婚約破棄されまして(笑)

連載

新しい日々 40

「お茶の用意を致します」

エミリの声が聞こえてテーブルを見ると侍女トリオとアニスてパーラーメイドの五人がテーブルセッティングを始めた。
……紅茶の準備もだけど菓子類……甘味がこれでもか！って程運ばれ置かれていく。
スイーツビュッフェかな？って位乗せていく。いくら何でもお母様、リクエストし過ぎではなくて？

「お待たせ致しました」

お母様、お祖母さま、私、エルフの女性、ドワーフの女性と五人分。
紅茶と取り皿とえーと……クッキーとマドレーヌとメレンゲ菓子と大福と飴細工……懐かしい……花を模した飴細工がそれぞれ大皿に盛られて置かれた。
こっちに帰ってくる時に初めて作ったんだっけ……楽しかったな、家族皆で笑った。ルークも一緒にいて……

「エリーゼ？！どうしたの？どこか痛いの？」

「え？」

お祖母さまが慌てて聞いてきたから大丈夫だと言おうと思ってお顔を見ようと思ったのに、視界はボヤけて滲んで……

「思い出させてしまったのね、エリーゼ許して頂戴。楽しかった事を思い出して欲しかったのだけど、大切な人との思い出だったのね」

やだ……私、泣いてた。こんなに辛いなんて、こんなに弱いなんて……

「ごめ……んなさい、お母様……私……」

「いいえ、私も良く泣いていたわ。エリーゼは自分の心の有り様を受け入れてないのね」

「お母様？」

「私達はね、この人と思ったらその方だけを思う。それが何かは人によって違う。でもこの人の子供を望み血を繋ぐ。私達は血を繋ぐ事こそが最大の愛情だと思って生きている。だからこそ子供を授かる事を私達は優先させる。出来れば婚姻し一生側にいたいと願う、駄目でも子供だけをと望み動く。だからこそ欲望の逃がし方も幼い内から教わるし、その気持ちを受け止め苦しまないように考え方を習う。でもエリーゼには必要無いと切り捨て教えて来なかった。それは貴女が王子の婚約者で、貴女は王子を求めて無い事を私は気付いていたからです。求めない相手なら苦しまないから……殿下と出会い求めるとは思ってもみませんでした……」

何を言ってるの……？

「幼い内に里に連れて行けば良かった……」  

お母様が苦しそうにそう呟いた。

「そうすればハーピーと契約を結び自由に連絡を取れたのに……」

あ……風の精霊ですね……