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第二章 シンデレラ宮殿編
第三十一話「仮面に隠された素顔」
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緊急任務:パンサーと名乗る怪盗を逮捕、シンデレラ宮殿の象徴「スタニッシュリング」を奪還
遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ、錦野蒼乃、涼宮凪沙、桐谷正嗣、桐谷優羽汰
犠牲者:???
フランス パリ とある喫茶店――
「う~ん! 美味しい~!!」
「……朝からそれ食うのか」
任務妨害なんて言う気も失せた。要するに呆れ果てた。この少女は俺を連れ回す意図も理由も無く、ただ喫茶店で手のひらと同じ大きさのハンバーガーを豪快にかぶりついているのだ。振り回されるこっちの身にもなって欲しいところだ。
彼女が今食べているのは、手のひらを埋め尽くす程のバンズに巨大なハンバーグとはみ出す程長いベーコンとレタスを挟んだハンバーガーだ。
彼女曰く、この喫茶店の看板メニューらしい。メニューにも『le plus populaire(一番人気)』と書かれている。
「ねぇ、君は食べないの?」
「……それより早く食べろ。これでも俺は忙しい身だ」
とりあえずその巨大バーガーを食べ切って欲しい。こんな身軽な少女が食べ切るとはとても思えないが。
「ボクだけ遠慮なく食べてるのは不公平だよっ! 君も何か食べなよ~っ! ボクの奢りなんだからさっ♪」
「生憎俺は空腹では無い」
「そんな事言ってもこれからお腹減るよ? 今食べておいた方がいいよ?」
「ならオレンジジュース一つ」
「もうっ! 遠慮しないでって言ってるのにいっ!!」
少女はまるで水を含ませたふぐの如く思い切り頬を膨らませ、俺をじっと見て来る。
「怒ってる暇があるなら早くそれを食べろ」
「デートに急かしは禁句だよっ!」
「勝手に距離を縮めるな。俺はただの付き添いだ。更に言うなら振り回され隊だ」
振り回され隊だなんて何処の単語なのか全く知らずに言ったが、彼女に振り回されてる事は事実だ。俺一人だけなので隊では無いが。
「もう、素直じゃないんだから……あ、オレンジジュース来たよ! それと店員さん! これ一つ!!」
少女が店員にメニューのある場所に指を指して注文する。勿論店員はフランス人なので日本語が伝わらないから仕方無いとは思うが。
そう思いながらストローに口をつけ、オレンジジュースを飲む。ここも日本とほとんど変わらず美味しいようで安心した。
「……ふっ」
「ふふっ、君今ちょっと笑ったねっ♪」
「笑ってない」
「隠さなくても良いんだよ?」
「うるせぇ。良いから早く食べろ。まだ半分も食べてないだろ」
「も~照れちゃって可愛いんだからっ♪」
少女が悪戯っぽく笑みを浮かべながらハンバーガーを頬張る。
――その時、俺の目の前に一つ大きな皿が置かれた。その上には向かい合ってる少女と同じハンバーガーが乗ってあった。
「……おい、こんなの頼んでないが」
「うん、私が頼んだんだよっ! 君用にねっ♪」
「余計な世話だ。空腹じゃないと言っただろ」
「ふふ~ん、遠慮する君が悪いんだもんね~っ♪」
ここで一発胸倉掴んでやろうかと思ったが、ここの喫茶店は案外賑やかだったのでそうする訳にも行かなかった。頼んで用意してくれた分は仕方無いので食べる事にする。
「どう? 美味しいでしょ?」
「……普通だ」
「素直に美味しいって言ってよ~っ!」
「なら素直に言おう。非常に食べづらい」
「もうっ! 可愛くない事言うんだから!」
そう言いつつもニコニコと笑っている少女を見ていると、本当に怪盗なのか信じられない。現状ただ俺を振り回す底抜けに明るい少女としか思えない。
そう思いつつ俺も、自然と緩みかけた口元を引き締めて巨大バーガーを頑張って頬張った。
時刻は午前十一時を過ぎていた――
遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ、錦野蒼乃、涼宮凪沙、桐谷正嗣、桐谷優羽汰
犠牲者:???
フランス パリ とある喫茶店――
「う~ん! 美味しい~!!」
「……朝からそれ食うのか」
任務妨害なんて言う気も失せた。要するに呆れ果てた。この少女は俺を連れ回す意図も理由も無く、ただ喫茶店で手のひらと同じ大きさのハンバーガーを豪快にかぶりついているのだ。振り回されるこっちの身にもなって欲しいところだ。
彼女が今食べているのは、手のひらを埋め尽くす程のバンズに巨大なハンバーグとはみ出す程長いベーコンとレタスを挟んだハンバーガーだ。
彼女曰く、この喫茶店の看板メニューらしい。メニューにも『le plus populaire(一番人気)』と書かれている。
「ねぇ、君は食べないの?」
「……それより早く食べろ。これでも俺は忙しい身だ」
とりあえずその巨大バーガーを食べ切って欲しい。こんな身軽な少女が食べ切るとはとても思えないが。
「ボクだけ遠慮なく食べてるのは不公平だよっ! 君も何か食べなよ~っ! ボクの奢りなんだからさっ♪」
「生憎俺は空腹では無い」
「そんな事言ってもこれからお腹減るよ? 今食べておいた方がいいよ?」
「ならオレンジジュース一つ」
「もうっ! 遠慮しないでって言ってるのにいっ!!」
少女はまるで水を含ませたふぐの如く思い切り頬を膨らませ、俺をじっと見て来る。
「怒ってる暇があるなら早くそれを食べろ」
「デートに急かしは禁句だよっ!」
「勝手に距離を縮めるな。俺はただの付き添いだ。更に言うなら振り回され隊だ」
振り回され隊だなんて何処の単語なのか全く知らずに言ったが、彼女に振り回されてる事は事実だ。俺一人だけなので隊では無いが。
「もう、素直じゃないんだから……あ、オレンジジュース来たよ! それと店員さん! これ一つ!!」
少女が店員にメニューのある場所に指を指して注文する。勿論店員はフランス人なので日本語が伝わらないから仕方無いとは思うが。
そう思いながらストローに口をつけ、オレンジジュースを飲む。ここも日本とほとんど変わらず美味しいようで安心した。
「……ふっ」
「ふふっ、君今ちょっと笑ったねっ♪」
「笑ってない」
「隠さなくても良いんだよ?」
「うるせぇ。良いから早く食べろ。まだ半分も食べてないだろ」
「も~照れちゃって可愛いんだからっ♪」
少女が悪戯っぽく笑みを浮かべながらハンバーガーを頬張る。
――その時、俺の目の前に一つ大きな皿が置かれた。その上には向かい合ってる少女と同じハンバーガーが乗ってあった。
「……おい、こんなの頼んでないが」
「うん、私が頼んだんだよっ! 君用にねっ♪」
「余計な世話だ。空腹じゃないと言っただろ」
「ふふ~ん、遠慮する君が悪いんだもんね~っ♪」
ここで一発胸倉掴んでやろうかと思ったが、ここの喫茶店は案外賑やかだったのでそうする訳にも行かなかった。頼んで用意してくれた分は仕方無いので食べる事にする。
「どう? 美味しいでしょ?」
「……普通だ」
「素直に美味しいって言ってよ~っ!」
「なら素直に言おう。非常に食べづらい」
「もうっ! 可愛くない事言うんだから!」
そう言いつつもニコニコと笑っている少女を見ていると、本当に怪盗なのか信じられない。現状ただ俺を振り回す底抜けに明るい少女としか思えない。
そう思いつつ俺も、自然と緩みかけた口元を引き締めて巨大バーガーを頑張って頬張った。
時刻は午前十一時を過ぎていた――
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