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新しい日々 48

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だが、拾い上げる数を増やしたい。
謀反を疑われるのは業腹だけど、死にかけを拾うなら問われもしないかも知れない。
私は意を決してお母様を見つめる。

「お母様、小さな荷馬車で倒れている王都民を拾う事は出来ますか?」

僅かに目を見開き私を凝視するお母様は真剣そのものだ。

「エリーゼ。それは生きる術を失い死ぬしかない者達を内密に拾い上げ、内々な我が領地へと引き込めと言ってるのかしら?」

「そうです。どうせ助ける事が出来ないなら、まだ生きてる内に拾って連れて来てしまえば良いのでは?」

まるで痩せ細り死ぬばかりの犬のような言い方だけど、それでも助けるならばやり方としてはこれ位しか無い。

「そうね……それこそ王都に転がる死体をかたずけてるかの様に動いて、息のある者をこっそりと邸に持ち帰り何とかして定期便の帰領に連れて来てしまえば良いのかもしれないわ」 

お母様の言い方は辛辣にも聞こえるし、人でなしと感じるかも知れない。でも確かにお母様は何とかしたいのだと私には分かる。
思わず手に力が入り拳がギリリと音がしそうだけど……

「さすがお母様、良い考えです。王都は広いです、荷馬車で回って僅かでも息がある者を拾うとなれば見咎められる事も少ないでしょう。それこそこのまま置いておけば後々後片付けは大変でしょうとでも言わせれば良いでしょう。見咎める者だとて心の内はどうにかしたいと思ってるでしょうし」

自分達が生きるだけでも必死だと、心の中では助けたいと言う気持ちがあっても蓋をして見ない振りをするだろう。
それを責める事が出来るのは豊かだからだ。己の傲慢さを振りかざしてまるで正義正論だけをぶつけ他者の罪悪感を煽り優越感に浸る。
自分は何一つ助けもしなかったくせに。
口だけなら何とでも言える。本当に手助けした者は他者を責めずに己を責める。

「宜しいでしょう。王都の邸で元気のある者達に拾わせましょう。見咎めるような者がいても肉なり魚なりを渡せば黙るでしょう」

お金じゃない?現物の方が有効なんて末期だ。僅かばかりのお金では小さなパン一つ買えないと言ってるようなものよ。

「ならばお母様、定期便を週に一回走らせる事は可能ですか?」

「ええ、増やしましょう。ホホ……エリーゼは政を分かってるわね、拾えるだけ拾わせましょう。王都の邸はそれなりに広いしどうにかなるでしょう」

「ありがとうございます、お母様。僅かでも領民が増えるのは喜ばしい事ですわ」

そう言って微笑む。
お母様も黒い笑顔だけど、それは私も一緒かも知れない。
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