黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》

Siranui

文字の大きさ
上 下
39 / 232
第二章 シンデレラ宮殿編

第三十八話「少女の想い、そして共鳴(上)」

しおりを挟む
 緊急任務:パンサーと名乗る怪盗を逮捕、シンデレラ宮殿の象徴「スタニッシュリング」を奪還

 遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ、錦野蒼乃、涼宮凪沙、桐谷正嗣、桐谷優羽汰、桐雨芽依
 犠牲者:???


「『果てをも穿ちし逆鱗の花エドレイト』」

 右手を不良達めがけてかざした刹那、花吹雪の如く青白い無数の光が不良達を巻き込んで舞い上がった。

「Hé, c'est quoi cette tornade ...... !(な、何だこの竜巻は……!?)」
「N'ayez pas peur ! Je te pousserai à travers sur mon vélo, gorrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr !(おびえてんじゃねぇ! バイクで押し通すぞゴラァ!!)」

 不良達が一斉にクラッチを踏みながら勢いよくバイクを走らせる。だが、バイクは全く動かない。咲き乱れる光の花嵐には一切通用しない。

「大人しく散っていけば良かったものをっ……!」

 右手を横に振り払う。光の花は螺旋らせん状に吹き荒れては、不良達の心臓を確実に穿つ。不良達は声も血も出せずにバタバタとその場に倒れる。大量のしかばねが出来た後、無数の光は俺の元へ戻ってふわふわと漂う。

 今度こそ凪沙さんの加勢をしなくては……

 見る限り凪沙さんはかなり苦戦している。というか追い込まれてるように見えた。どれほどの本気で戦ってるかは分からないが、一秒でも速く加勢して残りの不良を倒さなければ、後に面倒な事になる。

 しかし、また予想だにしなかった事が俺を襲った。

 花火が打ち上がるような高い音を立てながらこちらに何かが向かってきた。そう、バズーカの弾だった。

「おいおいあいつら正気かよ!」

 また不良の増援か。……って、冗談じゃない。あれをこの遊具に落としてみろ。跡形も無くこの公園は消えるぞ。もしそうなれば俺だけでなく、凪沙さんにも被害が……

「させねぇよっ……!!」

 巨大な銃弾に向かって右手をかざす。それに合わせて光が線状になって勢いよくバズーカ弾に向かって無数の細い穴を作る。

「……覆え」

 先程のマシンガン同様爆発すると考え、バズーカ弾を光の球体で覆い尽くした。その後、予想通り大きな爆発音が光の中で鳴り響いた。

「うぐっ……!」

 爆発による焼け野原状態は防げたものの、衝撃波までは防ぎきれずに俺は遊具の外に吹き飛ばされた。

「大蛇君っ!!」

 凪沙さんも俺を呼ぶが、あちらも増援による不良達にせき止められる。

 くそっ……、凪沙さんの方にも増援が来てたのか。本来なら助けに行きたいところだが……

 爆発の衝撃で木の幹に背中をぶつけた痛みに苦しみながら立ち上がると、目の前に白いタスキをつけたオールバックの男が俺を睨みつけていた。

「Vous êtes le "héros noir" de la rumeur ?(お前が噂の『黒き英雄』だな?)」

 ……何言ってるのかさっぱり分からない。俺、一応日本人なんだが……

「Ces cheveux courts, noirs et soyeux, ces yeux noirs et cette peau blanche qui les contredisent. ...... Pas de doute, tu es le "Black Hero" ah !(そのサラサラの黒い短髪に黒い瞳、それらとは相反した白い肌……間違いねぇ、お前が『黒き英雄』かああ!!!)」

 フランス語で何を言ってるか分からないまま、突如男は左手から剣を

「っ――!?」

 間違いない、神器だ。あの男は神器使いだ。ということはあの不良軍団の総長クラス……

「冗談はほどほどにしておけっ!」

 勢いよく振り下ろされた男の大剣をとっさに右に転がって避ける。前に俺がいた場所は真っ二つに斬られていた。

 なんて威力の大剣なんだ……これだと力勝負ではまず敵わないな。

「……来い!」

 男とある程度距離をとり、その間にバズーカ弾を覆っていた光をこちらに集めて反命剣リベリオンにする。しかし、目の前には既に男が大剣を振りかぶっていた。

「J'attendais ce moment avec impatience. ...... à ce moment !(楽しみにしてたぜぇ……この時をよおお!!!)」

 鼓膜を一瞬で破壊するような甲高い音が公園中を包み込んだ。俺と男の剣の交点からは火花と共に稲妻を散らしている。

 やはり一撃が重すぎる。下手をしたら俺の剣が折れてしまうかもしれない。それほど男の神器はその身体と比例して大きさも重さも段違いだ。

「C'est comme ça avec "Black Heroes" ! Vous devez me divertir davantage. ......(そんなもんかよっ、『黒き英雄』はよおお!! もっと俺を楽しませてくれよ……!)」

「さっきから何言ってるか……分かんねぇよ!!」

 俺は剣が折れそうな勢いで男の大剣を全体重を乗せて何とか弾き返す。ギャリィィンッという嫌な音が響く。
 しかし、ここで怯む訳にはいかない。左上に剣を振りかぶり、男の右肩から斬り裂く!!

「おおおおっ!!」

 俺は吠えながら男に向かって刃を振るう。しかし、男は先程の俺の受け流しにびくともせず、余裕の笑みを浮かべながら右下から大剣を振り上げた。

 再び火花が飛び散った。

「Oh, ...... n'est pas encore vraiment prêt pour cela. Ecoutez, il n'est pas nécessaire de faire des économies devant moi ! Viens et tue-moi, Héros Noir !(ほぉ……まだ本気を出し切れてねぇってとこか。いいか、俺の前に手抜きはいらねぇ! 俺を殺しに来い、『黒き英雄』!!)」

「おい……こんな時にフランス語のリスニングさせんじゃねぇ!!」

 全体重を乗せて押し通そうとするも、中々大剣を押し崩せそうに無い。そう判断し、一旦大剣から離れる。俺が力を抜いたと判断したのか、男はそこから勢いよく大剣を斬り上げた。
 ギリギリのところで避けた……はずだった。

「っ――!」

 え……斬られたのか? 今どこにも触れてなかっただろ……

 頭から左脇腹が一直線に斬られ、鮮血が飛び散った。幸い真っ二つにされてないので少しだけ安堵する。

「がっ……」

 あの男の神器……一体どうなってるんだ。それが理解出来ない限り、まともにあいつとは戦えない。

「Tu avais l'habitude d'éviter cela facilement, mais tu es devenu si faible avant que je ne te voie !(昔のお前ならこれくらい簡単に避けれたのによぉ、見ねぇ内に随分弱くなっちまったなあ!!)」

 左から大剣の剣閃が見え、俺はとっさに右から剣を振るが、簡単に反命剣リベリオンは弾き飛ばされ、遊具の壁に突き刺さった。

「Hé, hé, hé, arrête, mec, je ne veux pas te voir faible, je ne veux pas t'imaginer faible. Je veux te voir fort alors. ......(おいおいやめてくれよぉ、俺は弱いお前を見たくねぇし想像したくねぇんだよ。あの時の強いお前を見てぇんだよ……)」

 ザシュッと俺の左肩に一撃。

「Je vous ai dit que nous n'avions pas besoin d'être généreux, n'est-ce pas ? Ne me dites pas que vous ne pensiez pas que nous serions à court d'énergie avec ces voyous ?(出し惜しみはいらねぇって言ったよなあ? まさかとは言わねぇが、あのチンピラ共に力使い切っちまったのか?)」

 また、俺の胸と腹を斬っては鮮血が飛ぶ。

「Je ne veux pas te traiter de délinquant, je ne veux pas te tuer comme ça. Tu es fort. Depuis, tu es ce type que j'ai toujours voulu être. ......(不良とはいい、お前をこうして殺すのは惜しいんだよ。お前は強い。あの時からずっと、この俺の憧れだった……)」

 ザシュッ、ザシュッ……

 もう男の声など聞こえなくなった。格が違いすぎた。今の俺ではあの男……不良軍団の総長に勝てない。あの並外れた体格と大剣からして分かっていた話だが。

「Montre-moi, montre-moi ta réalité ...... plus réelle que celle que tu as montrée à ces punks, mon héros qui m'a fait languir de toi, oh !(見せてくれよ、お前の本気を……あのチンピラ共に見せた以上の本気を俺に見せてくれよ、俺に憧れをくれたマイヒーローよおお!!!)」

 ズバッ、ザシュッ……バシャァァァッ――

 痛みと共にこの身が斬られる音だけが鮮明に聞こえる。

 ……あぁ、こんなに斬られたの正義と戦った時以来だな。

「大蛇君っ……! すぐ行くからっ……!!」

「Mademoiselle, vous savez ce qui arrivera si vous interférez avec le patron maintenant, n'est-ce pas ?(嬢ちゃ~ん、今ボスの邪魔したらどうなるか分かってるよなぁ~?)」

 凪沙さんも不良達に止められて……あの感じだとまだ本気を出してないのか。パンサー戦にとっておいてるのか。

 ……ふっ、正反対で似たもの同士なんだな、俺達は。

 死へと誘う冷たい風と共に、後ろから暖かい光が俺を照らした気がした。

『まだ死なないで』と言っているかのように――
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

異世界配信で、役立たずなうっかり役を演じさせられていたボクは、自称姉ポジのもふもふ白猫と共に自分探しの旅に出る。

美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
ファンタジー
 いつだってボクはボクが嫌いだった。  弱虫で、意気地なしで、誰かの顔色ばかりうかがって、愛想笑いするしかなかったボクが。  もうモブとして生きるのはやめる。  そう決めた時、ボクはなりたい自分を探す旅に出ることにした。  昔、異世界人によって動画配信が持ち込まれた。  その日からこの国の人々は、どうにかしてあんな動画を共有することが出来ないかと躍起になった。  そして魔法のネットワークを使って、通信網が世界中に広がる。  とはいっても、まだまだその技術は未熟であり、受信機械となるオーブは王族や貴族たちなど金持ちしか持つことは難しかった。  配信を行える者も、一部の金持ちやスポンサーを得た冒険者たちだけ。  中でもストーリー性がある冒険ものが特に人気番組になっていた。  転生者であるボクもコレに参加させられている一人だ。  昭和の時代劇のようなその配信は、一番強いリーダが核となり悪(魔物)を討伐していくというもの。  リーダー、サブリーダーにお色気担当、そしてボクはただうっかりするだけの役立たず役。  本当に、どこかで見たことあるようなパーティーだった。  ストーリー性があるというのは、つまりは台本があるということ。  彼らの命令に従い、うっかりミスを起こし、彼らがボクを颯爽と助ける。  ボクが獣人であり人間よりも身分が低いから、どんなに嫌な台本でも従うしかなかった。  そんな中、事故が起きる。  想定よりもかなり強いモンスターが現れ、焦るパーティー。  圧倒的な敵の前に、パーティーはどうすることも出来ないまま壊滅させられ――

二度目の転生は傍若無人に~元勇者ですが二度目『も』クズ貴族に囲まれていてイラッとしたのでチート無双します~

K1-M
ファンタジー
元日本人の俺は転生勇者として異世界で魔王との戦闘の果てに仲間の裏切りにより命を落とす。 次に目を覚ますと再び赤ちゃんになり二度目の転生をしていた。 生まれた先は下級貴族の五男坊。周りは貴族至上主義、人間族至上主義のクズばかり。 …決めた。最悪、この国をぶっ壊す覚悟で元勇者の力を使おう…と。 ※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しています。

転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。 そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。 ※コメディ寄りです。

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。 その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。 そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。 『悠々自適にぶらり旅』 を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。

引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい

鈴木竜一
ファンタジー
旧題:引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい ~不正がはびこる大国の賢者を辞めて離島へと移住したら、なぜか優秀な元教え子たちが集まってきました~ 【書籍化決定!】 本作の書籍化がアルファポリスにて正式決定いたしました! 第1巻は10月下旬発売! よろしくお願いします!  賢者オーリンは大陸でもっと栄えているギアディス王国の魔剣学園で教鞭をとり、これまで多くの優秀な学生を育てあげて王国の繁栄を陰から支えてきた。しかし、先代に代わって新たに就任したローズ学園長は、「次期騎士団長に相応しい優秀な私の息子を贔屓しろ」と不正を強要してきた挙句、オーリン以外の教師は息子を高く評価しており、同じようにできないなら学園を去れと告げられる。どうやら、他の教員は王家とのつながりが深いローズ学園長に逆らえず、我がままで自分勝手なうえ、あらゆる能力が最低クラスである彼女の息子に最高評価を与えていたらしい。抗議するオーリンだが、一切聞き入れてもらえず、ついに「そこまでおっしゃられるのなら、私は一線から身を引きましょう」と引退宣言をし、大国ギアディスをあとにした。  その後、オーリンは以前世話になったエストラーダという小国へ向かうが、そこへ彼を慕う教え子の少女パトリシアが追いかけてくる。かつてオーリンに命を助けられ、彼を生涯の師と仰ぐ彼女を人生最後の教え子にしようと決め、かねてより依頼をされていた離島開拓の仕事を引き受けると、パトリシアとともにそこへ移り住み、現地の人々と交流をしたり、畑を耕したり、家畜の世話をしたり、修行をしたり、時に離島の調査をしたりとのんびりした生活を始めた。  一方、立派に成長し、あらゆるジャンルで国内の重要な役職に就いていた《黄金世代》と呼ばれるオーリンの元教え子たちは、恩師であるオーリンが学園から不当解雇された可能性があると知り、激怒。さらに、他にも複数の不正が発覚し、さらに国王は近隣諸国へ侵略戦争を仕掛けると宣言。そんな危ういギアディス王国に見切りをつけた元教え子たちは、オーリンの後を追って続々と国外へ脱出していく。  こうして、小国の離島でのんびりとした開拓生活を希望するオーリンのもとに、王国きっての優秀な人材が集まりつつあった……

処理中です...