婚約破棄されまして(笑)

連載

嫁入り支度 73

「あら？エリーゼ。何か考えがあるのかしら？」

お母様はさすがに察しが良い。母親ってそんなものなのかしら？

「いえ。端っこの肉とかで安くて美味しい料理が出来ないものかと思って」

間違ってない……と思いたい。

「まぁ……でも、そうね……どれ程の肉がどうなってるのか、私には知らされていなかったわね」

お母様は邸内の事とお付き合い……言わば領内の方達と円滑にお付き合いするのがメインのお仕事で、素材云々とか領内の流通とかはお母様のお仕事ではないのです。
それでも、邸の事だけでもうちは大所帯で敷地も広いので大変なのです。更に領内のお付き合い（俗に言うオカンネットワーク的な夫人や息女達とのお付き合いなのだけど）も広さ故にその数もかなりの数で大変なのです。

「そこはお父様に聞いてみます。私の方から聞いて、どうなっているかお聞きしてから先の事を決めたいと思ってます！」

骨から出汁を取ったり出来るだろうし……ガラの実とどれ位違うか気になるしね！もし、ミノ骨の方が美味しかったら積極的に使いたいと思ってるのよね。

「まぁ……」

クスクスとお母様が笑う。あれ？私、何かおかしかったかしら？

「エリーゼはいつも前向きでお母様は嬉しいです」

……お母様、私こそお母様のその笑顔にどれだけ安心して進めるか分かってますか？お母様だけじゃない、お父様もキャスバルお兄様もトールお兄様も……ルークも……いつも私が好きな様にしてくれてるって知ってます。だからこそ私も頑張れるんですよ。

「お母様……私、もっと領民の為に頑張りたいです！」

「ホホホ……分かってますよ。安くて美味しい料理なら領民の誰もが食べれる様になるものね」

「はい！その通りです！領民が豊かであれば私達も豊かになれると信じてます！」

そう……私はそう思って信じてる。領民が豊かでなければ私達も豊かでなくなる。民あってこその領主……いえ、領地ですらなく国となれば民は国力の礎で基礎となる。
前世の祖父から教わった事の一つ。
国民とは国力である、故に根気よく育て上げより良い力とせねばならぬ。若い者を導き育てるのは年長者の使命であり、責任だ……恥ずべき人生を送らぬ様に己を律するのも大事な事だ。
今なら祖父の教えがどれ程大事な事だったか分かる。
私は胸を張り、堂々と人生を歩みたい。領主一家の一員としてお父様やお兄様達の力になりたい。