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春
風まつり(土曜日) 6
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ぼんやり仕掛けを見ながら待つ。
俺、きっと恵まれてる……父さんも母さんも俺の事考えてくれてる。膝に顔を埋めて何とか涙をやり過ごす。
「隼、ほら……ジャンボフランク買ってきたぞ。」
隣に座った父さんはプシッと何かの缶のブルタブを開けて飲んでいる。
「冷めちゃうぞ、ほら。」
膝から顔を出して父さんが持っているフランクを受け取る。
父さんは何本目かの缶チューハイを飲みながら、ジャンボフランクを齧る。
滴り落ちる脂にゴクッと喉が鳴ってしまう……手にした包み紙までほんのり温かい。串を手に持って齧りつく……パキッと皮がはじけて、ジューシーな肉が……まだ冷めてないフランクの肉と脂が口の中いっぱいに広がってハフハフと息を吐きながら咀嚼する。
「うま……」
「おう!美味いよな!父さんが隼位の時はこんな美味いやつ無かったな。それでも楽しかったことばっかり覚えてるな。」
「どんな事、覚えてるの?」
「そうだな、一番覚えてるのは美香と一緒に見た手筒だな。暗くて寒いのに、繋いだ手だけがあったかくてさ……手筒の明かりで一瞬見えた横顔が綺麗で……」
「綺麗で……それから?」
「ラブホに行きたかったな!言えなかったけど!」
「サイテーだよ……でも、ちょっとだけ分かる。」
「そっか……隼に好きな子がいるみたいだって、でも苦しいかも?って母さん言ってたけど頑張れよ!」
父さんは一気に缶チューハイを飲み干すとフランクを完食した。
「隼もそんな年頃か、早いもんだな……」
そう遠くを見て呟いた。
「父さん、俺そのゴミ持ってくよ。一旦、家に帰るからさ。」
「そっか、気を付けて帰れよ。ゴミ、ありがとな。」
ゴミを受け取り、立ち上がる。
「父さんもあんまり飲み過ぎないでね。」
「おーう!」
手を振る父さんを尻目に無言で歩く。
父さんと母さんが夜二人で手筒花火を見に来てた事も知らなかったし、父さんと母さんが俺の事をそんな風に考えてくれてた事も知らなかった。
なんだか泣きそうになるのを堪えて家に向かって歩いた。
俺、きっと恵まれてる……父さんも母さんも俺の事考えてくれてる。膝に顔を埋めて何とか涙をやり過ごす。
「隼、ほら……ジャンボフランク買ってきたぞ。」
隣に座った父さんはプシッと何かの缶のブルタブを開けて飲んでいる。
「冷めちゃうぞ、ほら。」
膝から顔を出して父さんが持っているフランクを受け取る。
父さんは何本目かの缶チューハイを飲みながら、ジャンボフランクを齧る。
滴り落ちる脂にゴクッと喉が鳴ってしまう……手にした包み紙までほんのり温かい。串を手に持って齧りつく……パキッと皮がはじけて、ジューシーな肉が……まだ冷めてないフランクの肉と脂が口の中いっぱいに広がってハフハフと息を吐きながら咀嚼する。
「うま……」
「おう!美味いよな!父さんが隼位の時はこんな美味いやつ無かったな。それでも楽しかったことばっかり覚えてるな。」
「どんな事、覚えてるの?」
「そうだな、一番覚えてるのは美香と一緒に見た手筒だな。暗くて寒いのに、繋いだ手だけがあったかくてさ……手筒の明かりで一瞬見えた横顔が綺麗で……」
「綺麗で……それから?」
「ラブホに行きたかったな!言えなかったけど!」
「サイテーだよ……でも、ちょっとだけ分かる。」
「そっか……隼に好きな子がいるみたいだって、でも苦しいかも?って母さん言ってたけど頑張れよ!」
父さんは一気に缶チューハイを飲み干すとフランクを完食した。
「隼もそんな年頃か、早いもんだな……」
そう遠くを見て呟いた。
「父さん、俺そのゴミ持ってくよ。一旦、家に帰るからさ。」
「そっか、気を付けて帰れよ。ゴミ、ありがとな。」
ゴミを受け取り、立ち上がる。
「父さんもあんまり飲み過ぎないでね。」
「おーう!」
手を振る父さんを尻目に無言で歩く。
父さんと母さんが夜二人で手筒花火を見に来てた事も知らなかったし、父さんと母さんが俺の事をそんな風に考えてくれてた事も知らなかった。
なんだか泣きそうになるのを堪えて家に向かって歩いた。
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お久しぶり❗の隼君です!相変わらず美味しそうな祭飯で、さりげに飯テロしてますね!
フランクフルト、屋台のは何か家で焼いたのと違う気がする。
ホットプレートで焼いてもいまいち・・・
やっぱ、串の差かね?
とはいえ、屋台村での🍢とビール、後、海鮮焼きは旨いー! むろんポン酒も🎵
多分、火力の差があるのかも……
(・ω・)鉄板焼き屋と個人宅の違いに似てる。
あと、作中のフランク屋は炭火焼きなので明らかに違う。私だけじゃなく友人も、この三河フランクは好き。ブリブリのフランクサイコー!と言ってうっかりビール飲んじゃう(笑)
ダメな大人やん。+゚(*ノ∀`)
ノンアルコールのだったら、子供でもOKなのかな? グレーっぽい?
確かにお腹がすいてたらろくな事考えない!
ある漫画でそこの主人公のお婆はんが不幸は "寒い、ひもじい、もう死にたい" となるって言ってたけど、最もだと思う。 ちなみにその時、屋台のラーメンお代わりしながらの会話だったけど。
やっぱりお父さんわかってるんですね。お母さんの事。やっぱりすごいな、この家族。
隼君、幸せものだ!
ノンアルでも微妙にアウトな気がしますが、何か考えがあるのかな?、と……
多分、色々影響受けたと思う。
子供には分からない部分でなんかあったんだと思うなぁ
(・ω・)
ん~ 恥ずかしい! シロ様、鼻血には疎かったんだ・・・良かったね?
シロ様のお母様、それトラウマ級ですよ。 狼狽えるのも当たり前です。
隼君、とにかく、色々とガンバ👊
昔の事だし、田舎ってのもあるので何かの病だろう……
白様、健気……
浮かれポンチだった隼も、何か思う事もあるようだし
とにかくガンバレ!としか。
(´-ω-`)