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新しい年 31

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疲れたような顔で髪をかき上げる仕草はなんぞ色気が漏れとる……
お父様やアレクが何かするとは思えないけど……

「ルーク……疲れてる様だけど……」

「ああ、ちょっとな。思いのほか領地の広さと寄子貴族の多さに驚いてたんだ」

「そうなの?」

「小国並みだな」

あれ?ルークはうちが元々国だった事知らないのかな?

「ルークは王国史は余り知らない?」

「ん?んー……勉強したけど結構抜けてるな。歴史は重点置いてなかったからなー……」

「そうなんだ……」

ちょっと困った顔も良いです。

「冒険者になるつもりだったから剣を始めとする武器の鍛錬に時間を割いてたんだよな」

「ふーん……鍛錬の分だけ座学減らしたの?」

やだ……ちょっとキツい言い方になっちゃった。

「いや。減らしてないけど、疲れすぎて身に入らなかった事が割とあって……重要だと思って無かったのかもな……でも何でそんな話しに?」

そうか!ルークからすれば何で?なのよね。

「ハハハ……うちは元々公国として在ったからだよ。寄子貴族でも無いのに貴族家と同じような家名があるのは彼等は元は公国貴族だった名残だよ」

お父様が割り込んで来ました。でも、ありがとうございます!助かりました!

「それで古い地図が必要だったのか……」

「それだけじゃないわよ。古参専用の貴族名鑑もあるのよ」

これは言っておかないと!
ってあれ?何で難しい顔してるのかしら?

「そうか……なら公国に戻っても混乱は無い訳だ……」

え?ゴクリと喉を鳴らしてしまった。
そんな反乱を企んだりなんて……

「そうだな。もし王国にと袂を分かつ事があっても混乱はせんな」

お父様?何を言って……

「今の王国は不安定になってんじゃないか?」

「ルーク……」

言い知れない不安と目を逸らし続けた事実を突き付けられそうでドキリとする。

「普通なら王家に嫁ぐのは高位貴族の令嬢だ。それも高位順でなければ貴族間の関係は悪化する。第三王子の正妃が男爵家令嬢で側妃は侯爵家令嬢か伯爵家令嬢だろう?こうなると側妃の実家は馬鹿にされてると王家に非協力的になるんじゃないのか?もし影響力の高い貴族家なら王家どころか王都にも影響を与えるだろう。それはハッキリ言えば良い事じゃない、シュバルツバルト家の影響力も大きかった筈だ。王国の力関係は今、貴族家の方が強くなりつつあるんじゃないのか?」

ルークの指摘は当たりだ。
うちは辺境を納める一大貴族家、アンネローゼは侯爵家令嬢でミネルバは伯爵家令嬢。
どちらも良い領主であり影響力も高い。
壁に掛かっている地図を眺める。
うちと縁のある貴族家領地を含めれば、実に王国の半分にも及ぶ。
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