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春
風まつり(土曜日)
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水曜日の夜、バカみたいに白様に甘えて縋って泣いた。
あの後、何とか泣き止んで白様を見送ってから恥ずかしさの余りベッドに潜り込んで丸くなった。
木曜日と金曜日は恥ずかしくて呼べなかった。
土曜の朝、さっさと起きて一階に降りてきた。
今日と明日は兎足神社のお祭り、風まつりだ。
朝から父さんも母さんもテンションが高い。
旧国道を一部封鎖してのお祭りは屋台も沢山出て、つい色々買い食いしたりして楽しい。特に父さんは歩いて行ける距離だから、飲み歩いてても怒られない数少ない日だ。
母さんは母さんで現地で智子さんと落ち合って楽しむ、これは毎年だから俺も慣れっこだ。
母さんは朝からバタバタと洗濯したり、掃除をしたりしてる……いつでも、風まつりの土曜日はそうだ。
「隼……隼……」
居間で父さんがソファから隠れるように手を振って呼んでる、鷹も上機嫌で父さんの隣に座ってる。俺はチラリと母さんがどこで何をしてるか確認する。母さんは絶賛洗濯中だ、ただいま洗濯物を浴室に干している。乾燥機能付きの浴室は春は大活躍だ。ササッと父さんの隣に座る、三人掛けのソファだから余裕で座れる。
「隼、これ今日の分な。楽しめよ。」
差し出された千円札五枚をサッと受け取り、ポケットに入れてしまう。
「父さん、ありがとう。もう、行くの?」
「まだ行かないけど、母さんにバレるとお小遣い減るだろ?やっぱ、こっちの屋台は高いからさ。」
「助かる。」
「内緒だぞ。鷹もな。」
「ん。」
男ばかりで内緒のやり取りをして、サッとソファから立ち上がり離れる。
母さんが戻ってきた。朝ごはんはまだなんだよな……
「皆降りてるね!じゃあ今から朝ごはん作るけど、軽くで良いよね!」
「悪いな。」
「あはは!屋台の焼き鳥、ワンカップでやらかす予定のクセにぃ!」
「バレたか!」
「いーよ!いーよ!その分、楽させて貰う訳だしね!お昼要らないでしょ?」
「無くて良いよ、あっちで楽しくやっちゃうから。」
「はいはい。じゃあ、トーストとコーヒー。後、何か要る?」
「十分。っと……あー、コーヒーは美味いのが飲みたい。」
「モカとキリマンどっちが飲みたい?」
「モカ。」
「じゃあ、モカ入れるね。隼と鷹も飲む?」
「「飲む!」」
「はいはい。で二人はトースト以外要る?」
「俺、目玉焼き。二個!ベーコンあるとラッキー!」
「ちょっ!それベーコンエッグだろ!母さん、俺もベーコンエッグ!卵半熟!」
「俺はちゃんと焼いてるの!」
「はいはい。隼はベーコンエッグの半熟で、鷹はベーコンエッグの良く焼きね。待ってな。」
「「はーい!」」
父さんも俺も鷹もダイニングテーブルの決まった場所に座る。
カコカコとフライパンが二つセットされ、ベーコンエッグの準備が始まる。
カチャカチャとコーヒーを入れる準備もされる、冷凍庫から粉が出されペーパードリップの準備も万端。トーストもパタパタとトースターに入れられる。リズム良くベーコンが焼かれ、卵が落とされる。母さんは料理が好きで色々作る、楽しそうに調理している姿は見てるだけでウキウキする。
ポットのお湯が沸いて、ペーパードリップにお湯を注ぐ……フンワリと広がる香りに父さんも嬉しそうだ。
コーヒーが入れられ、それぞれにコーヒーが置かれる。パンが焼けてバターが塗られる。まずは俺と鷹の前にトーストが置かれ、すぐに次の番とばかりにパンが焼かれる。程なく俺と鷹の前にベーコンエッグが置かれる。
「お待ち~!さあ、お食べ!」
「「頂きます!」」
テーブルの上に置いてある塩と黒コショウをパラパラッと掛ける。鷹は醤油をジャッと掛けてた。塩っぱくないのかな?好みだから、ゴチャゴチャ言うなって怒られるから言わない。
父さんはコーヒーを啜りながら新聞を読んでる。
母さんはフライパンを洗って……洗い終わった……らパンが焼けた。
ちゃちゃっとバターを塗って、父さんと自分の場所に置いて座る。
「各自、出発は自由なり!必ず鍵を掛けて出かける事!誰かが掛けただろう等と思わない事!以上!ちなみにお昼ごはんは各自自由とする!隼と鷹には、お昼ごはんプラスアルファとして本日は特別配給を渡す!受け取るが良い!」
そう言って差し出してきたのは、千円札五枚ずつだった。
俺と鷹は笑顔で受け取る。
「「特別配給ありがとうございます!」」
毎年恒例だから、声を揃えて礼を述べる。
この一言で母さんは満足そうに笑う。
俺と鷹はさっさと自分の部屋に戻る。
さあ、お祭りだ!
あの後、何とか泣き止んで白様を見送ってから恥ずかしさの余りベッドに潜り込んで丸くなった。
木曜日と金曜日は恥ずかしくて呼べなかった。
土曜の朝、さっさと起きて一階に降りてきた。
今日と明日は兎足神社のお祭り、風まつりだ。
朝から父さんも母さんもテンションが高い。
旧国道を一部封鎖してのお祭りは屋台も沢山出て、つい色々買い食いしたりして楽しい。特に父さんは歩いて行ける距離だから、飲み歩いてても怒られない数少ない日だ。
母さんは母さんで現地で智子さんと落ち合って楽しむ、これは毎年だから俺も慣れっこだ。
母さんは朝からバタバタと洗濯したり、掃除をしたりしてる……いつでも、風まつりの土曜日はそうだ。
「隼……隼……」
居間で父さんがソファから隠れるように手を振って呼んでる、鷹も上機嫌で父さんの隣に座ってる。俺はチラリと母さんがどこで何をしてるか確認する。母さんは絶賛洗濯中だ、ただいま洗濯物を浴室に干している。乾燥機能付きの浴室は春は大活躍だ。ササッと父さんの隣に座る、三人掛けのソファだから余裕で座れる。
「隼、これ今日の分な。楽しめよ。」
差し出された千円札五枚をサッと受け取り、ポケットに入れてしまう。
「父さん、ありがとう。もう、行くの?」
「まだ行かないけど、母さんにバレるとお小遣い減るだろ?やっぱ、こっちの屋台は高いからさ。」
「助かる。」
「内緒だぞ。鷹もな。」
「ん。」
男ばかりで内緒のやり取りをして、サッとソファから立ち上がり離れる。
母さんが戻ってきた。朝ごはんはまだなんだよな……
「皆降りてるね!じゃあ今から朝ごはん作るけど、軽くで良いよね!」
「悪いな。」
「あはは!屋台の焼き鳥、ワンカップでやらかす予定のクセにぃ!」
「バレたか!」
「いーよ!いーよ!その分、楽させて貰う訳だしね!お昼要らないでしょ?」
「無くて良いよ、あっちで楽しくやっちゃうから。」
「はいはい。じゃあ、トーストとコーヒー。後、何か要る?」
「十分。っと……あー、コーヒーは美味いのが飲みたい。」
「モカとキリマンどっちが飲みたい?」
「モカ。」
「じゃあ、モカ入れるね。隼と鷹も飲む?」
「「飲む!」」
「はいはい。で二人はトースト以外要る?」
「俺、目玉焼き。二個!ベーコンあるとラッキー!」
「ちょっ!それベーコンエッグだろ!母さん、俺もベーコンエッグ!卵半熟!」
「俺はちゃんと焼いてるの!」
「はいはい。隼はベーコンエッグの半熟で、鷹はベーコンエッグの良く焼きね。待ってな。」
「「はーい!」」
父さんも俺も鷹もダイニングテーブルの決まった場所に座る。
カコカコとフライパンが二つセットされ、ベーコンエッグの準備が始まる。
カチャカチャとコーヒーを入れる準備もされる、冷凍庫から粉が出されペーパードリップの準備も万端。トーストもパタパタとトースターに入れられる。リズム良くベーコンが焼かれ、卵が落とされる。母さんは料理が好きで色々作る、楽しそうに調理している姿は見てるだけでウキウキする。
ポットのお湯が沸いて、ペーパードリップにお湯を注ぐ……フンワリと広がる香りに父さんも嬉しそうだ。
コーヒーが入れられ、それぞれにコーヒーが置かれる。パンが焼けてバターが塗られる。まずは俺と鷹の前にトーストが置かれ、すぐに次の番とばかりにパンが焼かれる。程なく俺と鷹の前にベーコンエッグが置かれる。
「お待ち~!さあ、お食べ!」
「「頂きます!」」
テーブルの上に置いてある塩と黒コショウをパラパラッと掛ける。鷹は醤油をジャッと掛けてた。塩っぱくないのかな?好みだから、ゴチャゴチャ言うなって怒られるから言わない。
父さんはコーヒーを啜りながら新聞を読んでる。
母さんはフライパンを洗って……洗い終わった……らパンが焼けた。
ちゃちゃっとバターを塗って、父さんと自分の場所に置いて座る。
「各自、出発は自由なり!必ず鍵を掛けて出かける事!誰かが掛けただろう等と思わない事!以上!ちなみにお昼ごはんは各自自由とする!隼と鷹には、お昼ごはんプラスアルファとして本日は特別配給を渡す!受け取るが良い!」
そう言って差し出してきたのは、千円札五枚ずつだった。
俺と鷹は笑顔で受け取る。
「「特別配給ありがとうございます!」」
毎年恒例だから、声を揃えて礼を述べる。
この一言で母さんは満足そうに笑う。
俺と鷹はさっさと自分の部屋に戻る。
さあ、お祭りだ!
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