婚約破棄されまして(笑)

連載

嫁入り支度 87

「あら、楽しそうね」

「ええ、本当ですね」

お母様も楽しそうにエミリと話してる。余り広くない店内では会話も聞き取りやすいです。シンシアとソニアは無言で物色してますが、逆に無言なのが怖いです。

「あ！エリーゼ様、これどうですか？」

そう言って手に取って差し出して来たのは少し深めのピンク色の小さなトレーで、使い勝手は良さそうだけど何に使うかはその人によるって所よね。

「そうねぇ……アニスはこれをどう使おうと思ったの？」

少し照れて視線を彷徨わせてモジモジしてます、怪しいわね。

「あの……浴室とかに置いたらどうかと思って……」

浴室？思い返してみる……浴室の小さな台には水石鹸とヘチマ位しか置いてなかったわ……

「そうね、浴室に置くのは良いかも知れないわよね。アニスは自室の浴室に置いておくのかしら？」

「はいっ！今は一緒に入れますけど、婚姻式の日からは別になりますから」

ハッ！そうだった！婚姻式の日は初夜だし、その後はハネムーン的な……そうだわ……私とルークは暫く同じベッドで寝る……のよね？

「そう……そうよね。そうなのよね……」

「そうですよ！私もキースと同じ部屋を頂けると思ってますから！」

ん？あれ？そういや……エミリもシンシアもソニアもお母様の専属侍女だけど、婚姻してて別の部屋貰ってるんだっけ……

「そうなのね」

チラッとお母様を見たら、目が合いました。

「エリーゼ、アニスは貴女の婚姻式後にキースと婚姻して夫婦てしての部屋芽用意される事になってるのよ。私の侍女と同じような扱いになるのよ、だから心配する必要はなくてよ。これはハインリッヒとも相談した上での事よ」

「そうなんですね。ではアニスは専属侍女ではあるけど、ちゃんと自分の時間も持てるのね。良かったわねアニス」

「えへ……少しずつですけど、そろそろ準備始めたくて……」

頬染めてモジモジしてるアニス可愛いわね。そっか……待てよ……

「アニスも婚姻式するのよね？私、アニスの婚姻式見れるわよね？」

お母様を見れば笑顔で、これはちゃんと見れるのよね。

「勿論よ。専属侍女は特別ですからね」

「良かったわ。お祝いしたいもの」

正直な気持ちです。だって専属侍女と言ってもその実、姉妹にも近いし親友にも近い立ち位置なんですもの。