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新天地を! 53

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「熊……?熊の肉を食べる……のか?」

「そうですよ」

やっぱり熊肉抵抗あるかー……

「ハインリッヒ、こちらでは何故熊の肉を食べないのかしら?」

お母様からの援護射撃!そうなのよ、何で食べないのかしら?

「ちょっと……その……臭いが……な。アレを食べるとか本当なのか?」

あー…やっぱりそこですよね。うん、まあ熊肉はハードル高いですよね。牙猪とか丸鳥に比べると圧倒的獣臭しますもんね。

「私は子供の頃から食べつけておりますから。確かに少々臭いは気になるでしょうが、きちんと調理した物は美味しいですわよ。精もつくと言って、態々熊を狩りに行く者すらいましたから」

おや?お父様ご精もつくって辺りで目がキラッとしたような……お父様だって良いお年ですものね、精がつくもの食べたいお年頃なのかしら?年も明けたし今年で五十才かしら?ではお母様も?

「エリーゼ。失礼な事考えるのはお止しなさい」

「ひゃいっ!」

ヤベー……何でバレたし!うう……お母様コエーよう。

「とにかく、一度食べてみて駄目なら無理にお勧めしめせんわ。私は久し振りの熊肉で嬉しく思ってますから!エリーゼ、良く厨房に頼んでくれました!」

「いっ…いえ!お母様が熊肉を楽しみにしてるとは思ってもみませんでした」

本当にね。だって王国じゃ熊肉アウトな訳でしょ?帝国だって熊肉食べてるなんて思いもしなかったもの。

「そうね、帝国でも我がシルヴァニア領のみが好んで食べる地域ですから」

は?お母様の出身地が好んで食べる?じゃあ帝国全域の中の一文地域じゃないですか……

「お待たせ致しました。熊肉の具沢山スープです。これ以外に牙猪の角煮、ご飯、冬野菜の炊き合わせをお持ち致しました」

……角煮とご飯と野菜の炊き合わせ……普通の日本の食卓だ。この世界では豪華な食事だけど。炊き合わせも角煮も教えてたから普通にレパートリーに入って……広められたのね。
とりあえず熊肉のスープをスプーンで掬ってみる。うん、濁りも無いし獣臭も無い。
一口啜ってみても特に臭くも無いし、ネギとショウガが効いてる……ニンニクも入ってる……お箸で薄切りにされた熊肉を掴んで食べてみる。
ん……美味しい……グッグッと噛むと旨味が溢れてくる……程良い弾力。

「ん~♡美味し~い♡実家のより美味しいわぁ♡」

お母様大興奮でござる。少女の様に頬そめて齧りつきでござった。
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