婚約破棄されまして(笑)

連載

嫁入り支度 20

「じゃあ、お父様の所に行って来るわ」

「畏まりました。では、お部屋でドレスの用意をしておきますね！」

……今日はキャスバルお兄様のドレスとお飾りに決定してた。西洋のちょっとしたお家って、夜は何も無くてもフォーマルで晩ご飯食べるって聞いてたし前世で祖父母と暮らしてた時もちゃんとした格好だったから抵抗感はあんまり無いけど……貴族ってフォーマルじゃなくって、正装もしくは略装にドレスです。いや、ドレスでも簡素な物じゃなくってこう……キラキラしてるっての？パーティーに着ていけそうなドレス着用です。
しかもキャスバルお兄様の趣味はお姫様っぽい豪華な物なんで、本当に夜会仕立てって感じなのよね……しかも最近は私の容姿とかを考慮してくれてるのか下げ渡すには勿体ない物を作ってくれてる様で……

「そうね、よろしく」

とりあえずお父様の所よ……キャスバルお兄様の事を考えていたら何か負ける気がする。
廊下の端に頭を下げて私が通り過ぎるのを待ってるメイド達がいるから、ちゃっちゃと行きましょう。
ノックをして返事を待ってお父様の執務室に入る。

「エリーゼ、待っていた」

お父様がほんのちょっぴり疲れた顔で微笑んでます。何か疲れる様な事でもあったのかしら？

「いえ。それよりもお疲れの様ですけど……」

軽いため息をついたお父様は、そこはかとなく色気が漏れてます。

「大した事は無い。それよりも座りなさい、アレクお茶を」

「畏まりました」

ん？んー……？何かアレクはまるで微笑ましいものを見る様な目でお父様を見たわよ。
まぁ、良いっか。目の前にある大きなソファに座る。フカフカです。

「失礼致します」

目の前に置かれる紅茶とクッキーの載った小皿が置かれる。
お父様も執務机からやって来てソファの対面にある一人掛け用のソファに深く座り込む。
そしてお父様の前にも紅茶とクッキーの載った小皿が置かれる。

「エリノユの街だが、今朝から職人達が移住を開始した。特に問題も無く、むしろ新しい街の有り様に喜んでいたそうだ」

喜んで貰えたなら良かった。だって、どうせ住むなら少しでも良い気分になってほしいもの！

「トールの子飼いから役人が何人も街に移り住む事になったから心配する事も無い」

……トールお兄様の子飼い？私には分からない人達が管理人として行ったって事かな？
すっかり忘れてたけど、武の領主隊と別に文の存在もいましたね。
お父様もキャスバルお兄様にもいるけど、滅多に目にしないから気が付きませんでした。