婚約破棄されまして(笑)

竹本 芳生

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春が来た! 17

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集中してサクサクと刺繍を刺しまくってます!こう見えても私、侯爵令嬢らしく刺繍の腕前はかなり高いのですよ!王子妃教育の一環として、他家の令嬢達よりも一段は上でないと恥ずかしいですからね!
少し小柄な真っ白なペガサスに寄り添う大柄のペガサス……格好良くない?格好良いでしょう!
自画自賛って笑われるの承知で言ってます!
まずは主役を刺さないと。

「……様……エリーゼ様!」

ハッ!集中し過ぎてアニスの声に気が付くのが遅れたわ!

「なっ……何かしら?」

「そろそろ手を止めて下さいませ。サロンでお待ちになってますよ」

……サロン?サロンって言ったら……

「お茶の時間だったわね……」

「はい」

ヤバっ!お祖母さまとお母様、待たせちゃってる?いや、細かい時間の事は言わないだろうけど待たせすぎはダメよ!
刺してる途中の針を端っこに軽く刺して立ち上がる。
あいたた……体が痛い。ついつい夢中で刺してたから、ずっと同じ姿勢だったわ……
ぐーっっ!と体を伸ばして軽いストレッチを行う。

「じゃあサロンに行きましょう」

「はい」

「刺繍はこのままで」

「畏まりました!」

侍女の一人が代表してそう述べると頭を下げた。他の侍女達も同じように頭を下げたのを見て、アニスが一つ頷いて私を見る。

「アニス、ついてらっしゃい」

「はい」

そう言って自室からサロンへと向かう。……長い廊下に大きな階段、移動だけでも中々の距離を足早に進む。
サロンに着けば、お祖母さまもお母様も揃っており楽しそうに紅茶を飲んでます。良かった……ご機嫌は良さそうです。

「お祖母さま、お母様。お待たせしてしまったかしら?」

「あら、今来た所だから気にしないで良くてよ」

お母様が笑顔で返してくれます。ホッとしました。

「ホホホ……エリーゼ、立ってないでお座りなさい」

「はい、お祖母さま」

ススス……っと移動して椅子に座ると紅茶の注がれたカップが置かれる。
フワリとバラの香りがして、今日はお母様の好きなバラの花びらが混ぜてある紅茶なのだと理解する。
それでお母様ご機嫌なのね。
チラリとスイーツを見れば、早咲きのライラックの飴がけ?がふんだんに飾られたチーズケーキに、ピンク色のムースは多分イチゴ。色んな色のプティフール。
可愛い色のスイーツ類は見るだけで幸せな気分になる。
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