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サテュロスゲットの旅 42

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マップの端っこに小さく表示されるのは小型の魔物だ。広い街道に街の表示は無い。露出した顔に当たる風は冷たくて痛い。それでも腕の中の小さなノエルの少し高い温度が心地良くてちょっとだけ嬉しくなる。隊列の先頭の動きをマップで確認しながら進む私。そろそろ三日目の野営へと入る。そうしたらノエルはルークに返して準備をしなければならない。
まもなく先頭の動きが変わり、私はルークへとノエルを返しチョロギーを走らせる。野営セットを作り上げ手早く台へ今夜の食材を分けて乗せて行く。今晩の晩ご飯のメニューはひき肉たっぷりトマトソースのパスタとペペロンチーノにオニオンスープ、蒸し野菜に魚の香草焼き、ガーリックトースト。デザートにリンゴのコンポート。今夜はワインも出そう。食事が終わったら、生姜湯にジンジャーティーの用意をして、ホットワインも作ってみよう。
慣れたもので料理長も料理人達もトラジ達も直ぐさま説明を聞き、手際良く動き出す。薪を出せばあっという間にコンロにくべられ煮炊きの準備が整う。全く整ってないのはピカ太郎とルチルで、ペペロンチーノ用に出した唐辛子をキラキラした目で見てて料理人を困らせている。それでも馬車の中でまとまったのかいつもの二匹になってて一安心だ。さて、私はルークとお話だ。晩ご飯はお任せすれば良い状態なのだから。
少し不安そうにノエルを見つめるルークに近寄る。

「ルーク。ちょっと良いかしら?」

私と少しだけ見つめ合うとコクリと頷く。

「ここで良いのか?」

細かい説明を求められると面倒かな?でもノエルとルチルが不安がるかも知れないから離れるのは得策じゃないか……

「良いわよ。でも、あまり細かい説明はしたくない。」

ビクリと顔が一瞬引き攣ったような気がしたけど、無視します。

「私のカワイコちゃん達が特別な場所に行ってるのは知ってるわよね。」

「ああ。」

「固定パーティーメンバーにする事で一緒に行かせれる事が分かったの。」

「そうか。でも何で……」

「ノエルはタマとトラジとの実力差に傷付いて泣いてたの。多分ルチルもだと思う。」

静かにノエルとルチルを見やったルークの目に躊躇いは無かった。

「ノエルとルチルん頼む。」

真剣な目だった。私も頷きニコリと微笑む。

「夜は諸事情で預かれないけど、昼間の移動時間にあの子達を島送りにしようと思うの。」

「ああ、分かった。だが諸事情ってのは何なんだ?」

不思議そうな顔で聞かれ、言うしかない!と心の中で握り拳を作って告げる。

「夜明け前の猫集会的な集会があるからよ。笛の練習とか踊りの練習してるのよ。」

何かを想像したのかその場にガクリと膝をついたルークが弱々しく呟いた。

「気が付かなかった……何でことだ……」

悔し泣きする寸前でした。ゴメンね、黙ってて。既に集会はファンがついてるし、色々あるから夜は自由行動できるようにしときたいのよ。
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