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新天地を! 134

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それにしても……

「ソニア……パッツンパッツンに……」

「喜ばしい苦しみ!」

クッ!切ないわ!そんなに嬉しそうに胸部の圧迫喜ぶなんて!

「……そうね、ソニアはそのままだと仕事に差し支えそうね……」

「そんな!」

板挟まれてる!仕事とパイとで悩んでる!

「お母様、とりあえずソニアに誰かのお仕着せを貸したらどうでしょう?」

助け船です。シンシア……はダメでもアニスなら何とか……

「アニス!貸して!」

切実か!お母様は苦笑いしてますし、エミリとシンシアも苦笑いです。

「エリーゼ様……」

「貸してあげたら?まだ時間も掛かりそうだし」

「分かりました。ソニアさん、私の部屋に行きましょう」

「ありがと!フェリシア様エリーゼ様行ってきます!」

足音はしないけど、ソニアとアニスはキャッキャッとサロンを出て行った。

「今頃、領都に入ったかしらねぇ?」

お祖母さまがポツリと呟く。

「そうですね、そろそろ昼ですし領都は盛り上がってるでしょうね」

お母様は窓の外を眺め、お祖母さまの呟きに応えた。
領都に入って来ても、ここからは遠い……開拓地はうちの裏庭の更に裏みたいな場所だから領都を抜けるのもすぐ近く。
ルーク達が行った討伐場所は領都の遠い門からだから、こっちには簡単に着かない。
でも……

「そんなに盛り上がるのですか?」

「ホホホ……あちらこちらから領民が出て来て、お祭りのようになるのよ。屋台も引っ張り出されて多くの領民達が無事帰って来た事を祝うのよ。勿論、初陣だから運ばれた大型を見て祝ったり喜んだりするわよ。その大型を見て、やれ強いだの立派だの噂をするのよ」

……娯楽が少ないからどうしても刺激のある出来事には敏感になるんだった。

「今回は初陣ですもの、領民はきっと期待していたでしょうしね。帝国の皇子様がどれ程なのか……でも二体の大型を討伐したのだもの、領都中が大騒ぎになってるかも知れないわね」

噂の的?でも、何かむず痒いような喜びがわき上がってくる。
大型を二体も討伐して帰って来る人が私の婚約者だって自慢したい……皇子様なのに腕っ節も強くて優しくて……
どうしよう……嬉しくて視界がぼやけて……
フワリと抱き締められ頭を撫でられる。

「エリーゼ、貴女の夫になる人は強くて頼りになる。母として娘が頼り甲斐のある殿方と結ばれるのは心の底から嬉しい。娘が幸せになれると……信用に足る相手だと……そう思える喜びで私も嬉しいわ」

お母様がいつの間にか私の横に座って抱き締めてくれてた。
お母様の言葉に涙が零れた。
手布で優しく私の涙を吸わせ、優しく微笑むお母様に私は心が温かくなった。
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