逮捕、シンデレラ宮殿の象徴「スタニッシュリング」を奪還

 遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ、錦野蒼乃、涼宮凪沙、桐谷正嗣、桐谷優羽汰、桐雨芽依
 

「It's Show time!!」

 いい終わりと同時にパンサーは宮殿の頂上から華麗に飛び降り、正門へと走り去った。

「C'est la Panthère ! Ne la manquez jamais !(あれがパンサーだ! 絶対に逃すな!!)」
「La tête de la Panthère est mise à prix pour 65 milliards d'euros ! Si vous voulez l'attraper, c'est maintenant ou jamais !(パンサーには650億の懸賞金がかかっている! 捕まえるなら今のうちだぞおお!!)」

 パンサーが宮殿に入った直後すぐ、この庭園で賑わってた貴族達が追うように中へ駆け込んだ。

「よし、俺達も行くぞ! 絶対に見失うな!!」

 優羽汰の指示に合わせ、俺達もシンデレラ宮殿の中へと入る。そこにはもう既に貴族同士による乱闘が始まっていた。

「Bougez ! Je m'occupe de la panthère !(どけ! パンサーは俺が捕まえる!!)」
「C'est toi qui es sur le chemin, tu dois donc les éviter ! Je n'ai pas le temps de jouer avec toi maintenant !(そっちこそ邪魔だから避けてよね! 私は今あんたと遊んでる暇は無いですのよ!!)」

 性別、地位など関係なく、容赦無く。互いに互いの地位に泥を塗る乱闘がシンデレラ宮殿内で相次いでいた。

「Hé, vous êtes sur le chemin ! Dégagez vite ou je vous tue !(おいお前ら邪魔だ! さっさとどけねぇと殺すぞ!!)」
「おいおいマジかよっ……!」

 突然貴族の男が正義に向かって拳銃を突きつける。とっさに刀を抜いた途端、発砲音が宮殿内に響いた。正義は銃弾を右に捻って避ける。

「お前ら先に行け! 俺と白坊でこの金持ちデブ共の相手してやらあ!!」
「そういう事だ。お前らは先にパンサーの後を追え! 終わり次第俺達も向かう!」
「すまない、ここは任せたぞ」
「あっ、大蛇君待ってよ~!」

 すぐさま俺は人混みの頭上を飛び、正面にある大きな階段を飛び越えて2階の通路へと走った。

「凪沙ちゃん……行こう。今のおっ君は一人にさせちゃいけないよ」
「芽依ちゃん……」
 
 芽依が放った言葉のそれはどこか確かに強い意志のようなものが感じられた。まるでこの後起こる未来を読んでいるかのように……

「うん、分かった。蒼乃ちゃん! お姫様を頼んだよ!」
「はい……エレイナさんには指一本も触れさせません!」

 蒼乃さんの心強い言葉を聞いて安心し、凪沙さんは芽依と共に俺の後を追った。

「……行ったな」
「あぁ……とりあえずあれら全員黙らせるか」

 亜玲澄と正義が息を合わせ、正面から迫ってくる貴族達に向かって突進した。

「Ce n'est pas un endroit pour les enfants !(ここはガキが来るところじゃねぇ!!)」
「白坊! ここは俺様に任せとけ!」

 正義は亜玲澄の目の前に立ち、腰を落として抜刀の体制をとった。刹那、赤い稲妻が正義の身体を纏った。

七剴抜刀しちがいばっとう疾風迅雷しっぷうじんらい!!」

 地を蹴った瞬間、正義の身体が赤い閃光と化して宮殿中を迸った。通り抜ける度に貴族達がバタバタと倒れていく。

「へっ、安心しとき! 峰打ちだから死んでねぇよ!!」
「助かる! 次は俺の番だ……」
『俺様の出番かあ?』
「あぁ……存分に暴れるぞ」
『ギャハハ! 面白くなってきたじゃねぇか! なあ!?』

 亜玲澄は過去の魂に身体を預け、乗り移ったアレスは右手から時変剣スクルドを召喚する。

「てめぇらあ! よく覚えとけ! 俺様は白神亜玲澄!! ……この名をパンサーが知らねぇはずがねぇよなああ!!!」

 亜玲澄とは真逆に狂人の如く叫びながらアレスは貴族集団へと迫った。

「Kuh ! Je ne donnerai pas de prime à ce type !(くっ! こいつに懸賞金は渡すものか!!)」

 白いタキシードを着た男がアレスに向かって発砲した。

「そんなヘンテコ武器で俺と殺ろうってのがそもそも大間違いなんだよおお!!」

 アレスが正面の銃弾を弾き返したその刹那、銃弾が爆発を起こした。

「なっ――!?」
「Pfft, il n'y a aucun moyen pour un enfant d'esquiver ces balles !(ふっ、ガキ如きがこの銃弾を避けられるわけが無い!)」

 銃弾が爆発しただと……!? どういう事だ。中に火薬が入ってるのか? だとしたらあの銃には警戒しなくてはならない……

 ――ま、アレスこいつはそんな事するわけないか。

「ちゃっちいなあその爆発はよお! こんなの俺にとっては線香花火だぜえ!?」
「Hé, c'est quoi ce monstre ...... !(な、何だこいつは……化け物かよ!!)」

 爆発をギリギリで避けたアレスはその勢いで剣を左から水平に斬り払う。

「おらああっ!!」
「っ――!」

 アレスの剣が男の首を通る寸前、一筋の閃光が剣を弾き飛ばした。

「んだとっ……!?」
「やぁ、久しぶり。天界で過ごしてた時以来だね、アレス君」
「てめぇは……!?」

 白のコートに両手に二丁の銃。オールバックの短い金髪が特徴的な、喋り方と外見が一致しないこの男。その名は……

「ゼラート……!」
「覚えてくれていて嬉しいよ! やっぱり君と僕は運命で紡がれてるんだ!」
「馬鹿な事言うなって危ねっ!!」

 言葉の途中でゼラートの銃口が火の粉を帯び、熱を帯びた銃弾がアレスの頬を掠った。

「白坊!!」

 どういう状況が分からず、一先ひとまず亜玲澄を助けようとした刹那、正義の首元に刀身が通りかかった。

「危ぶっ――」
「……先程の斬撃……お主、只者では無さそうだな」
「いきなり何のようだジジイ! こっちはパンサー捕まえるのに忙しいんだ。邪魔すんな!!」
「だが、その腕であの怪盗は斬れぬ!!」
「はっ――」

 一瞬も経たずに爺の刀が正義の首を撥ねる。その一振りは神速に等しいものだった――
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